ウチのカルデアがなんかおかしい   作:味噌そぼろ

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 前回、ジャックに助けられた藤丸は、どうにか解決策を見つけることにした。すでにカルデアの大半が子供になってしまっている現状を、藤丸はどう打開するのか――――。


ロリショタ事変 その4

 ジャックから事変の解決を託され、アタランテから逃げた藤丸だが、生憎と解決手段は見つからないままだった。

 

 「いつもなら誰かが隣にいてくれたもんなぁ……」

 

 人理修復ならマシュが、ヤンデレ事変ならデオンが、それぞれ藤丸の隣にいて支えてくれたものだ。しかし、その二人もいまや――――

 

 「待てよ? マシュだけはまだ確認してない!」

 

 マシュ。今朝は挨拶を噛んでしまったことを笑ったが、彼女の姿を直接見たわけではない。笑ってしまったことの謝罪も兼ねて、様子を見に行った方が良いだろう。

 

 「結局、頼れるのは我が後輩ってことか。待ってろマシュ!」

 

 藤丸はマシュの部屋を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 マシュの部屋についた藤丸は、膝から崩れ落ちた。

 

 「しぇんぱいー」

 「ま、マシュ……」

 

 マシュも子供化してしまっていたのだ。今朝噛み噛みだったのは子供化の兆候だったのだろう。

 頼りの綱を失ってしまった。霊基ごと子供になってしまうというのは伊達ではないらしい。ただの魔術師に過ぎない藤丸には、英霊(サーヴァント)の霊基を元通りにする魔術など知らないし、知っていたとしても扱えるかは別問題である。

 

 「霊基か……霊基……ん? 霊基?」

 

 藤丸はあることを思いついた。

 たとえ英霊(サーヴァント)の霊基を元通りにする魔術を知らなくても、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「これでだめなら……いや、やるしかない」

 

 藤丸は、今度はダヴィンチちゃんの工房へ向かった。

 

 

 

 

 

 「よーこそー」

 「流石の天才も、子供化には逆らえ――――」

 「何のことかな?」

 「平気なのかよ!?」

 「そりゃそうさ。稀代の天才を舐めてもらっちゃ困るさ」

 

 流石は天才。天才は全てを解決する――――

 

 「でも子供化の進行を何とか食い止めているだけ。根本的な解決策は、まだ確立されていない」

 

 ――――わけではないみたいだ。

 しかし、解決策については藤丸が思いついている。後は実行するのみ。

 

 「令呪にお願い! 『来てくれ、スカサハ』!」

 

 藤丸が呼び出したのはスカサハ。クーフーリンに年齢イジりをされてご立腹だったが、精神まで子供化した今は落ち着いている。

 

 「あれ? セタンタは?」

 「よし、令呪はまだ有効! ダヴィンチちゃん! 素材はあるよね?」

 「え? あ、あるけど?」

 「よっしゃ! 早速再臨だ!」

 

 スカサハはまだ召喚して日が浅い。再臨に必要な素材は少なくて済むだろう。研修中だったエルキドゥはすでに再臨を済ませてしまっているため、素材不足を危惧していたが、問題はないみたいだ。

 なにより、藤丸の作戦はスカサハでないと実行が出来ない。

 

 「頼む頼む頼む……」

 

 スカサハの再臨中、藤丸はずっと祈っていた。

 再臨が終わる。これでスカサハが子供のままなら――――。

 

 「……ほう、霊基再臨か。良い閃きだな」

 「やった! よかった~~~~」

 

 どうやら、うまく行ったようだ。霊基再臨で英霊(サーヴァント)の衣装や姿かたちが変わるのなら、霊基ごと子供になってしまっている英霊(サーヴァント)を再臨後の――――すなわち、元の――――姿に変えることが出来る、藤丸のその勘は当たったようだ。

 

 「スカサハさん! 事情は後で話す。今すぐついてきて!」

 「ああ。従おう」

 

 スカサハと藤丸は、ジャックの元へ走っていった。

 

 

 

 

 

 ジャックとアタランテの力は拮抗していた。

 いや、ほぼ一方的な展開だった。そもそも、子供には手を出せないアタランテと、子供の姿をしているジャックでは、アタランテにとっては相性が悪すぎる。

 

 「ぐっ……おのれ、卑劣なり、藤丸立香……!」

 「もうあきらめて、アタランテ」

 

 防戦一方のアタランテはすでに疲弊していた。ジャックの宝具『解体聖母(マリア・ザ・リッパ―)』の力を考えれば、勝ち目はもうないと言っていい。

 そこにスカサハを連れた藤丸が現れた。

 

 「ハァ、ハァ……ジャック、ありがとう。何とか解決出来そうだよ」

 「ほんとう!?」

 

 目を輝かせるジャック。実際に解決するのはスカサハだが……。

 

 「スカサハさん! 前に霊基をいじって皆を夏仕様に出来たよね? 皆の霊基をもとに戻すことって出来る?」

 「なんだ、そんなことか。子供の姿では出来なかったが――――ほら、この中に入ればいい」

 

 スカサハは槍を取り出し、床に魔法陣を描いた。この中に入ればいいらしい。……やけにあっさり解決しそうだが、難事件とは得てしてこんなもの……なのか?

