ファイナルファンタジーXIV 転生エオルゼア   作:原田 クミ

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第1話 高難度コンテンツでなくても食事は必要

 今日の目的はズバリ、食材の調達である。

 実際にエオルゼアで生活していると、ゲームでは存在しなかった問題が生まれてくる。

 そのうちの1つが食事問題である。ゲームでは、食事の効果はステータスの上昇のみであったから、高難易度のコンテンツに挑むとき以外は食事をしなかった。

 しかし実際は腹が減る。食事は必須である。

 

 そんなわけでテレポの詠唱をすること5秒、黒衣森の北部森林にやってきた。

 実に短い旅だった。

 

 黒衣森では森の幸がたくさん採れる。特に蜂蜜、シナモン、メープルなどなど。

 娯楽の少ないエオルゼアにおいて、俺は甘味を何よりも優先している。

 本当はマーケットボードで購入したいのだが、最近は金欠なので、節約のため自分で採取しているのだ。

 

 早速採取に取り掛かりたいのだが、1つ困ったことがある。モンスターだ。

 確かに園芸士のスキルとして身を隠す【スニーク】は修得しているし、モンスターに襲われる心配は無い。

 心配は無いが、存在するモンスターそのものが問題なのだ。

 

 黒衣森に生息するモンスターの一部を紹介しよう。

 

 レディバグ。50センチのテントウムシ。

 

 マイトリング。1メートルくらいある蜘蛛。

 

 ミッヂ・スウォーム。5センチくらいあるハエの大群。たぶん100匹くらいいる。

 

 採取には細心の注意を払わなければならない。

 しかし近くにこんな奴らが存在するという、その事実だけで虫唾が走る。

 全く集中できない。

 

 だから、黒衣森で採取を行う場合、俺はまず周囲のモンスターを根絶やしにする。

 もちろん魔法で遠くからである。

 自分に【スプリント】を掛けて移動速度を増加させ、走りながら、自分を中心に半径25メートルの円に入ってきたモンスターすべてに風の魔法で攻撃する。

 

 白魔道士の魔法で、唯一の詠唱のいらない攻撃魔法、それが風の魔法である。

 継続ダメージを与える魔法なので、着弾時の威力は低いが、黒衣森にいるレベルの低いモンスターたちにはこれで充分である。

 走りながら弱いモンスターの殲滅をするのにはぴったりの魔法だ。

 

 拡張パッケージの第3弾〈漆黒のヴィランズ〉をクリア済みなので、俺の白魔法は土・風・水ではなく、光のエーテルを扱うものに変化しているはずである。

 しかし、今の俺が扱えるのは通常の白魔法と同じ土・風・水のエーテルのみだ。

 

 第一世界という極端にエーテルバランスが乱れた環境下で白魔法を使用すると、光のエーテルが多すぎて個別の属性のエーテルの抽出が難しいのではないだろうか。

 だから第一世界の光の戦士は白魔法を使用すると全て光属性になったのだと考えている。

 

 個別の属性を利用した白魔法は、6属性あるうちの1属性、つまり6分の1のエーテルしか利用できない。

 しかし、光を利用した白魔法は、霊極性に偏ったエーテル、つまり全体の半分のエーテルを利用できる。

 

 そのことに気が付いた光の戦士は、原初世界に帰還した後も、光を利用した白魔法を使い続けていたのだ。

 たぶん。

 闇のエーテルの氾濫した第十三世界に、黒魔導士の光の戦士が行ったら、使用する魔法は全て闇属性になるに違いない。

 攻撃することしか考えていない脳筋DPSの光の戦士には、闇属性のエーテルの有用さに気が付くことは不可能かもしれないが。

 ヒーラーはかしこいのだ。

 

 おそらく俺の白魔法も、第一世界に行くことがあれば、光属性の扱いを覚えて変化させられるだろう。

 

 まあ、こんな序盤の世界で光の白魔法を連発していたら、目立ってしょうがないので、幸運だったともいえる。

 たとえ発動する魔法のランクが低くとも、「新生エリアにいるようなLv50以下のモンスターは雑魚である」という俺の想いにデュナミスが反応し、魔法が強化されている気がするので何も問題は無い。

 心意システム万歳だ。

 

 

 殺戮と採集、破壊と創造を夕方まで続け、少し疲れたので、〈再生の根株〉で休憩することにした。

 もちろん周囲に存在するモンスターは消し去ってある。

 ここは開けた広場のようになっていて、グリダニアからも近く、ピクニックにちょうど良いのだ。

 モンスターさえいなければ。

 

