尽きぬ憧憬   作:なんでさ

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 前言通り、早めの投稿となりました。拙作を投稿し始めた時以来の更新間隔で、作者本人もびっくりです。
 その分、やはり内容はあっさり目に。本番は決勝なので、そこまではこれくらいでいいんじゃないかな、と思う次第です。


ランナーズ

 

 ゲートに取り付けられたスタートシグナルから三つのランプが消えると同時に走り出す。

 自身も含め総勢二百二十一人の疾走による振動に腹の底から裏返りそうな錯覚を覚える。

 局所的な地震でも起きたかのような揺れは、少しでも脚の力を抜けばみっともなくすっ転んでしまいそうだ。

 

『さーて、実況してくぜ! 解説アーユーレディ? ミイラマン!』

『無理矢理連れてきたんだろうが……』

 

 スタジアム上階にある実況席では、プレゼント・マイクがイレイザーヘッドを解説役として伴って、実況を始めたらしい。

 自らラジオ番組を持つだけあり、彼のトークスキルは雄英体育祭のような興行の場ではまさにうってつけだ。

 

『早速だが、ミイラマン! 序盤の見どころは!?』

『今だよ』

 

 一瞬それかけた意識を戻し、レースに集中する。

 前方にはスタジアム外周へ通じるゲート。あそこから外に出て、ぐるりとコースを一周するのだが、

 

 ……なるほど、ここが最初の関門か。

 

 このゲートは、最初の篩ということなんだろう。

 コースにつながる通路は狭く、校舎廊下ほどの横幅もない。

 二百人を超える生徒が一斉に踏み込めば、通路はたちまち彼らの体で埋め尽くされ、碌な身動きすら取れなくなる。

 既に集団の勢いは止まらず、生徒達の押し合い鬩ぎ合いは避けられない。

 このまま進んでも、唯一の道は塞がれ進行すら困難だろう。

 

 ……なら、こっちで道を創ればいい。

 

「ふっ……!」

 

 瞬時のうちに“個性”を行使、ゲートへ踏み込む直前に造り出した武器を放つ。

 狙い穿つは極狭の通路――その天井部分。

 打ち込んだ刃の確かな手応えを感じ、一気に飛び上がる。

 本来であれば、人垣に飛び込むだけの無意味な行為。しかし、この手に握るはただの剣にあらず。鎖で繋がれた、杭の如き二丁の短剣だ。

 特殊な形状故に変則的な攻防を得意とする武器だが、その用途は何も戦闘のみに限らない。

 リーチのある鎖と先端の刃を活かして、ワイヤーアクションじみた挙動をも可能にする。

 武器の記憶から朧げながら読み取れる本来の担い手は、この特性で三次元的な殺法すら実現していた。

 衛宮士郎の技量と身体能力では、そこまでの動きはできない。けど――

 

「衛宮くん……!?」

「あいつ、天井にぶら下がってんのか!?」

「どこの森の猿だよ!」

 

 下から聞こえる声に反応する余裕もなければ、視線を向ける暇もない。

 通路の天井へ交互に鎖剣を放ちロープ代わりに他生徒の頭上を超えていくという目論見は上手くいったが、集中を乱せばすぐに滑り落ちてしまいそうだ。

 膂力のみで自重を支え挙句に前へと体を引き寄せていかなければいけない以上、全身にかかる負担は凄まじい。

 この状況で余所見などして、無様に落下しては元も子もない。

 焦らず、出来うる限りの速さで出口へと向かう。

 

『超ナロウなゲートを乗り越え、スタートダッシュを制したのはヒーロー科A組、衛宮士郎!! 鎖をロープ代わりにして他の連中の頭越しに飛んで行くたぁ、ターザンみてーだな!!』

『相変わらず器用なやつだ』

 

 ゲートを抜け、着地と共に前転すると同時、投影を破棄する。

 この先どんな障害が待ち受けているか分からない以上、使い勝手のいい鎖剣は残しておいてもいいかとも思ったが、この種目がレースの形式である以上、鎖がデッドウェイトになるあの武器は動きを阻害してしまう。

 まだ先は長い。余分な重りは持たない方がいい。

 

「ッ……!」

 

 ゲートから幾らか進んだあたりで、背後から強烈な冷気が漂ってくる。

 一瞬、肩越しに視線を向ければ、轟が先頭集団から抜け出し、さらにはゲートごと地面を凍結させ後続の妨害までやっていた。 

 こっちの行動が遅ければ、俺もあそこに囚われていただろう。

 春先とはいえまだ冷える日もあるこの時期、凍らされるのは勘弁だ。

 

『トップに僅か遅れる形で、同じくA組の轟が抜けて来る! おまけにゲートを凍結する妨害付きだ!! サムそー!』

『自身の能力を活かした合理的な戦略だ。――しかし、クラスメイトはじめかなりの人数が上手く躱してるな』

 

 実況の様子からして、轟の凍結は有力な面子を留まらせるには至らなかったらしい。

 轟の戦法をある程度知ってるクラスのメンバーは当然として、他の科の人間も上手く対応したようだ。流石、雄英に入学した連中なだけあって全体的な平均が高い。

 俺もスタートダッシュこそ好調だったが、油断すればすぐに後続に追い抜かれるだろう。そうならない様、出来るだけリードを稼いでおきたいが、

 

「……っ、あれは!?」

 

『ゲートを越えたからって安心するのはまだ早ぇぞ! 一つ目の関門、ロボインフェルノの登場だ!!』

 

 カーブを曲がり拓けた視界の先には、コースに陣取る無数のロボット――入試でも使われた、仮想ヴィランが待ち受けていた。それも、ポイント持ちの小型だけじゃない。妨害用の超巨大ロボまで鎮座している。

 その数、実に七機。

 

……またこんなもの持ち出して……!

 

 入試の時と同じ、危険極まりない障害に呆れる。

 質量の暴力がどれほど致命的か、雄英は分かっていないのか。こんなものに叩き潰されたら、余程頑丈な“個性”の持ち主でもない限りあっという間に圧死する。

 リカバリーガールでも、即死級のダメージは治せないってのに。

 

 ……さて、どうするか。

 

 突破自体はそう難しいことでもない。

 元々、演習用に設計された無人機だ、小型は碌な戦力にならないし、大型も一定の損傷で機能停止するような脆さだ。

 抜けるにしろ破壊するにしろ、どうとでもできる。けど、

 

「一般入試用の仮想ヴィランってやつか」

「っ……!」

 

 思考を巡らせてる間に、轟に追いつかれていたらしい。

 この分だと、他の連中ももうすぐここまでやってくるだろう。

 ……あまり、時間は無いか。

 

「せっかくなら、もっとすげえの用意してもらいてぇもんだな」

「待て、轟」

「あぁ……?」

 

 今まさに”個性“を行使しようとした轟を制する。

 振り向いて見た相手の顔には、苛立ちと疑問の二つの感情が浮かんでいた。

 気勢を殺がれた、というのに加え、これまで会話らしい会話もしてこなかった俺がいきなり話しかけてくるとは思わなかったのだろう。

 

「あのデカブツは俺が止める。轟は、その隙に進めばいい」

「……どういうつもりだ」

 

 轟はいよいよ困惑した様子だった。

 レースという形式を取るこの第一種目、リードを許すということは自ら勝機を明け渡すに等しい。

 何の為にメリットの無い行動を取るのか、轟はそう訝しんでいる。……実際、そういった利があるわけじゃない。

 

