ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 解決へのヒントが少なすぎるために取り乱す藤丸。
 しかし、玉藻はエクストラクラスのフロアにまだ行っていないことに気がついた。


ケモミミ事変 その3

 エクストラクラス。

 騎士(セイバー)鎗兵(ランサー)弓兵(アーチャー)騎兵(ライダー)魔術士(キャスター)暗殺者(アサシン)狂戦士(バーサーカー)の基本7クラスから成る英霊(サーヴァント)だが、その枠組みから外れた存在である。

 現在、藤丸のカルデアには裁定者と復讐者の2つが所属しているが、まだまだエクストラクラスの種類はあるらしい。

 

 そんなエクストラクラスだが、そのフロアは、フロアというよりはやや隔離された別棟と言ってもいいような場所に存在している。

 

 「あそこ、遠いんだよなぁ……」

 「お疲れのようでしたら、このタマモ、お姫様抱っこも吝かでは――――」

 「遠慮しますッ!」

 

 全力の拒否に肩を落とす玉藻の前。でも取り乱した藤丸が元気を取り戻してちょっぴり嬉しい玉藻の前。それも正妻だ!玉藻の前ッ!

 結局歩いた藤丸だが、到着する頃にはクタクタだった。

 

 「ハァ……ハァ……」

 「やはり私が最初からお姫様抱っこを――――」

 「未練タラタラかよ……」

 

 口ではそう言うが、ちょっぴり後悔している藤丸。おんぶでいいからお願いしたかったが、『狐におんぶされる』なんてことわざがあったような気がする。やはり歩いて良かったのか?

 

 「え、エクストラクラスの部屋って、確か少なかったよね?」

 「えぇまぁ、アンリ・マユとジャンヌさんと天草さんの3騎だけですもんねぇ……もっと積極的に召喚しても良いんですよ? まぁ、ライバルが少なくて済むのは良いかも知れませんが」

 「……来てくれるならな」

 

 いくらカルデアの英霊召喚システム(フェイト)と言えど、狙った英霊(サーヴァント)を召喚出来るとは限らない。

 しかし、そんな中でも召喚された英霊(サーヴァント)には、文字通り、運命があるのだろう。

 

 「まぁ、3騎でも来てくれてありがたいよ。早速調査をーーーー」

 「へぇ、嬉しいこと言ってくれるな」

 「ぎぃやッ!」

 

 突然部屋の中から声がした。

 ……というかドアが半開きの部屋だ。藤丸が来ることを見越して、予め開けていたのだろうか。

 ドアの向こうは真っ暗で何も見えないが、二つの目玉だけは確認できる。

 

 「驚かすなよ、アンリ……」

 「へへっ、びっくりしてくれて何より。マスター、全くこっちに来ないから退屈してたぜ? ジャンヌのヤツも寂しがってたし」

 

 声の主はアンリ・マユ。この世のすべての悪(アンリ・マユ)を真名に持つ、復讐者の英霊(サーヴァント)である。自らを最弱と呼ぶが、素性を知った藤丸はしばらく眠れなかった。

 

 「ジャンヌ……。そういえば、ジャンヌは無事?」

 「いいや、部屋から出てこない。なにやってんのかね」

 

 本来ならここで引き下がるべきだろうが、事が事だ。しかもせっかくエクストラクラスのフロアまで来たのだ。ここはジャンヌの部屋に突撃するべきだろう。

 だが、その前に。

 

 「アンリは耳に変化が……?」

 「あるぜ。でも見せたくはないな」

 「なるほど、残念」

 

 あっさり引き下がる藤丸。見せたくないものを無理やり見せるように食い下がっても良いことは無いだろう。

 藤丸と玉藻の前はその場を後にし、ジャンヌの部屋へ向かった。

 

 「ジャンヌ、いる?」

 

 ジャンヌの部屋のインターホンを鳴らす藤丸。鳴らしたと同時に部屋の中からバタバタと音が聞こえる。

 

 「は、はい、何でしょうか、マスター」

 「耳、見せて」

 

 インターホン越しに通話する二人。要件を端的に伝えると、ドアが開いた。

 

 「こ、これでよろしいでしょうか……?」

 

 中から出て来たのはキツネ耳のジャンヌさん。

 これを見逃すような正妻(タマモ)ではなかった。

 

