【巨乳】もんくえに転生したと思っていたらもんぱらだった件【天使】   作:ちゅーに菌

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タイトル詐欺です。

感想や評価をいつもありがとうございます。また、楽しんで頂ければ幸いです。






旅の始まり

 

 

 

 

 

 

「カナン! 包み隠さず答えなさい!」

 

「前向きに検討致します」

 

 

 現在、見習い勇者ルカの宿屋にて――。

 

 旅に出る前にどうしても問い詰めたい事があるとのことで、イリアスはテーブル越しに座る熾天使カナンと対峙していた。

 

 一瞬だけ逆転したパワーバランスは、直ぐに戻り、女神イリアスという主と従者の図が見て取れるが、それにしてもカナンは天使とは思えないふてぶてしさであり、それをイリアスのような性根の腐った奴が、粛清せずに側近に置いていた理由がアリスには謎であろう。

 

 自らの主も黙らせたカナンの凄まじい圧により、仕方なくイリアスと旅仲間になってしまったアリスだが、流石に配下の天使との密談を魔王的に許せる訳もなく、ひとまずルカと共に静観している。

 

「カナンさんが本当に熾天使なことには驚いたけど……あの人のことだから何もないと思うけどなぁ……」

 

「ドアホめ……天使を信用し過ぎだ」

 

「お母さんだもの」

 

 ぎゃいぎゃいと喚くイリアスを意味のない返答でのらりくらりと躱すカナンとのやりとりからは特に得るものがないため、アリスはカナンによく似た少女の天使――アズリエルに目を向けた。

 

「子供がいる天使か……それだけでもイリアス(アレ)からしたら神罰ものだろうに」

 

「じー……」

 

「なんだ……?」

 

「アリスさんは魔王なんだよね?」

 

「そうだが……何か」

 

 どう見ても子供とは言え天使。アリスはイリアス教の教義や、凝り固まった魔物廃絶志向を思い出し、何の言葉が来ても返すようにやや身構える。

 

 そして、小さくなったアリスよりも尻尾の差でやや小さいアズリエルは、アリスを見上げつつ口を開く。

 

「かっこいい……!」

 

 その目は子供らしくとてもキラキラしていた。

 

「いつか、私魔王様の四天王とかになりたいな!」

 

「……………………あの天使は実の娘にどういう教育をしているんだ?」

 

「ある意味、最新じゃないかな?」

 

「将来有望ですね」

 

 いつの間にか、首だけをこちらに向けてカナンも会話に参加しており、当然彼女の前にいるイリアスはご立腹である。

 

「カナン! 余所見するのではありません! 話は始まってすらいませんよ!? それと、そうです! その天使もです! いったい、アレはなんですか!?」

 

「もちろん、キャベツ畑でコウノトリさんが運んで来たんですよ? ああ、天界には貴い誰か様の意向で、キャベツ畑すらもありませんでしたからご存知ありませんか。地上では幼子ですら常識ですよ?」

 

「――! ――――!!!」

 

「イリアス様、抑えて抑えて!」

 

「わー、ピリッとします」

 

 

 イリアスはさばきのいかづちをはなった。

 

 カナンは防御壁で相殺した!

 

 カナンの身代わりの型代が攻撃を防いだ。

 

 

「フッ……! 配下に煽り散らかされ、逆ギレしているようでは高が知れているな」

 

「…………流石、魔王でしたのに身体をちんまくされて、ヘルゴンド大陸からすれば世界の果てまで飛ばされた挙句、配下のひとりすらも着いて来なかった魔王様ですね。その卓越したブーメラン捌きはスライム娘さんからでも習いましたか?」

 

「――――!!! ――!」

 

「まっ、魔王様……! 抑えてぇ……!」

 

「ぬわー、暴力反対です」

 

 

 アリスは毒の魔眼をはなった。 

 

 カナンは防御壁で相殺した!

