あの子と私 作:へんなおとこ
「トレーナー。私たちはレースに全てを捧げるわけだけれど」
「俺は君になんだけどな」
「細かいことはいいの。レースに勝つためには目標が必須よ」
彼等は、トレーナー契約を交わしたのち、学園の一室を借りて方針の決定をすることにした。レースに臨むウマ娘たちは、全員なにかしらの目標を持っている。それがどんなものであれ、少女らはその目標の為に努力を惜しまない。明確な目標があることで、どのような方向に努力をすべきか、どのような知識をつける必要があるのか、というのがはっきりする。そのように、目標というのは、はじめに決めておくことで、後の余計な障害を減らすことができるのだ。
彼等もまた、目標を決めようとしている。
「私はレースに勝ちたいの。けれど、それはただの手段でしかないわ」
「結構真面目に考えるんだな。ただのレースジャンキーだと思ってたよ」
「一言余計よ。失礼ね。あなたのその癖はこれから矯正していくわ」
「ごめんごめん。それで君の目標はなんなんだ?」
「日本ダービーよ」
日本ダービーとは、数多のウマ娘たちが挑戦し、その中の選ばれたウマ娘だけが頂点をもぎ取ることができる。そこに至るまで、挑戦者たちにはさまざまなドラマが生まれる。自身のトレーナーと苦しみや喜びを分かちあってきただろう。絶対にダービーで勝つ。挑戦者は全員、その気持ちを抱く。だが、無情にも勝てるのは一人だけ。大半は涙を流すことになる。それほどまでにレベルが高く、だからこそウマ娘たちの目標となりえる。
ホープもそんなダービーに挑もうとしている。
「ダービーか」
「そう。ダービー」
耕隆の返答にはどこか影があった。しかし、まだパートナーとなって日が浅いホープには、言葉に含まれた暗い何かに気づくことができなかった。
「私はこのダービーに勝たないといけないの。これは私自身の目標で、義務のようなものでもあるわ」
「それはまた、なんかすごいな。でも、君の気持ちは大体伝わった。その熱い意志も理解できた。いいね、ダービー」
「わかってくれて嬉しいわ」
「トレーニングの工夫を考えないと。だが、まずは君の体づくりからだな」
「それはそうね。どんなトレーニングをするのかたのしみにしてるわね」
こうして、彼等の目標は定まった。トレーナーである耕隆はホープのためのトレーニング内容を練り始め、ホープは目標が決まったことにより、さらに勝つことに貪欲になっていく。
しかし、ホープは学園の生徒でもあることを忘れてはならない。レースだけではなく、学び舎で仲間と学び、はしゃぎ、ぶつかり合い、友情を深めていく。彼女は、どのように成長していくのだろうか。
少女たちが生み出す物語はきっと輝いているはずだ。