ポケ蟲 サイドストーリー   作:秋塚翔

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久々投稿&ポケ蟲三次創作始めました。

ポケモンプレイ歴はウルトラサンムーンで止まっている半古代人ですが、ポケモン愛はそれなりにあると思っています。テッカニンLOVE。勝手に想像し、無事作者様からご許可を賜ったポケ蟲のスピンオフ的三次作品、楽しんでいただけると幸い。


襲来!メガヤンマ Ⅰ

「ラウラのバカーーーーーッ!!」

 

 

 青天の霹靂。

 主観的には全く脈絡のない怒声を受け、ラウラは思わず口に含んでいたモーモーミルク(ビークインがしもべを使って集めたあまいミツ入り)を吹き出しかけて、しかし何とか堪えて嚥下してから口を開いた。

 

 

「い、いきなりだな。俺なんかしたっけか?」

 

 

 心当たりないが、一応問い掛ける。すると怒気冷め止まぬ様子のラウラの恋人──ユウリは目に涙を滲ませて、そのままの調子で愛しの少女に不満をぶつけた。

 

 

「してるよ! ラウラったら、私がアピールしてるのに全然気付かないフリして! 私はラウラとそろそろ()()()()()()になりたいのに、どうして無視したり避けたりするの!?」

 

 

「おまっ……朝から何を口走ってんだ!」

 

 

 時刻は朝も朝、しかも場所はハロンタウンのユウリ宅。当然ユウリの母親もいて、不運にも机を挟んで同席してると言う公開処刑のような状況だ。

 だがそんなユウリ母は、「あらあら、若いわねえ」と僅かに驚きつつも微笑ましいものを見る態度だった。流石人生経験の先輩……と感心しかけるが、内容を聞かれたことに変わりないので、恥ずかしいったらないラウラである。

 確かにユウリはここ最近、スキンシップの頻度が多かった。

 バトル後にはやたらと引っ付いてくるし、手作りの料理では精の付くものが多かった気がする。風呂に入る時は一緒にと言ってくるし(いくら今は女でも刺激強いのでやんわりと辞退)、しまいには昨日買い物に付き合った際に子供連れの家族を見て「私たちもああなりたいね」と呟いていた――いや、女同士だっての、とは当時のラウラのツッコミだ。多分あれが今の怒れるユウリに至るきっかけだったのだろう。

 

 

「やっぱりラウラは男の人の方が良いんだ……この前も、生中継でやってたオジサンと男の子のバトルに釘付けだったもん」

 

 

「いや、アデクとツクシの親善試合は性別関係なく観なきゃ損だろ。あと基本蟲しか見てない」

 

 

 同じ蟲使いとしてトレーナーの手腕も見ていたが、それだけであるラウラ。多分ユウリに告白される以前でも男に興味なかったであろう。『むしとりしょうねん』や『むしマニア』相手でも腕も愛も上である自信がある。先に挙げた蟲使いの二人であっても、乗り越える壁やライバルにはなっても恋愛対象にはなるまい。

 しかし、そんな恋人の心情知らぬユウリは、涙目のまま勢いよく立ち上がる。

 

 

「もういいよ! ラウラのイケズ! キスしただけで急に黙っちゃう恋愛ビギナー級! 次はラウラから誘ってくれない限りチャンピオン権限で私とのリベンジマッチさせてあげないからねーーーっだ!」

 

 

「おい待てしれっと親の前で暴露すんなぁッ!?」

 

 

 そう言い残し、ユウリは家を飛び出してしまった。一瞬追おうかと考えたラウラだが、直後に今日はチャンピオンとしての仕事の予定があるからだと思い出し、後ろ髪引かれるがしっかり反省してから謝ろうと、今は生暖かい目で見るユウリ母の視線を浴びながらモーモーミルクを飲み干すのだった――

 

 

 

 

 

 

 ブラッシータウンを出て1番道路と通り、ようやく目的のハロンタウンに辿り着いた。

 ウール―が道端で日向ぼっこしている間を通り抜け、前ガラルチャンピオンの家――は素通りし、現ガラルチャンピオンの家へと足を運ぶ。

 だが、奇特な観光目的でもなければ、チャンピオンに用がある訳でもない。現にここまで来る途中にアーマーガアタクシーに乗るチャンピオンの少女を見かけている。用があるのは、この家に住まうチャンピオンの恋人だ。

 『彼』は、意を決して庭先にて腹から声を出す。

 

 

「――たのもーーーうっ!!」

 

 

 背後で大声に驚き逃げ惑うウール―らの気配。

 同時に眼前の家の窓から何事かと顔を出したのは、目的の赤毛の少女だった。

 

