【巨乳】もんくえに転生したと思っていたらもんぱらだった件【天使】   作:ちゅーに菌

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更新が遅れて誠に申し訳ありません。徐々に感想を全て返信させて頂きます。

カナンさんの過去回かつルカさんのところに転がり込んだぐらいの頃のお話です。

もんくえをしていない方は全く分からないかも知れませんが、話の展開上必要なので勘弁して下さいなんでもしまかぜ(死語)

後、ベアさんの過去回だけは挟むと思われます。





たまもとてんし

 

 

 

 

 

『まあ、こんなところですか……』

 

 その熾天使は、魔物陣営の最高戦力であり、六祖と呼ばれる原初の魔物4体を同時に相手をし、それでも未だ霞まぬ極光をその瞳と翼に宿していた。

 

 既に空間そのものに僅かに塵や瓦礫が残るばかりのこの戦場に置いて、5体目の六祖の増援の玉藻が到着した時点で、熾天使は手足を片方ずつ失っていたが、六祖側の被害も甚大であり、既に4体中2体が完全に戦闘不能になり、1体は文字通り虫の息、最後の1体は立っているのがやっとという様子である。

 

『死力を尽くすなんてガラじゃないんですけどね』

 

 しかし、既に熾天使に刻まれた全身の夥しい数の傷痕から流れ出る血と、全て失った翼の代わりに生命を削って吹き出した極光の翼が役目を果たしている様が、その命がそう長くない事を思わせるだろう。

 

 少なくとも援軍の玉藻を倒し切るような力は明らかに残ってはいないが、その死に際の気迫と呪詛のような言葉はそれだけで玉藻に二の足を踏ませた。

 

 聖魔大戦――。

 

 女神イリアスと邪神アリスフィーズの対立が決定的となり起きた天使と魔物による大戦争であり、絶大な戦闘力を持つ原初の六妖魔があり、更に魔物という圧倒的な数を持つ邪神アリス陣営に比べ、その10分の1程度の数しか居ないイリアス陣営は明らかに不利であった。

 

 しかし、地上攻略総指揮官である熾天使カナンは、その地上攻略に置ける戦略及び作戦手腕と、あまりに異常で心ない"戦力兵器"の投入によって数の差を覆した。聖魔大戦は序盤こそ数に勝る邪神アリス陣営が優勢であったが、その状態でもカナンが直接指揮を取った戦線では常勝であり、更に中盤には件の戦略兵器が投入され、そして現在はイリアス陣営と完全に()()していたのだ。

 

 魔物達にも知れ渡る程世界中で確認される彼女の素行の悪さは、地上の全ての地形や魔物の分布及び戦力を熟知するためであり、更にその単純な実力すら六祖の禍撫を単独でほぼ一方的に降し、現在まで恐慌状態で使い物にならなくさせる程度には、六祖単体を上回る程だった事を隠していた彼女は、とんでもない食わせ者であったのだろう。

 

 そして、破壊した戦略兵器を解析した結果、その制御権限はカナンのみが持ち、女神イリアスでも破れない程の異常に強固な結界術式及び魔導科学由来のプロテクトが掛けられており、魔物側からは完全にお手上げであった。

 

 しかし、逆に言えばカナンさえ消滅すれば、全ての戦略兵器は制御を失い、最低でも統制を欠く事は間違いなく、カナンの手腕と戦略兵器によって逆転しかけているパワーバランスをリセットする事は可能であろう。

 

 ならばと熾天使カナンを倒すため、カナンが他の熾天使と2体でいる時に異空間に拉致し、4体の六祖の同時奇襲で他の熾天使に重症を与えて足止めし、空間転移による離脱を術式で防ぎつつカナンの逃亡を阻止して嬲り殺しにするというのが、今回の作戦の概要であった。

 

 実際、ほぼ作戦は成功していたが、六祖の増援が必要なほどに激しい戦闘になるとは、玉藻も考えてはいなかったのだ。

 

『この辺りが私の幕引きなのでしょう。世界にとってはこれが、私が生まれた意味だったということ。なら大人しく退場しておくのが筋というところです』

 

 更にカナンの背後で浮いているシャボン玉のような形をし、360度を防御する障壁の中には、熾天使ひとり――ルシフィナの姿があり、腹部に重症を負いながらも弱々しい手付きで、カナンが形成した障壁の内側を叩いていた。

 

 叫んでいるように見えるが、内側から声は通らず、そちらにカナンは意識を向けていない。

 

