ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 前回、英霊(サーヴァント)がケモミミ化しているのを発見した藤丸一行。実情の把握へ向かう。


ケモミミ事変 その2

 藤丸と玉藻の前は現状を把握するため、各フロアを回ることに決めた。

 

 「この流れも懐かしいな」

 

 異変解決への糸口は地道な調査にある。藤丸はずっとそうしてきた。

 ヤンデレの時はデオンと、ロリショタ化の時はアタランテと、それぞれ共に調査を行ってきた。

 今回は玉藻の前と共に調査を行う。

 

 「本当は何もないのが一番でしょうけどねぇ」

 「そうだね……でも起こってしまったのはしょうがない。強力な助っ人も居るし、いつも通り頑張ってみるよ」

 

 強力な助っ人こと玉藻の前は最初からケモミミである。今回の異変の影響を受けていない可能性が高いため、共に行動するには最適な人材だろう。

 

 「ランサーのフロアに到達したぞ」

 

 ランサーのフロアはそれほど騒がしくない。しかしなんとなく違和感がある。

 

 「英霊(サーヴァント)が出歩いていない……?」

 「いつもなら誰かに会うはずですよねぇ」

 「あぁ……『いつもなら』って、なんで玉藻がランサーフロアの事情に詳しいんだよ」

 「企業秘密でっす!」

 

 玉藻の前は何処から仕入れてくるのか、カルデアの噂話にやたらと詳しい。清姫とメル友らしいし、彼女なりのネットワークがあるのだろう。

 

 「企業って……」

 「ここがクーフーリンの部屋みたいですねッッッ」

 

 強引に話題を変えた玉藻の前。釈然としない表情を浮かべる藤丸だったが、今は調査の方が大切だ。

 

 「クーフーリン、いる?」

 

 律儀にノックする藤丸。すぐにクーフーリンが出迎えた。

 

 「よぉ、藤丸(ボウズ)。なんか用か?」

 

 いつも通りの調子のクーフーリンだったが、やはりケモミミ化の影響からは免れていないようである。

 

 「クーフーリンがイヌ耳になってる!」

 「イヌって言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 わんわん反論するクーフーリンだが、変化が起きているのは事実である。

 二人がかりでクーフーリンをなだめ、事情を説明した。

 

 「なるほどなぁ。藤丸(ボウズ)、いっつも変なことに首突っ込んでんなぁ」

 「……一応、クーフーリンも当事者なんだけど」

 「まぁ確かにな」

 

 どういう訳か他人事な感じのあるクーフーリン。ヤンデレ化も幼児化も経験済みの彼だが、今までの異変は(主に藤丸が主体となって)解決しているため、どこか楽天的になっているのかも知れない。

 

 「そいじゃ、俺はこのフロアを見ておくぜ。藤丸(ボウズ)は狐の嬢ちゃんと――――」

 「失礼、私はご主人様(マスター)の正妻なのですよ? 言うなれば『狐の嬢ちゃん』ではなく『狐のお嫁さん』の方が適切かと」

 「そ、そうかい……」

 

 呆れるクーフーリンと苦笑いする藤丸(花婿)。一方で高らかに嫁宣言した玉藻の前は見事などや顔を披露した。

 

 「そもそも正妻とは――――」

 「じゃあクーフーリン、ここは任せたからね」

 「お……おう! 任せとけ!」

 

 長くなりそうな話を遮る藤丸と察するクーフーリン。カルデア最古参の英霊(サーヴァント)とそのマスターの阿吽の呼吸である。

 ランサーのフロアをクーフーリンに任せた一行は、アーチャーのフロアへ向かう。

 

 

 

 

 

 「アーチャー、アーチャー、アーチャーか……」

 「マスター、いかがなさいました?」

 「いや……なんか最近アーチャーにいい思い出が無い気が……ヤンデレの時はギルガメッシュ、みんなが子供になっちゃった時はアタランテさん、何だかちょっぴり不安で……」

 「なるほど、つまりトラウマがあるということですね? しかしご安心をマスター。この玉藻の前、全力で我が夫をお守りするスーパータマモワイフになることもやぶさかではないのです」

 「ちょっと見てみたいけど、そんなピンチにならないことを祈るよ」

 

 玉藻の前には変身能力でもあるのかと軽く妄想しているうちにアーチャーのフロアにまでたどり着いた。

 

 「ここのクラス長は確かエミヤだけど……一応確認したいことがあるからアタランテさんに会いに行こう」

 「え!? トラウマがあると先ほど――――」

 「確かに。でもやはり気になることがある」

 

