【巨乳】もんくえに転生したと思っていたらもんぱらだった件【天使】   作:ちゅーに菌

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感想や評価ありがとうございます。感想は順次返させていただきます。もうそろそろ本編に入りますが、スレは少しお休みです。


カナンししょー

 

 

 

 

ヨハネス暦1454年8月3日

 

 世界のあちこちで、怪異が起きている。平和な村に住む僕にさえ、そんな話は聞こえてくる。

 

 各地で暴れ出す魔物。忽然と住民が消失した村や集落。頻発する天変地異。大国間の不可解な戦争……。

 

 30年前、世界を揺るがした大異変とは違う。最近の怪異は、まるで病魔がじわじわと広がっていくかのようだ。

 

 魔王が何かを企んでいるという噂も聞いたことがある。イリアス様なき世界で、いったい何が起きているのだろう。

 

 もしかしたら父さんは、この怪異に立ち向かっているかも知れない。僕が旅立つ日も近い、気合を入れて訓練しなければ!

 

 

 

 

 

 

ヨハネス暦1454年11月4日

 

 神殿騎士団の僧侶になって以来、ソニアがよそよそしい。なんだか、僕に距離をおいている感じだ。

 

 「気になる人でもできて、しおらしくなった?」と聞くと……得意の棍術でボコボコにされた。

 

 訓練用の剣で必死に応戦したが、勝てなかった。半年後には旅立ちなのに、これでいいのか……。

 

 いや、やっぱり男としてダメだ……! あからさまな貸しを作るのは後々何をされるかわからないから気が引けるけど……恥を偲んでカナンさんに相談してみよう。

 

 本当にあの人、ああ見えて僕でもわかるぐらいとてつもなく強いんだよね。どれぐらいの階級の天使だったんだろう? 大天使……いや、権天使とかかな?

 

 

 

 

 

 

ヨハネス暦1454年11月5日

 

 かっ、身体が……全身が痛い……。真面目……真面目だったか……? 兎も角真面目なあの人、遊びが無さ過ぎるよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さんの居場所……?」

 

「ああ、見当たらないけれど何処か知ってる?」

 

 明くる日、ルカは宿の仕事が素泊まりの対応以外していない日に剣の稽古を付けてもらうため、天使のカナンを探していた。

 

 案の定、朝からカナンはおらず、代わりに娘のアズリエルがスパスパと薪割りに勤しんでいる。

 

「というかいつも思ってたけど、それそんな扱いしていいのか……?」

 

「よく切れるよ?」

 

「天使の輪っかってそんな感じなんだなぁ……」

 

 アズリエルは自身の天使の輪を斧の代わりに持ち、それで薪割りをしていた。

 

 ちなみにカナン曰く、天使の輪っかは日本刀(ヤマタイ刀)の斬れ味があり、無くすと酷い下痢にも襲われるらしい。眉唾物であるが、少なくとも半分は合っているようだ。

 

「ぴぴぴ……」

 

 するとアズリエルは片手を上にもう片方の手を水平にし、何かと交信でもするように姿勢をそのまま暫く維持する。

 

「…………」

 

「…………」

 

 そして、たっぷりと1分ほど時間を掛け、疲れたのか上げている手と水平にしている手が逆になったところで、アズリエルは交信を止めた。

 

「ん……お母さんならポ魔城(ぽまじょー)のぎがちゃんのとこにいるって」

 

「…………そうか、ありがとう」

 

 どうせ死ぬほど下らない理由でそこに居るんだろうと思いつつ、ルカが考えている更に斜め下の事を仕出かしているところまで想像がつく事にルカは目を伏せ、現在進行形で破壊され続けている自身の中の天使像を思い、小さく自嘲するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぐむぐ……」

 

 アリスベアから貰い、今はルカの部屋に置いてあるポケット魔王城の中にある魔王城の門前の広場。

 

 そこに極めて巨大な魔物である巨竜娘のぎがが手足を折り畳んで鎮座しており、その口に何かを含んで飴玉でも転がすように咀嚼している姿があった。

 

「ぎが、カナンさん知らない?」

 

「んー……?」

 

 まだ、ルカから辛うじてカナンをさん付けするだけは敬われていた。あるいは呼び捨てにするほど親しみを覚えられないという可能性もあるが、知らぬが花であろう。

 

