あの子と私 作:へんなおとこ
トレーナーとウマ娘は一心同体。学園では濃い三年間を共に過ごす、パートナーとも呼べる存在である。トレーナーは、ウマ娘に全てを捧げる覚悟で指導と教育を行う。トレーナーとは、ウマ娘に尽くす存在でなくてはならない。人に尽くすこととは素晴らしいことであるが、この学園に於いてトレーナーの「尽くす」や「支える」といった行為、言葉は常軌を逸している。ウマ娘はその全てを受けとめ、レースに勝つ為、その気持ちに報いる為に日々努力を怠ることはない。
そして、ここにも一つ、イカれた奴らがいた。
「勝つために」
「君の為に」
『全てを捧げよう。』
トレーナーとは、基本的にイカれていなければならない。これはある界隈の常識であり、トレーナーたちの常識である。なぜなら、そうでないとレースに全てを捧げている少女らを支えられるはずもないからである。とはいえ、普段はそのイカれをあらわにすることはない。無駄なことはしないのだ。
「私はレースに勝ちたいの、トレーナー」
「ちょっと待て、俺はまだ君のトレーナーじゃないぞ」
「あら、私のトレーナーになってくれないと言うの?」
そう高慢に宣っている少女の名前は、ホープ。希望。少女が授かった名前は、大きな何かを予感させるものであった。
「いやいや、君の走りはとてもとてもとても素晴らしかったよ。俺が君のトレーナーになるためにどんな知識がいるのか考えたよ。だけどね、俺はそこまで優秀じゃあない」
彼は横溝耕隆。トレーナーだ。これと言って特徴のない、一般的なトレーナー。そこそこ優秀で、多少賢くて、ちょっとウマ娘に対する愛がおかしい、ただのトレーナーである。出身は愛知県である。
「私は人を間違えない自信があるわ。トレーナーの眼には私達に対して、全てを捧げて尽くすという意志が宿っていた。私にとって、理由はそれだけで充分なのよ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。しかし、そこまで言われるだなんてなぁ」
「さあ、据え膳食わぬは男の恥よ?」
「おやおやおや、そう言われるとなるしかないね。けど、こんなに受け身じゃあ男が廃る。こっちから言わせてくれよ」
「あら、そういうの気にするの」
「もちろんだ。俺だってかっこつけたいからな」
「俺を君のトレーナーにしてくれ」
「ええ、これからよろしくね。トレーナーさん」
彼等はこれからどのようにレースを勝ち抜いていくのか。そして彼等の関係はどのように変化していくのか。
「私は勝ちたいの!そのためなら、どんな努力も惜しまないわ!」
「君は既に限界だ。俺は君を壊すために、君のトレーナーになったわけじゃあない」
苦難や挫折が彼等の脚を止めたとしても
「やったわ、やったわ!トレーナー!見てたわよね!?私が勝ったのよ!」
「やはり、君は素晴らしい!」
きっと最後には、栄光が待っている。