ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 前回、ヤンデレと化した英霊(サーヴァント)達に翻弄された主人公、藤丸立香。現状を把握するため、調査へ乗り出した。
 出会った中で唯一ヤンデレ化していなかった英霊(サーヴァント)であるシュヴァリエ・デオンを引き連れ、解決に向かう。


※調査パートです


ヤンデレ事変 その2

 解決に向け決意を新たにした藤丸とデオン。二人はヤンデレ化した英霊(サーヴァント)達から逃れるべく、施設内を走っていた。

 

 「一体、何が原因で……」

 「マスター、一応聞くけど、心当たりは?」

 「無い。寝ていて起きたらみんなヤンデレっぽくなってたんだ」

 「となると、何かあったとしたら昨日の夜中だね」

 

 昨日の夜中。確か人理定礎修復の打ち上げか何かでバーベキューをしていたはずだ。そして、その主催は――――

 

 「もしかして、ブーディカさんが――」

 「そんな、彼女に限ってそんなことは」

 

 ブーディカさん。理性が蒸発していたり(アストルフォ)こてこてのヲタクだったり(エドワード・ティーチ)ストーカー行為を行ったり(清姫)など、強烈な人格を持つ英霊(サーヴァント)が多い中でも、かなりの常識人で優しい人である。そんな彼女が、バーベキューを利用して英霊(サーヴァント)達をヤンデレ化させたりするだろうか?

 藤丸はそこまで考えて――――ふと、()()()()に気が付いて足を止めた。

 

 「マスター? どうかしたかい?」

 「……今日、一度も()()()()()()()()()()

 

 清姫――――安珍清姫伝説で知られる少女である。クラスは狂戦士(バーサーカー)であり、日本最古のヤンデレとの呼び声も高い英霊(サーヴァント)である。

 普段なら、いや、こういう状況だからこそ、真っ先に藤丸の下に駆け付けそうだが、影すら見当たらない。

 

 「確かに……ではマスター、先にどちらに向かおうか?ブーディカさんと清姫さん、どちらの様子も気になるんだ」

 「そうだな、俺は――――」

 

 先にブーディカさん◀

 先に清姫

 

 「先にブーディカさんの話を聞きたいな。何か事情を知っているかもしれないし」

 「了解、マスター」

 

 まだ真相にはたどり着けないが、闇雲に走っていては元も子もない。その点、向かう場所が早いうちに決まったのは安心できた。

 ブーディカさんの部屋までは、そう遠くはない。二人はそこを目標に走り出した。

 

 

 

 ブーディカさんの部屋のチャイムを鳴らすと、いつもと変わらない様子で出迎えてくれた。

 

 「いらっしゃい。どうしたの? 顔色悪いよ? ガレットでも食べる?」

 「ブーディカさんも普通だ! 良かった~……」

 

 ほっと胸をなでおろす藤丸。同時に、ブーディカさんへの疑いが強まった。他の英霊(サーヴァント)達がヤンデレ化している中、なぜ特殊なスキルを持たないブーディカさんが平気なのか?

 

 「ブーディカさん、単刀直入に聴こう。英霊(サーヴァント)達のヤンデレ化に心当たりは?」

 「ヤンデレ……? いや、特にないけど」

 

 デオンから投げかけられた疑問に、ブーディカはあっさりと答えた。

 これで振り出し――――そう思った時だった。

 

 「あ! もしかしたらバーベキューで使ったお肉が? 私は皆に焼いてあげることに夢中で食べられなかったけど」

 「お肉が……どうかしたのかい?」

 「うん……実はね」

 

 何かを思い出したブーディカは、事の顛末を語り始めた。

 

 『う~ん、せっかくのバーベキューなのに、お肉が足りないわねぇ……』

 『如何なさいましたかな?』

 『あ! 貴方は……ええと――――』

 『ジル・ド・レェにてございます。祝祭の献立に不具合でも?』

 『えぇ。ちょうどお肉を切らしてしまって』

 『でしたら、()()()()()()()()()()使()()()()()()。転生せし第二のジャンヌ覚醒に用いようと考えておりましたが、本命たるジャンヌに出会えたことにより、その処遇に困っておりました故』

 『良いの!? では遠慮なく――――』

 

 「……といった感じで」

 「俺たち、そんなもの食べてたのか……」

 

 衝撃の事実に顔が青ざめる藤丸。デオンも口元を抑えている。

 

 「ごめんね。私のせいで……」

 「き、気にすることはないよ。しかし、それが原因なら何故マスターは無事に?」

 「それはほら、耐毒スキル(仮)のおかげってことで」

 

 藤丸の話した耐毒スキル(仮)は、マシュによって命名された特殊体質である。全身が猛毒である静謐(せいひつ)のハサンに触れることが出来るのはこのスキルのおかげとされる。

 

 「便利なスキルだねぇ……キャスターの皆に一回調べてもらったら?」

 「ははは……ん? 待てよ? そうだ、キャスターなら!」

 

 キャスター――――主に魔術師がこのクラスに当てはめられるが、科学者や作家など、魔術師に限らず幅広い人材が存在している。彼らに頼れないだろうか。

 