 

 

 

「何だ? 誰だ、アンタ」

 

 

 赤毛の少女――ラウラは訝し気に庭先の青年へと問い掛ける。

 クモの巣模様の革ジャンを羽織り、薄黄色の髪を刈り込んでいるヤンキー調のその青年は、ラウラを見るやさながら昔の任侠映画のごとく、中腰になって右手を差し出すように構えると、まさしく()()な口上で名乗りを上げた。

 

 

「お控えなすって! 手前、生まれも育ちもシンオウのハクタイシティ! 幼少よりケムッソと出会って以来、そちらさんと同じく蟲使いの肩書きを頂かせてもらっておりやす、名をシンゴと申します! 以後、お見知り置きくだされば、この上ない光栄でございますこと――」

 

 

「長い長い長い。分かったから、ちょっと待ってろ」

 

 

 言って、名乗りを止めるとラウラは急いで玄関から外に出る。ちょうどユウリ母のイジリから逃れられる機会だった。

 外に出ると、さっきの姿勢のままシンゴと名乗る青年は出迎えていて、こそばゆい気持ちになりながらラウラは問い掛ける。

 

 

「それで? ハクタイの蟲使いが何の用だ?」

 

 

「はい。実は自分、先ほどガラルの転居申請を終えたところでして。本日よりこの地方に居を構え、ジムトレーナーとしてメシを食っていこうと思っている次第で、それに際しては将来むしジムを構えるだろうラウラ嬢にご挨拶をと思った所存です」

 

 

「ほほう。ジムトレーナーに?」

 

 

「はい……それと、これは別件ではありますが、お耳に入れていただきたいことがあり、こうして馳せ参じました。ラウラ嬢は『メガヤンマ』というポケモンをご存じで?」

 

 

「当然だ」

 

 

 メガヤンマ。オニトンボポケモン。主にシンオウに生息する虫ポケモンだ。ラウラも転生前はダイパもプレイしていたため、蟲好きとして当然把握している。

 シンゴはその答えを聞き、一つ頷いて本題を切り出した。

 

 

「実は、そのメガヤンマの内、悪質なトレーナーに育てられ悪事を愉しむようになってしまった個体がシンオウにおりまして……それが最近、このガラルに飛来したらしいという情報を掴んだのです」

 

 

「なんだと?」

 

 

「本来であれば警察や、地方の管理担当が処理する事柄でありますが、直前にガラル転居を申し込んだシンオウ出身の蟲使いとして、片付けなければならない事案と思い至った次第であります」

 

 

 頭を下げるような姿勢は崩さず、責任感に燃える眼差しをラウラに向けるシンゴ。見た目や語り口はチンピラかヤの付く職業の舎弟っぽいが、存外イイ奴と判断できる。蟲好きに悪い奴はいない。そのメガヤンマのトレーナーは蟲の良さを分かってない奴だ。

 

 

「で、俺に何をしてほしいんだ?」

 

 

「是非ともお力添えを。以前に一度、シンオウでヤツと出くわした際、自分の手持ちでは歯が立たず圧し負けてしまったもので、リーグ優勝を現チャンピオンと争ったラウラ嬢のお手をお借りしたいのです」

 

 

「任せろ。蟲の困りごとなら黙ってられない。ましてや、まだウルトラビーストの騒動も収まって間もないからな。これ以上外から来て騒ぎ起こされるのはゴメンだ。メガヤンマのいる場所は分かるか?」

 

 

「それはまだです。しかしヤツは獲物に対して悪質な手口を好むらしいので、じきに何か情報が……」

 

 

 その時だ。ラウラのスマホロトムに着信が入ってくる。

 ラウラが何気なくそれを取ると、直後に眉をしかめることとなった。

 

 

 ラウラの友人であるムツキが、謎の蟲ポケモンに襲われたという――




●シンゴ
本作オリキャラ。シンオウ地方ハクタイシティ出身の蟲使い。チンピラっぽい見た目だが、根は真面目で責任感強いファッション不良。子供の頃、ハクタイの森でケムッソに出会ったことが蟲使いとなるきっかけであり、シンオウで武者修行の旅をしていたが、今回蟲の女王ラウラがいるこのガラルに居を移すことに。そのついでとして、悪いメガヤンマ討伐協力をラウラに持ち掛ける。名前に草花のモデルはなく、ジムトレーナーらしい名前と、作者のゲームにおける男主人公での名付けが由来(NOT本名)

次回からも楽しんでいただけたら光栄です。よろしければ評価やコメント、あと大前提として本家のポケ蟲も拙作の数倍面白いので読んでいただけると嬉しいです。
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