「……以上で報告終わります」
《ご苦労様です。引き続き、監視の方を宜しくお願いします》
「了解で~す」
ナンジャモとキバナがアグルやポケモンたちと共に、ライゼクスらガチモン連中と特訓という名の調教をしている最中、草葉の陰でコソコソと、マツリカは上司であるアポロに連絡を入れていた。当然、内容はこれまでの旅路と怒った出来事についてである。彼女はトキワコンツェルンの特別社員であり、まだ見ぬアオイ女史と共に世界を股に掛ける諜報員でもある。だからこそ、情報収集に余念がないのだ。
しかし、ナンジャモたちを気に入っているのも事実で、単なるビジネスパートナーという訳でもない。むしろ、心配しているからこそ、逐一相談しているのである。時空の割れ目に未知なるモンスター、それから異世界人。心配するなというのが無理であろう。
「終わりましたか?」
と、急に背後から声が掛かる。
「エリカさん……」
エリカだった。旅の間ずっとマツリカの傍に居たが、それは仲睦まじいから……という単純な理由ではなく、彼女もまた情報収集の為だ。
「……わたしが、そんなに憎い?」
「ええ。貴女は
「
「遺された方には関係ないのですよ」
「でしょうね……」
そう、全ては“復讐”を果たさんが為に……。
「貴女は父を殺した。その事実に変わりはありません」
マツリカは過去に「Z」に取り憑かれ、様々な凶行に走ってしまった事がある。シルフ社長を殺害してしまったのも、その1つ。もちろん、そこに彼女の自由意思など無かったのだが、そんな事エリカには関係ない。マツリカが手を下した事に変わりはないのだから。
「なら、どうして殺さないのかな?」
「意味がないからですよ。あなたを殺した所で、父は還って来ない。わたくしの半生もね。だから、わたくしは貴女が一番苦しむ方法を探しているの。例えば、貴女の大切なアオイさんを目の前で処刑する、とかね」
「悪趣味だね」
「それ程でも」
2人共笑顔だった。笑顔を張り付けているだけだった。
「まぁ、その時は全力で抵抗するし、阻止してみせるよ。そんな八つ当たりに巻き込まれてあげる程、わたしも呑気じゃないしね。アオイお姉ちゃんにも怒られるし」
「精々気張りなさいな。例えわたくしが死んでも、怨念となって必ず復讐するわ」
「勝手にすれば? ――――――ただ、やるならナンジャモちゃんたちが帰ってからにしてね。彼女たちには関係のない事だし」
「それに関しては賛成しますわ。……彼女らのおかげで、わたくしも立ち直れましたしね」
「うんうん、それで良いよ」
「ええ、そうですとも」
「「あははははははは!」」
昼間だというのに、この一角にだけ薄気味悪い影が差す。憎しみが渦巻いているのだろう。
「あ、マツリカ氏にエリカ氏、こんな所でデートですかな?」
「お前ら、本当にべったりだよなぁ……」
「「それ程でも~♪」」
「「いや、褒めてないから」」
だが、ナンジャモとキバナが戻ってくれば、ほらこの通り。何時もの取り繕った仲良しこよしの始まりである。
「さ、行きましょうか、マツリカさん?」
「うん、行こうかー、エリカさん」
そして、2人は今日も笑顔を振り撒く。互いの思惑を周囲に悟られぬよう、微笑みの爆弾を抱えて。
◆マツリカの凶行
彼女は「Z」に取り憑かれ、様々な凶行に走ってしまった。先ずはシルフ社長の殺害。その後、アオイに毒を打ち込んだ上でシン(アオイのライバル)をハナダの洞窟へ転移で拉致し、世界の命運を賭けた究極の二択を迫った(マツリカを殺して事態を治めるか、世界とアオイを見殺しにするか)。
結局、色々な奇跡の果てにマツリカとアオイ、シンは生還するのだが、エリカにとって、そんな事は関係ないし、割り切れるような性格でも無かった。