 「しかしマスター、今は状況が状況だ。キャスター組がヤンデレ化している可能性も――――」

 「あぁ、その点は心配ないよ。彼らは人理修復後の魔力の流れを観測しに行ったり、当時の状況を物語として書き残そうとしたりして、ほとんどバーベキューに出席していなかったから」

 

 やはりキャスターのクラス。打ち上げよりも魔術関係に走るあたり、現代でいう研究者のような者が多いのだろうか。

 

 「ではマスター、次の目的地は清姫さんかキャスターの工房、どちらへ向かおうか?」

 「そうだな、今度は――――」

 

 キャスターの工房

 清姫のところ  ◀

 

 「清姫のところへ向かおう。最終的にキャスターに報告しに行くとしても、情報は多いほうが良い」

 「了解、マスター。先導は私に任せてくれ」

 

 ブーディカさんには部屋で待機してもらい、清姫の下へ向かうこととした。基本的に隠密行動が要求される現状において、大勢で行動することにはリスクが伴う。

 

 

 

 清姫の下へ向かう途中、藤丸はある疑問をデオンにぶつけた。

 

 「そういえば、デオンと出会ってからあまり英霊(サーヴァント)に出会っていないけど、デオンってそういうスキル持ってたっけ?」

 「私には、スパイの経験がある。それに、私は君が最初に召喚した英霊(サーヴァント)の一人……カルデア(ここ)の構造や、英霊(サーヴァント)があまり通らないルートはある程度把握しているんだ。……私はね、可愛いだけじゃないんだよ、マスター」

 

 デオンの持つ真眼:Cのスキルは、彼(彼女)のスパイとしての経験が由来である。本来は戦闘論理に生かされるが、当カルデア最古参の英霊(サーヴァント)の経験や洞察力は伊達ではないらしい。

 

 「……もしかして、召喚したばかりの事、まだ根に持ってる?」

 「召喚した時の第一声がアレじゃ、印象にも残るさ」

 

 藤丸はデオンを召喚した時、思わず『カワイイ!』と言ってしまった。初めての英霊(サーヴァント)召喚でテンションがおかしかったこともあるが、周囲は呆れかえっていた。

 

 「ごめんって……あ、着いたよデオン」

 

 清姫の部屋の前に到着した一行。バーサーカーのフロアであるためか、周りの部屋からは『Arrthurrr(アァァサァァァァ)』だの『イスカンダルゥゥゥ』だのの唸り声が聞こえてくる。

 その点では、ある意味清姫の部屋は異質であった。中からは呻き声ではなく――――話し声が聞こえていた。

 

 「清姫が会話を? 一体何が――――」

 「中に入ってみる。マスターは視覚、聴覚を共有しておいてくれ」

 

 デオンは霊体化し、慎重に中に入った。五感の共有は、実体化してからのお楽しみだ。

 

 

 

 何とか侵入し、バレない様に実体化した。中では、清姫と――――スパルタクスが入っていた。

 

 「私はあんなにも安珍様を愛しておりましたのに、騙されたと感じた途端、激しい怒りに支配され、気が付けば狂戦士(バーサーカー)に……」

 「なるほど、それはお辛かったことでしょう。しかし、愛ゆえに彼には振り向いて欲しかったのでしょう? 時に愛とは、人を強く突き動かすものですから」

 「貴方にも、経験が?」

 「えぇ。毛色は違いますが、私はかつて圧政者への反逆のため、剣を執ったことがあります。その根底には、同じ虐げられた仲間たちへの愛がありますから」

 

 デオンは心底驚いた。会話が――――成立している。

 二人の狂化スキルは評価規格外(EX)である。普通に話せているように見えるが、本質は大きな独り言である――――はずだった。

 しかし、二人は互いの話をきちんと聞いている雰囲気である。こんなことがあり得るだろうか。

 

 「しかし、不思議ですな。圧政者への怒りで支配され、苦しんでいたはずが、今ではこうして会話を楽しめるとは」

 「全くです。まるで檻から出られたような解放感で――――」

 

 “汝、狂乱の檻に囚われしもの”――――聖杯戦争において、狂戦士(バーサーカー)のクラスを呼び出すために、通常の詠唱に追加で唱えられる呪文の一部である。今は狂戦士(バーサーカー)として現界している彼らも、元は一人の人間なのだ。

 これは、キャスターに報告しなければ。

 

 「ただいま、マスター」

 「おかえり。……なかなか衝撃的な光景だった」

 

 会話を見聞きしていた二人は驚きを隠せなかった。しかし、キャスターに報告する上では、それなりのネタになるに違いない。単にヤンデレ化のみが症状ではないことが分かれば、治療への糸口がつかめるかもしれない。

 

 「先を急ごう、マスター。キャスターの工房の近くなら、普通の英霊(サーヴァント)なら近づかないはずだ」

 「ああ。……やっと終わりが見えて来た……」

 

 二人はキャスターの工房へ向かった。

 

 

 

 工房のチャイムを鳴らすと、シェイクスピアが出迎えてくれた。

 ……やけに濃いクマを作って。

 