「轟なら、あんなロボ自力でどうにかできるんだろうけど――だからこそ、お前なら()()()()()()はしていくだろ」

「――――」

 

 轟が、スタートダッシュの時点で他の生徒を足止めするような抜け目のない奴が、ただ突破していくだけで済ませるとは思えない。

 あの巨大なロボを崩して後続に落とすくらいの妨害はやってくるだろう。

 いくら脆いとはいえ、あの質量の物体が降り注いでくれば、人死にだってありうる。

 

「俺があいつらを仕留めればそっちは余分な力を使わずに済むし、俺がここで足を止めれば、お前が暫定一位だ。――悪い話じゃないだろ?」

「…………」

「どうする? 後続はまだここまで来てない。今なら十分なリードを維持したまま進めるぞ」

「………好きにしろ」

 

『コイツはどういうこった!? トップ衛宮は足を止めて、二番手の轟が先頭に! 』

 

 

 僅かな逡巡の後、轟は走り出した。

 トップに立てるメリットと、言葉を翻される可能性を秤にかけ、その上で少しでも優位に立つ事を選んだ。

 もし俺が約束を違えたり、後ろから妨害してくるとしても、障害も含めて前に出さえすればどうにでも出来る、そんな自信があるんだろう。

 もちろん、こっちはそんな悪巧みしちゃいない。

 

「――投影、開始<トレース・オン>」

 

 言霊を紡ぎ、使い慣れた黒塗りの弓と、番える矢<ツルギ>を造り出す。

 狙うは七機の大型ロボ。轟は既に小型の群れを抜け、あと数歩で大型の射程圏に入る。

 その前に――

 

「ガラクタになってもらうぞ、木偶の坊」

 

 弓を構え、弦を引き絞る。

 標的は大型ロボ――その動力部。

 やつの設計は入試の時に網羅し尽くしている。全く同じ外見で、内部構造(中身)が違う機体を用意しているとは考えづらい。だから、何処を狙い、如何すれば壊れるかは、以前と同じ筈だ。

 

「――――」

 

 中る。

 絶対の確信の下、矢を放つ。構えから放つまでの一連の動作を一瞬で終え、続け様に七射。

 あのデカブツが小粒ほどの人間の放った一撃を躱す判断をする事も、ましてや動きの鈍い巨体で回避行動を取れる筈もなく――

 

『1-A 衛宮、なんと一度に大型全機を無力化したぁ!! おまけに動力だけを的確に射抜く離れ業まで披露! スマートすぎんだろこの男!!」

『入試の時に同じ事やられてるんだ、半端に数を増やしたところで、また一蹴されるに決まってるだろう』

『しかぁし! 立ち止まってる間に轟との差は開き、遅れて来た連中にも追い越されてるぞ! こっからどうする気だ!?』

 

 活き活きと実況をするプレゼント・マイクに苦笑しつつ投影を破棄し俺も再び走り出す。

 大型に対応しているうちに、爆豪はじめ機動力の高いやつらが何人か抜けていった。後ろにいたやつらもとっくに第一関門前まで到達してるけど、そいつらに抜かれてないのは、図らずもこのロボット軍団のおかげだろう。

 この間に、さっさとここを抜けてしまいたい。

 

『ターゲット ブッコロ――』

「しッ――!」

 

 襲いかかってくる小型の脇を潜り抜け、避けきれないものは破壊する。

 一体一撃、殴打と蹴りで砕きながらの進行。制限がある手前、余分な投影はできない。

 幸いにして、相手の装甲の脆弱さは入試の時に把握している。

 そこそこ鍛えてる人間なら、素手で破壊する事も、無理やりコードを引きちぎってやる事も出来る。 

 俺も鍛錬は欠かしてないし、殴り合いには慣れてる。身一つでこいつらを蹴散らすくらい造作も無い。

 

『第一関門はアッサリ抜けられちまったが、次も同じようにイケルか!? 落ちれば奈落に真っ逆さま! それが嫌なら死に物狂いで這いずりな!――第二関門、ザ・フォール!!』

 

 どうやら、先頭は既に二つ目の障害まで到達してるらしい。

 聞いた感じ断崖絶壁での綱渡りみたいだけど、スタジアム外周にそんなモノを造れるスペースなんてあったか?

 ……そんな疑問は、いざ第二関門まで辿り着くと、すぐに氷解した。

 

「……マジか」

 

 視界一面、崖、崖、崖。

 大地と呼べないほど亀裂の入った地面、そり立つ幾つもの岩壁。

 孤立した“島々“を繋げるのは、僅かに一本のロープのみ。

 陽の光すら照らせぬほど深い、断絶した無数の足場によって形成される歪な峡谷――それが第二関門、ザ・フォールの姿だった。

 

「どうやってこんなもの用意したんだよ……」

 

 大きな地震でも起きて、地割れでも起こしたんじゃないかって思えるくらいの地形。

 常人より遥かに高い視力の俺ですら、光の届ききらない谷底は見えない。

 奈落なんて表現してたのも頷ける深さだ。

 如何に技術の進歩した現代とはいえ、これほどの溝を掘り出すのはかなり難しいはず。パワーローダーあたりにでも地中を掘らせまくって準備したんだろうか。

 

 ……つうか、配管とかはどうしたんだよ。

 

 どうみたって地下数百メートルくらいはありそうな谷間。ガス管だの水道管だのが通れるような余地は無い。

 そばにあれだけデカいスタジアムがあるんだから、そこら中に張り巡らされてそうなもんだが。

 まさか、諸共に掘り出したわけじゃないだろう。いくら雄英が風変わりな学校だからって、公共インフラを壊していくほど奔放ではないはず。……できれば、そう信じたい。

 

「……なんにせよ、見過ごすわけにはいかないな」

 

 雄英の事だから、ちゃんと考えた上で設計はしてるんだろう。この谷も、下から強風を噴き出させてるなり、凄まじく安全性の高いマットが用意されてるなりするのかもしれない。

 けど、この高さからの落下なら、場合によっては地面に激突しなくても死ぬ。

 人間なんて図太いようで案外繊細だ。心持ち一つで簡単に体調を崩すし、行き過ぎれば生死にも関わってくる。それは、過去の実例が証明している。

 高所からの落下なら、度を越した恐怖心と強烈なストレスが引き起こす心臓発作が当てはまるか。

 雄英がどんな安全策を取っているか明言してない以上、生徒達はここでの落下は死に直結すると思い込む。その思い込みだけで、人間は命を落としかねないのだ。

 

 ……生憎、雄英<ソッチ>のエンターテイメントに付き合ってやるつもりはないぞ。

 

 自身の内面より最適な武器を検索――複数の候補を発見、選出。

 選び出した設計図を装填し、イメージを想い描く。

 必要なのは、この峡谷を渡るための安定した足場と、谷間を繋げられるほどの直径、そしてここから向こう岸まで繋ぎきれるだけの数だ。

 

 ……イメージは問題ない。

 

 一度の投影では足りない。射出はせず、空間に固定する形で産み出す。

 あと留意すべきは、その配置。

 先に進んでる連中の進路を塞がず、それでいて最短で横断できる経路を……

 

「――工程完了<ロールアウト>。全投影、待機<バレットクリア>」

 

