『バギャヴォッ!』
先ずはサンダーが「ぼうほう」を巻き起こす。稲妻を伴う竜巻が幾つも発生し、疾風の包囲網を形成した。
『グヴェァォオオッ!』
だが、ディアブロスはブレスにより、いとも容易く「ぼうふう」の壁を薙ぎ払う。
『コォオオオオン!』
『グヴヴゥゥ……!』
しかし、サンダーは既に射線から退避しており、入れ替わるようにフリーザーが「ふぶき」を発生させた。流石に攻撃の直後だった為か、ディアブロスは真面に食らい、僅かに怯む。どうやらこおりタイプの攻撃に弱いらしい。
『ハォオオオッ!』
『グヴォ……ッ!?』
さらに、ファイヤーの「だいもんじ」が炸裂し、ディアブロスは大きく仰け反った。
『――――――グヴォァアアアッ!』
『ファォッ!?』
だが、ほのおタイプの通りは今一のようで、即座に体勢を立て直し、ファイヤーに殴り掛かる。ファイヤーはギリギリで躱せたが、掠っただけでも致命傷は免れまい。それは既にドードーが証明している。
『ファアアアッ!』『クォオオオッ!』『ギャォオオオス!』
そこで3鳥たちは連携を意識し、ファイヤーの「エアスラッシュ」の後に「かみなり」や「ふぶき」を放つようになった。風の刃で牽制して、効果がありそうな攻撃を食らわせる事にしたのだ。
「……これは! ドンカラス、「あくのはどう」!」『カォオオオッ!』
しかも、事態を解決しに出動したであろう受付嬢の人が、ドンカラスに乗って駆け付けてくれた。これで手数が増える。
『グゥゥゥ……!』
それらは確かに効果があり、ディアブロスは瞬く間に傷だらけになったのだが、
『グヴェァアアヴォン!』
『『『ギャヴォッ!?』』』
「嘘っ!?」『ドンカラ!?』
一声叫んで喝を入れれば、動画の逆再生のように治癒してしまった。体内にある菌糸らしき物が、ディアブロスの熱によって増強され、身体を再生させているようである。何だ、そのチートは。これじゃあキリが無いじゃん!
――――――いや、あれは単に“身体を突き動かす”為に傷を塞いでいるだけで、根本的な体力回復には繋がっていない筈だ。このまま体力を削れれば、あるいは……。
『グヴォァアアアアアアッ!』
しかし、世の中そんなに甘くは無い。ディアブロスが再度大爆発を起こして、鳥ポケモンたちの態勢を崩しに掛かったのである。
『グルヴォォオオオッ!』
そして、右翼で地面に身体を縫い付け、ブレスを吐き散らかしながらグルグルと周り、勢いのまま空中へ躍り出て、最後に特大の爆発を引き起こせば、鳥ポケモンは全員戦闘不能に陥っていた。もちろん、受付嬢の人も巻き込まれ、白目を剥いている。あれは暫く目を覚まさないだろう。
「う゛う゛……!」
どうしよう、最早誰も動けなくなった。逃げる事も、立ち向かう事も叶わない。このままじゃ……!
――――――ザリッ!
すると、ボクの直ぐ傍で、土を踏み締める音が。誰かと思い、顔を上げてみれば、
「アグル……?」
「………………」
そこには、思い詰めた表情をした、アグルの姿が。ディアブロスの注意が逸れている隙に、前に見せて貰った「いにしえ秘薬」とやらで回復したのだろう。あれだけ瀕死の重体だった身体が、ほぼ元通りになっている。
その上、彼はボクらに「生命の大粉塵」を振り撒いてくれた。曲がった手足が少しずつ元に戻って行く。
だが、その速度は芳しくない。立てるようになる頃には、全てが終わっているだろう。というか、失った血液までは戻って来ないので、回復した所でって話だが。
「……ごめん」
と、アグルがボクらの言葉でポツリと謝罪した。
さらに、己の
『怖い』『死にたくない』『嫌だ』『父さん』『母さん』『姉さん』『帰りたい』
いいや、ただの強がりだ。心の底では震え上がっている。
それでも、アグルはディアブロスに立ち向かおうとしている。ハンターとして、ボクらを守り、決着を付ける為に。
「嫌……待って、行かないで……!」
そんな事をしたら、キミは……!
「うぉおおおおおおおおおおおっ!」
だが、アウルは止まってくれなかった。目尻に涙を浮かべ、震える脚を咆哮で誤魔化しながら、ディアブロス目掛けて走り出す。戦う男に、二言は無かった。
『グヴェァアアアォオオオオオッ!』
ディアブロスもまた、それに応えるように、悪魔の怒声を轟かせ、突進してくる。アグルを今度こそ亡き者にする為に。
――――――バキィイイイン!
勝負は、一瞬だった。
大地を抉るディアブロスの双角を、僅かな隙間を縫うように滑走したアグルの剣が、ディアブロスの胸を串刺しにした。そこには膨大なエネルギーを生み出す炉心たる心臓があり、そして。
――――――ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
暴走したエネルギーが大爆発を起こし、何もかもを吹き飛ばした。ディアブロスも、アグルも。
「うぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
更地となった「ダイグレンビオトープ」の真ん中で、ボクの叫びが虚しく木霊した。
◆ファイヤー
棲み処が定まっていない伝説の鳥ポケモン。所謂「火の鳥」であり、火の粉を撒き散らせながら空を飛び、傷付いた身体をマグマの中で癒すという。フリーザーに勝るとも劣らない美しさを持ち、何処かの誰か曰く「雌」らしい。過去に山で遭難していたカツラを助けた事があるとか。
ちなみに、双子島のフリーザーやカントーを旅するサンダーとは同期かつライバル。この世界でも移り気なのは変わっておらず、適当にそこらをうろついている。