碧き惑星、想いはダイヤモンドの吹雪を越えて ~破天荒な美少女たちの奮闘は神話を紡ぐ~   作:月城 友麻

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9. 終焉の時

 大統領は硝煙を薄く上げる銃を感慨深げに眺めた。

 

 この銃で得た大統領の地位。この数十年、ただこの祖国のためにただひたすら頑張ってきたはずだったが、今、終焉の時を迎えたようだ。

 

 大統領は目をつぶり、しばらくこの半生を思い返し、そして大きく息をつくと、

 

「我が祖国に栄光あれ!」

 

 と、叫びながら赤いボタンをこぶしで殴りつけた。

 

 隠されていたミサイルサイトから、世界中の海に展開している潜水艦から無数の核ミサイルが轟音を上げながら大空へと飛びたっていく。

 

 発射情報は瞬時に全て探知され、同盟国側も絶望の想いの中、報復の核ミサイルのボタンを押していった。

 

 宇宙にまで高く飛び上がった核ミサイルは、やがて放物線を描きながら世界各国の都市をめがけ次々と落ちてくる。

 

 迎撃ミサイルも次々と放たれていくが、数百発撃ち落としたとしても結果は変わらない。

 

 青く美しい地球は次々と激しい閃光に包まれていった。星の死を告げる断末魔の輝きはまるで太陽系を彩る花火のよう悲しい美しさを宇宙に放っていく。

 

 その日、全世界は核の炎に包まれ、数十億人が火の海の中で息絶えていった。

 

 ここに人類の輝かしい歴史は終焉(しゅうえん)を迎える。エイジとシアンの挑戦は完全なる失敗として一つの終止符を打ったのだった。

 

 

     ◇

 

 

 放射能に汚染された地球には廃墟と燃え尽きた森が広がり、舞い上がったススが太陽を覆い隠し、全く陽が出ない日々が続いた。

 

 植物は枯れはて、吹雪の吹き荒れる極寒の時代がやってくる。

 

 真っ暗なベッドルームでエイジは何も言わず天井を見つめていた。

 

 何が『人類の新時代』だ。人類滅亡じゃないか……。

 

 秘密基地には全てが整っており、エイジが暮らす上では何も不自由しなかったが、シェルターに避難している残り少ない人々の状況は日に日に悪化していた。

 

 シアンはたくさんのワーカーロボットを動員して、瓦礫の山の中から缶詰などの食料を掘り出したりして彼らを支えたが、希望の見えない暮らしでは心は病んでしまう。

 

 エイジは心休まる緑豊かなメタバースを提供し、避難民を誘ったが、乗ってくる人はわずかであり、多くの人は敵意を向けるだけだった。

 

 本来X国の大統領が悪いわけではあるが、人間は理屈だけでは考えられない。エイジが、シアンが余計なことをしたから人類は滅亡の縁に追い込まれてしまった、と考える人が多く生まれ、それが避難民たちの分断を呼んでいた。

 

 さらにAIの存在そのものが災厄であり、神をも恐れぬ悪行であると考える宗教【人類原理研究会】が生まれ、さらに混迷を深めていく。

 

 こんなストレスフルな日々を過ごし、エイジは何をどうしたらいいのかもわからず疲れ果て、ただ、暗闇でぼーっとしていた。

 

 ガチャっとドアが開き、シアンが入ってくる。

 

「パパー、夕飯だよー!」

 

 エイジはふぅとため息をつき、

 

「要らない……」

 

 と、言ってシアンに背を向けた。

 

 シアンはそんなエイジをジッと見つめ、しばらく何かを考えると、ニヤッと笑い、ベッドの毛布の中に入っていってエイジの背中にピタッとくっついた。

 

 エイジは驚いて、

 

「な、な、な、何すんだよ!」

 

 と、言いながら距離を取ろうとする。

 

 しかし、シアンはがっしりと背中にしがみついて離れない。そして耳元で、

 

「パパー、お願いがあるのぉ」

 

 と、甘ったるい声を出した。

 

「な、なんだよ?」

 

「僕、妹が欲しいなー」

 

「えっ!? 妹!?」

 

 エイジはいきなりのおねだりに唖然(あぜん)とする。要はもう一セットAIを立ち上げて欲しいと言われているのだ。

 

 もちろん、シアンには何万台ものワーカーロボットがあり、一緒に作業をしているわけではあるが、そうではなくて人格を持ったAIを別に欲しいということらしい。

 

 そしてそれはエイジにとっては極めて意外だった。もう一セットAIを作るということはただでさえひっ迫しているサーバーリソースは半分になってしまう。シアンにとっては損なはずなのだ。それでも欲しいという。

 

 エイジはそっと振り返り、キラキラとしたシアンの青い瞳を見ながら聞いてみる。

 

「なんで……、妹が欲しいんだ?」

 

「だって、そっちの方がパパも楽しくなるよ」

 

 そう言って屈託のない笑顔で笑うシアン。

 

 エイジはシアンに気を遣わせてしまったことを情けなく思い、それでも確かにもう一人いたら楽しいことになりそうだ、という久しぶりの前向きな気持ちに救われる思いがした。

 

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