 思考を実行に移し、自身の内より剣を引き出す。

 投影は九度。産み出したるは、人の身ならざるものでしか扱えない、一振りでビルをも斬り裂けるであろう直刀の巨剣。

 その刀身は長大そのもの。刃幅四メートル、刃渡りおよそ二十メートルを超すそれを、谷間に橋を掛けるよう固定する。

 全ての剣が崖どうしを繋げたのを確認し、刃の上を走る。

 ぶ厚く、それでいて(しのぎ)(フラー)の無い真っ平らな剣を選び、刀身は粗く造ってあるからしっかり踏みしめることができる。

 武器としての性能は皆無だが、これならちょっとやそっとじゃ壊れないし、滑って転げ落ちることもない。少なくとも、頼りないロープ一本にしがみついて渡っていくより、よほど安全だ。

 

「おい見ろ、弓の奴が橋作ったぞ!」

「好都合だ、あれ渡ってこう!」

 

『あぁっとぉ! 1-A 衛宮が、今度は馬鹿でかい剣で橋を掛けやがった!! 第一関門に続いて、第二関門も台無しに! ちったぁ作った側の気持ちも汲んでくれよコンチクショウ!!!」

『別に、お前が手ぇ加えたわけじゃないだろ』

 

 どうやら、後続の連中も特に警戒する事なく渡ってくれてるみたいだ。

 これなら、誰かが落ちることもないだろう。

 ルートはいくつかに分けてあるし、道の奪い合いも起きない筈だ。

 

「……ん?」

 

 どこからか聞こえてきたエンジン音に、意識が逸れる。

 俺とは別のルートからのものだ。

 音の質から感じがして、飯田くんではない。……というか、前にも無かったか、この感じ。

 

「……なるほど」

 

 音の出所を見て、納得。

 馬鹿デカい駆動音、吐き出される大量の排気ガス。

 剣の橋の上を高速で移動するナニカは、予想通りのもので。

 

――よーするに、八百万がバイクに跨り爆走しているのであった。

 

「またやってるのか、あいつ……」

 

 どこかでみた光景に思わず頭が痛くなる。

 なんでもアリのレースってミッドナイトも言ってたし、乗り物に乗ろうが空を飛ぼうが、果ては地面に潜ろうが、コースさえ守っていれば許されるのだから、別におかしなことではない。

 けど、それにしたって何もそこまでやらなくても。

 体育祭はまだまだこれからだ。こんな予選の段階で大きく力を使ってもいいのだろうか。

 脂質を別の物質に変換して物体を構成する”個性“だから、使えば使うだけ消耗は大きくなる筈なのだが。

 一応、食糧を摂取することで補給可能ではあるみたいだから、その辺で賄うつもりなのかもしれない。それにしても――

 

「すごいよなぁ……1000cc超えてるぞ、アレ」

 

 他を寄せ付けずどんどん橋を渡っていくその速度は圧巻の一言。それ故に車体は大きく、大型の宿命としてその扱いは難物だ。おまけに、相当に速度の出る車種みたいだ。

 しかし、そんなジャジャ馬としか言いようがないマシンを、八百万は見事なドラテクで操っている。

 いくら障害物も凹凸もない道だからって、あれだけ大型のバイクを真っ直ぐ走らせようとすると、かなりの力と技術がいる。ちょっとバイクに乗った程度の人間じゃ、すぐに振り回されるのがオチだ。

 なのに、いったいあの細腕のどこにそんな力があるのか、八百万は振り回されるどころか、全く車体をブレさせることなく走行している。

 自分の手札として創造してるんだから、ある程度扱えないと話にならないのはそうなんだけど、それだけであの運転技術は説明がつかない気がする。

 もしかしたら、八百万も案外ああいうのが好きなのかもしれない。

 

 ……だからじゃないけど、ここが公道じゃなくて良かったと、切に思う。

 一般の道路であんな速度出したらノータイムで通報、猛追するパトカーと白バイによって一発でお縄である。

 屈強な警官隊に囲まれ、手錠をかけられたまま連行される八百万の姿なんて見たくない。

 

「……そんなこと、あるわけないか」

 

 下らない妄想を掻き消し、目の前のレースに集中する。

 こっちが気を散らしてる間に、レーシングお嬢様は橋を渡り切った。

 うかうかしてたら、あっという間に置いてかれる。

 選手代表なんて大役を仰せつかった手前、予選落ちなんて無様は晒せない。

 それに、孤児院の人たちだって応援してくれてるっていうんだ。勝ちにこだわる性分でもないけど、情けない姿は見せられない。

 

「とはいえ、次の障害次第か」

 

 対岸に辿り着き、次の関門に関心を向ける。

 ここにくるまで、かなりの投影を使ってきた。鎖剣二丁に、弓矢で八度、第二関門に至っては九つの刀剣を投影した。

 締めて十九回の投影。相澤先生に課された”個性“使用制限ギリギリである。

 後一度でも投影すれば、それで俺はこの競技中、もう“個性”を使えない。その制限を超えれば問答無用で失格、即退場だ。

 走ってきた距離とコースの長さからして、おそらく次の障害が最終関門だろう。その待ち受けてる障害次第で、第一種目の結果はおおよそ決まる。

 場合によっては、そこで詰みなんて可能性もあるが、

 

『さあ、先頭は最終関門に到着したぞ! 山越え谷越えやってきて遂に辿り着いた最後の難所、その実態は――コース一面の地雷原!!!」

 

 今まさに頭を悩ませていた問題の答えを、プレゼント・マイクが実況で解説してくれた。

 なんともタイミングがいい。

 それに、よくよく考えれば実況というのは後ろにいるやつにはかなり親切だ。こうして先の情報を、前もって知れるのだから。いざ障害の前につくまで、対策なり作戦なり走りながら考えられる。

 たとえ出遅れていたとしても、それ次第で逆転の目が生まれることもあるだろう。

 

「しかし、なんだよ地雷原って。戦場じゃないんだから」

 

『これこそが最後の障害! 生徒たちが一着目指して血みどろの争いを繰り広げる戦場――――怒りのアフガンだ!!!!!』

『……なに言ってんだ、お前』

 

「…………」

 

 マジで戦場だった。

 もはや、言葉も出ない。

 時々、雄英にいる教員のセンスって、どこかズレてるんじゃないかと思う。

 何をどう考えたら、体育祭の競技に“戦場”なんて文言が出てくるんだ。

 

『地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様だ、目と脚酷使しろ!! ちなみに、地雷は競技用で爆発は派手だが、威力は大したことねぇから安心してぶっ飛びなぁ――!!」

 

 吹き飛ばされる時点で安心できる要素は皆無だと思うんだが、雄英からすれば全然安全圏なようだ。

 なんとも大雑把な、ある意味雄英らしい障害と言えるかもしれない。

 

「なるほど、確かに()()()()()分かるな、アレは」

 

 緩いカーブを曲がり、ようやくお目見えした最終関門に、プレゼント・マイクの実況はやはり正確だ、と感心する。

 コースの至る所に設置された膨大な数の地雷。参加している生徒よりずっと多く埋められたそれらは、概ね等間隔で配置されてるようだ。各地雷の間隔はそう大きなものじゃなく、人間一人通るのがやっと程度の範囲しかない。一つ踏み抜けば、連鎖的に他の地雷にも引っ掛かる、そういう仕組みだ。

 ここじゃ、足の速いやつも機動力の高い“個性”持ちも、慎重にならざるを得ない。

 

 ……流石に手を出せないな、コレは。

 