「んんっ……」

 

 足元のルカを見下ろしたぎがは、咀嚼を止める。

 

 

 

『話はアズさんから聞かせてもらいましたよ』

 

 

 

「えっ……?」

 

 するとルカの頭に直接カナンの言葉が響き、辺りを見回すが何処にもそれらしい姿はない。

 

「んべぇ……」

 

 それを不思議に思っていると、ぎがが口を開くと咀嚼していたモノが零れ落ちるように吐き出され――それは温かくも輝かしい極光を放ちつつ、慣性の法則を無視してゆっくりと降りて来た。

 

 朝露に晒された草花のようにしっとりとした水気を帯びるそれは、極光に照らされる事で柔らかな光りを纏い、それはまるで宗教画の1枚のようでさえあるだろう。

 

 

「熾天使カナン――降臨」

 

「ええ……」

 

 

 尤も単純な事実として、ぎがが口に含んでいたモノはカナンであり、全身がぎがの涎まみれの彼女がやたらカッコつけながら出て来たというだけの話であるが。

 

 地面に降り立った彼女は、水から上がった野生動物のようにぶるぶると六枚の翼を震わせたため、全方向にぎがの唾液が飛び、一部がルカにも掛かり、彼は真顔になる。

 

「なんですかこれからあなたを導き、決して人智の及ばない啓蒙を授けようという大人天使に対してその顔は?」

 

「マトモな大人は魔物の口の中から出て来ないんだよ……」

 

「あなたのような妄信的で浅慮の凡人が地動説を否定し、賢人に石を投げたのです。恥を知りなさい」

 

「論点をすり替えるな」

 

 澄ました顔付きと言動自体は天使のソレであるが、行動は奇妙奇天烈最底辺であり、髪は依然としてぎがの唾液でしっとりと濡れそぼっているため、流石のルカも声を荒らげた。

 

「あなたの未来の姿ですよ?」

 

「………………」

 

「そっ、それはルシフィナ姉さんの蔑み顔……! わ、私の知らないルカさんの顔差分がっ!?」

 

 尚、ルカは何故かカナンに対して自身が考えている以上に辛辣に当たる事があるが、それが何によるものなのか理解はしていない。

 

 しかし、これまでの一部始終の全てを一切意に介していないカナンは、さも何もなかったかのように続ける。

 

「それはそれとして、この煌々たる約束の地……熾天使カナンに任せなさい」

 

「アンタみたいな熾天使がいるわけないだろ。カナン様に申し訳ないと思わないのか?」

 

「んんっ……! 無知ゆえのあまりに辛辣な罵倒……!」

 

 熾天使カナンを名乗る不審者は、顔をやや恍惚に歪めつつ、息を荒らげ身体をくねらせながらとても楽しそうにしているようにルカには思えた。

 

 どうやら彼女のメンタルは鋼を飛び越えて無敵らしい。精神の強靭度だけは脱帽するレベルであろう。

 

「まあ、天使なんてあなた方、下等生物が考えているよりも想像以上に魔物の延長線の生き物ですし、基本的にお役所仕事なのであんまり夢を持たない方が身のためですよ」

 

「そうだね。カナンさんを見てよく思い知ったよ」

 

「いい傾向ですね。人間よ、夢など捨てなさい。夢は叶わないからこその夢なのですから。代わりに全ての人間は平等であり、生きる権利を与えられています。そして、人々は互いに慈しみ、共存しなければならないのですよ。それが矮小な相応の身の丈というものです」

 

(なんなんだコイツ……)

 

 言葉に出さなかっただけルカは耐えれている方であろう。これが幼馴染みのソニアであったなら既にツッコミ過ぎて過呼吸を起こしているであろう。

 

 イリアス教の教えまで引用しつつ、人間を煽って来る辺り、コイツは悪魔なのではないかと考え始めるルカであったが、娘のアズリエルは天使な事を思い出し、やはり中身の方の問題である事に思い当たり、複雑な感覚を覚えた。

 

「それから、片輪の老い耄れが出来る事なんて高が知れているのであまり期待しないでくださいね?」

 

「急にマトモでツッコミ難いことを……」

 

