オーキド研究所の裏庭、森の奥。
『バァギャギャギャギャヴォッ!』
「………………!」『プニプニ!』
電荷を纏ったライゼクスに、アグルとプニちゃんが対峙する。プニちゃんが後衛で、アグルが前衛だ。
『キシャアアアッ!』
ライゼクスが大地を舐めるように、あるいはテーブルを布巾で拭くように、翼爪を走らせる。高電圧に加えて、物理的にも威力が高い、凄まじい攻撃である。
「……ッ、フゥン!」
だが、アグルはそれを手持ちの盾で上手い事受け流し、多少のノックバックで済ませてしまった。流石はガチモンを狩猟するハンター、とんでもない身体能力だ。
『グギャヴォッ!』
「プニちゃん、受けて「パラボラチャージ」!」『プニおくん!』
続いて2撃目が来るが、そちらはプニちゃんが電気に変えて、「パラボラチャージ」で力を奪う事で対応した。
『グギィ――――――グギャッ!?』
「フン……ッ!」
さらに、「ライトニングブレード」を放とうとしたライゼクスの目を、アグルの閃光玉が眩ませる。どんな強力な技も、出鼻を挫かれてはどうしようもない。
「プニちゃん、「だくりゅう」!」『ハラボリ~ン!』
『グヴォギャッ!?』
ついでに、プニちゃんの「だくりゅう」で命中率を下げておく。これで大技は殆ど当たらないと言っていいだろう。
しかし、何時までも良いようにやられっぱなしのライゼクスではない。
『グルル……グギャヴォオオオッ!』
どうにか視力を回復したライゼクスが飛び上がり、稲妻を放ちながらダイブしてくる。狙って当たらないのなら、全部壊せば良いじゃないという、何とも脳筋な遣り方である。
まぁ、破れかぶれに大暴れするよりはマシだが……甘いな。さっきアグルにされた事を忘れたのか?
「シッ!」『プニン!』
『グヴォアアアアッ!?』
再び絶妙なタイミングで挟まれた閃光玉で目を晦ませたライゼクスが墜落し、一緒に放ったプニちゃんの「あやしいひかり」で混乱状態に陥った。
「はぁあああっ!」
そして、じたばたと藻掻くライゼクスに、アグルのジャストラッシュが決まる。彼曰く「片手剣の必殺コンボ」なのだとか。
『グゥゥゥ……ギャ――――――グヴォッ!?』
「てぁあああっ!」
さらに、復活したライゼクスが怒りの咆哮を上げようとした瞬間、アグルが「滅・昇竜撃」を食らわせた。物凄い脚力で跳び上がり盾でぶん殴る、所謂「カエルパンチ」の凄いバージョンだ。叫ぼうとした所で顎を撥ね上げられたのだから、堪った物ではないだろう。
「プニちゃん、「はかいこうせん」!」『オプニニニニニッ!』
『グガァッ……!』
最後はプニちゃんが技マシンで覚えた「はかいこうせん」が直撃して、ライゼクスは戦闘不能となった。
「フゥ……」
とりあえず、これでライゼクスの高過ぎるプライドはへし折れたでしょ。ほぼ何も出来ないまま、ボコボコにされたんだからね。これでも抗うガッツがるのなら、逆に凄い。その時は敬意を表しよう。
「さて、キバナ氏の方はどうかな?」
◆◆◆◆◆◆
「おら、来いやぁ!」
宙を舞う空の王者に対して、オレ様は吠え掛かった。これはあくまで訓練だが、同時に調教でもある。どっちが上か分からせる為のな。そうだよな、相棒?
『ジュルァッ!』
うむうむ、やる気充分だな、バベル。だけど、お前はほのおタイプに弱いから、体力管理はしっかりしろよ?