 競技用の地雷でも十分危険だ。人体を吹っ飛ばしてしまえるだけの衝撃を発生させるなら、落ち方次第じゃ命に関わる傷を負いかねない。頭や首の骨なら、まず即死だ。 

 だから、本当ならできるだけ多く破壊して数を減らしたかったけど、前に人がいる今それはできないし、何より実行する為の武器を造り出せない。

 あと一度の投影は、せいぜい危ない落ち方をしてしまった人を助けるくらいが関の山だ。

 よほど危険そうでもない限り、こちらも手を出せない。

 この障害だけは、各人が上手く切り抜けてくれる事を願うばかりだ。

 

「……よしっ!」

 

 一つ息を吸い、全力で地雷原に突っ込む。

 走る速度はトップギア。最初の数歩で自身の出しうる最高速まで持っていく。

 この障害物走に用意された障害はこれで最後。残りは通常のコース、ほぼ一本道の直線だけだ。ならば、あとは全力でゴールを目指す。

 所狭しと埋められた地雷も、特に踏む恐れはない。何故なら――

 

 ……何処に地雷が埋まってるかなんて、目を凝らさなくても視えてる。

 

 この最終関門、厄介なのは障害があることじゃなくて、その位置が分かりづらい事だ。

 地雷の埋められた位置は土色が薄っすら変わっていて、確かに見れば分かる仕様になっている。けどそれは、本当に僅かな差しかなく、気を抜いていれば簡単に見逃してしまう程度のものだ。

 そのほんの少しの差異を走りながら正確に避けていくことは困難を極める。その上、周りの生徒同士での妨害もあるから、歩みは余計に遅くなる。

 先頭でかなり引き離されていた筈の轟がいまだにこのエリアに留まっているのもそれが原因だ。

 

 でも、俺ならそれらの問題は無視できる。

 数キロ先だって鮮明に視認するこの眼は、地雷が埋められた地面とそうでない場所を容易に見分ける。

 どこに障害があるかさえ分かっていれば、その隙間を縫っていくことは簡単だ。多分、それさえクリアすれば他の連中も同じことができるだろう。

 注意すべき事があるとすれば、周りからの妨害だけだろうけど、それもさほど問題にはならない。

 そもそも、目の前の地雷と、近くにいるやつとの小競り合いで手一杯になってるのが大半の連中の現実だ。横から誰かが全力疾走で抜けて行ったって、気にしてる余裕はないだろう、

 唯一、何の気兼ねもなく俺を妨害できそうな爆豪は、先頭で轟と一着争いの真っ最中だ。こっちに手を出してくる心配は無い。

 

 ……今のうちに、引き上げさせてもらうぞっ……!

 

 まごつく他の連中を抜き去って、ついに先頭集団にまで合流する。

 前にいるのは六人、先頭二人は言わずもがな、次いで八百万、B組生徒が二人、そして飯田くん。

 

 ……このまま行けるか……!

 

 四人、あと四人追い抜けば、トップスリーだ。

 ここまできたら、とことんやるしかない。

 

「は、ぁ――!」

 

 “個性”を活かしきれない飯田くんの背を抜き去る。

 

――残り、三人。

 

 白髪のB組男子生徒を追い越していく。

 

――残り、二人。

 

「お待ちください――!」

「っ……!」

 

 B組の女子生徒を追い抜いた直後、自身に迫るナニカを感じ取り莫耶を振るう。

 確かな手応え。何かを斬り裂いた感触。硬度は感じなかった、武器の類ではない。もっと柔らかく、しなりのある物体――

 

「蔓……!?」

 

 振り向き、襲ってきたものの正体を見る。

 女子生徒の頭部から生える、伸縮自在と思われる青々とした緑色の荊。

 おそらくそれ自体が“個性”の産物、頭髪が全てその荊に置き換わっている。

 ああして触手のように操れるのなら、速度差はさして気にはならないか。あの“個性”であれば、地雷を避けつつ走りながらもこちらを狙えるだろう。

 

「悪いが――!」

「え――きゃぁあああっ!!!!」

 

 再び襲われる前に、莫耶を投擲。

 放つ先は女子生徒の進行方向、彼女の足元が来る近く――そこにあった地雷を、投げ放った陰剣の柄頭で起爆させた。

 こちらからの攻撃を警戒していた彼女は、突然発生した下方からの爆発に対応できず吹き飛ばされる。

 とはいえ、起動した地雷は一つだけ。相手はうまく蔓を操り他の地雷は避け、なおかつ順位を落とす事なく体勢を復帰させていた。

 かなりの”個性“制御技術と対応力。今の動きからして、B組でも上位の実力者に違いない。……けど、距離は稼いだ。

 

――残り、一人。

 

 前方にいる八百万の背を追いかける。 

 距離はそう離れてない。俺と彼女の走力差であれば、追い抜くことはできるが――

 

 ……ここで勝負をかけるのは、まずいか。

 

 八百万を追い抜けば、すぐさま捕縛道具が飛んでくる。最後の投影を使い切った今、素手でその全てを捌かねばならない。

 地雷を避けながら後方から放たれるそれらを凌ぐのは、俺の技量ではまず不可能だ。

 莫耶を失ったのは痛かった。アレがあればまだやりようはあったけど……

 

「……っ、爆発!?」

 

 後方からいきなり鳴り響いた大爆音に、思わず振り返る。

 視線の先には、無数の地雷が一箇所で同時に爆ぜたとしか思えないような非殺傷の大爆炎、そしてその中から上空に打ち上げられたナニカ。

 恐ろしいほどの勢いで飛翔し、遂には轟と爆豪をも抜き去ったモノの正体は、ここからでも視認できる。アレは――

 

『A組 緑谷、爆風に乗って先頭を猛追――つーか抜いたぁ!!」

 

「緑谷……!?」

 

 薄いボードのようなもの――仮想ヴィランの装甲の一部か――に体を密着させ、爆風に乗って緑谷が空を行く。

 あの爆発からして、地雷を掘り出し集めた後、そいつらを一気に起爆する事で発生した爆破を利用して飛び上がったといったところか。動きとしては、爆豪のそれに近い。

 爆発が起きていた位置はかなり後ろの方だったから、多分エリアに入ったすぐの場所からここまで追い上げてきたんだろう。

 

 ……けど、それじゃ失速して抜かれ――いや、行けるか……!?

 

 空中から天地を逆さまにして落下する緑谷。妨害合戦をやめ、その両脇を追い抜いて行こうとする轟と爆豪。

 このままだと、またあの二人の先頭争いになる。――けど、その位置どりは悪手だぞ二人とも。

 

 落下したまま、体を一回転させる緑谷。

 その勢いのまま手にした装甲の破片を地面へ思いっきり振り下ろす。

 小柄とはいえ、緑谷の体をほぼすっぽり覆える面積を有する物体だ、そんなものが地雷で満載の場所に叩きつけられればどうなるか。

 

『緑谷、再び追い抜かれる前に後続を妨害!! 信じらんねぇ、地雷原即クリアだ!!!!」

 

 並走する形となっていた三人の間で再び発生する爆発。両隣にいた轟と爆豪は左右に流され、緑谷だけが爆風に乗って前方へと飛んでいった。

 アクションとしては、たったの二つ。その二回だけの行動で、緑谷はこの地雷原を突破していった。

 

「無茶苦茶やりやがる……!」

 

