「メガシンカ」。それは“進化を超えた進化”。
太古の昔、宇宙の彼方より飛来した隕石と、それを力に変える伝説のポケモン「レックウザ」によって得られた、摩訶不思議なパワーフォース。「メガストーン」という専用のアイテムを通じて、トレーナーとの絆を確かめ合い、己の内に秘めたる血潮を呼び覚ますのである。
――――――まぁ、ようするにパワーアップや強化形態みたいな物だ。
発祥地はカロス地方と言われ、他にも極東の列島諸地方(カントー、ホウエンなど)でも見られる。絆という目に見えない物が無いとコントロールが利かなくなるデメリットがあるものの、メガストーンとその増幅器さえあれば何処でも発動出来る汎用性が特徴で、やろうと思えばボクらにも出来る。ポケモンへの負担がデカいからしないけど。
そんなカントーのご当地スタイルが今、亜空間の摩天楼にて展開されている。
変化したのはヤドラン。巨大化した巻貝シェルダーに身体の殆どを呑み込まれた姿が特徴である。食われただけとか言ってはいけない。
だが、その能力は凄まじく、特に防御力はクレベースに匹敵する程の硬さを誇る。
その上、サイコパワーも増幅されており、特攻もフーディン並みに上昇している。特防こそ据え置きだが、「ドわすれ」も覚える為、物理・特殊共に隙が無い、要塞のようなポケモンなのだ。
「……って感じなんですよね、キバナ氏?」
「そーそー。ダイマックスやテラスタルみたいな、ある程度土地の性質に依存した物と違って、何時でも何処でも使えるから、使用者も割かし多い。何なら、オレやダンデとかも持ってるしな。ポケモンへの負担が他の形態変化よりも強めだから、基本的に使わねぇけど」
「うんうん、なるほどなるほど……」
普段から使い慣れているなら別だが、今この時に初めてでは、使え熟せないだろう。
「それでキバナ氏的には、この後の展開をどう見ます?」
「そうだなぁ……。見た所、マサヒコの手持ちは物理アタッカーばっかりみたいだから、かなり不利かもな。先手を3匹犠牲にしたのは、体力があって必中混乱を叩き込んでくるカイリキーを、メガシンカする前にどうにかしたかったんだろうよ。メガヤドランは居座るタイプの要塞ポケモンだからな」
そうでしょうね。だからこそ、本来の切り札っぽいフーディンを使い捨てたんだろうから。
「……だけど、何で予知能力とか持ってるのに、もっと犠牲を少なく出来なかったんですかね?」
「さぁな。元より虚言か、もしくは
確かに、滅茶苦茶硬い癖に「なまける」だの「のろい」だの「ドわすれ」だのと、優秀な技をこれでもかと覚えるし。
しかも、特攻が上がってるから、「なみのり」や「サイコキネシス」の威力が底上げされてるから、体力が低いポケモンだと受け切る事自体が難しい。かくとうタイプって案外と体力や耐久力が低いから、殴り勝てないとそのまま押し切られるだろう。
しかし、
「ならば、ボクはマサヒコ氏の勝利に100万円を賭ける!」
「ほほぅ、言ったな。なら、オレはナツメに100万円だ!」
「ジムリーダーが賭け事なんてして良いの~?」
「「経済を回してるだけだから問題ない」」
ポケモン勝負だって、謂わば日常的に行われている賭け事なんだから、外野がベットするぐらい普通だよ。それとも、カントーはそこまでお堅い連中なのかね?
うーん、へたっぴ。力の抜き方が下手。そんなんじゃ、人生の楽しみ失っちゃうよ~?