 

 カナンの身代わりの型代が攻撃を防いだ。

 

 型代がなくなった。

 

 

 結果的に宿の椅子で船こぎするカナンに襲い掛かろうとするイリアスとアリスをそれぞれルカとアズリエルが引き止める形になった。

 

 それを半顔で見つめるカナンは、明らかに文明水準に似合わない技術が使われているであろうペン状の電子タバコを懐から取り出すとそれを吸い始め、細く吐かれた息からフルーツに近い香りが辺りに充満する。

 

「それで? 本題は何でしょうか、イリアス様?」

 

「あぁ……この娘は昔から全くもう……!」

 

「……余、コイツ嫌いだ。それはそれとして、粛清ばかりしているお前がよくこれまで1度も殺さないでいれたな」

 

「…………39回……私が裁きの雷をカナンに落とした回数です」

 

「お前……」

 

 あんまりな回答にアリスはイリアスを半眼で見つめる。そもそも女神イリアスともあろうものが、不遜の塊のようなカナンを処断していない筈がないのだが、それにしても異様な数であった。

 

「結果的に判明したのですが……カナンが居ないと天界の運営効率が、2割落ちるのです! それと地上の詳細情報の入手は全てカナンが担っていて……後、料理も……兎も角、居なくなられると困る……困ったのですよ!?」

 

「恐ろしいほどブラックではないか……!?」

 

 それは傍若無人なカナンを裁きの雷で殺し、2〜3万年単位の再誕を幾度となく繰り返し、千万年近い空白期間を経た末の結論であった。

 

 魔物と女遊びを日常とする程度には明らかに手を抜いた片手間の仕事でそれだけ成果を出していた存在であり、イリアスに重宝されていたのも紛れもない事実なのであろう。

 

 それ故、1000年前の聖魔大戦の終盤でカナンが絶対死を迎え、未来永劫喪うこととなった時の女神イリアスの喪失感と焦燥ぶりは尋常では無かったのだろう。

 

「……お前、それで給料はどれくらい与えていたんだ? 如何に熾天使と言えど幾ら積まれても割に合わんだろ」

 

「…………? 給与……? はぁ……これだから卑しい魔物は……。私に奉仕できるというのになぜそのようなものが必要なのですか?」

 

「これはドアホどころではないな……」

 

「これはひどい……」

 

「ケッ……!」

 

 アリスは急にカナンが気の毒に覚え始め、ルカも流石に擁護のしようがなかった。

 

 カナンは死んだ魚のような目で電子タバコをプカプカさせており、彼女の余りに捻じれ狂った人格形成が数十億年のされた理由の一端を知れたと言える。

 

「お前、魔王城に来るか? 少なくとも完全週休二日制だぞ?」

 

「…………たまもさん辺りしばき倒せば四天王の枠が空きますかね?」

 

「親子だなお前ら……」

 

「――ッ! そんなことはどうでもいいのです! 答えなさいカナン!」

 

 かなり脱線したが、無理矢理話を本題に戻し、イリアスは第一の疑問を投げ掛ける。

 

「なぜ、あなたが生きているのですか……? 確かにあなたは、聖魔大戦で聖素のひと欠片すら残らず消滅し、再臨出来なくなる絶対の死を迎えた筈……」

 

「それについてですが、結論だけ言えば――わかりません」

 

 そう告げたカナンはぼんやりと天井を見上げると更に言葉を続けた。

 

「本来なら死んでいる筈……というよりもあの場面で死力を尽くすことが最善だったため、生存という選択を私は確かに捨て、六祖らを返り討ちにしました。それは紛れもなく私の意思だったのですから、生きている筈がないのですよ」

 

 そこまで話したカナンは、もう一度電子タバコを吹かせる。

 

「だというのに何のせいか生存し、何故か今更になってここにこうしている。それ以上の答えを私自身は持ち合わせていません」

 

 そう話したカナンは電子タバコを片付けると、何故かルカの方を見つめ、何処か悪戯っぽく小さく笑みを浮かべた。

 

「まあ、ソニアさんにでも聞けば答え合わせができる日が来るかも知れませんね」

 

「なんでソニア……?」

 

 それがその問いの全てであるらしく、それ以上口を開く様子がない。そのため、イリアスは深く溜め息を吐き出す。

 