 その直後、立っているのがやっとであった転移を遮断する術式を行使していた六祖が倒れ、術式が僅かに霧散し、それを玉藻が瞬時に引き継いで再使用するまでの刹那の時間に、カナンは転移魔法によってルシフィナの姿だけが完全に消える。

 

 どうやら自身の脱出は完全に諦め、あらゆる術に精通した玉藻さえ出し抜いてその熾天使を逃したらしい。

 

『ウフフ……はい、私のか・ち。ルシフィナ姉さんさえ死なずに逃がせば、私の役目はおしまいです。タイムパラドックスになっても困りますので、一匹も殺せないのは癪ですが……どのみちアナタ方は負けますし、中々楽しい戦争でしたよ?』

 

 その事に玉藻は術という自身の領分で凌駕された事に眉間に皺を寄せつつ毒づいた。

 

『何が六祖ですか、卑しいだけで空っぽの害獣、人間を悪戯に消費するばかりで中身のない寄生虫、力しかなく主神への忠誠すら薄い不遜なる者共。私、基本的に魔物は全体的に好きですけれど、六祖は本当に嫌いです。特にイリアス様が健気に進化させて生み出した人間を国ごと消費するようにもて遊ぶ様は我慢ならない』

 

 売り言葉に買い言葉であったが、カナンの言葉の中に女神イリアスが人間を進化させて生み出した事を話したことに玉藻は驚く。

 

 天使及びイリアス教では女神イリアスが人間を創造したということになっており、それ以外の思想は邪教及び禁忌であるからだ。それを熾天使が認めているのは異質であろう。

 

『言葉を飾るのに意味はないですよ。一度も誰からも叱られることなく独りで育ち、孤独を埋めるためにミカエラとルシフィナを創り、私を含む数多の天使を創り、それでも埋まらなかった絶望を人間で埋めようとし、人間達に求められるまま神になった……そんな可哀想なあの人にとっての人間という最後の心の拠り所をアナタ方は無遠慮に貪り喰らおうとするのです。全く……虫酸が走る』

 

 死に際に自身の主君を赤裸々に語る姿は、まるで無防備のようでありながら残る手足と聖素は、研ぎ澄まされた牙城のようであり、才能と天性の肉体以上にどれだけの研鑽を積んでいたのかが見て取れる。

 

『まあ、単純に天使という名の魔物として、アナタ方の在り方は美しくない。マナーの無さが気に入らないだけですね』

 

 故に六祖の玉藻ともあろうものが、徐々に衰弱していく彼女を静観する選択を取ったのだ。

 

 無論、生命として正しいそれは最悪の事態を引き起こす。

 

『……ああ、イリアス様。本当に愚かで汚く可愛らしい私の神様……。せめて私が魔物(六祖)として生まれていればあの方を――』

 

 カナンは途中で言葉を止めると、最後に笑みを浮かべて閉じた異空間の虚空を眺めつつ嘲笑うとも自嘲とも見える表情をした。

 

 そして、悪戯っぽく笑みを浮かべながら玉藻へと向き合う。

 

『しかし、リンチにしようとしたのはよかったですが、他事象から隔絶された異空間に閉じ込めるのは悪手でしたね。ひとえにアナタ方が吐き気がするほど優秀だからでしょうが――ここなら私が全力で暴れても()()に観測される可能性は極めて低い』

 

 その直後、カナンの全身から本来は魔物が持ち、聖素とは対になるモノである魔素が噴き出し、それは彼女の聖素とほぼ同等に見えるだろう。

 

 熾天使カナンは、女神イリアスの思い付きで、元々とある実験の為に創造された熾天使であり、結論から言えば全くの失敗作である。

 

『大丈夫……ちゃんと死んであげますよ。私の完全消滅まで3分……最高のショーをお見せいたしましょう……! もちろん、付き合っていただけますね……玉藻様ぁ……?』

 

 精々、その名残としてその魂に"外側"の要素を引き寄せたと共に、魔素由来のあらゆるモノを真似て行使する器官がある程度のものだ。

 

 

『我が聖よ、我が魔よ、我が御霊婚いで溶かせ、女神イリアスにひかりあれ――"聖魔融合"』

 

 

 彼女は星が生きる程の長い年月の果てにそれを半ば実現していた。ある存在への懸念から普段は欠片すら使えはしないそれを部分的に可能とした。そうでなければ六祖を既に4体も倒せる訳がない。