 「おお、我らがマスターでしたか! いやぁ渡りに船とはまさにこのこと! せっかくの来客ですからな、もてなさねばなりませんなぁ、もてなさねば! そりゃあもう盛大に!」

 「お出迎えはありがたいんだけど、どうしたの? そのクマは」

 

 心配していると、奥からアンデルセンがやってきた。

 ……もっと濃いクマを作って。

 

 「バカめ、そんなことを言って、貴様だけ抜け駆けは許さんぞ! 大体サークル名すら決まっていないのに、『この物語を書かねば作家の名折れ!』とか言い出したのはお前の方だ! そもそも、来客はウチの『ボス』が出迎える手筈(てはず)だろうが」

 「誰がボスですって?」

 

 現れたのは当カルデア、キャスタークラス長のエレナ・ブラヴァツキ―。『よくってよ!』の口癖がマスターに気に入られたこと、様々な魔術に精通しており、知識も豊富であること、意外と世話好きな性格であることなどから、藤丸から直々にクラス長を任命された。

 召喚されて当初は、藤丸からは『委員長』なんてあだ名をつけられたが、やんわりと嫌がられたため、『エレナ』呼びで定着した。もっとも、一部のキャスターは『ボス』などと呼ばれてしまっているが。

 

 「それじゃ、後は任せたぞ。……おい、さっさと『書斎』に戻るぞ」

 「そんな! どうか慈悲を、慈悲をぉぉぉぉぉ…………」

 

 アンデルセンに首根っこをつかまれて引きづりこまれるシェイクスピア。アンデルセンの筆が珍しくノッているのだろう。そんな時は大体こうなる。

 

 「はいはい……で、なに? 藤丸君。話は中でしましょうか」

 

 

 

 「それが――――」

 

 部屋の中へ案内された藤丸は今日起きた出来事を洗いざらい話した。ヤンデレ化した英霊(サーヴァント)達のこと、清姫とスパルタクスは平気だったこと、バーベキューで提供された肉が海魔の肉であること――――

 

 「そう……割とタフな体験をしたのね。でも――――」

 (来る…来るぞ!)

 「よくってよ! 私たち(キャスター)に任せなさい!」

 「よっしゃ!」

 

 エレナの「よくってよ」にテンションを挙げる藤丸。エレナ本人は事情を知らないのか満足げだが、デオンは少々呆れ気味である。

 

 「……それじゃ、何か分かったら教えてくれ。私はマスターと――――」

 「あら、そこにおはすは我がご主人様では?」

 

 デオンの言葉を遮り、工房のさらに奥から声がした。

 声の主は、玉藻の前。呪術を操る、狐の(もとい、良妻賢狐の)英霊(サーヴァント)である。

 

 「こちらにいらっしゃっていたのですか。流石、話の速いお方です。さぁさ、こちらへ、ご主人様のために、お部屋は完璧に仕立てておりました。お気になさることはございません。私と二人、愛の巣の中でずっと……ず~~~~っと一緒に――――」

 

 藤丸に蕩けた表情でマシンガントークを繰り広げる玉藻さん。玉藻の前が案内しようとしている方向に目を向けると、色っぽい感じでライトアップされた和室が見えた。

 

 「エレナ、もしかしてキャスター組も?」

 「それがそうなのよ……作家組は無事なんだけど、メディアは概念礼装(毒蛇一芸)を持ったまま部屋から出てこないし、タマモは見ての通りだし、私やパラケルススは魔力観測その他もろもろしてたんだけど……」

 「……あの二人なら参加してても違和感は……ないかなぁ」

 

 メディアは大人しそうだから良いとして、玉藻の前はいつも通りに見えて、以前よりもやり方が積極的になっている気がする。

 

 「ご主人様、遠慮は――――」

 「とにかく、こっちで解決方法は考えておくから、貴方たちはブーディカさんの部屋で待ってて。あそこなら安全そうだし。タマモはこっちで抑えるから心配しないで」

 「そうして貰えると助かる。では、また後で」

 

 デオンと一緒に工房を出たが、ドアを閉めた時に奥から声がした。

 

 『ご主人様! 戻ってくださいまし! 男かも女かも分からないようなヤツよりも、こんなまな板みたいなヤツよりも、私の方が相応しいはずです!』

 『うるっさいわね! キャトるわよ!』

 そこが二人の良いところなのにな、と藤丸は思った。

 

 キャスターの工房からブーディカさんの部屋までは割と距離がある。しかし、デオンについていけば、ヤンデレ化した英霊(サーヴァント)達に捕まることはないだろう。

 だが――――行きはよいよい、帰りは、怖い。

 慎重にいかなくては。

 覚悟を新たに、藤丸とデオンは歩を進めた。

 

 

 

 




 筆がノッてきて気が付いたら前回の倍近くの文字数になっていてすまない…!
 しかもヤンデレ要素が薄めでさらにすまない…!
 次回は解決パートか、あるいはもう一悶着あるかも…?

 前回読んでいただいた方、お気に入り登録していただいた方、感想を下さった方、本当にありがとうございます!
 
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