ま、それはそれとして、ボクが200万円を得る為にも、是非とも勝って下さいよ、マサヒコ氏~♪
「食らえ! 「サイコキネシス」!」『ドララララァン!』
『カポォ……!』「くっ、戻れカポエラー!」
そんなボクらの思惑なんて知った事じゃないナツメ氏とマサヒコ氏の戦いは、今まさに形成が逆転し始めた所だった。完全に不意を突かれたカポエラーは真面に反応する事が出来ず、凶悪な威力のサイコキネシスを受けてしまい、一撃でダウンさせられる。
「アハ、アハハハハハ! ようやくスッキリしたわ! アナタの手持ちは物理一辺倒! どんなポケモンを出してきても、ワタシのメガヤドランが粉砕・玉砕よぉ!」
最高にハイって奴になってますね、ナツメ氏。計算通りとは言え、やはりかくとうタイプにエスパータイプが良いようにやられるのは我慢ならなかったのかもしれない。
「行け、サワムラー! 「とびひざげり」!」『ダァッシャイッ!』
「無駄無駄無駄ァ! 「サイコキネシス」!」『ヤッダラァアッ!』
『ムラムラシテキター!』「チッ、戻れサワムラー!」
うへぇ、要塞っぷりがヤバい。捨て身持ちのサワムラーの「とびひざげり」を正面から受け切って、平然と反撃して沈めちゃったよ。
「そして、今の内に「なまける」で回復なさい!」『ドラスミ~♪』
さらに、しっかりと「なまける」も完備しているようで、折角サワムラーが命懸けで与えたダメージも殆どが無意味となる。
……あれ、これ賭けだろうが直接バトルしようが、ボクに勝ち目無くね?
「――――――頼む、エビワラー!」『ワラッシャイ!』
一瞬悩んだマサヒコ氏だが、直ぐに覚悟を決めたような表情で、エビワラーを繰り出す。エビワラーもエビワラーで、悟ったように頷く。一体何をする気だろう?
「「バレットパンチ」からの「コークスクリュー」、そして「かみなりパンチ」!」『ワララララァッ!』
『………………!』「……麻痺を引いたか。だが、無駄な足掻きよ。今楽にしてあげる♪」
『グッ……!』「ご苦労さん、戻るんだ」
開幕早々に勝負を仕掛けたエビワラーだったが、やはり削り切る事は出来ず、サイコキネシスでブッ倒されてしまった。何だ、何がしたい?
「さぁ、なまけなさい、ヤドラン!」『ヤド~♪』
ああっ、また回復されちゃう~!
すると、その時、マサヒコ氏の目がギラリと輝き、
「――――――今だ! コノヨザル、「うらみ」!」『ウラメシアァアアアアッ!』
『ドラッ!?』「何ィッ!?」
繰り出されたコノヨザルの「うらみ」が、「なまける」のPPを枯らし切った。
「「サイコキネシス」!」
「避けろ! そして「うらみ」だ!」
『ウララララァッ!』『ドドァッ!?』
そして、焦って反撃に出たヤドランの「サイコキネシス」さえも枯らしてしまった。なるほど、エビワラーにした目配せは、
「さぁ、勝負はここからだ! やれ、「アンコール」!」『ヘイヘーイ!』
『オドラサレル~!?』「くそっ……!」
さらに、「アンコール」まで決まってしまい、いよいよヤドランは「わるあがき」しか出来なくなった。流石に効果が切れるまでにコノヨザルを倒し切るのは不可能だろう。
そもそも、コノヨザルを前に弱攻撃を連打するのは自殺行為でしかない。
「積年の想い! 怨念成就の時だ! 食らえ、「ふんどのこぶし」!」『……セッ!』
『カッ……!』「……戻りなさい、ヤドラン」
案の定、溜まりに溜まった積年の「ふんどのこぶし」が炸裂し、ヤドランは倒れた。
「さぁ、最後のポケモンを出せ」
「まだよ! ワタシは負けていない! 行け、ギャロップ!」『フルヒヒィイイン!』
そして、お互いに最後のポケモン勝負となり、
「「サイコカッター」!」「「ふんどのこぶし」!」
『『………………!』』
全力で交錯した2匹は一瞬だけ沈黙し、
『ブルフゥ……!』
ナツメ氏のガラルギャロップが倒れた。そりゃそうだよね。
「――――――いよっしゃあああああっ、200万円んんんんんっ!」
「色々と台無しだよ、お前って奴は!」
こうして、因縁の対決はマサヒコ氏の勝利で幕を下ろしたのであった。
◆予知能力
読んで字の如く、未来を占い、予見する能力。
もちろん、ナツメも有する超能力で、常に先読みする事で戦いを優位に進める事が出来る。
しかし、マサヒコの覇気により超能力が弾かれてしまい、未来予知も心眼も使えず、前回の戦いの記憶やジムトレーナーたちとの戦闘を観察する事で、ある程度の予測を立ててから戦いを挑んだ。