「………わかりませんが……わかりました。あなたがそうだというのならひとまずはそうなのでしょう。私を謀るようなことをすれば許しませんよ?」

 

「肝に銘じております。有史以前から私があなた様を裏切ったことがありましたか?」

 

「むぅ……せめて馳せ参じたのがまだエデンだったら……!」

 

 イリアスは本気で言っているらしく、机をバシバシと叩く。半分は正当な評価、もう半分はイリアスの性格の悪さと言ったところだろう。

 

「それと……そのアズリエルという天使は私のデータによればあなたとルカの――」

 

「はい、第一種断界接触」

 

「むぐむぐッ!?」

 

 カナンはラミアの移動でも見ているかのような人型味のない動きでイリアスの背後にぬるりと回ると、その口を塞いで持ち上げる。

 

 更にジタバタと暴れるイリアスの耳元にそっと口を寄せると、他に聞こえないように呟いた。

 

(イリアス様、年齢を鑑みても明らかに時系列が可笑しいことは明白でしょう。そのことについては追々話しますので、ルカさんに伝えることはご容赦ください)

 

(わ、わかりました……びっくりするので突然何かするのは止めなさい……遂に叛逆されたかと)

 

「……さて、そろそろここで足止めし続けているのも忍びないので旅に出るとしましょうか。お時間を取らせて申し訳ありませんね、皆様」

 

 そう言うとカナンは、イリアスを床にそっと置く。イリアスは顔を青くしながらぷるぷると震えている。

 

「おっと、その前にイリアス様。今後、多少態度を改善するのと、私から滅多なことは話さないことを約束しますので、少々あなたのデータベースでこの方を検索していただけませんか?」

 

「――――ッ!? 言いましたねッ!? 絶対ですよ!! 手始めにこれまでの非礼を詫びて馬車馬のように働きつつ料理を――」

 

 イリアスとカナン以外からは一切何の内容かはわからないが、カナンが文字の羅列が書かれた紙をイリアスに見せながら妙なやり取りをする。

 

「えっ……この認識番号は……?」

 

「データベースから座標位置を参照……32%,68%,99%――特定しました……」

 

 しかし、その紙をひったくりながら意気揚々とした表情になったイリアスであったが、直ぐに困惑の表情に変わった。

 

 そして、何かを特定したらしいカナンは、顔を北の方へと向け、ここではない遥か彼方を見ていることが、その視線と口の端を吊り上げた表情からわかるだろう。

 

「なるほど……あのタルタロスですか。それは盲点でした。道理で死ぬわけもないのに世界の何処を探しても見当たらなかったわけですね」

 

「カナン……幾らあなたでもアレの相手をするなら万が一が――あっ、カナン!?」

 

「皆様は先に旅を、夜までには帰って来ますので」

 

 それだけ言い残すと、カナンは翼をはためかせて天井に飛び上がり、勝手にルカの宿に増築した天窓を開け、そのまま流星のような速度で北の彼方へと飛び去って行った。

 

 そんなカナンの背にイリアスはやや焦った様子で声を掛ける。

 

「夕飯までには帰って来て料理を作りなさい!! わかりましたねッ!?」

 

「がめつい女神め……。それはそうと熾天使カナンと言えば、セラフィム・コックと呼ばれ、台所や(かまど)も司っていた天使だ。天空の料理とやらはどんなものであろうな?」

 

「…………あの天窓ああやって使うんだ……。そういえば、宿でキッチンだけはいつも綺麗にしてたなぁ。村の祝祭とか、誰かの誕生日以外では、お金積まれないと作らなかったけれど、僕の何十倍も料理が上手いよ。たまに教えても貰ってたし」

 

「それは楽しみだ……!」

 

「1000年振りにカナンの料理が……!」

 

 女神と魔王が夕食に想いを馳せる中、ルカは何処か似た様子の二人に溜め息を吐くと、とりあえず旅支度を纏めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギガントウェポン――。

 

 

 それは太古の魔戦争の折に邪神アリスフィーズが造り出した合成魔獣であり、ウェポンとも称される究極兵器である。

 

