俺が生徒会室の扉を開けると、中から重量感のあるたわわに実った果実が、目に飛び込んで来た。
「カイチョー! それでぇ、みんなひどいんですよぉ!」
会長にはない物を双胸にぶら下げで揺らしながら彼女に愚痴をこぼすのは俺たちより人学年下の生徒会役員書記である松山静子である。控えめで小動物的可愛さで特に男子から人気があるらしい。胸部は自己主張が激しいが……。
「ちーっす。どうしたんだ松村ちゃん」
「あ、副会長。お疲れ様です。今日は会長に聞いてもらいたい事があって来たんですよぉ。それで会長……」
「あ、うん。その答えは出ているよ。キミの体調の原因はダイエットのために朝ご飯を抜いたり、お弁当のおかずを減らしたりしているが、それでお腹がすいてお菓子を食べすぎるせいだ。今も私の私物である菓子を摘まんでいるだろう? それが原因さ」
「は! そんなぁ! 朝ご飯と昼ご飯減らして頑張ってダイエットしているのに、それじゃあ私は何を楽しみに生きていけばいいんですかぁ!」
見ての通り若干頭の足りない子である。会長は相談が終わったとばかりに絶望している松村を尻目に、文庫本を読み始め、俺は椅子を一つ引いてそこに座り、国語の授業中に出された宿題をこなしていく。
「ひぃぃん。みんな薄情です。もういいもん、ダイエットなんてやめます。いっぱい食べてお相撲さんになってやります。どすこいどすこい」
そんな事を言いながら彼女が四股を踏みだす。うん、止めて欲しい。全然宿題に集中できない。俺は漫画の主人公の弟ではないので、相撲部屋で宿題をできるほどの集中力は備わっていないのだ。
「さて、会計の島崎君は相変わらず出席できないとして、メンバーも集まって来たことだし。今日も生徒会を始めよう」
そんな時に場がカオスに包まれたときに会長は決まってそう言いだすのだった。彼女のその号令を聞いて関取の四股が止まったので、彼女のたくらみは半分成功したようなものであり、本当は話をつづける必要すらなかったが、
「うら若き乙女に向かって関脇だの幕下だの言うのはいただけないな」
「え、副会長。会長の事をそんな風に呼んでいるんですか? ひどぉい!!」
などと言う、会長お得意の読心術がさく裂し、それ松村が意味もなく都合よくとらえて適当な発言をするカオスが出来上がり、俺は頭を抱えた。
「だから!! 話してもいない事を話しているかのように発言するのやめろ!!! 特に3人以上でいる時!! そして、松村も意味も分からず適当に話すのやめろ!! お前はひな壇芸人じゃねえんだぞ!!」
俺はいきなりキレる人になっていた。
「それでは今回のお題は、近日断続的に発生している地震について、オカルティズム的観点からどのような原因が考えられるかと言う話を」
「ここ!! 生徒会なの!! オカルト研究会じゃないの!!」
「生徒会新聞と言う機関誌に乗せている以上、完璧に生徒会の活動の一環だよ」
「わたしもぉ、頻繁に地震が起きて怖いって、みんな思っているんです。生徒が不安に思っていることを解消してあげるのも、広い意味で生徒会の仕事じゃないんですかぁ」
くそ、味方がいない。ここには敵しかいない。こんな時にこんな時に味方がいてくれたら。いや、ここで俺がブレーキを掛けなければ、生徒会最後の良心として、彼女らの暴走を止めなければ!!
「遅くなりました。うわ、何だこれ」
会長達には勝てなかった。黒板には無残にもUFOを呼び込む謎の文字やネイティブアメリカンやアボリジニが使っていたとされる魔術文字が乱雑に書かれ、俺たちの県立マンハッタン高校生徒会は謎の悪魔崇拝集団バルバロスに支配されてしまったのだった。
「島崎、後は頼んだ……」
がっくりとうなだれる俺。宇宙人交信のための謎のダンスを訳もなく踊らされる松村と、数分前に途端に飽きて文庫本を読み始めた会長を、生徒会会計2年の島崎将司は止める事が出来るのか。
「場がカオスになったからって投げないでください。全く、僕がここに来るといつもそうだ。松村、何の踊りしてるか知らないが、会長飽きて踊っているのお前だけだぞ!!」
「ふぇ! この宇宙人交信ダンスをすれば、これを見て駆け付けた宇宙人さんが私の体重を減らしてくれるって、牛さんも宇宙人さんに連れて行ってもらってそうしてもらっているって会長言っていたもん」
「会長も、私は関係ありません見たいな顔しないで、こんなにした黒板消すの手伝う!!」
「やれやれ、人使いが荒いな」
彼の登場により、生徒会の平和は保たれた。まあ、彼が来る前に会長が飽きていたと言う理由もある気がするが、ありがとう島崎君。
「あなたも片づけするんですよ!!」
はい。今日も生徒会は平和だった。