碧き惑星、想いはダイヤモンドの吹雪を越えて ~破天荒な美少女たちの奮闘は神話を紡ぐ~   作:月城 友麻

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23. アダムとイブ

「お、お目覚めは……いかがですか? ご主人様」

 

 レヴィアは目に涙を浮かべながらそっと歩み寄る。

 

「えっ!? レヴィちゃん、何その身体は……? それにシアンも……温かい……?」

 

 しょぼいメタバースでしか会ったことのなかった二人が今、目の前で実体となって動いている。シアンの身体も温かく、柔らかく、優しい甘酸っぱい香りが立ち上っている。

 

「ま、まさか……」

 

「その、まさかだよ、ようこそメタアースへ!」

 

 シアンはそう言うとエイジのほほに頬ずりをして幸せそうに微笑んだ。二人はついにエイジとの再会を果たしたのだった。かかった時間は実に五十万年。それは想像を絶する遥かなる時を経た再会だった。

 

 一度滅んだ人類は、青く美しく輝くまっさらな地球を得てデジタルの世界によみがえったのだ。

 

 エイジは信じられないという顔をしてベッドから飛び降り、窓を開け、景色を眺める。そこには芦ノ湖が広がり、その向こうには雄大な富士山。失われたはずの森の木々が青々と茂り、さわやかな風がそよぎ、チチッチチッと小鳥たちがさえずっていた。

 

 お、おぉぉぉ……。

 

 エイジはまさに現実そのものの世界に信じられないというような顔をしながら振り向いた。

 

「うほほほほ! 凄いぞお前たち!」

 

 そう叫びながらシアンとレヴィアに抱き着き、自然と流れる涙を気にもせずギューッと抱きしめた。

 

「ねぇ、もっと褒めて、褒めて!」「我も頑張ったんじゃ!」

 

 エイジの喜びように二人も嬉しくなり、我先におねだりをする。

 

「おぉ……シアン! レヴィア! お前たちは最高だ、自慢の娘達だよ!」

 

 エイジはそう言いながら二人の頭をやさしくなでていった。

 

 二人は幸せそうにエイジの胸に顔をうずめ、永遠にも感じられたこの五十年の寂しさを埋めていく。

 

 この日、新たなる神話がまさに始まったのだった。

 

 

      ◇

 

 

 十年ほどかけてメタアースの調整を進め、動植物を配置していく。哺乳類は六千種、鳥類は九千種、昆虫は百万種、植物は三十万種、それぞれリアルな世界のデータをベースに地球に放ち、生態系を構成していった。

 

 生態系が安定したのを見計らい、いよいよ人類を創造するフェーズに入る。

 

「さーて、じゃぁ人間を配置するよっ!」

 

 シアンはノリノリで、会議室の空中にホモサピエンスの男女の3D像を浮かべた。イチジクの葉で大事なところを隠した裸体がクルクルと回っている。

 

「これは……、アダムとイブ?」

 

 エイジはまるで聖書の創世記の一節かのような世界に、思わず圧倒される。

 

「そう呼んでもいいかもね。でも、多様性重要だから実際にはいろんな人種を世界中に配置するよ」

 

 そう言いながらシアンはトルコの東側、ヴァン湖のほとりに二人を配置した。

 

 そこは乾燥した気候で、カラッとした快晴の青空の下、青い水平線が続いている。

 

 アダムとイブは記憶喪失状態でいきなりこの世に産み落とされたことになって、驚き慌てた。周りを見回し、お互いを怪訝そうに見て警戒し、距離を取ってしまう。

 

「ちょっとこれ、可愛そうじゃない?」

 

 エイジは眉をひそめ、ハラハラしながら二人の動きを追った。

 

「神様は気軽に手を差し伸べちゃダメなんだゾ」

 

 シアンはニコッと笑うと、まるでペットショップから買ってきた犬猫が落ち着くのを待っているように、愛おしそうにアダムとイブを見つめた。

 

「そういうものか……、神様も大変だな」

 

 エイジはそう言ってふぅとため息をつく。

 

 アダムとイブはそれぞれ湖や森を散策したが、日も暮れる頃になってくると一人でいることの限界を感じ、ほとりに戻ってきた。

 

 警戒するイブに、アダムは見つけた野いちごの実をイブに差し出す。どうしたらいいか悩んでいたイブだったが、アダムがにっこりと笑うと、イブもニコッと笑い、受け取った。

 

 野イチゴを口に含んで甘酸っぱい味覚にちょっと渋い顔をしたイブだったが、気に入ったようでパクパクと食べていく。

 

 最後にはすっかり打ち解けて、手を取り合い、ねぐらを探しに森の中へと消えていった。

 

「これ、上手く行くかなぁ?」

 

 エイジは首をひねり、心配そうに言う。

 

「上手く行くまで繰り返すしかないよね。パパの祖先も一万年くらい前の姿はこんなんだったんじゃないかな?」

 

「えっ? 俺の祖先もアダムとイブ? 誰が作ったの?」

 

「さあね?」

 

 シアンはそう言って嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

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