イ号潜水艦の日常   作:もっちー太郎

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アニメ最終話の直前から始まります。
劇中では沈んでしまった402が主人公で、アニメには出てこない腹黒総旗艦やその他の愉快な仲間たちが少し出てきます。
オリジナルとしてイ号14や潜水母艦タイゲイとかが出てきます。


任務:1日目

 ―太平洋・水深6097m―

 

 

 

 一隻の潜水艦が、暗い海の中を這うように潜航している。

 

 船体に生じるキャビテーションと漏れる淡い金色が、静かな海にシルエットを投影し、まるで光る鯨が泳いでいるようであった。

 

“海中探査レベルB・情報深度B・観測監視――対象、発見”

 

『14より総旗艦へ報告――――アデラ海丘にて撃沈された402のユニオンコアを発見・回収しました。しかし400のコアが残骸すら見当たりません。捜索範囲を広げてみますか』

 

『もう十分よ。ご苦労様』

 

『承知いたしました』

 

 14は海底に投射していたレーザー機器を格納すると、転進。

 

 暗い闇の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―太平洋・洋上―

 

 

 

 広大な甲板に、1人の少女が立っている。薄い栗色の髪を海風になびかせ、てっぺんには可愛らしいピンクのリボン。身に着ける胸元が大胆に開いたドレスも、同じように淡いピンクだ。

 

『総旗艦。ただいま帰還いたしました』

 

 遮るものが何もない洋上。しかしそこに巨大な物体が浮かび、それは霧の艦隊の総旗艦を務める超戦艦「ヤマト」である。ただし本体はデルタコアであり、船体は武装に過ぎない。

 

 ヤマトの船体のとなりには、もう一隻の船が浮かんでおり、これはヤマトの半分程度の全長しかない。しかし及ばないながらも超戦艦に近い索敵能力を有し、イ400型の部下にあたる艦艇である。

 

「おかえりなさい、14。ごめんなさいね。あなたがいてくれて助かったわ」

 

 ヤマトは申し訳なさそうに笑みを浮かべると、甲板を歩き手すりのほうへ。すると14の船体から銀色の粒子が流れてきた。

 

『402のユニオンコアです』

 

 両手でお椀を作るヤマト。次の瞬間にはその手の中に、卵サイズの物体が置かれていた。

 

『船体とメンタルモデルを構成していたナノマテリアルはすでに機能を失っていました。コアのみでの脱出で精一杯だったのでしょう』

 

 ヤマトの中へと14の声が流れ込んでくる。これは霧同士が行う概念伝達と呼ばれるもので、主に情報の交換に用いられるものである。メンタルモデルを持つ艦同士であれば直接話を行うことができるのだが、イ14はメンタルモデルを持たないため、こうして概念伝達での通信を行っているのだ。

 

「そう。あの子が沈められるなんてね……。戦況はネットワークにアップロードされてたけど、あの子も強くなってるのね」

 

 沈痛な面持ちで402のコアを見つめるヤマト。彼女はコアを握りしめると、しかし次には明るい笑顔を浮かべていた。

 

「14。あなたは本来の任務に戻ってちょうだい。400と402が抜けた今、この任務ができるのはあなたたち13型だけよ」

 

『承知いたしました』

 

 14はそう言い残すと、艦首の方から海中へと潜っていく。それを見守るのはヤマトと、彼女と瓜二つの外見をしたもう1人のメンタルモデル・コトノ。

 

 コトノもヤマトのデルタコアによって作り出されたメンタルモデルであるが、思考は完全に独立しており、ヤマトとはまったくの別人として振舞う。そんな彼女であるが、存在を知るのは一部の霧だけであり、14も例に漏れずコトノの存在を知らなかったのだ。

 

「特に意味はないんだけどね。思わず砲塔の影に隠れちゃった」

 

 ヤマトの元へと歩み寄るコトノ。そうして2人を比べてみると、違うのは表情と服装だけである。ヤマトが優雅な余裕のある表情なのに比べ、コトノはただただ楽しそうな、嬉しそうな表情。服装もヤマトがドレス風なのに対し、コトノはどこかの制服らしきものを着ている。

