買い出しから帰宅した402は、自宅の惨状を見て愕然とした。恐怖さえ覚えたほどに。
「あ、おかーさんこんちゃーっす」
部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台に湯呑を置いて、霧の海域強襲制圧艦「ズイカク」のメンタルモデルが海苔せんべいをかじっていたのだ。
「……何をやっている、ズイカク」
402の問いかけにズイカクはにへらと気味の悪い笑みを浮かべると、やけにぬるぬるとした動きで畳の上を這い進み、402の露出した足首に自身の頬をすりすりと擦りつける。
小さな悲鳴と共に402が飛び退くと、ズイカクはその場に女座りをし、女々しくしくしくと泣き出してしまった。
「最近、全然構ってくれないからこうして会いに来たのだ」
「お前はナガトの命でオホーツクに展開してたんじゃないのか? 私は遊びで陸に上がっているんじゃないのだが。だいたい部屋の扉には鍵をかけていたはずなのに」
「いやだな、霧に対して人類製の鍵なんてないようなものだぞ」
「……確かに」
納得させられる402だが、言いたいことは山ほどある。
任務を放棄して部屋に侵入するのもそうだし、402をお母さん呼ばわりし、勝手に茶を用意して菓子まで食べているのだ。402が怒るのも仕方ない。
「悪いと思っている。だからお詫びに海産物を土産に持ってきた」
そう言ってズイカクは背後からバケツを引っ張り出す。
中には魚やウニ、貝、タコなどが入っており、402はそこで気が付いたが、部屋の中が磯臭かったのである。
「お前な……。嫌がらせか? せめて密閉して持って来いよ。臭いだろうが」
「ごめんごめん」
てへっと自分の頭を小突くズイカクだが、それは402の怒りを助長させる。
「本当に、こんなことしに来ただけなのか? ショウカクにチクってもいいんだぞ」
「……それは勘弁。怖いとかじゃなく面倒臭いから。いやな、ちゃんと用はあるんだよ」
「……なんだ?」
「……セイラン、貸して?」
▽ ▽ ▽
「明日には返すから~。ありがとー」
要塞港・横須賀から沖合に10㎞の海上。
海に浮かぶのは402の船体であり、格納庫からセイランを引っ張り出している最中である。
結局最後まで使用用途を答えなかったズイカクであるが、貸さなければいつまでも帰る気配がなかったし、402はセイランを貸すことにした。
「お前、自分で艦載機作ればよくないか? 前は使ってたじゃないか」
「いやー、一度全部潰してしまってるしな。再構成するのもなんだか面倒臭い」
「コンゴウみたいなことを言いよってからに。まあいい。早く返せよ」
そうしてズイカクは飛び立っていった。
一人海上に残されたズイカクは、大きく深いため息を吐いたのであった。
まさか一年以上間が空くとは思っていなかった。劇場版も綺麗に完結してしまい内心焦っている。