神様みたいなわんこ男子に救われたTS黒髪美少女が、優しさによって心を開き一緒に幸せになる話   作:阿久津なぎ.

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5.バイト先でお困りならお任せあれ!

 翌日。

 俺は休み時間になったと同時に机の中からスマホを取り出し、求人情報を探していた。

 

 飲食のバイトが多いし、コンビニバイトも1000円以上で出してあるところもあるが、コンビニバイトは夜酔っ払いに絡まれるのが嫌でやめることにしている。

 

 相場的に繁華街にあるレストランでの給仕のバイトがよさそうだ。時給もそこそこだし、夜は忙しいが頑張りしだいで昇給があるというのが嬉しい。

 

 俺がスマホをいじり始めたのを見て、浩之が机をくっつけて俺のスマホを覗きこんで来ようとするのを俺は華麗に回避する。本当にこいつは不思議なやつだ。飽きないんだろうか。

 

「人のスマホ見ようとするとか教育がなってないね、浩之くん」

「だって、気になるじゃん! 友達候補のおれとしては、少しでも瑛太と仲良くなれるネタが欲しいわけ!」

 

 そんなことを言われても。こちらは仲良くする気はないのだから無意味だと昨日あれほど言ったのに。一緒に映画に行ったのがまずかったか。

 

「それはありがとう。でも、これは俺の問題だから」

「ふむ……。さてはおぬし……バイトを探しているな?」

 

 突然おじいちゃん口調になった浩之を殴りたい衝動にかられるのを我慢する。学校内では俺はいい子ちゃんなのだから。

 

「だったらどうするんだよ」

「うち来なよ! 居酒屋だから酔っ払いに絡まれることもあるけどそこは俺たち男がなんとかするし、今うち一人辞めちゃって人手が足りてないんだよ」

 

 こいつもバイトしてたのか。だから映画驕りなんて芸当ができたのも頷ける。

 

「へー。一応聞くけど、時給は?」

「ふっふっふ。聞いて驚くなよ。1600円だ!」

「……居酒屋なら普通じゃないかな」

「がーん! う、うちはいいぞ! みんな仲いいし、店長優しいし、常連さんも優しい人ばっかりだしさ! 絶対損させないから!」

 

 なんでそこで食い下がってくるかがわからない。別に俺と一緒にバイトしなくても今までそれで稼いできたんだからそれでよくないか?

 

「瑛太とバイトできたら絶対楽しいと思うんだよ。ちょっとつんけんしてるところあるけど、みんなの前では普通だし。な、一週間お試しで入ってみないか? おれから店長にかけあうからさ! このとーり!」

 

 そう言って浩之は頭を下げ、その上で両手を合わせた。そこまでして俺とバイトがしたいらしい。

 

 まあ、この町にやってきてよくわからないままバイトをするのは心配だったから、知っている人間がいる場所というのは確かに悪くない。よくないと思えば辞めればいいし、そのころには土地勘が少しはついているだろう。

 

「わかった。その話、乗るよ」

「このとー……! えっ、マジ!?」

「な、なに。何か悪いの?」

「なんも悪くないよ! すっげー嬉しい! じゃあ、明日の放課後ちょうどバイトだからそのとき店長に紹介するよ。簡単な面接受けさせられると思うけど、瑛太ならたぶん大丈夫!」

 

 たぶんなのか……。という言葉は飲みこんでおいた。バイト先候補が見つかったのはいいことだ。素直に喜んでおこう。

 

 そんなことを話している間に休憩時間終了のチャイムが鳴る。すると浩之は「またあとでな」と言って机を元の位置に戻した。

 

 俺も机の中にスマホをしまい、教科書とノートを取り出す。そして少し待ったのち、教科担任が入ってきていつも通り授業が開始された。

 

 

 

 

■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 店内は最近の居酒屋らしく綺麗で、人気があるのかほぼ満席だった。店の奥から制服に着替えた浩之が出てくる。

 その後ろにいかついおっさんがいて、おそらく店長なんだろうと憶測はついた。

 

「店長、この人です。俺が紹介したいって言ってた子!」

「女の子じゃねえか。大丈夫なのか?」

「あーっと……。その、TS症候群で男から女の子になってるんです」

「おっと、そりゃすまねえな。気分悪くさせちまった」

「いえ、気にしないでください」

 

 俺は気分が悪いのを隠して笑顔で答えると、店長がふむ、と豪快な顎髭を指でさする。

 

「愛想笑いは上出来だが、ちっと嘘くさいな」

「!?」

「さっすが店長! そうそう、瑛太はこれでも……もがっ」

「わかるんですか?」

 

 俺が聞くと、店長と呼ばれたいかつい男は頷いた。

 

「「伊達にいろんなお客さんの相手してねえや。……まあ、一週間体験いいんじゃねえか? 愛想笑いできるなら客に失礼なことはしないだろ」

「いいんですか? 簡単に信じて」

「まだ信じちゃいねえよ。俺は使えるか使えないかで人間を見るからな。あと、俺は加藤康之。加藤店長とか気軽に呼んでくれ。最初はこのクソガキと組ませて教えるから、連絡先と住所だけこれに書いて置いていってくれ。あとでこっちから連絡する」

「わかりました」

 

 腰にぶら下げているメモ用紙をちぎったのとボールペンを渡されたので、空いている席でささっと連絡先を書いて渡す。

 

「藤原瑛太か。いい名前してんな」

「そう言われるのは初めてですね」

「ま、使えりゃ俺はそれでいい。オレンジジュースでも飲んでくか? 俺からの驕りだ」

「いえ、家に帰らないといけないので。それじゃあ、連絡待ってます」

 

 そう言って、俺は店を後にした。

 

「……浩之」

「なんです、店長?」

「惚れる相手はよく選んだほうがいいぞ」

「なっ、なあっ!?」

「はっはっは」

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