 突飛すぎるその暴挙に、唸らざるをえない。

 あんな方法、誰も考えないし、思いついたところで実行するやつなんていない。

 当たり前だ、上空数十メートルまで伸びる爆炎を生み出すほどの衝撃を利用して飛ぼうとする奴が、いったいどこにいるというのか。

 第一、それで狙い通りに飛べるとは限らない。発生する爆発次第じゃ、ただ空に飛ばされて終わりって可能性も十分あるのだ。

 それを、碌に”個性“も扱えないまま、誰も挑まないような大博打をぶっつけ本番でやってのけるなど。

 

「ほんと凄いな、アイツ……!」

 

 呆れる内心とは裏腹に、口角は吊り上がっていた。

 位置取りは後方、先頭との距離は歴然。トップに立とうとするよりも、少しでも確実に順位を上げて予選突破を狙うのが自然。

 なのに、そんな極々当然の思考を真っ向から踏み砕いてトップに躍り出るという大番狂わせ。

 あれを見て心が震えない男なんていない。度肝を抜かれるというのは、まさにこういうことを言うんだろう。

 

 もはや、結果は確定した。

 轟も爆豪も既に間に合う位置になく、今や行手を遮るものは何もない。

 

――この第一種目、一位を獲るのは緑谷だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 スタジアム内をゆっくりと歩き、息を整える。

 結局、緑谷が一着もぎ取った以外、順位は変わらなかった。

 轟と爆豪がそれぞれ二、三番、その少し後ろから八百万がゴールし、俺は五位に落ち着いた。

 最初は、ゴールギリギリで八百万を抜けるか、なんて考えていたけど、なんと彼女は地雷原を抜けるや否やすぐさま原動機付きのキックボードでコースを走り抜けて行ってしまった。

 凄まじい追い上げで、もう少し距離が縮まっていれば轟達も追い越せたかもしれないと思わせるほど僅差のゴールイン。

 地雷原を抜けるまでそれなりの時間がかかっていたから、何かしら道具なり乗り物なり創造する猶予はあったし、アイツならそれくらいやっても不思議じゃない。

 分かっていたのにそいつを読めていなかった、俺の落ち度だ。

 

 ……まあ、上位五名には入れたんだ、よしとしよう。

 

 五着なら好成績と言って差し支えないだろう。

 それに、これはあくまで予選。第一種目は最悪、本戦に進めるだけの順位につければそれでいい。

 その点、トップファイブなら予選突破は確実だろうし、応援してくれてる人たちへの見栄としても十分以上だ。

 

「お疲れ様です、衛宮さん」

 

 鼓動も落ち着きを取り戻したあたりで、先にゴールしていた八百万が声をかけてきた。

 向こうはとっくにクールダウンを済ませていたらしい。

 表情に疲弊の色はなく、いつも通り気品のある顔に戻っている。

 

「そっちもお疲れさん。それと、四位おめでとう」

「ええ、ありがとうございます。……できれば、前にいたお二人も追い抜きたかったのですけれど、何事も、そう上手くはいきませんわね」

「あんまり気にするなよ。もう少しで追い抜けたんだし、かなり惜しい勝負だったと思うぞ」

「……いえ。そもそも、本当ならあそこまではいけないはずでしたから」

「………?」

 

 謙遜する八百万の言葉に、首を傾げる。

 本当も何も、彼女は実際にあの二人のほぼ真後ろにまで迫っていた。あとほんの少しコースが長ければ結果は分からなかったほどに。

 何も謙遜する必要なんてどこにもないはずだ。

 

「……いえ、何でもありません。今の言葉はお忘れ下さい」

「あ、ああ……」

 

 何でもない、と言った割にかなり複雑そうな表情を浮かべていた気がするが。

 とはいえ、彼女がそう言うのなら俺もこれ以上は何も言えない。

 特に思い悩んでいる様子でもないし、些細なことなのかもしれない。

 

「……お。飯田くんも帰ってきたみたいだ」

「そのようですね。……なんだか、落ち込んでいる様に見えますが……」

「みたいだな。……ちょっと、声かけてくるよ」

 

 そう言って八百万と別れ、飯田くんの元に向かう。

 彼女が言ったように、彼の様子は気落ちしているように感じられる。コースで何かあったのか?

 

「や、おかえり」

「……っ、衛宮くんか」

 

 俺が声をかけると、飯田くんはどよん、とした表情をシャキッとさせ俺に向き直った。

 この切り替えの早さは、彼の長所だと思う。

 

「なんか落ち込んでたみたいだけど、何かあったのか?」

「……いや、特に問題があったわけじゃないんだ。ただ、この”個性“を持っておきながらこの順位というのが、どうにも不甲斐なくてな」

「ああ、そういう……」

 

 それは、気落ちする理由になるだろう。

 彼の”個性“『エンジン』は走力という点において高い力を発揮する。増強型の“個性”でも、よほどの強化ができないと速度じゃ敵わないほどだ。

 本来なら今回の障害物競走なんかは彼の面目躍如、最も適性のある競技だろう。

 なのに、終わってみれば結果は八着。辛うじて十位以内に入ってはいるが、最高の結果とは言い難い。

 俺だって、自分の得意分野でそんな体たらくを晒したら、自分の未熟さにはらわた煮えくりかえってる。

 

「最後の障害と相性悪かったからなあ。アレは脚に自信があるやつほど餌食になる寸法だし」

 

 地面一杯に地雷が埋められてる状況じゃ、本来の高い走力は活かせない。

 躱して走って行こうにも、見えづらい上に一つでも踏み抜けばバランスが崩れて大転倒だ。

 それでエンジンの”個性“なんかまともに使えるわけない。

 

「途中で無理やり走り抜けて行こうとしたのがうまくなかったな。あそこは、地道にでも地雷を的確に避けて、最後の直線で勝負を賭けるべきだった」

「……そういう君は、全力疾走で駆け抜けていたようだが」

「そこは一長一短だよ。俺には地雷の位置はハッキリ見て取れたし、自分の体の動かし方は熟知してるつもりだから」

 

 剣なんて武器<モノ>を扱う手前、色々な武術を取り込んできたし、自分の体がどう動くかなんて把握してて当然だ。

 下手に武器を振って狙いを外したらまずいし、誤って自分の体を斬ったら目も当てられない。

 結果行き着いたのは独学の型だけど、どっちにしろ肉体の正確な制御は絶対必須の技術だ。

 飯田くんが速く力強く走る為の体づくりをしてきたように、俺は緻密な身体制御を身につける必要があった。その差異が、今回はたまたま俺にとって少しだけ有利に働いたに過ぎない。

 

「十位以内なら、そんなに悪い結果じゃないだろ。予選はまず通ってるだろうし、見せ場はこれから作っていけばいいじゃないか」

「……いや、それでは足りない。俺はこの体育祭、恥ずかしい戦いはできないんだ。……きっと、兄も見てくれているだろから」

「お兄さん……確か、プロのヒーローだったよな? ……そういや、ヒーロー名までは聞いてなかった」

「ああ、そういえば、衛宮くんにはまだ話していなかったか」

 

 雄英に入学した初日に、飯田くんの一家は代々ヒーロー家系で、彼はその次男坊だとは聞いている。

 ただ、あの日はまだ知り合ったばかりだったし、”個性“把握テストもあって、深いところまで話すことはなかった。

 その後の学校生活もバタバタしてたから結局、身の上話をする暇もなく今日という日まで来た。

 

「衛宮くんは、ターボヒーロー『インゲニウム』を知っているか?」

「有名だし知ってるよ。東京を中心に活動してる大きな事務所のヒーローだろ? ……そうか、あの人が」

 