 様々な魔物の優れた箇所を寄り合わせ、高度な魔術によって生み出されたキメラモンスターであり、あまりにも高度な魔術は魔導科学の域まで踏み込んでおり、現代の魔術ではオーパーツ寄りであろう。

 

 マスターとして登録されている者の命令を聞くが、その破壊衝動は極めて強く、時に暴走したりと不安定だった。そのため、結局は制御し切れず、邪神の手によって異空間に投棄された。

 

 

「魔天冥煌撃……」

 

 

 そして、現在はヘルゴンド大陸のタルタロスの中を存在意義を失ったままさまよい、襲い来るアポトーシス達を紙切れか何かのように撃滅し続けているのだ。

 

 そんな破壊兵器はただ破壊することだけをシステムとして行うばかりの四足歩行の獣の首に人型の上半身を付けた重戦車のような魔物であったが、彼方に熱源を感知したことでそちらに首を向けた。

 

「………………?」

 

 見れば自らのいるレミナに似た場所から大橋のような足場を挟んで、約500〜600mほど先で、明らかに異様な聖素の収縮が確認できる。

 

「データ参照……不明な攻撃を感知、警戒度を――」

 

 

 

神の矢(いりあすびーむ)

 

 

 

 次の瞬間、ギガントウェポンが見たことがないほど引き絞られた聖光によるエネルギー矢が放たれ、彼女の装甲に着弾すると共に核兵器に並ぶほどの大爆発を起こし、浅くはないダメージを受けた。

 

「損傷……小……。聖、イオン、銀河によるダメージを確認……」

 

 ギガントウェポンの損失率にすれば軽度であるが、この場所が既に壊れた世界であるタルタロス内でなければ、大陸の都市を小さくなく消し飛ばす程の火力であり、明らかに戦略兵器クラスであることは間違いないだろう。

 

「あれ……? 可笑しいですね。たまもさんが乗ってたときの状態なら今の一撃で機能停止まで――――ああ、タルタロスに居たせいで若メスティンさんのように経年劣化しなかったのですか」

 

 聖光の爆炎により、ギガントウェポンからはまだ確認出来ないが、壊すべき侵入者は"ついでにリミットも解除されているようで……"と更に呟いており、天使特有の羽ばたきを最小限で飛ぶ静かな羽音だけが聞こえる。

 

 そして、爆炎が晴れると――そこにはロッドを片手に持ち、刀と忍者刀が自身の周囲に浮遊させる形で滞空している莫大な魔力を持つ隻腕隻脚の天使の姿があった。

 

 ギガントウェポンのデータベースから彼女の持つ武器は、全て聖魔大戦で使われた神威の宝剣に宝杖であるブラフマーロッド、七支刀、イザナギの小太刀であることが確認出来るが、ただ壊すだけのギガントウェポンにとっては関係のないことだ。

 

「侵入者、発見……攻撃開始」

 

「むしろ、好都合ですね。ありがたい、これならばアルカンシエルさんに力負けなんてしないでしょうし、思わぬ収穫ですよ」

 

「次元ごと圧縮する……」

 

 ギガントウェポンは、その巨体からはあり得ない速度で迫りつつ、"十次元圧縮"によってまだ離れた位置にいる天使を中心とした一帯の空間そのものを圧壊する。

 

 しかし、六枚の天使はその場から動かずに翼を空間に突き立てるように伸ばすことで、自身周囲の空間の圧壊だけを防ぐ。

 

「抹消……」

 

 それを見たギガントウェポンは何らかの強化を施していると判断したため、"凍てつく波動"を放ち、天使に掛かる魔術や技術的な強化を全て無に帰したが、特に打ち消されたような様子はない。

 

「出力アップ……」

 

 更に"アルティメットチャージ"により、自身の出力を数倍まで向上させた。

 

 

零式・神の矢(ぜろしき・いりあすびーむ)

 

「…………!」

 

 

 次の瞬間、天使から星々を束ねた矢のような光線状の聖光の極光が放たれ、ギガントウェポンに着弾し、その巨体を激しく揺さぶる。

 