「ではとりあえず、ノーマレン」

 

 そんな事を言いつつカナンはその片腕を擬似的に再現されている広大な空へと向ける。

 

 少なくとも今のルカにはそのようにしか見えず、これから何かが起こるようにも思えなかった。

 

「総べての生、母なる天に回帰せよ。魔天回帰・傾国」

 

「どかーん……」

 

 しかし、その直後、カナンの全身から迸る聖なる魔力が腕を通して一点に集中し、ぎがの身体をも遥かに超える聖光の輝きが彼方の空を消し飛ばす。

 

 後に残るのは魔天回帰に口で効果音を付けたぎがの呟きと、ダイアモンドダストのように煌めきながら静かに吹き荒ぶ光りばかりであった。

 

「どうですか?」

 

「どうって……? スゴいけど……」

 

 ルカが付けて欲しかったのは、ソニアにボコボコにされる自身への剣の稽古であり、メガトン級のピンポイント爆撃ではないのである。

 

 事実上の魔王領地であるヘルゴンド大陸に行ったと豪語し、ベロベロに酔って剣の腕が立つと自称する冒険者が宿泊者した時、珍しくキチンと働いていたカナンが居た時にルカへ絡み出したことがあった。

 

 その直後、カナンはその辺りにあった木製の長柄しゃもじで"閃殺"を放ち、剣で応戦しようとした冒険者をボコボコにし、散々叩き潰した挙げ句、自室に連れ込み消えたのである。

 

 その一部始終を見たルカはカナンの実力が剣士としては超一流のであることは認めており、その辺りは憧れの対象であったりするが、その冒険者を侍らせて自室から出て来た辺りで直ぐに幻想は崩れた。ちなみにその冒険者は女性であった。

 

「なら次ですね。ギガマンドラ」

 

「ぶぉん……」

 

 ぎがが妙な効果音を口ずさむとカナンの片手から聖光で出来た剣が伸びた。

 

 手足が片方ずつない六枚の翼の天使の片手から光の剣が溢れる様はそれだけで荘厳であり、そのまま独特の構えに移行したカナンは、剣を虚空へと向ける。

 

「羅刹の顎門、破軍に至りて邪を払う。九重の羅刹・破軍」

 

「ずばばば……」

 

 そして、舞うように剣閃が放たれ、九つの軌道を描く羅刹の如き乱撃はその全てがほぼ同時に一点へと収束し、空間に容易く穴を開けた。

 

「どうですか?」

 

「どうってなにが?」

 

 しかし、幼馴染みにボコボコにされる程度の今のルカには残念ながら何をしているか理解出来ず、自分には使えるわけもない兎に角もの凄い天使の技程度の認識である。

 

 するとカナンは少し考え込み、何か思い付いたのか指を鳴らすと口角を釣り上げて笑みを浮かべた。

 

「ジルフィ、ノーマレン、グランディーネ、ギガマンドラ……」

 

「ちいぱっぱ……」

 

 すると今度は今まで技の前に呟いていた何かの名詞が4つに増える。

 

 それとぎがの妙な呟きと共に、カナンの剣に風、土、水、炎の魔力が順に宿ると腰を落とし、低く剣を構えて居合いのように剣を据えた。

 

「カドラプル・ギガ・オルタナティブ」

 

「ずずしーん……」

 

 腕ごと振り抜かれた抜刀とともに剣に宿った四属性とカナンの光の魔力が開放され、空に放たれた剣は5色の閃光を帯びた極光となり、通過した全てを消滅させて彼方に光彩を刻む。

 

「どうですか?」

 

「ははは……僕で遊んでますよね?」

 

「あっ、人工精霊さんたちはあげませんよ? 私のですからね」

 

「何の話?」

 

「後、剣からビームも出せないようではセイバーとしては二流ですからね?」

 

「だから何の話なの?」

 

 "ね? 簡単でしょ?"等と言いたげな表情で意味の分からない煽りをして来るカナンにルカは顔を引き攣らせる。

 

 そろそろ帰りたくなってきたが、自分から持ち掛けた手前それも出来ず、まだ引き出しがあるらしいカナンにされるがままであった。

 

「ならば本当の本当のとっておきを少しだけ――」

 

「………………」

 

