ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 対峙するカルデア最古参の英霊(サーヴァント)二騎。
 ヤンデレ事変もいよいよクライマックスへ!


ヤンデレ事変 その4

 デオンとクー・フーリンの一触即発のムードに、藤丸は右手の令呪を意識せざるを得なかった。

 だが、ここで使ってしまうと、今後のヤンデレ英霊(サーヴァント)への対抗手段を失ってしまう。ここはデオンを信じるしかない。

 

 「俺の全力の一撃、手向けと受け取るがいい!」

 

 クー・フーリンが啖呵を切ると同時に、朱槍が禍々しいオーラを放つ。

 

 「まさか、宝具を!?」

 「言っただろ? 本気で行くってよ」

 

 クー・フーリンの持つ朱槍の名はゲイ・ボルグ。彼の宝具でもあるその槍は、真名解放によりその真価を発揮する。

 

 「てめぇの剣技で我が必殺の一撃、しのぎ切れるか――――見せてみろ」

 (受けきれるか……?)

 

 デオンの幸運ランクはA判定。加えてその剣技。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を容易く切り抜ける腕前である。

 槍の先端に意識を向ける。心臓にさえ刺さらなければ、絶命は避けられる。

 

 「『刺し穿つ――――(ゲイ・)』」

 

 真名解放。槍の(まと)うオーラがより一層激しさを増す。

 その槍の持つ呪い。因果逆転の一撃。穿つは心臓、狙いは必中。

 あらゆる過程を無視して、『心臓を貫いた』という結果のみが先に用意され、その後、槍が心臓を貫くという過程が実行される。

 クー・フーリンは低い構えから、さらにタメを作る。

 

 「『死棘の(ボル)ぐへぇ』!」

 

 真名解放の寸前、クー・フーリンは左に数回回転して壁に上半身が突き刺さった。

 

 「クー・フーリンがやられた!?」

 「この人でなし!」

 

 悪態をつく藤丸。何とか助かったが、なぜ彼は急に――――

 

 「まったく、治療の邪魔です」

 「ふ、婦長!?」

 

 婦長ことナイチンゲール、白衣の天使と呼ばれることもあるが、本人はあまり気に入っていない様子。彼女が背後からクー・フーリンに裏拳を食らわせたらしい。筋力B+は伊達ではない。

 

 「キャスターから治療薬を預かっています。治療を魔術(オカルト)に頼るのは不本意極まりないですが、どうやら殺菌・消毒・患部の切断等での対処は困難であるとのことで、他に手がない以上、仕方がないのかもしれません。不本意極まりないですが」

 

 そういうと、持っていたカバンから注射器を取り出し、クー・フーリンの尻に突き刺した。

 

 「ふんッッッ!!」

 「ぐほぉ!?」

 

 荒々しいが、本人たちの意思を聞いている暇はない。とにかく早く治療を終わらせなければ。

 

 「……それにしても、治療薬の完成が速くて助かったよ。婦長、キャスターから何か聞いてる?」

 「えぇ。そもそも治療薬自体は異変が起きてから開発中だったようで、貴方の報告――――狂化EXのバーサーカーについての情報により完成に至ったそうです」

 

 医療の話ならある程度話の通じる婦長。そんな彼女も狂化EXである。

 

 「海魔を食したことによる精神の乱れ――――それが原因であるというのがキャスターの見解です。評価規格外の狂化を持つモノは、マイナスにマイナスを掛けるとプラスになるように、一時的にマトモになるそうです。私は食品衛生基準を満たしたものしか口にしたくないので食べていませんが。まぁ、そもそも私はマトモでしょうし」

 

 そうかなぁ、と頭にでっかい「?」マークを浮かべる藤丸。

 

 「と、とにかくみんな無事になるんだよね?良かっ――――」

 「貴方も治療の対象です。シュヴァリエ・デオン」

 

 恐ろしく速い動きでデオンに注射器をぶっ刺す婦長。英雄最速は彼女ではないかと錯覚するほどに。

 

 「ぐはぁ! なぜ……私まで……」

 「自己暗示で抑えているだけで、根本的な解決にはなっていませんから。マスター、貴方はあらゆる毒への免疫があるため様子を見ますが、体調に変化がある場合は迅速に、私に相談を」

 「は、はぁ……」

 

 あくまでも原理不明の藤丸の体質は、あまり信用していないようだ。彼女らしい。なんとも彼女らしい。

 

 

 

 その後はトントン拍子で事が進み、何とか事態は終息した。

 エルキドゥとギルガメッシュの戦いの余波はあったものの、物理的な被害は最小限に留まった。

 

 

 

 「すみません、先輩……」

 

 土下座して藤丸に謝罪するマシュ。治療が終わっても、ヤンデレ化しているときの記憶は残っているようだ。

 

 「良いんだよ、マシュ。アレは不可抗力っていうかさ」

 「ううう……」

 

 ……藤丸が何とかなだめているが、しばらくは立ち直れそうになさそうだ。

 だが、聞こえてくる他の英霊(サーヴァント)たちの声を聴くと少し安心(?)出来た。

 

 「ヌハハハハ! 何故だか我が身体は絶好調! 我が愛を欲する圧政者は何処だ!」

 「好き、好き、好き(マスター、こんばんは)!」

 

 「待てエルキドゥ、誰と何をするって?」

 「ただの研修だってば……」

 

 「同じランサーとして情けねぇ……」

 「気を落とすなよ。オジサンだって何が何やら」

 

 皆、いつも通り。今まで通り。しばらくしたら気を取り直して日常に帰っていけるだろう。

 

 

 

 

 藤丸がマイルームに帰って来た時には、もう日が暮れていた。

 激動の一日だった――――藤丸はその一日の疲れを癒すためベッドに向かったが、何かにつまずいた。

 

 「いてて……ってこれ、あの時マシュが持ってきてたヤツ?」

 

 足元を見ると、大きな黒いビニール袋があった。

 藤丸をベッドに拘束したマシュは、ベッドの下から何かを取り出そうとしていた。藤丸にとっては死角となっていて、一体何だかわからなかったモノである。

 

 「マシュ、片付け忘れたのかな」

 

 そういって袋を開けた。

 中身は――――藤丸が概念礼装の強化用に大切に保存しておいた『愛の霊薬』だった。

 

 

 「マシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

 その日一番の悲鳴がカルデア中に響き渡った。

 




 以上で、ヤンデレ事変は最終回となります! 年内に書き終えられてよかった……。
 また次の「おかしなこと」でお会いしましょう!
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