 

 それは密かに寄せる他愛もない想いを糧に数十億年焦がれ続けた一矢。ただ全てを超え、果ての先を撃ち落とす女神イリアスの矢である事の証明である。

 

 熾天使の恵まれ過ぎた身体を持ってしても耐えきれない度重なる過負荷に、肉体は軋み、ひび割れ、溶け崩れ落ち、残り僅かの命を更に燃やす。

 

 そして、それでも人型の天使として体を成し、煌々と輝く瞳が玉藻を射抜く。

 

 

『数十億年の憧憬の果て……(かみ)()を知るがいい……!』

 

 

 獣系の魔物の祖であり、悪戯と戯れに幾つもの国や文明を滅ぼし、魔性の限りを尽くした玉藻は、その日確かに()()に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尚これは蛇足だが、熾天使カナンの消滅により、玉藻たちの目論見通り戦略兵器たちは天界の制御下から完全に脱した。

 

 但し、停止でも機能不全でもなく、リミッターを解除した上での暴走という形となり、無差別に認識した魔物を殲滅し続けるだけの存在と化し、既に地上各地に撒かれたそれらの対処に魔物側は人口比を大きく削る程まで多大な出血を強いられ、現代に至るまでその爪痕を残す事となる。

 

 それは結界術式と魔導科学の双方に余程明るく無ければ気付かないような仕様通りの挙動であり、つまり最初から熾天使カナンは、自らが聖魔大戦で命を落とす事を織り込み済みだったという事であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――っ!? ぁ……ぅ…………ぅぁ…………?」

 

 嫌な夢を見た"たまも"は最悪の目覚めを感じると共に、それがただの悪夢であった事に安堵した。

 

 それは約1000年前に六祖の玉藻と呼ばれていたたまも(彼女)に起きた事柄であり、彼女が色々と懲りて割りと真人間になった要因でもある。

 

「なんで……今更あんな……」

 

 1000年前の聖魔大戦で受けた六祖大呪縛によって邪神アリスフィーズ共々、六祖は全て封印されたが、玉藻は力を小さく切り取る事で網目を抜けるように六祖で唯一抜け出し、その代償に身体は幼年の姿となり、力にも多大な制限を受けつつも邪神アリスフィーズの子孫である歴代魔王のアリスフィーズ達に仕えているのだ。

 

 故に現在は四天王のたまもである。

 

 それはそれとして、熾天使カナンと対峙した時に味わった絶望と恐怖は今も変わらず、悪夢として彼女を蝕み、戒めとして未だにここにあるのであった。

 

「うぅ……」

 

 あまりにも鮮明な悪夢に若干身体に引っ張られるように涙目を浮かべるたまも。

 

 ヤマタイ村にあるたまもの神社の境内にある寝室から何気なく外を見れば、明けの明星が暗い空にぼんやりと輝いており、未だ早朝だという事がわかり、彼女の真横では、寝そべりつつ天使のような微笑みを浮かべながら一切瞬きせずにこちらを見ている熾天使カナンがいるばかりだ。

 

(…………?)

 

 仕方なく寝直そうとしたたまもは、何か妙な錯覚を見たような気がしたが、それを彼女の頭が認識する事を拒否したため、そのまま寝直す。最近は早起きが板に付いてきた彼女は普段ならこの時間でも普通に起床するのだが、何故か脳が強い疲労を訴えた為である。

 

「寝よ――」

 

「おハローたまもさん。アナタに殺された熾天使カナンが化けて出ましたよ?」

 

「いやぁぁあぁぁああぁぁぁあぁぁ!!!?」

 

 後にたまもはこの時の事を1000年寿命が縮んだと周りに言ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですか、たまもさん? 自分の客人にお茶のひとつも出さないのですか? まあ、百歩譲って時化ているのは仕方ないとして、礼節まで欠いているとは所詮獣の延長線の生き物ですね」

 

「お前のような客がおるか」

 

 たまもに寝起きドッキリが仕掛けられてから約10分後――。

 

 たまも宅の居間のど真ん中に、縄でぐるぐると上半身が巻かれたまま正座をしている熾天使カナンの姿があり、彼女はそれを全く意に介さずにたまもへと戯言を絶えず吐き出していた。

 

 片手足が無く、片目が精巧な作り物である事と、たまもが忘れる筈もない聖素を纏っている事から本人である事は間違いないだろう。

 