 それはギガントウェポンの装甲を破壊し、最大耐久の大半を一撃で持って行く。それは地形そのものを大きく変え得る程の火力であり、明らかに世界というスケールから逸脱した力であろう。

 

「損傷……大……。高熱放射……」

 

「良い火力ですね」

 

 攻撃を受けながらもギガントウェポンは天使を破壊するため、"無塵焔"を吐き出し、核熱で焼却しに掛かろうとするが、天使は翼を盾に防ぎ切る。

 

 翼の表面が焦げる様子が見て取れるが、天使の莫大な生命力からすれば大した損害でもないであろう。

 

「エネルギー充電完了……波動砲……」

 

 攻撃を受けながらも走り続けているギガントウェポンは、核熱の焔が天使を焼いている状態で"波動砲"を放つ。

 

 それも天使の翼に直撃――する寸前でロッドが振るわれ、空間そのものを堰き止めるような防御壁が正面に展開され、それが"波動砲"による滅びの光りを防ぎ切った。

 

「刻み込む……」

 

 そのうちに天使の眼前まで到達していたギガントウェポンは、国ひとつを押し潰すようなバイオと修羅属性の空間制圧である"ベノムグランデ"を放ち、天使の真上から振り下ろされたそれは容易く防御壁を砕き、天使に直撃する。

 

「素晴らしい戦闘能力ですね。益々、欲しくなってしまいましたよ? お待ち下さいね……イリアス様」

 

 しかし、天使は浮遊する刀と忍者刀をクロスさせて、"ベノムグランデ"を受け止めており、その身体にまでは届いていない。

 

「では、レベルを上げます。是非、攻略してみてください」

 

 逆にほぼゼロ距離で、天使のロッドがギガントウェポンの巨体に据えられた。

 

 

 

神の矢(ジャッチメント・デイ)

 

「…………!?!?」

 

 

 

 ゼロ距離からの自爆すら厭わない上、これまでの比ではない威力の爆撃により、ギガントウェポンの巨体は紙のように数百十m吹き飛ばされ、更に並みの生物ならば余波だけで粉々に変わるような途方もない衝撃により地にめり込み、動くことさえ叶わない。

 

 当然ながら威力自体も絶大であり、衝撃が迸る衝撃と破壊に全身を打ち砕かれ、完全に沈み込む。

 

「ギ、ガガ……損傷……甚大……」

 

 何とか首だけを起こして天使を見据えれば、自爆したにも関わらず、全くの無傷の状態で微笑ましいものを見るかのような笑みを浮かべながらロッドを向けている姿だけがある。

 

「まだ、動けますか。なんと喜ばしい。ひとまず、耐久に関しては及第点ですね。六祖以上かも知れません。これなら……私の留守や、万が一また死亡した場合にイリアス様をお守りする衛兵として不足はないでしょう」

 

 既に満足に動くことも叶わないほど損傷を受けているギガントウェポンは、天使を眺めるだけに留まり――次弾の発射態勢に入り、周囲に惑星が並ぶように控えた色とりどりで数多の"神の矢"の聖光が目に入った。

 

 更にギガントウェポンのセンサーは、それを聖に加えて、それぞれが核熱・量子・イオン・ハドロン・テラ・ナノ・永劫・終焉・銀河の混沌属性を帯び、今までの神の矢ひとつと同等のエネルギーが9つ並んでいるものであると断定する。

 

「全て…………破壊……を……」

 

「光栄に思いなさい。コレを使うのは聖魔大戦と、たまもさんと決闘をした時以来ですよ? では――今の9倍です」

 

 その言葉と共に全ての神の矢が輝き、眩いばかりの聖光の煌めきが周囲を照らす。

 

 そして、タルタロスの空間そのものが光りに染まり、その光は周囲全てのアポトーシスを無へと変える。

 

 

 

 

神の矢・九極絶対破戒(リヒト・ゾイレ)

 

 

 

 

 ギガントウェポンは、造られて初めて手で身体を覆い、防御態勢を取ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「設定、初期化……」

 

「はえー……やはりもんくえの時のギガントウェポンさんとは比べ物になりませんねぇ……」

 

