二人の運命やいかに!?
「さぁ、マスターを寄こせ!」
「断る! 私のデートの邪魔はさせん!」
藤丸を取り合う女性
(みんな、まさかまたヤンデレになったんじゃ……)
カルデア最初の異変、ヤンデレ化現象。その時は殺意じみた行為を
「デートだと!? 独り占めは許さんぞ、スカサハ!」
「そうなのだわ!」
「解体したらみんなでシェアできるよ!」
……若干一騎物騒なのがいるが、少なくともヤンデレ化の時のような殺意のようなものは感じられない。
だが、好意を向けてくれるのは嬉しいが、これほど多くの
「マスターは、リツカはなぁ、私たちのマスターで……その……後で私と弓の練習を……」
「お前も独り占めしようとしてるな、アタランテ!」
ツッコミを入れるスカサハ。心なしか切れ味も増してきている気がする。影の国の女王は器用なのかもしれない。
「ええい、問答無用! 私にもデートさせろ!」
スカサハに弓を引くアタランテ。
しかし、影の国の女王は難なくそれを防いで見せる。
「くっ、流石はスカサハか……!」
「まだまだだな、純潔の狩人」
放たれた矢は三本。それをスカサハは二本の槍を華麗に操り弾き落したのだ。
藤丸の耳には「ガキイィン!」という金属音が聞こえるにとどまっただろう。それほどまでの早業だった。
しかし、ここにいる
「――――さぁ、一緒に遊びましょう」
「ッ!? これは、固有結界!?」
ナーサリーライムの持つ宝具、
「うるさい! 私は『スカサハ』だぁ!」
「そ、そんなぁ……」
……いとも簡単に打ち破って見せた。藤丸がよく見ると、スカサハの手のひらにルーンが刻まれていた。固有結界に閉じ込められる直前に手を打っていた、ということだろうか。
「し、師匠……」
「リツカ、ケガはないか?」
藤丸を気遣うスカサハ。しかし次の魔の手は迫ってきている。
「なんだこの霧……体が、重く……?」
「ッ! 早く逃げるぞ、リツカ!」
立ち込める霧の中、探索のルーンを展開し、藤丸を連れて脱出するスカサハ。
ジャックの宝具、『
常人ならば脱出不可能どころか霧の中にいるだけで体が侵されていくが、藤丸には対毒スキル(仮)がある。そのおかげで体が重くなる程度で済んだのだろう。
スカサハと藤丸を逃がしてしまった三騎の
「ジャック、なぜあの宝具を使ったんだ。マスターに危害があるかも知れないだろ」
「ごめんなさい……」
優しくしかるアタランテ。アタランテにも
ナーサリーライムは対象を取れるため、発動時にスカサハのみを宝具に引きずり込んだために藤丸に危害が加わることは無かった。
「ぐぬぬ……このままではマスターはアイツが独り占め……それは許せない」
「なのだわ!」
決意を新たにするアタランテ達だが、問題がある。
「許せないのは山々だが、見失ってしまった。どうしたものか……」
いかに健脚を持つアタランテでも、居場所がわからぬまま探し回るのは危険が付きまとう。
浜辺と隣接した森のようなジャングルのような木々に紛れたのだろうが、痕跡は消されている。
しかし、魔術には魔術のプロがいる。
「見失ったのね? 私に任せて!」
「委員ちょ……エレナ!?」
現れたのはエレナ・ブラヴァツキー。キャスタークラス長を務める魔術のプロである。
「ここから先は私達が追いかけるわ! 皆、乗って!」
『おー!』
エレナは自身の『宝具』に
「ここまでくれば、安心か」
二人は、森の中の開けた場所に到着した。
「またお姫様抱っこされた……」
ショックなような、嬉しいような、なんとも複雑な表情を浮かべる藤丸。
「しかし、大変なことになったな。私はただ、君とデートをしたかっただけなのだが……」
「あ、あはは……。でも、嬉しいですよ。師匠とデートなんて……」
藤丸立香にはデートの経験などない。いや、それっぽい瞬間があったかもしれないが、特異点だのイベントだのでそれどころじゃなかった……気がする。
「私も嬉しい。君はずっと忙しそうで、中々誘えなかったからな」
「師匠……」
「最初から攫ってしまえば良かった」
「師匠!?」
さらっととんでもないことを言い出すスカサハ。裏を返せば、それだけ藤丸を想っている、ということだろうが。
「だが良かった。今こうして、君と――――」
スカサハが言い終わるより前に、上空から光が差した。
「な……なんだあれは!?」
見上げると空飛ぶ巨大な円盤が。
その正体を、藤丸はすぐに看破した。
「宝具……ってことはエレナ!?」
『その通り! そこのスカサハ! 今すぐ藤丸立香を解放しなさい! 独り占めは許さないんだから!』
宝具の中から声を掛けるエレナ。立てこもりに対するそれを彷彿とさせる。
「だめだ、リツカは私とデートするんだ!」
エレナから藤丸を隠すように抱きしめるスカサハ。色々当たってしまっているが、それどころではない。
『私だってデートしたいもん! こうなったら、キャトるわよ!』
エレナの宝具から伸びてくる怪しい光。周囲の物が吸い込まれていく。
「まずい、こうなったら……」
藤丸を抱えて逃げの姿勢に入るスカサハ。
――――いや、逃げることに変わりはない。しかし彼女は宝具を展開する。
『
展開された宝具は、やはり槍。しかし、手元ではなく足元への展開。
そもそも槍とは、何も手で持って扱うだけ物ではない。
スカサハは足を大きく引いた。
『
サッカーボールを蹴るように放たれた必殺の槍は、的確にエレナの宝具を射抜いた。
『ええぇぇぇ!? そんなのありぃぃぃぃ!?』
「槍にはこういう使い方もある。固定観念に囚われないことだッ!」
決め台詞を残し、藤丸を連れ、スカサハは逃亡を再開した。
「いたた……もう、なんなのよ……」
撃墜された宝具の展開を解除し、搭乗していた
各々、それなりにダメージを受けているようだ。これ以上の追跡は得策ではないだろう。
「これじゃリツカくんとのデートが――――」
そこまでつぶやいて、エレナは根本的な疑問を呟いた。
「――――って、なんで私ったらデートの事ばかり?」
カルデアでは、藤丸を追跡しようと
「レイシフトは……何とか出来そうか」
「行先は?」
「無人島だ。浜辺がある。海を見に行ったってことか……」
レイシフトの履歴から行先を調査していたクーフーリン。その調査も終わり、いよいよレイシフトという局面である。
「じゃあ、さっそくレイシフトを――――」
「待ってくれ」
マシュの言葉を遮ったのはデオンだ。
「レイシフトの前に、作戦を確認したい。相手はマスターにゾッコンで多少抜けているとはいえ、影の国の女王だ。一筋縄ではいかないだろう」
「それなら任せてくれ。俺のルーンでなんとかする。……気配を消して、その間に済ませりゃ良いんだろ?」
「なるほど」
「べ、便利ですね、ルーン……」
キャスターとしての適性もあるクーフーリンなら高いレベルでルーン魔術を扱えるだろう。事実、彼の『魔術』スキルはBランク。スカサハに匹敵……とまではいかないが、本格的な魔術戦にでもならない限りは彼女に遅れを取ることはないだろうか。
「……それじゃ、行きましょうか」
マシュ、デオン、クーフーリンの三人は、藤丸の元へレイシフトを開始した。
終わらなかったよ!一章四話構成から外れちゃうけど、番外編だしいいよね()
次回はもうちょっと早く投稿したい所存! お楽しみに!