 するとカナンの雰囲気がこれまでの飄々とした様子から一変し、その姿を目にしただけで殺されてしまいそうなほど冷たく人間味のない機械のような様になると、彼女自身も空に浮かび上がる。

 

 そして、200〜300mほどの上空で留まると、カナンは六枚の翼を放射状に広げ、そのそれぞれに聖光の魔力が灯り、さながら燃え盛る炎のように煌々と輝く。

 

「神に剣を向けることなかれ」

「魔物と交わることなかれ」

「祈りを欠かすことなかれ」

「他の神を頼むなかれ」

「神を汚すなかれ」

 

 イリアスの五戒、イリアス教の教えであるそれをカナンは呟きつつ、その背に宿る聖なる魔力の火は更に輝きを増す。

 

 更に彼女の羽根が蠢くと、その全体からプラズマのような紫電が発生し、それらは聖光と共に翼を通して、彼女の掌に集約される。

 

「不遜なるものよ。神たる理から外れるは、すなわち罪なり」

 

 カナンが手を掲げると、彼女の背後にさながら宇宙を見上げたように暗く眩い極小の星々の光が現れる。

 

 聖光はさながら天使の羽根となり、幾重にも伸びて折り重なった雷光は篦となり、収束した銀河の星々が矢尻となったことで、およそ矢のような形状に纏まった。

 

「私はカナン、乳と蜜の流れる地、約束の地。汝、人々の諷意なる微睡みを妨げんとするのならば、我が弓はその矮小さを示すだろう」

 

 そして、カナンが放つように手を振ると同時にその矢は天へと放たれる。

 

 

 

 

 

 

神の矢(いりあすびーむ)

 

「………………Zzz」

 

 

 

 

 

 最期にルカが見た景色は、空を起点に世界が爆発し、認識する全てが光に塗り潰されたような感覚と、すやすやと健やかなぎがの寝顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっ……なぜもうここにいるのですかルカ?

 

 

 この世界のあなたは、まだスライム娘にすら会っていない筈では?

 

 

 大方、箪笥のカドに小指でもぶつけたのでしょうか?

 

 

 私の勇者のスペランカーっぷり、略してスペルカにはほとほと嫌になりますね。いつか、段差だけでなく鳥のフンにも負けてしまいそうです。

 

 

 全く……なんと情けない勇者なのでしょうか?

 

 

 さて、気を取り直して倒された相手は――カナン!? 熾天使カナンですって!?

 

 

 この世界の……いいえ、正史に置いて彼女は重症を負ったルシフィナを逃がすため殿となり、六祖の4体を同時に相手をして手足を失い、増援の玉藻(たまも)に目ごと貫かれて倒され、聖魔大戦で完全消滅した筈……。

 

 

 いえ……ルカ、聞きなさい。この世界のカナンは絶対死を迎えました。何れにせよ、そこにいるのはただのカナンでは――。

 

 

 

 

 

『イリアス様、ちょっと失礼しますね。聖者の奇跡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ……?」

 

(今まで何か見ていたような……うーん……)

 

 微睡みから目を覚ましたルカは、何か大事な夢を見ていたような気分になっていたが、欠けた夢を思い出す事が徐々に難しくなって行く。

 

 それと共に妙に柔らかい枕に寝そべっている彼が上を向くと――ニコニコと天使のような笑みを浮かべるカナンと、彼女の下乳が目に入る。

 

「――わっ!?」

 

「いやー、危なかった。ギリギリ間に合いましたね」

 

 "おは死神さん寸前でした"と奇妙な事を言いつつ、膝枕しているルカの頭を撫でるカナン。辺りを見渡せば、見慣れた内装や小物が置いてあり、ルカ自身の自室のベッドである事がわかるであろう。

 

 見た目だけは至高の天使かつ美女であるカナンの膝枕に少し驚きつつも身体を起こし、まだ夢の事を思い返した。

 

「なんだかさっきイリアス様って……。翼の生えた綺麗な人も――」

 

「きっと白昼夢って奴ですね。そうに違いありません。何か見えたり聞こえたりしても大いに気にしないでください。ドブ川のような心で性格までねじ曲がってそうなパツキン女神様っぽいのとか特に」

 

「ええ……」

 