 戦闘終了後、カナンはボコボコにしたギガントウェポンを勝利しつつ一度半壊させた彼女に対して、改良を施していた。

 

「ユーザーを認識……」

 

「……しかし、魔術の使い方が雑と言う他ないですね。なんですかこのスパゲッティコード呪文に魔法陣の数々は……? あーあー……こんなところまで魔術にしてしまうのは逆に死ぬほど非効率的でしょうが……」

 

 周囲にはアポトーシスがいたため、現在カナンはポケット魔王城の中におり、そのエントランスホールのど真ん中に陣取って作業をし、ぶつぶつと独り言を呟きながらも作業の手を止める様子はない。

 

 このポケット魔王城は本編でアリスが持っており、彼女が渡すか、彼女のモノをイリアスが掏摸(すり)を働いて入手するモノではなく、ルカにアリスベアが渡したものをカナンが回収したモノであった。

 

 まあ、実質ぎがの家と化していたため、ルカが持っている必要もないのだろう。

 

 しかし、よく見ればこのポケット魔王城の内装は明らかに魔導科学由来の機械的ものに変わっており、魔導科学分野にもかなり明るいカナンが勝手に改装し、移動式研究所としていると見て間違いない。

 

「セットアップ開始……」

 

「製作者の邪神様だけでなく昔のイリアス様もそうでしたが……文明と技術に選り好みなどするからこういうことになるのです。少し魔導科学制御を組み込めば――はい、これで二度と暴走など起こしません」

 

 そして、戦闘から1時間も経った頃には、戦闘前と同様に新品同然の輝きを取り戻したギガントウェポンの姿があり、空中に投影されているディスプレイに触れながらもカナンは何処か得意げな様子に見える。

 

「ユーザー登録、待機中……」

 

「ふぅ……」

 

(さて……もちろん、ギガントさんも終章にいるんでしょうけれど……もんくえでは噛ませ役でしたし、この世界のタルタロスにいましたから序盤に戦う配置のボスでしょうねぇ……。このレベルの相手が序盤ボスって……終章の相手の強さヤバくないですか……? 異世界の七大天使や六祖に私、勝てるんでしょうかぁ……?)

 

 声に出すような内容ではないため、カナンは内心でそのように考え、まだ見ぬ強敵の姿を思い出しつつ身震いする。ちなみにこの震えには、頬を赤らめ恍惚とした表情が付随していた。

 

「えへへ……楽しみです……と、今はそれを考えていても仕方ないですね」

 

(終章体験版では、邪神か女神のどちらかに着くかに加え、第三の道を選ぶ選択肢があったとスレの方からは聞いているので――)

 

「まあ、第三の道以外は恐らく実質バッドエンドでしょう」

 

 そう零したカナンは、それについて更に脱線気味に思考を巡らせる。

 

(なーんか、軽く元ネタになっていそうなファイアーエムブレムifも白夜と暗夜のどちらについても結局、後味の悪い結末でしたし……。なんだ透魔王ってお前、どういう気持ちで最序盤かつ全ルートでカムイさんに伴していたんですか)

 

 そこまで考えたところで、カナンは小さく溜め息を吐いた。

 

(それに比べれば、こちらは混沌という敵が常に見えているだけマシというものですか……)

 

「おっと、いつの間にか終わっていましたね。お待たせしました。では……ポチッとな」

 

「ユーザー認識、完了……カナンをユーザーとして登録……」

 

「はい、よくできました。可愛らしいですねぇ」

 

「………………」

 

 再起動して目覚めたギガントウェポン――ギガントはカナンを見据え、少し目を見開いて巨体に似合わず小さく身を震わせたが、自身の主であることを認識し、兵器である彼女の個人としての意思の希薄さも相まってそれ以上のことは何もなかった。

 

「怯えちゃって可愛いですね。それより、ちょっと触りますよ?」

 

 そう言うとカナンは、ギガントの人型の部分の場所まで飛んで行き、彼女を片腕と翼で抱擁すると――その胸の片方だけに触れた。

 

「んっ……」

 