 「狐!? よりによって狐!!? 貴女、聖女と呼ばれておりながらこの正妻(タマモ)から(マスター)を――――」

 「そ、そんなことありません!」

 

 顔を真っ赤にして否定するジャンヌ。耳が変わったり正妻に難癖をつけられても顔を赤くするだけで精神的に折れていないあたり、やはり強い。

 

 「後は天草か――――」

 「呼びましたか?」

 「ぎゃっ」

 

 また急に声を掛けられた藤丸。エクストラクラスは驚かすのが好きなのだろうか。

 

 「はは、良いリアクションしますね」

 「天草め……」

 

 悪態をつく藤丸。本日二度目のドッキリとなれば、流石に少し、カチンと来る。

 天草四郎時貞――――。隠れキリシタンと島原の乱のキーワードはあまりにも有名である。

 歴史に疎かった藤丸でさえ、名前を聞いてテンションが爆上がりしたほどだ。

 

 「天草は何か変化はあった?」

 「そうですね、耳が少し……」

 

 天草は何処で拾ったのか、パーカーのフードを被っていた。ジャンヌも恥ずかしそうにしていたし、やはり見られたくないと思う英霊(サーヴァント)も少なくないのだろう。

 

 「……ちなみに、見る事って」

 「嫌ですよ。私にも羞恥心というものがあるのです」

 

 フードを抑えて拒否する天草。なんとなく仕草がカワイイ。

 

 「そうかぁ……。うーん、なんかヒントがあれば良かったんだけど」

 

 エクストラクラスのフロアでも進展はなかったことに落胆する藤丸。

 しかし、玉藻の前は違うものを感じ取っていた。

 

 「……マスター、下がってくださいまし」

 「え?」

 

 藤丸を自身の後ろに下げさせる玉藻。視線は天草の方を向いていた。

 

 「……貴方、耳は変化していないですよね?」

 

 藤丸は驚愕した。こんな時に天草が嘘をつくだろうか?というか、なぜ玉藻の前は天草にそんな疑いをかけたんだ?

 

 「玉藻、何を言って――――」

 「耳が変化していた英霊(サーヴァント)は、皆耳を気にして部屋から出てこなかった。ドッキリを仕掛けようとしたアンリさんでさえ、ドアを半開きにしているだけだった。姿を暗闇にくらませられるのに。でも貴方は自分から外に出てましたよねぇ」

 

 そういえばそうだ。自由奔放でほとんど外にいるクーフーリンでさえ部屋の中にいたのだ。インターホンも鳴らしていないし、ジャンヌたちとの会話は部屋の中にまで響くほどうるさかったとも思えない。

 

 「あ、天草、何かの間違いだよな? そうだろ?」

 

 藤丸は信じられなかった。カルデアでは最近異変が起こっていたが、どれも事故によるものだった。

 しかし、今回はどうだ?

 もしも事故なら、自分から藤丸に相談しに来るはずだ。

 最初に起こった異変であるヤンデレの時は流石に異変に対する対応についての()()()がなかったため仕方ないにせよ、子供化の時はメドゥーサが勇気をもって藤丸に話してくれた。

 それ以降、異変が起きた時は藤丸に伝えるように、カルデアの皆には指示してある。

 しかし、もし天草に変化がなかったら――――。

 

 「天草がわざと異変を起こすわけが――――」

 「そうですよ。私だって耳が変わったこの異変を解決したくて、勇気を出して外に出たんです。それを疑うなんて――――」

 「問答無用ッ!」

 

 玉藻の前は呪符を数枚、天草に投げつけた。彼女の『呪術』スキルはランクEX。対魔力スキルをすり抜け、防ぐことが出来ない呪術をまともに受ければ無事ではないだろう。

 しかし、玉藻の狙いは天草をこの場で屠ることではない。

 呪符が起こしたのは突風である。その場に踏ん張れば耐えられるだろうが、藤丸との会話の最中に呪符を投げられた天草は完全に虚を突かれた。

 

 「ッ!?」

 

 フードを抑える間もなく突風を食らった天草の耳が(あらわ)になる。

 

 「あ、天草……その耳は……」

 「やはり……でしたか……」

 

 その耳は――――紛れもなく、人間の耳だった。

 天草は焦る様子もなく、いたって平然と口を開いた。

 

 「あーあ、バレてしまいましたか」




 何とか投稿出来ました。
 次回もよろしくお願いします。
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