 適当な切り株に座り込み、ライトお手製のサンドイッチを食べていると、後ろから伸びてきた手にサンドイッチをかすめ取られた。

 

「わあ。キミの料理、相変わらず味は普通なのにあり得ないくらい力が湧いてくるね!」

 

「は?」

 

 キレそう。

 人の食事を奪っておきながら微妙に失礼なことを言うのは、目をマスクで隠したキュートなイダちゃんである。

 

 調理師Lv90である俺の料理は、ステータス補正こそエオルゼア随一の自信がある。

 しかし、料理の腕前は日本にいたときと変わっていないので、味はいたって普通なのだ。

 

「イダ!人の食事を横取りするのはやめろ!図々しいぞ!だいたい君は……」

 

 イダに説教を垂れるのは、気難しげな呪術師、パパリモだ。

 いいぞ、もっと言ってやれ。

 肝心のイダは全く耳を貸さずに3つ目のサンドイッチに手を伸ばしているが。

 

 がしっとイダの手を掴んで止める。

 

「どうしたの?」

 

 どうしたの?じゃないが。これ以上はあげないが。

 

「もう駄目。あげない。」

 

「いいじゃん!ライトとあたしの仲じゃん。」

 

 どんな仲だ。馬鹿にしてんのか。

 

「恋人じゃあるまいし。駄目。」

 

 恋人でも駄目なものは駄目だがそれは置いておこう。

 

「こ、ここ、恋人!?そ、そんな、あたしはそんなつもりじゃ……。あ、て、手つないで、えっと、これはその……。」

 

 真っ赤である。初心かよ。かわいいかよ。今更掴まれた手を意識しだしたぞ。

 こいつ本当に24歳か?

 

「おい。イダをからかうのはそれくらいにしておいてくれ。」

 

 止めてくれてありがとうパパリモ。収集がつかなくなるところだった。

 

「ひどい!ケチンボ!いじわる!」

 

 イダも我に返って良かった。

 

「あ!大事なことを忘れてたよ!あたしたち、黒衣森の異変と不審者の調査をしてるんだ。何か知らない?」

 

「いや、特に怪しい人は見てないかな。」

 

 まじか、怖いな。しばらく黒衣森に来るのはやめよう。

 でも原作の香りがするな。

 こっそり通おうかな。【スニーク】してればバレないだろう。

 

 そんなことを考えていると、突如パパリモが、ダサいゴーグルをつけて周囲を見渡しはじめた。

 マジでダサいな。このゴーグルをつけなきゃいけないなら〈暁の血盟〉に加入するのやめるわ。

 

「どう?やっぱりおかしい?」

 

「さっきと同じ。この場所のエーテルは、かなり乱れている。しかも、ごく最近に……。」

 

 イダの問いにパパリモが答える。

 

「不審者の情報に合わせて、森のモンスターが激減してるって情報があるんだ。だから、イクサル族が大量のモンスターを生贄にして、何か儀式をしてるんじゃないかって、みんな不安になってるみたいなんだ。」

 

 え、イダさん。今何て言った?

 森のモンスターが激減してる?

 エーテルが乱れてる?

 不審者?

 

 馬鹿な。俺が黒衣森でモンスターを狩るときは、慎重に森の精霊にお願いして、エーテルを乱さないように配慮したはずだ。

 そのために〈白魔道士〉として黒衣森に来たのだから。

 

 加えてモンスターの殲滅が終了したら、速やかに〈園芸士〉にジョブチェンジして【スニーク】を使い、完全に痕跡は消したはずだ。

 

 まさか隠蔽が完璧じゃなかったのか!?

 

 さらに不審者の情報だと…?

 

 もしかして……。奇声を上げて、森を走り回りながらモンスターを皆殺しにする姿が見られていた?