 直接、知っている訳では無いが、他の神を認めていないイリアス教の天使が女神様という言葉を使えば示すものは自ずと一柱である。

 

 それに対して明らかに辛辣で歯に衣着せぬ物言いどころか暴言を吐いている辺り、目の前の天使が天使を名乗る不審者なのではないかとルカは半ば確信していた。

 

「それはそれとして……少し、失礼しますよ」

 

「わっ、何を……!?」

 

 するとカナンはルカを抱擁し、翼でも包み込む。

 

 身体だけは天使どころか女神のような彼女に抱き締められ、ルカは感情とは関係なく赤面する。

 

「ぴぴぴ……」

 

 すると何処かで聞いたフレーズと共にルカの身体の芯に何か温かなものが溜まるような感覚を覚え、それを不思議に思っているとカナンは抱擁を止めた。

 

「……? 何かした?」

 

「にゃはは……ちょっとしたお(まじな)いですよ。ルカさんは私の甥っ子(ごにょごにょ)……なんですから暖簾分けです」

 

「今なんて言った……?」

 

 カナンはルカの問には特に答えず、ベッドから立ち上がると翼の一枚に手を突っ込み、引き抜くと中から骨のような何かで出来た剣が現れる。

 

 そして、いつの間にか彼女の別の一枚の翼にルカが振るうために調整されたカスタムソードが握られていた。

 

「さて、ではそろそろ……剣の稽古を始めましょうか。ここじゃ物が壊れます。お外に行きましょう。ひさしぶりにカナン教導官に戻ります。あっ、ポ魔城ちょっと壊れたので修理しておきますね?」

 

「えっ」

 

 それだけ言って、取ってつけたような軍帽を取り出して被ると部屋の入り口に向かって行くカナン。

 

 そして、入り口まで来ると彼女の発言に驚いて止まっているルカに顔を向ける。

 

「何を呆けているのですか? ルカさんの目線で、この私が剣の稽古を付けて差し上げようと言うのです。下等生物ならば感涙に咽び泣くところですよ?」

 

「えっ……あっ……ああ!」

 

 直ぐにルカはカナンの元まで向かうとカスタムソードを受け取り、表情を引き締めて彼女と共に外へ向かうのであった。

 

 

 

『びゅんっ……』

 

『はい、今のが戦士の端くれなら誰でも出来る基本的な"疾風突き"です。ではやってみてください』

 

『えっ……』

 

『なんですか? イリアス様の勇者になりたい癖にこの程度もできないと? あなたには信仰心の欠片もありませんね。恥を知りなさい』

 

『そこまで言わなくても……』

 

『できなきゃ、ぎがさんのお口に放り込みます』

 

『れろれろ……』

 

『や、やるよ……。やればいいんだろ!』

 

 

 

『ざっざっざ……』

 

『これがデュラハン娘さんが使う"五月雨切り"です。さあ、薙ぎ払いなさい』

 

『い、いきなりムリだよ……』

 

『無理というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。途中で止めてしまうから無理になるんですよ。途中で止めなければ無理じゃなくなります。止めさせないんです。魔物に犯されようが腎虚でぶっ倒れようが、とにかく習得できるまで全力でやらせます。そうすればその者はもう無理とは口が裂けても言えないでしょう。無理じゃなかったって事です。実際に習得できたのですから』

 

『いや、それやったんじゃなくてやらせたんじゃ……』

 

『できなきゃ犯しますよ……? そんなに天国が見たいですかァ……? さっさと腰ではなく剣を振りなさい、なう』

 

『くっ、くそうっ! なんなんだよコイツ!?』

 

 

 

『ずばーん……』

 

『そして、これがドラゴンでありながら人間の技を模倣する竜人が覚える"極竜斬"です。では、たった今捕まえた通りすがりのインプのラミさんに放ってください』

 

『なんで連れて来られ――えっ……待って、それ私死ぬよね?』

 

『大丈夫です。彼女にはカドラプル・ギガをも耐えた実績があります。やりなさい』

 

『よしっ! 行くぞッ!』

 

『なにそれ知らなーい!? たーすーけーてー! ころされるー!』

 

 

 

 尚、日頃の行いからは全く想像出来ないレベルで、育成や修業に関しては超効率主義者であったカナンの指導が、スパルタを超越した何かだった事を知るのはすぐに先のお話である。

 

 

 

 

 







肝心な時にしか役に立たない天使(イリアス様の評価)




〜ルカ 本日の修業成果 〜

【聖技】
・神の矢 New!

