彼女のキスはピリリと魔法の味 ~世界の未来は彼女の唇に託された~   作:月城 友麻

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16. ツンデレのママ

 儀式が終わり、紗雪は静かに目をつぶり、まるで英斗との熱い営みを心の奥で温めるかのように手を胸に当て大きく息をついた。刹那、黄金色の光がブワッと噴き出して、全身が光に包まれる。龍族に与えられたその神聖な力は紗雪に限りない力を与えていく。

 

 悪逆非道な魔王を打ち滅ぼして人類の未来を勝ち得なくては、と紗雪は取り出したシャーペンに力をこめ、赤く光らせた。

 

 

     ◇

 

 

「おーい、もういいぞ」

 

 レヴィアがニヤけながら英斗の耳元でささやく。

 

 英斗は渋い顔でレヴィアをにらみつけると、わざと大きな声で、

 

「あー、良く寝た!」

 

 と、言いながら起き上がる。

 

 紗雪は腕組みをしながら険しい顔で遠くを眺めていた。それはまさにいつもの【三組のクールビューティ】。隙のない完璧な美少女だった。

 

 英斗はゴホッと咳ばらいをすると、

 

「さ、紗雪……、ど、どうしたんだ?」

 

 と、渾身の演技をする。

 

「『どうしたんだ』じゃないわ。呼び出されて、いい迷惑なんだけど?」

 

 紗雪はムスッとした顔でぶっきらぼうに言うと、手の甲で髪の毛をかき上げるしぐさをする。しかし、ショートになった髪型ではそこに髪の毛はなかった。

 

 それを恥ずかしく思ったのか、口をとがらせて苛立たしそうに英斗をにらみつける。

 

「ご、ごめんよぉ。でも、助けに来てくれたんだね……、ありがとう」

 

 さっきとは打って変わった態度に苦笑しながら、英斗は頭を下げる。

 

「別にあんたのためじゃないわ。私は魔物退治に来ただけ。勘違いはやめて」

 

 紗雪は不機嫌そうにそう言うとプイっと顔をそむけた。白く透き通る肌が紅潮し、照れているのが一目瞭然(りょうぜん)である。

 

 紗雪の本心を知ってしまった今では、そんなぶっきらぼうな態度すら英斗には愛しく思えてしまう。

 

 英斗は微笑みを浮かべながら、謝り続ける。

 

 早く全て終わらせてちゃんとした両想いの関係を築いていくのだと、英斗は秘かにギュッとこぶしを握った。

 

 

         ◇

 

 

 ズン! と、激しい地響きを響かせながらドラゴン形態のレヴィアが着地する。

 

 まるでアパートが落ちてきたような圧倒的な迫力で、エイジは改めてファンタジーな生き物であるドラゴンの凄まじさに気おされる。

 

「早く乗れ!」

 

 ドラゴンは頭を地面にまで下ろし、腹の底に響く重低音で言った。

 

 漆黒のいかつい鱗に覆われたドラゴンだったが、鱗にはとげが伸びており、それをつかんでいくとよじ登っていけそうだった。

 

 英斗がとげの具合を引っ張って確かめていると、横をタニアが登っていく。

 

「タ、タニアも行くのか?」

 

 英斗が驚くと、

 

「あたちも行くー! きゃははは!」

 

 と、上機嫌に笑った。

 

 ピョンと身軽に飛び乗った紗雪は、タニアをにらみ、

 

「ちょっと! 遊びに行くんじゃないんだからね!」

 

 と、渋い顔で怒る。

 

 しかし、タニアは器用にまるで猿のようによじ登ると、

 

「ママー!」

 

 と、言いながら紗雪に飛びついた。

 

「マ、ママ!?」

 

 目を皿のようにして驚いた紗雪は、幼女にしがみつかれてどうしたものか困惑し、

 

「ちょっと、この娘なんとかしてよ! なんで私がママなのよ?」

 

 と、口をとがらせ、英斗に助けを求める。

 

「同じ龍族だから紗雪とも親戚なんだと思うよ? どことなく目元もそっくりじゃないか」

 

「こんな娘、知らないわよ!」

 

 すると、タニアは紗雪と英斗を交互に見ながら言った。

 

「パパ! ママ! ケンカはダメ!」

 

「ちょ、ちょっと待って。なんでこいつがパパなのよ?」

 

「だってさっきチュウ……」

 

 タニアがそう言いかけると、紗雪は真っ赤になって、言葉をさえぎるように、

 

「あ――――! 分かった! 分かったわ! いい子ね、よしよし!」

 

 と、叫び、タニアをギュッと抱きしめ、プニプニのほっぺにすりすりと頬ずりをした。

 

 タニアは、目をつぶり、幸せそうにつぶやく。

 

「ママぁ……」

 

「もう、しょうがないわねぇ。子供には勝てないわ」

 

 紗雪は幸せそうな顔をしながら、サラサラのタニアの髪を優しくなでた。

 

 美少女と可愛い幼女の組み合わせは尊く、英斗はうんうんとうなずきながら目を細める。

 

 決戦前の心温まるひと時。英斗はこんな時間がいつまでも続けばいいのにと軽く首を振った。

 

 

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