「はい、もう搾れたので大丈夫ですよ」

 

 するとギガントが艶のある声を上げた既に次の瞬間には、カナンの手にミルクの入った小瓶が2つ握られており、気付けば自身の両方の乳房が自身から出たであろうソレで濡れていることに気付く。

 

 さながら汚いおとぎ話の魔法や、時間でも止められたかのような状況にギガントは目を白黒させるばかりだ。

 

「母乳の排出を確認……マスターの意図、不明……」

 

「ちょっぴり実益を兼ねたただの趣味です。全ての魔物と天使からミルクを搾ることが私の生き甲斐のひとつなのですよ」

 

 そう言いつつ、カナンは搾乳したギガントウェポンのミルクの瓶の片方を仕舞うと、当たり前のようにもう片方に口をつけた。

 

「…………!?!?」

 

「はぁ……これほど芳醇な香りで、まろやかな口当たりでありながら甘く濃厚なミルクはあまり飲んだことがありません……ソムリエとしてこのような表現をすることは良くはありませんが、究極のミルクと言ったところでしょう。けれどやはり、本人がまだ個人としては生まれたばかりもいいところで幼いからでしょうか? これでも青く途上な部分が残されておりますね。そこだけが、少々残念に思いました。なので今後の期待を込めて、星5つとさせていただきます」

 

 そして、レビューされた。ちなみにこの不審者は、ポルノフによく出入りしている熾天使である。

 

「さて……夕飯に帰るまでには、移動時間を加味してもまだ少し時間がありますねぇ……」

 

 すると何事も無かったかのように空になったミルク瓶を仕舞ったカナンは、ギガントの身体をそっと抱き締めると目を合わせる。

 

 

「じゃあ、えっちしましょうね?」

 

 

 そして、一言それだけ言うと、伝説級のサキュバスのような魔性の色香を放ち出し、更に抗えぬ魅了にも似た視線を向けつつ、恋人のように優しげな手付きで彼女の唇を奪ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 







〜 技一覧 〜


零式・神の矢(ぜろしき・いりあすびーむ)
聖技
対象:全体攻撃
威力:Z(力or魔or器)
属性:聖・イオン・銀河
付与:即死・昇天・瀕死・ショック・スロウ・ストップ
特効:ショック・スロウ・ストップ・魔物・ボス
説明:大陸間弾道ミサイル並みの射程を中距離程まで落とし、密度と威力を引き上げた光線状のイリアスビーム。

※他にも高射式・高格式・追尾式・潜地式・報復式・いりあす球などのバリエーションがあるらしい。



神の矢(ジャッチメント・デイ)
聖技
対象:全体攻撃
威力:ZZ(力or魔or器)
属性:聖・イオン・銀河
付与:即死・昇天・瀕死・ショック・スロウ・ストップ
特効:ショック・スロウ・ストップ・魔物・ボス
説明:いりあすびーむではなく正しく神言を詠んでいる。威力制限を全て解除された破壊の一矢。



神の矢・九極絶対破戒(リヒト・ゾイレ)
聖技
対象:全体攻撃(9回)
威力:4Z(力or魔or器)
属性:聖・核熱・量子・イオン・ハドロン・テラ・ナノ・永劫・終焉・銀河
付与:即死・昇天・瀕死・暗闇・沈黙・混乱・麻痺・バーン・フリーズ・ショック・スロウ・ストップ・スタン
特効:暗闇・沈黙・混乱・麻痺・バーン・フリーズ・ショック・スロウ・ストップ・スタン・魔物・ボス
説明:聖属性に九種の混沌属性を乗せた神の矢の九連連べ打ち。聖魔大戦でカナンを六祖達が閉じ込めた時に初めて確認された秘奥義。

※聖魔融合の失敗作であるが、その副次効果で半ば無限に魔力を供給できる能力を持つカナンにとって神の矢とは格ゲーの溜め強ぐらいで撃てる認識である



カナンの乳搾り
奉仕技
対象:敵単体
効果:ミルク獲得
説明:乳と蜜の流れる地であるカナンの神威足る乳搾り。必ず、2つミルクを獲得する



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