【剣技】
・疾風突き New! (威力E速攻)
・五月雨切り New! (威力B全体攻撃)
・極竜斬 New! (威力A単体攻撃)




〜 出て来た技一覧 〜

魔天回帰
聖なる魔力を集中させ、敵を消し飛ばす伝説に残るのみの魔導奥義。尚、カナンが使用した技は土の人工精霊を乗せて放っている。

九重の羅刹
最高位の天使のみが使いこなせると言う伝説の技。カナンが使用した方は火の人工精霊を使って放っている。

カドラプル・ギガ
四属性の力を剣に宿し、敵に叩きつける究極最強の奥義。説明文詐欺のイベント技だが、ラミには何故か叩き込める。彼女は叩き込まれても生存しているので、カナンは嘘は吐いていない(未来のお話)

カドラプル・ギガ・オルタナティブ
カドラプル・ギガのカナン改良版。本来のカドラプル・ギガを人工精霊で行い、自身の聖なる魔力でブーストし、無理矢理4ターンの待機時間を消し飛ばして放ち、四属性+光属性の同時攻撃を行う。

神の矢(いりあすびーむ)
聖技
全体攻撃
威力SSS(力or魔or器)
聖・イオン・銀河属性
即死・昇天・瀕死・ショック・スロウ・ストップ付与
ショック・スロウ・ストップ・魔物・ボス特攻
消費MP255
消費SP28
 ルシフィナの明けの明星、ミカエラの天軍の剣のようにカナン自身とそれに連なる血筋が使える専用技。現在・過去における対象の天界の概念上の罪を裁定し、イリアス教の教義に反していれば反しているほど威力を増し、魔物に対しては無条件で最大火力となる独善理不尽絶滅光線。すなわち、イリアスビームである。ちなみにルビはカナンが勝手に振った。本来の名で放っていないため、性能が制限された威力限定版である。
 カナンが直接、自身の甥に当たる血筋のルカに己の欠片を与えたため、彼は使用可能になったが、本人が自身をハーフ天使だと自覚しておらず、また極めて莫大な魔力を必要とする技のため、現在は事実上使用不能である。しかしMPがたりない。
 尚、本来は対国及び都市あるいは対六祖レベルを想定した超広域殲滅であり、現存する国ほどの規模ならば一撃で全てを無に帰す事が可能。実際にカナンのいた平行世界では、レミナという国に対して放たれている。また、聖魔大戦では六祖の禍撫に対して直撃し、一撃で彼女を細胞の一欠片以外全てを消滅させ、消えぬトラウマを刻み込んだ。
 ちなみにクリア後開放のチャレンジボスとしての熾天使カナンと戦う場合、これによって全体に800万ほどダメージを与えて来る上、状態異常効果と軽減不能の瀕死が極めて凶悪。また、神の矢に付いている昇天はこちらの耐性を貫通するため、使用されたら最後、30%程の確率で全体に即死が通ってしまうと全滅する。

じゃっちめんと・でい
聖技
単体攻撃
威力S(力or魔or器)
聖・イオン属性
昇天・ショック付与
ショック・スロウ・ストップ・魔物特攻
消費MP24
消費SP7
 正しいルビ、かみのやとも言う。アズリエルに備わる神の矢の廉価版。とはいえ、未だゲーム的にはLv1の彼女には身が重過ぎるため、撃とうとしても特に何も起こらない。



〜 QAコーナー 〜

Q:今回の話ってどういうこと?
A:ミカエラさんで例えると、甥っ子に嬉々として天軍の剣を見せ付けて自分の力をアピールしようとしたら、天軍の剣の余波でルカさんがアヒった

Q:なんでこの人こんな強いの?
A:成長要素のあるゲームで数十億年暇してたから

Q:カナンネキってクソじゃない?
A:天使にしては人間に寄り過ぎなぐらい慈愛に満ち溢れた凄まじい善人であり天使の屑(人間にとってクソでないとは言っていない)




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