彼らは異変解決できるのか否か。
藤丸の部屋に入ったマシュとデオンは、その場に残留した魔力の気配を探っていた。
「私は魔術そのものにはあまり詳しくはないから、マシュ、貴女の知識が頼りになる」
「うぅ……プレッシャー……」
つい弱気になるマシュだが、彼女の手際はそう悪くはなかった。
「解析完了しました……魔術というよりも、何かの薬品の様です」
「薬品?」
「えぇ。……というより、痕跡を消そうとした形跡すらありません」
本来魔術師は、魔術を行使した痕跡は消そうとするものである。魔術について知っている者が多いと神秘が失われ、その価値が損なってしまうためだ。
聖杯探索ではあまりないケースかもしれないが、他の世界の聖杯戦争では、
無論、目撃されるだけでなく、後々になって魔術の痕跡を解析されることも避けたがる魔術師にとって、その痕跡を消そうとするのは、ある種癖のようなもの。
一流の魔術師なら、消そうとした、ということすら看破するが、マシュにすら看破されるとなると、異変の元凶はそういった人物ではないことがわかる。
つまり――――
「大半のキャスターは犯人からは除外されますね」
「なるほど、良い推理だね、マシュ」
「い、いえ、それほどでも……」
褒められてつい笑顔になるマシュ。デオンから褒められてもこの有様である。藤丸に褒められたらどうなってしまうのか……。
「マシュ、顔、顔」
「え、あ、すみません」
余程にやけてしまっていたのか、デオンから注意を受けてしまった。いよいよ藤丸から褒められた時の反応が不安になる。
「……とにかく、後は薬品の詳しい解析については残ったキャスターに任せよう」
「はい。……先輩、大丈夫でしょうか……」
マシュの頭は藤丸のことで一杯だった。
「大丈夫か? リツカ」
「は、はい……ありがとうございます。師匠」
藤丸とスカサハは
「あの、師匠、これは……?」
「今からデートするんだ」
「で、デート!?」
藤丸を降ろして操作を行うスカサハ。
隣でオロオロしている藤丸をよそに、スカサハは設定を完了した。
「一体どこに……」
「海だ。海を見に行こう」
スカサハと海。
昔レイシフトに失敗して無人島送りになったことがある。その時はサバイバル生活を余儀なくされたが、スカサハのおかげで何とかなった。
……少し、楽しかったし。
「もしかして、またあの無人島に……?」
「いいや、前に行ったあそこにはもう行かない。代わりに、別の島を指定した……さぁ、行くぞリツカ」
「は、はい」
スカサハと藤丸は、レイシフトでどこかへ行ってしまった。
「マスターは何処へ行ったのかしら……」
「解体させて……」
「マスター、汝がいないと私は――――いや、待て」
藤丸がどこかへ行ってしまい、途方に暮れる
「こっちからリツカの匂いがする。行くぞ!」
「獣の嗅覚ってことね! すごいのだわ!」
「解体するよ!」
女性
カルデア内の動きを、クーフーリンはルーン魔術で察知していた。
「……なるほどな、
魔術の使用をスカサハに悟られる可能性があったが、どうにか気付かれはしなかったらしい。
となると、心配なのはスカサハに連れていかれた藤丸である。確か海でデートするとか言っていたが……。
「ったく……
クーフーリンは二人を追いかけ始めた。
キャスターのフロアに向かうマシュとデオンの元に、クーフーリンから通信が入った。
『おい、
「クーフーリン!?」
「き、聞こえてます!」
突然の通信に驚くデオンだったが、マシュは落ち着いていた。通信を傍受することの多かったマシュにとって、この辺りはやはり場数が違うということか。
「もしかして、先輩たちに何か動きが!?」
『あぁ、あいつら、レイシフトで海に向かいやがった!』
「レイシフトでって……じゃあ別の時空に!?」
別の時空、次元に旅行が可能なレイシフトで姿を眩ませられれば、追跡する手段は皆無に等しい。
「ど、どうしよう……」
「クーフーリンさん! 操作履歴が確認できるはずです!」
『あぁ、やってみる!』
藤丸がいない分、彼に代わり
(マシュ、出会ったときよりも、随分たくましくなったな。マスターみたいに……)
カルデア最古参のデオンは、マシュと藤丸を間近でずっと見てきた。ペットは飼い主に似る……というのは若干失礼な気もするが、後輩は先輩に似る、ということもあるのだろうか。
「デオンさん? どうかしましたか?」
「マシュも成長したな、と思ってね」
「あ、ありがとうございマシュ……」
噛んだマシュは、やはり顔が赤くなっていた。照れに対する耐性はまだまだみたいだ。
『デオン、
「了解。行こう、マシュ」
「はい!」
二人は解析を依頼するため、キャスターのフロアへ向かっていった。