「そもそもなんですかこの漫画の間者へやるような雑な縛り方は? やる気あるのですか? もっとキツく抜けられないようにギチギチに縛りなさい。序でに目隠しやギャグボールをしてより恥辱的に……フヒヒッ……ちょっと興奮して来ました」

 

 頬を少し朱に染めているカナンを眺め、たまもは行き場のない疲れとやるせなさを覚えた。

 

 ちなみに雑な縄のように見えるのは外見だけであり、確りとたまもの呪術で編まれたそれは並みの魔物ならば、身動ぎひとつすら出来なくなるであろう。しかし、目の前の魔物は熾天使である。

 

「何故ウチがこんな目に……」

 

「あなたが悪いことをして罰を受けているのではなく、私がいい事をした褒美を貰っているんですよ」

 

 本日最高の理不尽を口を開く度に更新するカナンにたまもは露骨な溜め息を吐く。

 

「最近、軽く就労しましたしね。そんな自分へのご褒美です。なので、たまもさんの尻尾をモフモフしに来ました」

 

 そして、更なる問題はこのような発言に対し、一切冗談だという目をしていない事であろう。

 

 尤も玉藻が知る1000年以上前の熾天使カナンの魔物達の評価を統合すると、概ねこのような人物になるため、今の状態は彼女の素と言っていい。

 

「ああ、大丈夫ですよ、安心して下さい。たまもさんの尻尾は卑下するような毛並みではありません。上の下ぐらいの素晴らしい毛並みです」

 

「は……?」

 

「私の翼の方が毛並みいいですし」

 

「………………」

 

 乱雑にカナンの翼を触ってみた。

 

 つやつやもふもふきらきらだった。たまもは歯軋りした。一応、何かに使えるかも知れないので、羽根を何枚か毟り抜いておく。

 

「んんっ……あっ……そんな乱暴な……」

 

「…………なら何故()の尻尾を触りに来た……?」

 

「背中って自分で掻いても気持ち良くないじゃないですか?」

 

 突如として訳の分からない何かにアイデンティティを蝕まれ、軽くキレ気味になったたまもであったが、相変わらずカナンは何処吹く風である。

 

「おヌシ……どの面下げてウチの前まで来たのじゃ?」

 

「無論、この面ですが? 美顔でしょう?」

 

 "ダメだコイツ話にならないタイプだ……"と伸ばした人差し指と親指に顎を乗せてウィンクして来たカナンにたまもは戦慄する。

 

 何よりこの空飛ぶパルプンテのような女に六祖が終始翻弄され続けた上で、勝ち逃げされ、剰え生きていたという事実に目眩を覚える。

 

「では……」

 

 そして、さも当然のように縄のような拘束術式を内側から腕力のみで破壊し、そそくさとたまもの方へと手を伸ばす。

 

「何故逃げるのですか?」

 

「逃げない理由がないじゃろ……?」

 

 当然ながらたまもは身体を離してその聖なる魔の手から逃げ延びる。そのやり取りが何度か続いたところで、カナンは可哀想なものを見るような視線を送りつつ口を開く。

 

「逃げたところで、私の滞在時間が伸びるだけですよ? 今夜はたまもさんのところにお泊まりですね。夕飯はウナギがいいです。特上の肝吸い付き、白焼き、肝焼きをお願いします!」

 

「おヌシ……おヌシ……!」

 

 最悪な事にこの熾天使は、何時ぞやの奥の手を使わずとも単純な実力では、1.5六祖ぐらいは素で強いと六祖たち(玉藻たち)が感じていた程度には頂点捕食者である。そうでなければカナンを4対1で囲むような作戦を取る筈が無かった。

 

 そして、現在は邪神アリスフィーズとたまもを含む六祖全てが六祖大縛呪で囚えられ続け、20年以上前から女神イリアス及び他の熾天使達も天界ごと消息不明である。

 

 要するに熾天使カナンはこのナリと言動で、紛れもなくこの世界最強の魔物なのだ。

 

 手足と片目を失った程度で、その実力が揺らぐなどとたまもは楽観視しておらず、それどころか聖魔大戦を経て誰にも悟られずに1000年という年月を過ごして来たのならば、あの頃よりも強大になっている可能性すらあるだろう。

 

「うぇひひ……たまもさんのシッポもふもふ……もっふもふです。うへへ……おひさまの匂い……」

 

「…………………………」

 

 つまりたまもは観念する他なかった。

 