 しかし、子供たちは魔法陣から離れ、アタランテの後ろに隠れてしまった。

 

 「何あれ……」

 「怖いわ……」

 「圧政……」

 

 アタランテは子供の姿を見て自分を奮い立たせる。

 

 「……見ろ、藤丸。子供たちの怯える姿を! これが貴様の望む世界か!? 第一、そんな魔法陣で彼ら――――」

 「いいかげんにして!」

 

 声を上げたのはジャックである。彼女がここまで大声を上げるのは、少なくとも藤丸は見たことが無い。

 

 「みんながこどもになっちゃったら、わたしたちは何処に還ればいいの? おかあさんがいない世界なんていやだよ。だからおねがい。わたしたちの世界を壊さないで」

 

 ジャックの聖杯に懸ける願いは『母の中に還ること』。母親が、つまり大人がいなければその願いは成就されない。……藤丸の事も『おかあさん』と呼ぶあたり、性別は関係ないらしい。

 

 「ジャックの……願い?」

 「そうだよ。わたしたちだけじゃない。みんなにだって、願いがあるはず。こどものままじゃ叶えられないかもしれない。だから……お願い」

 

 ジャックは頭を下げた。あのジャックが――――いや、彼女も彼女で、日々の生活を通じて精神的に(精神汚染Cではあるが)成長しつつあるのだろうか。

 その姿は、アタランテには(こた)えたらしく、膝をついてうつむいてしまった。

 

 「…………て、くれ」

 「え?」

 「一思いにやってくれ!」

 「あ、ああ……」

 

 どうやら、皆を元通りにすることに了承してくれるらしい。歪んだ表情からは、並々ならない決意が感じられる。

 しかし――――

 

 (一思いにって、ただ魔法陣の中に入るだけだよな?)

 

 スカサハは、首をかしげていた。

 

 

 

 

 最初に魔法陣に入ったのはアルトリアである。

 

 「おお、姿が元通りだ! 皆、これでもう大丈夫だぞ!」

 

 アルトリアの言葉を皮切りに、子供たちは魔法陣の力で次々と元に戻っていく。

 

 「やったぁ!」

 「よかったぁ……!」

 「圧政!」

 

 

 

 

 

 皆が元通りになっていくのをみて、藤丸は安心した。

 

 「こ、今度ばかりはもうだめかと……」

 「まぁ良いじゃないか。霊基再臨で私を元通りにしたお前のおかげだ」

 「実際に元に戻したのはスカサハさんだよ。ホントにありがとう」

 

 藤丸は大の字になって脱力した。まさか自分の英霊(サーヴァント)に命を狙われるとは思っていなかった。

 

 「……それで、アタランテの事はどうする?」

 「どうって……」

 

 自分(マスター)の命を狙って来た英霊(サーヴァント)である。お咎めなし、とはいかないだろう。

 

 「……じゃあ、しばらくはカルデア全体の掃除をお願いしようかな」

 「一騎でか? ハハハ、それは骨が折れそうだ」

 

 笑うスカサハ。彼女も一時的にとはいえ子供になってしまっていた。あのままだったらと思うと、すこしゾッとする。

 とはいえ、みんなは元通り。今夜はゆっくり寝られそうだ……。

 

 

 

 

 

 藤丸がマイルームにつくと、さっそくアタランテが掃除をしてくれていたらしく、部屋が整頓されていた。

 しかし、ベッドの上に荷物が置かれていた。

 

 「なんだこれ……ってえぇぇ!?」

 

 荷物の正体は英霊(サーヴァント)の写真集……というか、藤丸の私物である。全10冊、それらが積み上げられていた。

 そしてその上には一通の手紙が。

 

 『先輩、私という後輩が居ながらこんなもの読んで! 後でお説教です! PS.笑ったコトへの謝罪はお説教の時にしっっっっっっっっっっっっかりしてもらいますからね』

 

 手紙を読み終わったあと、インターホンが鳴った。

 ドアの向こうにいるのは恐らく――――

 

 「マシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 「先輩ィィィィィィィィィ!」

 

 その日の深夜、マイルームで土下座している藤丸とご立腹のマシュが目撃されたという。




 ロリショタ事変、これにて閉幕!
 読んでくださった皆さん、ありがとうございました!
 また次の『おかしなこと』でお会いしましょう!
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