 藤丸はアタランテの部屋のインターホンを押す。

 

 「アタランテさん、いる?」

 

 恐る恐る声をかけたが、アタランテはあっさりと出迎えた。

 

 「汝か、どうかしたか?」

 「え、ああ、その……何か変わったところとか無い?」

 「む? 私には特に無いが……そういえば他のアーチャーの様子がおかしかったな」

 「え!? 詳しく! その話詳しく!!」

 

 ビビっていた藤丸はどこへやら。手掛かりになりそうなものが見つかるや否や身を乗り出して話し始めた。

 

 「あ、あぁ……皆鏡を見ていたな。どの部屋に尋ねても耳を気にしているようだった」

 「じゃあ、ほぼ全員に影響があるとみて良さそうか……」

 「? また何かあったのか?」

 「実は……」

 

 藤丸は事の経緯(いきさつ)をアタランテに話した。

 

 「なるほど、つまり既にそういう耳だった私やそこの女狐は――――」

 「正妻ですッッ! 良いですねッッ!」

 「……とにかく、元々そういう耳の英霊(サーヴァント)には影響が出ていない、という訳か」

 「そうなんだよ……アタランテさんも一応このフロアを見守っていて欲しい」

 「あぁ、注意しておく」

 

 素直に従うアタランテ。基本的にカルデアで何かがあっても自分から動こうとはしないが、今日の彼女はかなり問題解決に協力的である。子供、関係ないのに。

 

 「それにしても、今日のアタランテさんは結構協力的だよね。いや、ありがたいんだけどさ、ちょっと意外でさ」

 「それは、まぁ……この前の、詫びだ」

 

 アタランテは、一度藤丸に弓を向けたことがある。子供が絡むと周りが見えなくなるのか、マスターである藤丸に対して弓を向けたのだ。

 その罰として、しばらくの間はカルデアの掃除を任せられていた。

 

 「律儀だね、アタランテさん」

 「か、勘違いするな! いくら子供達が関係していたとはいえ、(あるじ)である汝に弓を向けたのは私の狩人としての誇りが――――」

 「ストップ! 私を差し置いてイチャイチャしないで下さいまし! あーたまもさみしいわーますたーがこいしいわー」

 

 貴重なアタランテのデレを遮る正妻のかまちょムーヴ。名残惜しいが、一応異変の最中である。

 

 「じゃ、じゃあ任せたよ。アタランテさん」

 「ああ、汝も――――」

 「はいッ! 任せましたッ! ささ、行きましょマスターッ!」

 

 藤丸を外へ押しのける玉藻の前。これ以上正妻ムーヴを妨げられてたまるかという強い意志を感じる。

 

 「ちょっと……タマモさんも今日はえらく積極的だなぁ」

 「正妻なので。えぇ。正妻なのでッ!」

 

 隙あらば正妻アピール。異変中はなかなか藤丸が構ってくれなかったため寂しかったのだろうか。

 

 「とにかく! 今は私の事を見てくださいまし!」

 「わかったよ、タマモ」

 

 やや呆れ気味に返事をする藤丸。異変は解決する、正妻(タマモ)の機嫌は取る。両方やらなくちゃならないのが今の藤丸の辛いところである。

 

 「キャスターのフロアにはもう行ったし、あとはライダーかアサシンかなぁ」

 「それならばアサシンのフロアに行きましょう。何かあっても私なら抑えられます。クラス相性的に」

 「……なんだかなぁ」

 

 英霊(サーヴァント)がクラス相性とか言っても良いものだろうか。藤丸は首をかしげる。

 しかし、玉藻の実力は本物だ。対アサシンにおいて、彼女以上に頼れる存在はそういない。

 二人はアサシンのフロアに向かうことにした。

 

 

 

 

 

 アサシンのフロア。暗殺者のイメージにあるような薄暗い雰囲気はない。というか、クラスごとにあまりフロアごとの差はない。英霊(サーヴァント)ごとに部屋を自由にデコレーション出来るようにという計らいによるものだ。

 しかし、やはりこのフロアにも人影――――いや、英霊(サーヴァント)影か――――は見当たらない。

 

 「フフン、私の存在に恐れをなしてみな引きこもっているみたいですねぇ」

 「いやいや、多分鏡見てるだけかと……」

 

 アタランテさんの言葉を信じるなら、皆鏡に釘付けだろう。フロアの移動中にも誰にも会わない程だった。

 

