イ号潜水艦の日常   作:もっちー太郎

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任務:13日目

 買い出しから帰宅した402は、自宅の惨状を見て愕然とした。恐怖さえ覚えたほどに。

 

「あ、おかーさんこんちゃーっす」

 

 部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台に湯呑を置いて、霧の海域強襲制圧艦「ズイカク」のメンタルモデルが海苔せんべいをかじっていたのだ。

 

「……何をやっている、ズイカク」

 

 402の問いかけにズイカクはにへらと気味の悪い笑みを浮かべると、やけにぬるぬるとした動きで畳の上を這い進み、402の露出した足首に自身の頬をすりすりと擦りつける。

 小さな悲鳴と共に402が飛び退くと、ズイカクはその場に女座りをし、女々しくしくしくと泣き出してしまった。

 

「最近、全然構ってくれないからこうして会いに来たのだ」

 

「お前はナガトの命でオホーツクに展開してたんじゃないのか? 私は遊びで陸に上がっているんじゃないのだが。だいたい部屋の扉には鍵をかけていたはずなのに」

 

「いやだな、霧に対して人類製の鍵なんてないようなものだぞ」

 

「……確かに」

 

 納得させられる402だが、言いたいことは山ほどある。

 任務を放棄して部屋に侵入するのもそうだし、402をお母さん呼ばわりし、勝手に茶を用意して菓子まで食べているのだ。402が怒るのも仕方ない。

 

「悪いと思っている。だからお詫びに海産物を土産に持ってきた」

 

 そう言ってズイカクは背後からバケツを引っ張り出す。

 中には魚やウニ、貝、タコなどが入っており、402はそこで気が付いたが、部屋の中が磯臭かったのである。

 

「お前な……。嫌がらせか? せめて密閉して持って来いよ。臭いだろうが」

 

「ごめんごめん」

 

 てへっと自分の頭を小突くズイカクだが、それは402の怒りを助長させる。

 

「本当に、こんなことしに来ただけなのか? ショウカクにチクってもいいんだぞ」

 

「……それは勘弁。怖いとかじゃなく面倒臭いから。いやな、ちゃんと用はあるんだよ」

 

「……なんだ?」

 

「……セイラン、貸して?」

 

 

     ▽     ▽     ▽

 

 

「明日には返すから~。ありがとー」

 

 要塞港・横須賀から沖合に10㎞の海上。

 海に浮かぶのは402の船体であり、格納庫からセイランを引っ張り出している最中である。

 結局最後まで使用用途を答えなかったズイカクであるが、貸さなければいつまでも帰る気配がなかったし、402はセイランを貸すことにした。

 

「お前、自分で艦載機作ればよくないか? 前は使ってたじゃないか」

 

「いやー、一度全部潰してしまってるしな。再構成するのもなんだか面倒臭い」

 

「コンゴウみたいなことを言いよってからに。まあいい。早く返せよ」

 

 そうしてズイカクは飛び立っていった。

 

 一人海上に残されたズイカクは、大きく深いため息を吐いたのであった。

 




まさか一年以上間が空くとは思っていなかった。劇場版も綺麗に完結してしまい内心焦っている。
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