「そう、俺の兄だ」

 

 肯定する飯田くんの顔に笑みが浮かぶ。

 普段、硬い表情でいることが多いから、こうして笑っているところを見るのは新鮮だ。

 有名人が身内にいるっていう優越感じゃない。きっと、心の底から兄であるインゲニウムを尊敬しているんだろう。

 その心には、多くの人が共感するはずだ。

 

――ターボヒーロー、インゲニウム。

 

 東京に活動拠点を置き、大規模事務所を率いる人物。彼の事務所は実に多くの相棒<サイドキック>を雇っており、その数実に六十五人。

 大人数で構成されるヒーロー事務所自体は珍しくないが、彼の事務所が他と一線を画す理由はその高いチームワークだろう。

 今の時代、他ヒーローとの競合も相まって少しでも自分を前面に押し出そうとする人間は少なくない。もともと個人色が強い職だ、どうしたって競争は生まれる。

 その中で、彼の事務所は”個“の力より”群“の力を重視し、大人数による優れた連携で街の治安を守っている。

 ただ単に統制力が高いというわけではない。

 中心たるインゲニウムは事務所の仲間一人一人を信頼し、サイドキックやサポートメンバーもそんな彼を慕ってその背を支えている。同じ志と強い結束こそが彼らの最大の強みだ。

 

 自身の功績や名声に驕らず、大きな活躍をする事よりも、市民の何気ない日々の営みを守る事を是とした気高い人。

 それこそが、インゲニウム。

 俺も密かに尊敬する、偉大なヒーローの一人だ。

  

「――そっか。そりゃ、誇らしげにもなるわけだ。立派な人だもんな、インゲニウム」

「……! ああっ! 俺がヒーローを志すきっかけにもなった、自慢の兄だよ!」

 

 憧れのヒーローであり、尊敬する兄。

 そんな人が見守ってくれてるなら、彼が気張るのも無理はない。

 

「そうだな、それなら情けないところなんて、見せられないよな」

「そうだ。俺は兄に恥じることないよう、立派に戦ってみせなければならない。だというのに……」

 

 誇らしげだった顔から一転、また悔しさを滲ませた表情に戻ってしまった。

 あれだけ良い結果を出すのだと息巻いておきながら、初戦から自分の得意分野で遅れを取ってしまったとなれば、打ちひしがれてしまうのは仕方ないかもしれない。けど――

 

「――なら、なおさら落ち込んでる暇なんてないぞ」

「……衛宮くん」

「兄貴に格好いい姿見せるんだろ。 だったら暗い顔なんてしてないで、次の試合に備えておけ――きっと、インゲニウムならそうする筈だ」

「………!」

 

 飯田くんの表情に、活力が生まれる。

 兄ならそうするだろう、その言葉は効果覿面だったようだ。

 さっきまでの落ち込みも悔しさも失せ、いつもの真っ直ぐとした、皆の模範であろうとする委員長の顔が戻っていた。

 

「君の言うとおりだ、衛宮くん。本当に結果を残そうと思うなら、一つの事を引き摺っていつまでも自責に時間を割くべきではなかった。――ありがとう、衛宮くん。余計な気遣いをさせてすまなかった」

「礼<ソレ>こそ余計だよ。お互い、期待に応えられるよう頑張ろう」

「ああ!」

 

 握り拳を掲げ、こちらの意図を察して上げてくれた飯田くんの拳に、コツン、と合わせる。

 俺も彼も憧れたものがあって、目指した理想を叶える為に力を尽くしている。

 こうして共通する想いがあると知れたことで、少しだけ彼との距離が縮まった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから続々と生徒達がゴールしてきて、第一種目の終了まで思っていたほど時間は掛からなそうだ。

 先頭から二十位くらいまでははかなり入れ替わりが激しかったけど、そこから下は団子状態になってたらしい。

 

 ……半分以上は意図してのもの、だろうけど。

 

 この種目、というか"個性"ありきの競技は練度がモノを言う。

 体力だってそうだし、"個性"の扱いにどれだけ慣れてるかで結果は大きく変わる。当然、入学から専門の訓練を繰り返しているヒーロー科の生徒が有利なのは当たり前で、順当に行けばA・B組のメンバーが入り混じって上位を占めるのが自然だ。

 ……ただ今回の競技、上位の面子は殆どがA組で、B組は数人を除きほぼ全員が下位の順位に収まっている。本来なら伯仲するはずの実力で、これほどの開きが生まれるのは不自然だ。

 

 ……様子見、だろうな。

 

 たぶん、そんなところだろう。

 狙いは分かりやすい。予選ではあまり大人数を落とさないだろうと推測して、脱落しないギリギリを狙ってゴールする。

 そうすることで力を温存しながら、自分達の有する"個性"を隠しつつ後ろからA組をはじめとした有力な生徒の分析を行う。

 思惑としては、そんなところだろう。実際、彼らから妙な視線は感じてた。弓使いとしては、その手の視線には敏感だ。

 かなりの人数が下位に収まってるあたり、クラスぐるみだろうな。逆に、A組に混じって上位に入ってる奴らは、その企みを蹴った連中ということか。

 

 ……だとすれば、一人頭の回るヤツがいるな。

 

 誰も彼もが自分をアピールする為、全力を尽くして競技に専念する中、長期的な戦略で挑み、それを成功させるだけの思考ができる存在。

 向こうのクラスにいる中心人物の一人は、そういう類の人間なんだろう。……ある意味、俺と似ているか。

 

 ……それにしたって、あからさますぎるな。

 

 あれでは、観察してますよと、公言してるようなもんだ。

 より徹底的にやるなら、もう少し順位はばらけさせるべきだった。その方が下手に警戒される危険は少ないし、満遍なく混ざっていた方が得られる情報も多い。

 "個性"を使わずとも、それくらいはやれただろうに。策の割に詰めが甘い。

 存外、叩けば埃が出てきそうだ。

 

 ……とはいえ、情報を一方的に取られてるのは確かか。

 

 割と派手に"個性"を使ったから、それは間違いない。

 運用自体は基本的なものだし、あちらさんがそれで高を括ってくれていればまだ楽なんだが……

 

「全員、注目なさい!」

 

 マイク越しのミッドナイトの呼びかけに思考を中断する。考察はまた後で。

 彼女が壇上に登ったということは、つまり第一種目が滞りなく完了したということだろう。

 

「第一種目はこれにて終了よ。これから順位と予選通過人数を発表するから、しっかり見て聞きなさい!」

 

 宣言と同時にミッドナイトの後ろにデカデカとした立体映像が浮かび、第一種目の結果が表示される。

 おおよそ観察していた通りのランキングだが、上がっている順位は四十二位まで。ということは、

 

「見ての通り、予選通過は上位四十二名。残念ながら落ちちゃった人も、まだ見せ場はあるから安心して」

 

 やっぱり、四十二位以内がボーダーだったみたいだ。メンツもほぼヒーロー科……いや、A組の生徒が一人足りない?

 

 ……あ。青山の名前がない。

 

 腹部からやたら眩しいレーザー状の光線を放出する生徒、青山優雅。

 ディスプレイに表示される予選通過ラインである四十二番目までに、彼の名前が載っていない。

 つまりA組唯一の予選敗退、という事か。

 

 ……限界、きちまったのかな。

 

 彼の”個性“、確か『ネビルレーザー』、とか言ってたっけ。Neville……じゃなくて、navel(へそ)か?