 魔物は所詮、弱肉強食。その掟を作ったひとりのたまもは今その理不尽さを誰よりも否応なしに噛み締めるばかりである。

 

 

「ぁっ……やっ……!? んぁ……!」

 

「たまもさんはやっぱり可愛いですねぇ……」

 

 

 尚、魔物にとっての可愛がりとはそういう事も含む。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「…………ぁ…………ぁぁ……」

 

 約2時間ほどぬいぐるみにでもなったように無心でカナンの猫可愛がりやたまも吸いや可愛がりを受け、心身共に疲弊したところでようやくカナンは満足したらしく、布団に身体を投げ出したまま弱く痙攣するたまもの隣でフルーツの香りがする電子タバコを吹かしている。

 

 クリティカル・エクスタス――。

 

 魔物や天使との性的接触などを通し、体内に自身のものではない魔素及び聖素を短期間で多量に流し込まれた生物が陥るこの世界の生物として自然な弱体化現象。

 

 要するにイかされまくって賢者タイムに突入したたまもに既に気力はない。

 

「おヌシ……絶対生まれる種族間違えておる……」

 

「奇遇ですね、私もそう思います。六祖とかに生まれていればイリアス様を合法的に強姦出来たんですけどね」

 

「おい」

 

 嘘だとしても生臭天使などというレベルではない発言に流石にツッコむたまもであったが、幾らかクリティカル・エクスタスから復活した頭で、この熾天使から情報を引き出す事に専念する。

 

「なぜおヌシが生きている?」

 

「尤もな質問ですね、ええ。ビックリですよね。自身の身体魂の欠片さえ焚べて消えた筈なのに私が生きているんですもの。"生きている筈ない"……たまもさんから見てもそうでしょう?」

 

 まるで何故生きているのか、あるいは何故生かされたのか自身でもわかっていないようにカナンはそう言う。

 

「どうして私はこの世界に来なければならなかったのでしょうか? あの時、既に腹を割っていた筈なのに。幾らか考えてもわかりません……ああ、何故あんなにも来たかったのでしょうねぇ……?」

 

 何が可笑しいのか笑うばかりの少なくとも語る気がまるでないと判断したたまもは別の質問に切り替える事にした。

 

「ひひひ……全くおかしな話ですよねぇ……」

 

「ならどうしてウチのところに来たのじゃ?」

 

「目的は私を殺した愛しのたまもさんに会うためですよ? けど他の理由を強いて言えば……ツクヨミさんという私の友人の魔物がそろそろこのヤマタイ村に来ると思うので、是非とも仲良くしてあげて下さい。というか、たまもさんの子供みたいなものですのでね」

 

「おい、何をしておるか」

 

「1000年も暇があり、六祖の皆さんの遺伝子を採取する事が私には可能でした。さて……そうしたら私には何が出来るでしょうか? まあ、今更魔物の祖のひとつなたまもさんに連なる魔物が生えたところで、特に気にするような事でもないとは思いますが」

 

「……………………」

 

 それを聞いたたまもは、この熾天使が聖魔大戦で投入し、未だに討伐されずに残り、それがいる区域そのものが禁域に指定されているほどのあの悍ましい戦略兵器たちを思い出す。

 

 そして、それを造ったこの熾天使ならやりそうな事だとたまもが考える事も自然と言える。

 

「他には何も造って無いだろうな……?」

 

「大丈夫ですよ。イリアス様に誓って聖魔大戦以降にたまもさんが危惧しているような戦略兵器の娘たちなどの増産は行っていません。そもそもイリアス様も天界も空にない現状では、何か企む理由も意味もありませんからね。そもそも私、暗躍とか企てるとかそういうキャラじゃないので。自分に正直に生きて、可愛い子を愛でれれば何でもいいですし」

 

 そう言ってはいるが、カナンの奇行以外は一欠片も信用できないのは、たまもが聖魔大戦を生き抜いた存在だから故だろう。

 

 あの大戦に当時参加していた魔物や天使ならば、その異常さを身を以て知っているのだ。

 

「厳密にはこの世界のあの娘たちは私がやった訳じゃないんですけど……。そのせいで、私も制御不能ですし。まあ、場所さえ教えてくだされば面倒ですけれど破壊しておきますよ。大戦の時はそれはそれ。こう見えても私、魔物との共存には賛同してましてね」

 

「なんじゃと……?」

 

 それは願ってもない事であった。

 