 そして忽然と姿を消す人影……。

 

 どう見ても不審者です本当にありがとうございました。

 

 マズい。どうにかごまかして、俺がその不審者であることをばれないようにしなくては……。

 

「急に考え込んで、どうしたクポ?」

 

 急に黙り込んだ俺を怪しみ、ふわふわモーグリのクポロ・コップが尋問を始めた。

 

 落ち着け。何とかして話を逸らすんだ……。ハート・オブ・逸らすだ。

 頭を回せ!今こそ灰色の脳細胞の出番だ。お前ならやれるぞ、ライト。

 

「いや、さっき切り株に剣が刺さってるのを見たから。まずいんじゃないかって。」

 

 完璧な回答だ。よくやった俺。

 話を逸らしつつ、他人に責任を擦り付けた。

 自分で自分が恐ろしいぜ。

 

「えっ。ライト、それって本当?エーテルが乱れてるところで、そんなことしたら……。」

 

 突然、地響きが発生した。

 イダが諦めの表情で腕を組む。

 クポロ・コップはあわあわしている。

 

「ほらね、こういうことになっちゃう!」

 

 大きなトレントの集団が襲い掛かってきた。つらい。食事中なんだが。

 

「仕方ない。戦うしかないか……。」

 

 ちょ、待ってくださいパパリモさん。

 

「ここは二人に任せて、食事を再開してオーケー、ってことにならない?」

 

「なるわけないじゃん!さあ、いっちょやるよ、ライト!」

 

 ならないか。仕方なく杖を構える。

 

「囲まれているな。イダ!前衛は任せた!援護する!ライト!背後の敵と僕たちの回復と防御頼む!」

 

「「了解!」」

 

 あれっ?俺の負担重すぎない?と思ったが仕方がない。

 安全策を取ったらそうなる。

 

 二人に背を向け、相対するモンスターたちに岩を飛ばし、風で切り裂く。

 

 足元にオレンジ色の、攻撃の予兆が広がる。

 どうやら、背後にいるトレントが、種子爆弾をイダに撃とうとしているらしい。

 

 1歩動き、予兆の外に出る。

 パパリモは慌ててついてきた。

 パパリモさんはピクミンさんだった。

 

 イダはトレントを殴るのに夢中で気づいていない。あっ、爆発した。

 

「体が重いよ~!」

 

 種子が爆発して、現れたツタに巻き付かれ、イダは半泣きだ。

 

「戦闘のときは周りを見ろといつも言ってるだろ!?」

 

 パパリモは呆れている。

 

 仕方ない。回復してやろう。

 えいっ。詠唱いらずの回復アビリティ【テトラグラマトン】だぞ。

 

 回復したらさっさと自分の敵に目を戻そう。

 FF14において、ヒーラーとは「回復もできるDPS」である。

 攻撃を放棄することは許されない。

 

 

 

 ようやく全てのモンスターを倒したころには、イダはツタまみれになっていた。

 残念ながら、回復魔法では、傷は治せても、ツタは取れない。

 

「ライトはずるいよ!一回も攻撃を受けてないじゃん!」

 

「確かに、避けるのが早かったね。どうやっているんだ?」

 

 当たり前のことを聞いてきた。

 攻撃の予兆が見えたら、範囲の外に動けばいいだけだろ。

 

「攻撃の予兆が見えたら、範囲の外に動けばいいんだよ。」

 

「それができないから聞いてるんだよ!?」

 

 あの予兆が避けられないのか?まさか君たちもhimechanじゃないだろうな……?

 

「……うん。間違いない。君もあの力を……。」

 

 パパリモが一人で勝手に納得した。何故だ。

 

「グリダニアに居る、角尊のエ・スミ・ヤンに、このことを知らせてくれるかい?僕たちは、そこの剣を持って、報告に戻るよ。」

 

「わかったクポー。」

 

 パパリモのお願いを受け、クポロ・コップはグリダニアの方にふわふわ飛んで行った。

 

「それじゃ、僕たちはここまでだ。」

 

「んじゃね!」

 

 そう言って二人は去っていった。

 あ、イダが振り返って手を振ってくれた。かわいい。

 

 ふむ。そういえば、切り株に剣が刺さっていて、トレントが湧くイベントが原作にあった気がするな。

 グリダニアでスタートした場合のメインクエストだ。

 

 確かあれは……。

 悪者のアシエンが暗躍して、大事な儀式を中断させたり、大事な樹をイクサル族に襲わせたりしたんだっけ。

 それで精霊を激怒させて、グリダニアの精霊の加護を無くす計画だったはずだ。

 

 そういえば。

 黒いフード付きコートを着たやつが襲ってきたから瞬殺した記憶があるな。

 今考えたら、あいつはアシエンだな。弱すぎて忘れてた。

 どうやら、グリダニアの平和を知らぬ間に守ってしまっていたらしい。

 

 ……帰るか。

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