 

「こうしてコアのみで帰ってきただけでも大殊勲としておきましょう。コトノ、これからメンタルモデルと船体のナノマテリアルを分け与えますけど、問題ありませんよね?」

 

「いいよ、別に。タイゲイも来てるんでしょ? あとで港に寄るように言っておくから」

 

「そうね。じゃあ」

 

 コトノに確認を取り、ヤマトは402のユニオンコアを自身の甲板に置く。するとヤマト船尾が発光し、そこから溢れ出した銀色の粒子が402のコアの周りで渦を巻きだす。そうしてほんの数秒のうちに銀色のそれは人の形を作り出し、ついにヤマトとコトノの前に小さな少女・イ402のメンタルモデルが立ち上がった。

 

「総旗艦、コトノ様。今回は申し訳ありませんでした。401の撃沈に失敗しただけではなく、自身も沈められてしまい……」

 

「いいのよ、402。今回はイレギュラーだったの。まさかあのタカオが自身を犠牲にするなんて……」

 

「メンタルモデルを持つが故か、あるいは群像くんのせいなのかもね」

 

「……そうね。自己犠牲なんて霧には本来ないもの。人類との接触が感情のプログラムに重大な変化を与えている」

 

「今回は失敗しましたが、次は必ず沈めてみせます。どうかご命令を」

 

「その心意気はいいけれど、あなたは船体を失いまともな戦力はないわ。まずは母艦であるタイゲイからナノマテリアルの補給を受けなさい。それと401はコンゴウを退け太平洋を進んでいる。タカオと融合し複数の大戦艦のコアを副処理装置として乗せている今の彼女をあなたたち潜水艦が沈めるのはやはり難しい。今後の対応を練る間あなたは陸に上がりなさい」

 

 ヤマトの言葉に402の表情がほんの少しだけ動く。けれどヤマトはその変化を見逃さなかった。

 

「自己犠牲、といったけれど、それはあなたも同じ。400を庇ったでしょう?」

 

 アメリカへ向け航行する401。そんな彼女を沈めるべく追跡を開始した400と402。ついには姉妹艦同士での戦闘になったのだが、浸食魚雷を受けそうになった400を402はその身を挺して守ったのだ。400はもちろん、402自身も自らの行動に整合性を見つけられず、ついにその口から出た言葉は「お前を傷つけたくなかった」。

 

 自分自身の言葉に戸惑いながらも、コアに芽生えた何かを認識した402は、しかし目の前で姉である400を失ってしまう。

 

「今のあなたならきっとできるはずよ。アドミラリティ・コードに従うのもいいけれど、少しだけなら自分のために行動してもいいと思うの。それに陸に上がって経験値を稼ぐことは、結果的にあなたの戦術にとって有益に働くかもしれない。何事も臨機応変にね」

 

「そうよ。行っておいで。海底に沈んだ都市もいいけど、陸にある人間の暮らす街も悪くない」

 

「……臨機……応変。わかりました。それでは総旗艦、コトノ様。これより私は陸に上がり――……あの」

 

 相変わらず無表情な402だが、今の彼女の声には少しだけ不安の色が混じっている。

 

「一応作戦行動という名目にしていただけないでしょうか。ただ単に陸に上がるだけでは目的が見えないというか……」

 

「そうね。じゃああなたはこれより横須賀市街地へ潜入し、人類の情報を集める。これでどう?」

 

「了解。それではこれより諜報活動に入ります」

 

 402はそう言うと、遥か遠く、横須賀の方へと視線を向けた。

 




このサイトで書くのは初めてですが、映画化ということで、ぜひ400・402も復活してほしいという思いで書きました。
見切り発車ですが、のんびり書いていこうと思います。文章が下手で見づらいかもしれませんが……。
誤字脱字の指摘・感想等なんでもどうぞ。
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