 実際、その戦略兵器たちはたまもが限定的に六祖の玉藻へと戻って対処しようとはした。しかし、暴走状態にも関わらず、対六祖用に個々で調整してある戦闘プログラムが生きているという嫌がらせとしか言い様のない仕様のせいで、千日手となり、彼女が六祖の玉藻に戻れる制限時間内では倒し切れないのである。

 

 せめて、30分あれば撃破出来るのにと歯痒い思いをし続けており、現在魔王城にいる四天王や当代の魔王では力不足か、刺し違えてしまうだろうとたまもは考えていた。

 

 とは言え、現代まで残る戦略兵器たちは、かつて"黒のアリス"と呼ばれた邪神を除く歴代最強のアリスフィーズであり、暴君と言われた魔王アリスフィーズ8世の時代に気紛れで多くが駆逐された事がせめてもの救いだろう。

 

 更に熾天使ルシフィナが、地上を放浪していた頃に都市部等に近い場所に居た個体を何体か撃破し、熾天使ミカエラも同様に幾らか倒している。

 

 そのため、その残数は確認されているだけで20体前後であり、もう少し動かせる戦力があれば掃討出来る状態ではあったのだ。

 

「ああ、そうそう……。交換条件という訳でもありませんが……近々、女神イリアスを名乗る頭の可笑しい性悪クソ雑魚メスガキちんちくりん幼女が現れると思うのですが――無下にするようなことがあれば、ただでは済まさないのでそれだけは覚えておいて下さい」

 

 話の最後に序のようにポツリと呟いたカナンであったが、たまもにはそれが恐らく彼女にとって最も重要な事であると対峙した時の発言から気付く。

 

 カナンの発言は全く意味が分からないが、その真意は彼女が実姉のエデンと同等か、あるいはそれ以上に女神イリアスを渇仰している事だけは正しいだろう。

 

「さて、それではそろそろ――」

 

 カナンは布団から身体を起こし、居住まいを正す。

 

 ようやく帰るのかとたまもは大きく溜め息を吐き、このまま夕方まで不貞寝してしまおうかとゆっくり目蓋を閉じた。

 

 

 

「――ウナギ、食べに行きましょうか」

 

「おヌシ……頭が……」

 

 

 

 しかし、カナンによって小脇に抱えられた事でたまもは現実に引き戻され、未だ悪夢が終わっていない事に頭を抱える。

 

「仕方ないじゃないですか。もう、ヤマタイ村のウナギ料理を食べたいお腹になっちゃたんですから」

 

 そして、たまもを伸びる猫のように抱えたカナンは、そのまま屋敷の外へと歩き出す。

 

「たまもさん、たまもさん。アズさんに財布の紐を握られててあんまりお金持ってないので奢って下さいね?」

 

「どうしてこうなったんじゃ……」

 

 無論、それをたまもに止める術は最早なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、来ますからね!」

 

「二度と来るなッ……!」

 

 蛇足だが、カナンは週休二日制の休み程度の頻度でたまもの元へ来るようになった。

 

 尚、たまもが尻尾の円形脱毛症(10円ハゲ)に悩むようになるのはまた別のお話である。

 

 

 

 

 

 







カナン
たまもさんすきすきな天使。せんとうりょく1.5六祖。純粋にたまもの中身も身体も大好きなだけであり、彼女に倒された世界線の彼女ならばどのたまもでも本気で友達だと思っている。そのため、たまもの言う事ならば、明らかに他者よりも聞き分けがよく、カナンにしては珍しく彼女の為なら率先的に行動もするのだが、たまもはそれに全く気付いていない。
カナン「私を殺した責任、ちゃんと取って貰うのですから」
たまも「たすけて」


たまも
カナンにトドメを刺してしまったばっかりに生涯人格破綻者に絡まれ続ける事になる可哀想なお狐様。出入りが妙に多く無駄に神々しいため、ヤマタイ村の者は彼女の神社の境内にカナンの社を建てた。その時、彼女は一瞬本気で村を滅ぼそうかと思ったという。


戦略兵器
聖魔大戦でカナンが数十億年の暇潰しに修めたあらゆる技術を集約して開発し、実践投入された頭プロメスティンなもんむす。六祖も手を焼く性能を持つハイエンド量産機であり、聖魔大戦を引っくり返し掛けた。
 もちろん、倒してイベントを経ればちゃんとルカさんの仲間になり、エッチも出来る優れもの。


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