ファイナルファンタジーXIV 転生エオルゼア 作:原田 クミ
プロローグ
……。
眠い。が、窓から差し込む陽光は容赦なく部屋を照らしている。そろそろ起きなくては。
目を覚まして上体を起こす。やたらと広い部屋が目に入る。
ここは砂漠の大都市ウルダハの冒険者ギルドに併設された、ウルダハで最も有名なホテル〈砂時計亭〉。
宿泊している部屋は「冒険者にぴったりのお部屋」らしいがとても広い。とにかく広い。日本でFF14をプレイしていた頃のワンルームの6倍くらい広い。
豪商の泊まるという最高級の部屋はどれだけ広いのだろうか。少し気になる。
何の脈絡もなく突然エオルゼアに来てから、そろそろ5年がたつ。やってきた当時は非常に混乱しており、名乗るときは"Light Hikari"とか名乗っていた。
真名を明かすことは弱点を晒すことと同義である。俺の心の中のセイバーもそう言っていた。
エオルゼア生活が3か月ほど経ったころ、ようやく心が落ち着いた俺は、この地では真名を知られたところでどうということもないことに気が付いてしまった。
インターネットもないので、自分の情報が爆発的に拡散することもないし、そもそも俺は英雄ではないので、名前を知られても弱点の看破はされない。
そしてめっちゃ後悔した。
なんだかんだ浮かれて、完治したはずの14歳の病が再発してしまっていたみたいだ。
その頃にはライト呼びが定着していたので、俺は諦めて冒険者ライトになった。
ちなみにこの名前は、日本でたまに使っていたサブキャラの名前である。光の戦士っぽくてかっこいいと思って適当に付けた。
今まで集めた情報から推測するに、俺がエオルゼアにやってきたのは第七霊災の直後らしい。
つまり、そろそろ原作が始まるのだ。3大都市のいずれかに、のちに光の戦士と呼ばれることとなる冒険者が現れる。
荒野を越え、山を越え、海を越え、世界を越え、そして時を越える冒険が始まるのだ。
光の戦士や、原作で活躍する組織〈暁の血盟〉とどう関わっていくかは、まだ決めていない。
適当に流れに身を任せて生きていく所存である。まあ何とかなると思う。今まで何とかなってきたし。
未来のことは未来に自分に任せ、まずは今日を生きるのだ。
寝る前は整えられていたが、今や荒れ狂っている寝台から降り、ミラージュドレッサーの前に立つ。
今日はどの装備を投影しようか。
冒険者にとって、装備とは一張羅であるから、本来装備は毎日同じで良いはずである。
しかし、エオルゼアには、下手にミラージュプリズムとかいう便利アイテムがあるせいで、毎日同じ装備のやつは、武具投影もできないクソ雑魚冒険者という風潮があるのだ。
オシャレに気を使わないといけないのは、エオルゼアでも同じであった。クソが。
シャーレアンなら誰も他人の服装など気にしないというのに。
ラストスタンド以外にも美味しいレストランが増えたら一生シャーレアンで暮らしたい。
よし。今日は黒衣森に行く予定だから、白魔道士……おっといけない、幻術士風のローブにしよう。
白魔道士は、黒衣森の中にある、3大都市のひとつ、グリダニアが秘匿しているジョブである。
だから今日、俺は対外的には幻術士なのだ。偉い人にはバレているような気がするが、何も言われていないのでセーフだ。
よし、出発だ。部屋を出よう。
「おはようライト。今日は〈幻術士〉?あなたも多芸ね。」
冒険者ギルドのモモディさんが声をかけてきた。
今日もかわいい。ララフェルはかわいい。異論は認めない。
「おはよう、モモディさん。フフフ、俺は何でもできるのだ。だから、美味しい依頼はジャンル問わず、俺に回してほしい。」
拡張パッケージの第4弾〈暁月のフィナーレ〉をクリアした俺に死角は無いのだ。
「あらあら、早起きするようになったら考えておくわ。今日もおいしい依頼は残っていないわよ。」
朝に弱いのは冒険者を5年続けても治らなかったので、今後も俺は美味しい依頼にありつけないらしい。
「今日は黒衣森に行くから依頼は受けない。だから問題ない。」
少し悔しいので精一杯強がってみた。
「そうなの。気を付けてね。」
クスクスと笑いながらモモディさんが言う。強がっているのはバレバレだったみたいだ。
先週も同じようなやり取りをしたのが原因かもしれない。
かもしれないというかそれが原因だな。間違いない。
「ん、じゃあ行ってくる。」
くそう。さらに何か言われる前に出るとしよう。
今日もいい天気だ。きっといい1日になる。知らんけど。
いきなりエオルゼアに来たときはどうなるかと思ったが、俺は、熱中していたゲームの世界で、毎日楽しく冒険している。