 威力はあるけど軌道が単調な上、嫌なデメリットとして使うと腹痛を起こしてしまうらしい。

 使いすぎればどうなるかは……まあ、お察しである。

 きっと、障害物競争中も辛い思いをし続けていたに違いない。生理的な腹痛なら手助けもしてやれたが、”個性“由来となると俺も手に負えない。

 そうまでして初戦から脱落となると、なんともいたたまれない。

 せめて今日一日、彼の纏う衣服が上下でチグハグにならない事を願うばかりだ。

 

「次はいよいよ本戦の始まりよ。ここからは取材陣も白熱してくるから、予選通過者はせいぜい気張りなさい!」 

 

 クラスメイトへの合掌もそこそこに、第二種目の説明に耳を傾ける。

 初戦でかなり数を絞ったが、それでも四十二人も残ったままだ。ここから、どんな競技で決勝に進出する面子を絞るのか。

 

「さぁて、第二種目よ。私はもう内容知ってるけど。……何かしら、何かしら〜?」

 

 ……いや、知ってるって言っちゃ駄目だろ……。

 

 ディスプレイの上で激しく回転するルーレット。

 いかにもランダムで競技を決定してるような演出してるが、実際は抽選も何もない。初めから内容は決まってる。

 けど、一応そういう演出してるんだから、最後までやり通してほしい。

 

「言ってるそばから――コレよ!!」

 

 ドンっ! とでも効果音が付きそうな勢いとともに、ルーレットが停止しその内容が表示される。

 第二種目は騎馬戦。個人戦が繰り返されるだろうと思われていた中、まさかの団体競技だった。

 明かされたそれに、周囲がにわかに騒めく。

 “個性”の性質によっては他人との協同が難しいやつもいるだろう。

 

「まず参加者同士は二人から四人で自由にチームを組んで騎馬を作ってもらう。基本は普通の騎馬戦と同じだけど、違う事が一つ……選手には各自、第一種目での結果に応じた点数が割り振られるわ!」

 

「入試みてぇなポイント稼ぎ方式か。分かりやすいぜ」

「つまり、組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると」

 

 ざわざわ、がやがや。

 特殊な騎馬戦のルールを咀嚼し、友人や隣のやつと話す生徒たち。

 全国でも有数の難関校に所属する雄英生なだけあって、みんな少しの説明だけで全体像を察している。……でも、そうやって説明役の仕事を奪ったりすると、後が怖いぞ。

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!」

 

――ミッドナイト、憤慨。

 

 先に内容を言い当てられてしまったのがよっぽど気に食わなかったのか、手にしたウィップをピシャリと一閃し騒がしい生徒達を黙らせた。……ほら、やっぱりこうなる。

 彼女は元々、自己顕示欲の強いタイプだ。生徒たちの前で壇上に立って、気持ちよく進行役をやってたところに水を差されたら機嫌悪くするのは目に見えてる。

 聴衆諸君には是非とも静粛にしてもらい、生きる年齢制限ことミッドナイトの解説に耳を傾けてほしい。でないといつまでも第二種目が始まらないから。

 

「まったくっ! ……ええ、その通りよ。各自に与えられるポイントは下から五ずつ上がっていくわ。四十二位が5pならその次が10p、といった具合にね」

 

 お怒りを鎮め、説明を再開するミッドナイト。

 ポイントの振られ方からして、順位の高い面子で組むほど持ち点が高くなる仕組みらしい。

 となれば、一位の緑谷は210ポイントになるのか。

 

「そして、一位に与えられるポイントは――1000万!!!」

 

「は……?」

 

――は?

 

 場の空気が一瞬、停止した気がした。

 言い間違いだろうか。なんか、いきなり桁が飛んだぞ。1000万て、どう頑張っても埋められないじゃないか。

 なんだその、昔懐かしのクイズ番組で最終問題にありがちな、それまでの過程全部を茶番にするような本末転倒の形式は。

 

 ……というかこれ、ぐちゃぐちゃにならないか?

 

 みんな、最初はミッドナイトの言葉をすぐに図りかねてたけど、徐々に理解するうちその目が鋭いものになっていく。

 視線の先は当然、第一種目一位の緑谷。

 まだ詳しいルールは説明されてないけど、とにかく一千万を獲れば決勝トーナメント進出は確定するから、狙いが集中するのは明白だ。

 けどその分競争率は高くなるだろうし、下手したら緑谷狙いで大混戦必至だぞ、これ。

 

「上を行く者には更なる受難を。……これぞ Plus Ultra(さらに向こうへ)。雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ」

 

 あまりにも非常識な方式だが、それも雄英が課す試練の一つらしい。

 頂点に立つ限りその重荷はずっとのしかかってくる。誰よりも上に行く事を望むなら、死力を尽くして上り詰めてこいと。

 その言葉の矛先は、何も緑谷だけに向けたものではあるまい。この場にいる全員、優勝というたった一つの椅子を巡って競い合う生徒全てに告げているのだ。

 俺だって第一種目じゃ五位についた身だ。緑谷ほどじゃないにせよ、他人事ではいられない。

 

「試合時間は十五分。各騎馬は全体の合計ポイントが表示された鉢巻を騎手に装着、全チーム総当たりで互いの鉢巻を奪い合い保持すること。獲得した鉢巻は首から上にしか巻けないから、取れば取るほど管理が大変になるわよ」

 

 バランスも考えてチームを組むなら、騎馬数は十二組くらいが最大か。

 それら騎馬が一つのフィールドの中で争奪戦を繰り広げる事になると、かなり込み合ってきそうだ。

 

「そして重要なのは、たとえ鉢巻を奪われても、また騎馬が崩れても、失格<アウト>にはならないってところ!」

 

 ああ、やっぱりそうなるか。

 途中失格がアリになると、ポイント獲得より直接的な攻撃を狙うところが増えるだろうし、制圧力の高い“個性”持ちのいるチームが一方的に試合を終わらせてしまうもんな。

 となると、下手に動くより終盤あたりまで様子見にしてた方が賢明か。

 

「競技中は“個性”発動アリの残虐ファイトよ。――けど、これはあくまで騎馬戦。悪質な崩し目的の攻撃はレッドカード、一発で退場とします!」

 

 このルールからして、雄英も端から本戦はヒーロー科生徒ばかりが上がってくる前提だな。

 でなきゃこんな、“個性”制御に難があるだろう普通科が圧倒的に不利なルールにするはずがない。騎馬を過度に崩さず騎手だけに的を絞るなんて、それなりの訓練を積んでないとできない芸当だ。

 同じ様に、純粋に火力が高い“個性”のやつ――ウチのクラスだと爆豪なんかは、あまり派手なことは出来ないだろう、本人としては不服だと思うけど。

 さっきミッドナイトの説明で露骨に舌打ちしてたし。敵チームのす気満々だっただろ、あいつ。

 今回のルールに悪い意味での雄英らしさがあまり出てなくて良かった。全国放送の場で、喧嘩沙汰なんて起こされちゃたまらない。

 

「それじゃ、ルール説明も済んだところで、これより十五分、チーム決めの交渉時間よ!」

 

 ミッドナイトが制限時間を告げると同時、ディスプレイにタイマーが表示され、みんな一斉にチーム決めに動き出す。

 ……十五分か。あまり猶予は長くはないし、即興での編成になるから殆どは同じクラスで組むだろうな。

 俺も早いとこメンバーを見つけて、作戦やら方針やら決めたいとこだが、

 

 ……問題は、俺と組んでくれるやつがいるか、なんだよなぁ。

 

 ポイント数が多いとはいえ、俺の“個性”自体は騎馬戦に向いてない。USJで使った“暴走”の件もある。

 俺と組んでくれるやつなんて、一人もメンバーが捕まらずあぶれてしまった生徒くらいじゃないか?