 「ここのクラス長……は、確か……」

 「長なら、この『呪腕のハサン』めが――――」

 「どあぁ! いきなり現れるな!」

 

 呪腕のハサン――――右腕は常に布に巻かれているが、正体はシャイターンという精霊の右腕で、同時に彼の宝具である。暗殺者(アサシン)(クラス)に相応しく、気配遮断のランクは破格のA+。故に藤丸に、そして玉藻の前にすら気づかれずに接近することが出来た。

 

 「マスター! 下がってくださいまし! そこの暗殺者! 私の夫に反旗を翻すというのなら、このタマモ、容赦はしないッ!」

 「あ、いえ、そういうつもりでは……」

 

 臨戦態勢に入る玉藻の前と焦るハサン。ヤンデレの時も子供化の時も藤丸は命を狙われかけた。そのため玉藻の前は急に現れる英霊(サーヴァント)に対して神経質になっているのだろう。

 

 「ハさん、アサシンの皆に変わったことは無かった? 耳とか」

 「何という略し方を……。それはそれとして変わったことと言えば、やはりマスターの仰る通り、、耳ですな。ジャックも荊軻も、耳が動物のようなものに変わっていました」

 「そうか……そういえばハさんは耳に変化はないの?」

 

 呪腕のハサンは全身を黒いタイツのようなもので覆い、その上仮面もしていて黒いローブを見にまとっているときもある。外見からでは耳の変化は見られないのだ。

 

 「フフフ、秘密です」

 「え、見たいんだけど――――」

 「それでは」

 

 颯爽と霊体化してどこかに行ってしまった呪腕のハサン。しかし反応から見るに、彼の耳にも変化があったのだろう。

 アサシンのフロアも耳の変化があったとなると、他のクラスについても同様だろうか。

 

 「急に現れて急に去る……一流の暗殺者って感じでしたねぇ」

 「無事ならいいんだけど……」

 「? いかがなさいました? 浮かない表情ですが」

 「共通項が……見えない」

 

 今までの異変には、変化が見られた英霊(サーヴァント)に共通点が見られた。

 ヤンデレの時は海魔の肉を食べたから。

 子供化の時は揮発した若返りの薬が充満したから。

 共通点から原因を推察し、解決策を練る。今まではそうだった。

 

 だが今回は?

 何か変わったことは無かったはずだ。

 異変以降、変わったことはすぐに報告するように英霊(サーヴァント)達に伝えてある。

 どれほど後ろめたいことでも、本人に非があろうとも、必ず藤丸に伝えるように。

 藤丸本人も、決して英霊(サーヴァント)を責めようとはしなかった。

 安心して報告できるように。

 それでも報告は無い。

 なぜだ? なぜ――――。

 

 「――――行かなきゃ」

 「い、行かなきゃって、何処に――――」

 

 疑念を払しょくしたい藤丸は玉藻の声も聴かずに他のフロアへ向かった。

 しかし――――。

 

 「主殿! 見てください我が耳を! これが『カワイイ』というヤツですか!?」

 「ケモミミも良いですよね? ま・す・た・ぁ?」

 

 牛若丸(ライダー)も、清姫(バーサーカー)も、みんながケモミミになっていた。

 

 

 

 

 

 「なぜだ! 何も――――なにもわからない!」

 「ま、マスター落ち着いて……」

 

 頭を抱える藤丸。玉藻の前も落ち着けようとするが、かける言葉に迷っているようだった。

 

 「落ち着いてられるか! 皆、どうしてこんなことに……」

 「皆も耳が変わっただけでしょう? まだそんなに悪影響が出てないなら焦ること――――」

 「『まだ』なにもないだけだ! 前回だって、ジャックがあと少し遅れていたら……!」

 

 藤丸は取り乱しているようだった。

 彼は異変解決に限らず、問題に対して共通点やその原因を推察し、解決に向かおうとする。途中で投げ出したり諦めたりはしない。

 一見彼の長所にも見えるが、共通点も原因も見えないとき、彼はかなり取り乱してしまう短所もある。

 現状も結局、『元からケモミミの英霊(サーヴァント)に特に変化はない』ということくらいしかわかっていない。

 

 「他に……他にヒントがあれば……」

 「ヒント……あ、そういえば――――」

 

 玉藻の前は何かを思い出した。

 まだ見ていない場所、行っていない場所、会っていない英霊(サーヴァント)――――

 

 

 

 「エクストラクラスのフロア、そういえばまだ行ってませんでしたねぇ」




 間開いちゃってすまない
 次はもっと早く……出せたら良いな!
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