碧き惑星、想いはダイヤモンドの吹雪を越えて ~破天荒な美少女たちの奮闘は神話を紡ぐ~   作:月城 友麻

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19. 宇宙へ

「シ、シアン様ぁ……」

 

 レヴィアが情けない顔をして震えていると、ガラガラっといきなり倉庫のドアが開いた。

 

「きゃははは! 失敗、失敗」

 

 振り返ると、水色のワンピース姿のシアンが笑っている。

 

「えっ!? そ、そのボディは?」

 

「新型の試作品だよ。当社比10%アップの性能だよ!」

 

 楽しそうにくるりと回って、ワンピースの裾をヒラヒラと舞わせるシアン。

 

「なんとも……ないんですか?」

 

「え? 何が?」

 

「今、爆発してましたよね?」

 

「あー、これで十回目だからもう慣れたゾ! きゃははは!」

 

 シアンは屈託のない様子で笑い、レヴィアは気の抜けた顔でゆっくりとうなずいた。

 

 冬の間にロケットエンジン付きのボディを十体も開発して爆発させていた、それはレヴィアにとっては衝撃的だった。『暇だった』なんてとんでもない。ものすごい開発と実践だった。

 

 レヴィアは自分の浅はかさを恥じ、思わずシアンに抱き着いた。

 

「あ、あれ? レヴィちゃん、どうしたの?」

 

 レヴィアは何も言わずギュッとシアンを抱きしめ、その温かな体温を感じる。

 

 シアンはふぅと大きく息をつくと、サラサラと輝くレヴィアの金髪を優しくなでた。

 

 カーンカーンとくい打ちの音が響く谷間に、ビュゥと涼しい風が吹きわたっていく。

 

 

      ◇

 

 

 三年後、工事は無事竣工した。出来上がったのは空へとまっすぐ伸びた銅のレールだった。レールは鋼鉄の円筒に守られ、強風をものともせず空へのルートを確保している。

 

 そう、これはレールガン、宇宙へと続く発射台だった。

 

「よーし! 撃ってみよう!」

 

 黄色いヘルメットをかぶったシアンは、コントロールルームで腕を高く掲げ、叫ぶ。

 

 その楽しそうな様子にほおを緩めたレヴィアは大きく息をつくと、

 

「充電開始します!」

 

 と、レバーをグイッと引いた。

 

 キュィィィィン!

 

 派手な高周波音が谷間に響き渡る。レールのふもとに立てられた充電塔に電気が注入されているのだ。レールガンの消費する電力はけた違い、それこそ大きな街の一日の消費電力をわずかコンマ何秒かの間に銅のレールにぶち込んで、その圧倒的なエネルギーを推進力に変えてコンテナを吹っ飛ばす。まさに電力の砲塔だった。

 

 この日のために、高さ一キロメートルはあろうかという巨大な風車を見渡す限り大量に建築してきた二人は、充電音を聞きながらその苦労を感慨深く思い出す。

 

 やがてモニターに緑色のサインが点灯する。

 

「コンテナ装填ヨシ! 充電ヨシ!」

 

 レヴィアが緊張した声で叫び、右手を高く上げた。

 

「オッケー! ポチっとな!」

 

 シアンは赤くてゴツいボタンをガチッと奥まで押し込む。

 

 刹那、激しい爆音が渓谷に響き渡り、山頂のレールの先からは壮大なオレンジのプラズマの炎が吹きあがる。

 

 一瞬でマッハ三十に加速されたコンテナは、激しい衝撃波を放ちながら明るく輝き、東の空はるかかなた高く見えなくなっていった。

 

「きゃははは!」「おぉぉぉ……」

 

 そのど派手な宇宙への打ち上げ花火は、二人に大いなるメルクマールを超えた達成感を与えていく。

 

 観測装置で軌跡を追っていた二人は、無事に大気圏を超え宇宙空間へと消えていくのを確認する。

 

「やったー!」「すごい! すごい!」

 

 二人は抱き合ってピョンピョンと飛び跳ねた。

 

 そう、二人は宇宙へと続く道を作り上げたのだった。地球をシミュレートするコンピューターはスパコンの何億倍もの電力を食う。それを安定稼働するためには地上の設備だけでは心もとなかったのだ。

 

 この日から、メタアース計画は宇宙開発計画へと大きく舵を切ることになる。

 

 次々と打ち上げられた資材はまずは月面で基地になり、工場になっていく。

 

 やがて、月面整備が済むと、二人は月面の工場でどんどんと光コンピューターや太陽光パネルなどの部品を製造していった。

 

 千年後、今後は月面から新たな出荷が始まる。月面に作られた新たなレールガンは太陽と海王星向けてそれぞれ必要な資材を打ち出していく。

 

 満天の星々の中へと吸い込まれていくように消えていくコンテナたち。シアンとレヴィアは何も言わず、ただ静かにコンテナの行方を見守った。

 

 

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