 そうなったら、碌に策を練る時間も、連携もままならないまま試合に挑まなくてはならないが――

 

「衛宮、俺と組まないか」

「――――え?」

 

 絶対に無いと思っていた誘いの声に、思わず勢い強く振り向いてしまう。

 声の主は、障子目蔵。A組で一番屈強な体格と、左右で計六本、三対の腕が皮膜でつながり連なる形で存在する触腕が印象深い、いわゆる異形型“個性”の持ち主。

 入学してすぐのヒーロー基礎学で行われた、戦闘訓練における対戦相手の一人でもある。

 彼が俺に声をかけてくるとは予想もしてなかった。行ったとしても、轟や爆豪の方だとばかり。

 

「俺は構わないし、むしろありがたいくらいだけど、障子はいいのか? 俺の“個性”、騎馬戦向きじゃないぞ」

「無論だ。お前とのチームなら十分に勝ちを狙えると思ったから声をかけた」

「……そうか。それじゃあ、よろしく頼む」

「ああ、よろしく頼む」

 

 互いに意思確認をし、了承を得て手を交わす。

 障子とはこれまでそう多く会話したこともなかったけど、それでも勝ちを狙いに行けるだけの戦力として評価してくれているらしい。

 そうまで買われてしまっては、一層負けるわけにはいかない。

 

「それで、チームはどうする? まだ空きはあるし、必要なら誰か誘えるけど」

「いや。俺としては衛宮を騎手にした二人組がいちばん有効な編成だと思ってる」

「一人で騎馬役を請け負うのか? ……そうだな、障子の体格ならよほど背の高いやつじゃないとバランスが取れないか」

 

 187cmの身長にガッシリとした骨格、さらには彼の“個性”そのものの『複製腕』によって、他人と騎馬を組むのはなかなか難しい。

 ウチで条件に合いそうなのは二人くらいしかいないけど、それも結局、複製腕との噛み合いを解決できてないから、実質ゼロだ。

 

「分かった。なら、この組み合わせでいこ――」

 

「障子、衛宮! オイラも混ぜてくれぇっ!!」

 

 この組み合わせでいこう、と言いかけた時、何やら悲壮感漂う涙声が言葉を遮ってきた。

 視線を軽く下に向ければ、涙やら鼻水やら流しながらぴょんぴょん跳ねて懇願する峰田がいる。

 だいぶ追い詰められてるというか、何なら試合が始まる前から絶望してるけど、いったい何をそんなに嘆いてるんだ?

 

「どうしたんだよ峰田、そんな不細工な顔して。お前なら、女子と組みたがるもんだと思ってたけど」

 

 投影したハンカチを渡しながら、わざわざ俺たちのところにやってきた訳を聞く。

 無類の女好きなセクハラ大魔神が、合法的に女子生徒とボディタッチできるこんな美味しい機会を見逃すとは思えない。交渉始まってすぐ片っ端からあしらわれでもしたか。

 いやでも、こいつはそんな事でへこたれるタマか?

 

「オイラだって出来ることならそうしてるわ! けどこの身長じゃ騎馬も組めねぇし、オイラが騎手じゃ誰も相手してくれねえんだよっ!!」

 

 なんとも、切実な叫びであった。

 でもな、峰田。騎馬組めないのはともかくとして、みんながお前を騎手にしたがらないのは身長だとか"個性"だとかが理由じゃなくて、完全に日頃の行いのせいだからな?

 

「だから頼む、オイラもチームに入れてくれ! 障子の体なら、オイラと衛宮二人を乗せられるし、すっぽり覆い隠せるだろ!?」

 

 一応、考えた上でこっちに来たらしい。

 峰田は学力が高く、頭の回転も早いし、意外にも理に適った考え方をする。 

 日頃はその能力の殆どがセクハラ行為に注がれるから分かりづらいけど、コイツだって立派にヒーロー科の人間なのだ。

 

「だそうだけど、どうする障子? お前が俺たち二人を負ぶっても問題無いって言うなら、俺はいい案だと思うんだが」

「……そうだな。少々、窮屈になるかもしれんが、衛宮と峰田二人なら、なんとかやれるだろう」

「よし、なら決まりだ。よろしくな、峰田」

「よっしゃあっ!! 任せろい衛宮! 女子全員縛りつけたらぁ!!」

「おう。女子だけじゃなく、ちゃんと騎馬相手にも投げつけような」

 

 無事に第二種目に参加できる目処が立ってテンションが変なことになってる峰田を宥めつつ、頭では既に大まかな方針を決めていた。

 どれだけのチームが、どういう構成で襲ってくるかは分からないけど、このメンバーならそうそう遅れは取らない。

 

「――それじゃ。チームも決まったことだし、作戦会議でもするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十五分経ったわ、交渉タイム終了よ! さあ、各チーム騎馬を組んで構えなさい!」

 

「時間だ。二人とも、行けるな?」

「ああ」

「もろちんだぜ!」

 

 頼もしい返答に頷き、峰田と共に障子の背に失礼する。

 ガタイのいい障子の体は横幅もあり、俺たち二人を乗せてもなんとかなる大きさだ。

 これなら、作戦通りにやれるはずだ。

 

『十五分のチーム決めと作戦タイムを経て、フィールドに十二組の騎馬が並び立った! 準備はいいかなんて聞かねえぞ! さぁ上げてけ鬨の声! 血で血を洗う雄英の合戦が今! 狼煙を上げる!』

 

 実況席からプレゼント・マイクが選手たちを急きたて、それに倣って全騎馬が闘志を滾らせる。

 ざっと見ただけでも有力揃い。きっと、厳しい試合になる。

 

『 いくぜ! 残虐バトルロイヤル、カウントダウン!! 3……2……1――START!!』

 

 秒読みが終わると共に、各騎馬もそれぞれが行動に移る。

 一気呵成に攻める者達もいれば、見に徹する連中や、妙に覇気のない奴らも。

 総勢四十二人から成る十二組のチームが、時間一杯まで鉢巻を奪い合う大乱戦。その只中を生き残り、最後までポイントを保持するのは至難だ。

 それでも、勝たなくてはならない。俺の実力を見込んで誘いをかけてくれたクラスメイトを、必ず決勝戦へ行かせる。そのためにも――

 

 

「――さあ。獲りにいこう、緑谷(一千万)

 

 

――この一戦、手段は選ばない。

 

 

 

 




 明後日で一月も終わり、二月がやって来ます。という事はどういうことかというと、つまりモンハン最新作の発売が迫っているという事です。
 いやぁ、楽しみですねぇ。なんだかんだ気になる事や懸念点はありましたが、いざもうすぐ製品版を遊べると思うと、やはり興奮してしまいます。
 βテストを経て各武器も大幅な調整が入ったらしく、この短い時間に作品の完成度を上げてくれた開発スタッフの方々には感謝しかありません。
 ワイルズでは、長年その詳細が伏せられてきた絶滅種も登場するらしいので、今からわくわくが止まりませんよ。これを機に竜大戦時代とか造竜技術なんかの情報も出てくれると嬉しいですね。
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