ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 異変に振り回される藤丸だったが、しばらくの間は異変の騒動とは無縁だった。
 しかし、異変とは油断しているときに限ってくるものである。
 今回はいつもと毛色が違うようで……。



(番外編)ウチの先輩がモテモテでおかしい
モテモテ事変 その1


 前回の異変からしばらく経過したある日、藤丸はぐっすり眠っていた。いつもの調子である。

 そんないつもの調子の藤丸を起こすのも、後輩たるマシュの役目である。

 普段なら通信でモーニングコールを掛けるマシュだが、この日は違った。

 久々に直接起こしに向かうことにしたのだ。しばらくは異変のせいで直接起こしに行くことができなかったが、落ち着いてきた今なら問題ないだろう。

 

 (やっと先輩を直接起こしに行けます! つ、つまり先輩の寝顔も……!)

 

 一人で勝手に赤面するマシュ。なんとか表情を取り戻しつつ、藤丸の部屋に向かった――――のだが。

 

 「ちょ、ちょっと、何ですかこの人だかりは!」

 

 藤丸の部屋の前には、ドアが見えなくなるほどの人だかりが出来ていた。しかも人だかりのほとんどは女性英霊(サーヴァント)

 それだけではない。それぞれがプラカードやうちわを持っているのだ。

 英霊(サーヴァント)たちは口々に言う。

 

 「紅茶を淹れたんだ、マスター。朝食がてら、一緒に楽しもう」

 「私と……弓の修行でもどうかな」

 「いいえマスター、まずはこの私と縁側で二人座ってゆるりと」

 

 デオン、アタランテ、玉藻の前……三騎とも藤丸と共に異変解決に奔走した経験がある。だから部屋の前に集まっているのもなんとなくわかる。

 だが、他にも英霊(サーヴァント)が集まっている。

 

 「ねぇ、私とガレット食べない?」

 「超常現象について語り合っても……良くってよ?」

 「マスター、今日は食堂が食べ放題の様です。私と向かいませんか?」

 「ご本を読んでくださらないかしら!」

 「解体させて! 解体させて!」

 

 ブーディカ、エレナ、アルトリア、ナーサリーライム、ジャックザリッパ―……皆、口々に騒いでいる。いや、ジャックに関しては引きはがした方が良いだろうか。

 そうこうしているうちに藤丸が部屋のドアを開けた。……同時にモーニングコールの失敗が確定した。

 

 「ん……皆おはよう……ってなんで皆いるの!?」

 「キャー――――!!!」

 

 黄色い歓声を受ける藤丸。まるでアイドルの舞台入りのような印象を受ける。

 

 「ちょ、ちょっと皆さん! 落ち着いてください! 先輩、私です! マシュです!」

 

 必死に呼びかけるが、歓声にかき消されて藤丸には届いていないようだった。

 だが、待ちわびたマスターの登場に沸き立つ英霊(サーヴァント)達をかき分け、藤丸を連れだす英霊(サーヴァント)が一騎。

 

 「し、師匠!?」

 「フフ、世話の焼ける弟子だな、リツカ」

 

 現れたのはケルト神話における影の国の女王、スカサハ。マスターである藤丸からはなぜか師匠と呼ばれている。彼女は藤丸をお姫様抱っこしてどこかへ連れ去ってしまった。

 お姫様抱っこで運ばれている藤丸を、マシュは見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 「全く先輩……。私というものがありながら……」

 

 マシュは目に見えて落胆していた。愛しの先輩が色んな英霊(サーヴァント)にモテモテなことに嫌気がさしたからか、あるいは先輩を救出したのが自分ではなくスカサハだったことが悔しかったからか。

 

 「よう嬢ちゃん、やけにご機嫌斜めじゃねぇか」

 「あ……クーフーリンさん」

 

 そんなマシュに声を掛けるクーフーリン。マスターの後輩への気配りも忘れないのは最古参ならではの器というべきか。

 

 「聞いてくださいよ! 先輩ったら、私というものがありながら、他の英霊(サーヴァント)達に現を抜かしているんですよ!? 確かにカルデアには容姿端麗な方が多いですが、私だって後輩なワケで――――」

 「わかった、嬢ちゃん、藤丸(ボウズ)の事が好きなんだな」

 「――――、好ッ――――」

 

 クーフーリンのツッコミに思わず顔を赤らめるマシュ。

 

 「すすすす好きなんてもんじゃありませんよ! わ、私はただ後輩として先輩を――――」

 「なるほど、なるほど。恋する乙女ってのはいいねぇ」

 

 腕を組んでうんうん頷くクーフーリン。マシュは必死に誤魔化そうとしているが、その必死さが藤丸への並々ならぬ好意を物語っている。

 

 「クーフーリン、あまりマシュをからかうんじゃない」

 「おっ、お目付け役が来たぜ」

 「デオンさんです!」

 

 藤丸のドアの前にいたはずのデオンがいつの間にか来ていた。他の女性英霊(サーヴァント)達は後を追いかけていったが、デオンは残っていたようだ。

 

 「お前はあの藤丸(ボウズ)を追わなくていいのか?」

 「……生憎、私に追っかけの趣味は無いよ。それに――――」

 

 デオンは試案を巡らせるように目線を運んだ。

 

 「――――今まで、みんながあそこまでマスターに対して、アイドルを追っかけるようなことをしたことはほとんどなかった。……いや、清姫は例外だけど」

 「つまり、またおかしなことが起こったってことかぁ?」

 「そんな……でも先輩は」

 

 いつもなら異変は藤丸が英霊(サーヴァント)と協力して解決してきた。だがその藤丸は今はいない。

 

 「藤丸(ボウズ)がいねぇんじゃ仕方ねぇな。俺たちも追いかけるかぁ?」

 「いや、異変自体はカルデア(ここ)で起きたんだ。まずはここで原因を探るべきだ」

 

 最古参の英霊(サーヴァント)ニ騎の意見が割れてしまった。

 

 (こんな時、先輩なら……)

 

 藤丸の事ばかり考えてしまうマシュ。しかし、彼女の心に刻まれた彼の姿が、行動を起こさせた。

 

 「……デオンさん、私と来てくれませんか?」

 「マシュ!? 構わないけど……」

 「では、行きましょう。いつまでも先輩に頼りっきりではいられません! 先輩がいない今、後輩である私が、先輩の代わりを務めなくては!」

 

 フンス!と意気込むマシュだったが、デオンは不安そうだった。

 だが、クーフーリンはマシュの想いを汲んだようだ。

 

 「デオン、嬢ちゃんについてやってくれ。藤丸(ボウズ)は俺が追う」

 「……了解した。私としても、マシュが心配だ」

 「ありがとうございます」

 

 マシュとデオンは藤丸の部屋へ向かい、クーフーリンはスカサハと藤丸の後を追った。




 またまた間が空いちゃいました。
 番外編、スタートです。
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