『ギュァアアアアッ!』
おっと、早速リオレウスが爆炎を吐いてきたか。大きさこそ縮んだが、それでも全長が20メートルはあるから、そこから放たれる「かえんほうしゃ」は「ブラストバーン」に匹敵する。真面に食らう訳にはいかない。
「散開!」『ジュルァッ!』
オレ様は前転で、バベルは機械染みたバックステップで躱す。リオレウスとの攻防は、
だからこそ、虚を突いて、一気に攻める。これしか勝ち筋は無いだろう。
『ギュヴァォオオッ!』
「おっと……バベル!」『ギャォオオオン!』
リオレウスが鉤爪を振り翳してきたので、バベルに盾となって貰う。はがねタイプはどくタイプの技を無効化するからな。
その後、再び「かえんほうしゃ」をしてきたので、散開。今回は「あおいほのお」みたいな見た目だったな。
『ギャヴォオオオオッ!』
そして、着地したリオレウスが「ダブルウィング」で攻撃してきた。そのまま直ぐに尻尾を振り回し、全てを薙ぎ払おうとする。……今だッ!
「うぉぉぉ……どりゃあああっ!」
オレは尻尾を受け止め、力任せにリオレウスをジャイアントスイングで投げ飛ばした。重てぇな、チクショウ!
『……ゴァアアアアアッ!』
すると、リオレウスは「エアスラッシュ」を伴う風圧でこちらを牽制しつつ、再び空へ舞い上がり、火球を吐いてきた。……焦り過ぎだぜ、王様よぉ!
「バベル、「メタルバースト」!」『ジュゥゥゥ……ラォッ!』
『ギャヴォオオッ!?』
ハッハッハッハッ、どうだ、バベルの「メタルバースト」の威力は。「かえんほうしゃ」は流石に無理だが、「ひのこ」程度の火球なら、余裕で倍返しだぜ!
「「てっていこうせん」!」『コァアアアアアッ!』
『グゴァアアッ!?』
さらに、ギリギリまで体力を削って、「てっていこうせん」で追撃する。これでかなりのダメージが入った筈である。
『――――――グゴォオオオオオッ!』
と、怒り狂ったリオレウスが、「きあいだま」を数十倍まで膨らませたかのような、超巨大な火球をぶちかましてきた。それは遣り過ぎだろ!?
「戻れ、バベル! ……うぉりゃあっ!」
だので、バベルをボールに回数しつつ、緊急回避した。振り返れば、広場にクレーターが出来ていた。異世界のガチモンは化け物か!?
だが、大技の後は隙が出来る物。一気に勝負を付けようとするのは、お前の悪癖だな。調教してやらぁ!
「……どるぁあああっ!」
『グギャヴォァ……ッ!?』
……って事で、反動で動けなくなっているリオレウスの脳天に、強烈な一撃を食らわせ、昏倒させる。これは勝負ありやろ。目を回したリオレウスをボールに回収する。
「よし、一丁上がりだな」
「おーい、キバナ氏~♪」
おっと、ナンジャモの方も終わったか。
「これで言う事を聞いてくれるようになってくれれば良いんですけどね」
「ま、そこは為るようにしかならんだろ。とりあえず、様子を見ようや」
一先ず、お互いの実力を見せあった。ポケモンの世界に取り込まれ、弱体化した現状で、自分が何処まで出来るのかが分かって貰えれば、それに越した事は無い。分からないなら、理解出来るまで続けるまでだ。
「ど、うも」
「おう、ご苦労さん」
そして、この少年だな。ある意味、ライゼクスやリオレウスよりも問題を孕んだ、爆弾のような立場の男である。
(残された番の1匹、か……)
異世界転移による混乱と恐怖により、とあるガチモンの番を殺してしまい、残った方に追われる身なのだという。これだけでも充分に問題だが、彼――――――アグルが元の世界に戻る目途が全く立っていない事が、一番の大問題だ。
とりあえず、一緒に身体を動かして交流を深めているが、一体オレたちにどうしろってんだよ、マジで。
「何も起こらなきゃ良いが……」
「キバナ氏、それってフラグ?」
「わざわざ回収しようとするんじゃねぇよ」
だが、実際に嫌な予感はしている。確信に似た、強い予感が。
……ま、そうならないように、今は備えるしかないか。
◆滅・昇竜撃
カムラの里で考案された、「鉄蟲糸技」の1つにして、片手剣の必殺技。翔蟲で垂直に跳び上がりつつ相手を盾で殴り飛ばす技で、凄まじい威力とスタン値を誇る物理攻撃である。
アグルの場合、自分の脚で跳び上がっているだけなので、本場と比べると威力は劣るが、それでも大型モンスターを昏倒させる重さがある。これで彼が翔蟲も使えるようになれれば……良かったのにね。