ルアフ・ガンエデン、霊帝さ…!   作:クロトシ

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走る秒針、流れる彗星。
流れる水には形なく、そよぐ風には姿なし。
今日の相手はゼントラーディ。プロトカルチャーの残した難事件にルアフが挑む!
たったひとつの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人。
その名は、霊帝ルアフ!



第一話 虚空からの奏鳴

 

 

サイコドライバー。

強念者、汎超能力者とも呼ばれる特殊能力者である。

その素養を持つ者は主に念動力を使うが、本来の力はおよそ全ての超能力を使いこなし、その本領はアカシックレコードにアクセスして因果律へ干渉するものである。

完成されたサイコドライバーであるイルイ・ガンエデンは正史において飛行能力や瞬間移動能力などを披露している。

そんな能力者である以上、予知夢も見れば虚憶や並行世界の記憶を垣間見ることも造作でもないわけで……

 

「奏鳴の銀河の夢をみた……」

 

地球圏における新西暦182年のその日、銀河系中心にほど近いバルマー星の中枢たる霊帝宮で、一人の神子が呟いた。

細かくは覚えていないし、所詮は現実とも思えない夢である。

ズフィルードたる帝機ガンエデンが破壊され、ゲベルの魔体までもが敗れ去るなど、ありえるはずがない。

 

「だが、興味深い点はそこじゃない。なるほど、ああいうのもあるわけか……」

 

創世神に霊帝を任された神子、ルアフ・ガンエデンはしばし瞑目して考える。

この数百年、間違いなく彼は霊帝であり、この星の統治者であった。ゼ・バルマリィ帝国の支配者だった。

偽帝だ愚帝だと陰で謀反を企む愚者が二人ほどいるようだが、自らは初代ではなく当代の霊帝なだけである。神そのものではないが神に等しい能力者だ。

つまり彼には自らの思いつきをそのまま叶える権利があり、それは今もなお健在な初代にも憚られるものではないはずだ。

そう思い立ったルアフは勢いのままに地下聖堂の『神体ズフィルードの間』へと足を向ける。

普段は彼、ゲベルのことをまつろわぬ神だとちょっと恐れてたりするけど、よくよく考えたらパートナーじゃないかと寝起きで気が大きくなったルアフはそこにいるゲベルへと告げた。

 

「……いいよね、やっても?」

 

「いいだろう、好きにするがいい」

 

なんだかんだで伺いを立てるルアフに、興味がないのかそうでもないのか分からないが、鷹揚に応えるゲベル。

これが銀河の運命を割と大きく変えてしまった。

 

「シヴァー・ゴッツォ、神託は下された。これより帝国監察軍の動向を一部変える」

 

「!?」

 

「僕はなるよ。そう、アイドルに……!」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「はぁ……?」

 

神託という言葉を聞いた瞬間、霊帝の側近にして帝国宰相であるシヴァー・ゴッツォは内心で煮えたぎる激情を制するのに精一杯だった。

ルアフによる愚かな政策で、創世神の名と帝国の繁栄の名のもとに、また無為に臣民の血が流されるのだと。

だが、その先の言葉がちょっと想像もしてなかった方向性だったため、つい疑問の声が口を衝いて出てしまった。

 

「君の反応も分かるよ。崇拝対象の偶像が元となったという意味では、実在する神である僕には相応しいような相応しくないような、何とも言えない曖昧なものだ」

 

シヴァーの内心を知ってか知らずか…いや多分知ってて無視してるのだろうが、ルアフが蘊蓄を語る。

その知識は神を自称するだけあって、気に食わないがシヴァーですら及びもつかない。

 

「かつてのプロトカルチャー文明にもアイドルは存在していてね、その情報は断片的ながらも現在も残っている。プロトカルチャーの歌のことなら、君も知っているだろう?あれはアイドルの歌なんだよ」

 

ルアフによるアイドル蘊蓄に対するシヴァーの内心は一言。アイドルなんぞやりたきゃ勝手にやってろ、である。

おそらく臣民は喜ぶだろうし、ルアフの気まぐれで衰退しつつある帝国文化が活性化するのなら、今回に限っては悪い話ではない。

なんにせよ、軍事を司るゴッツォ家が関わることではない。ズフィルードの巫女を要するティクヴァー家あたりの管轄だろうか。

 

「しかし、監察軍を変えるとは……?」

 

だが気になるのは帝国監察軍を動かすというものだ。先のアイドルの話といささか、いやまったく繋がらない。

 

「フフフフ……なに、最近は審判の日に備えて力を温存し続けてきたからそろそろ知らない者も出てきただろうからね。久しぶりに僕の力の片鱗を見せてあげよう、という話さ」

 

「おお、陛下のご威光を……!」

 

え、いつぶりか知らないがちゃんと仕事してくれるの?とシヴァーは困惑した。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

ルアフ・ガンエデンは数万年前にバルマー星を創造した創世神ズフィルードとされており、畏怖と崇拝の対象だ。

だが、それ以上にエタロリならぬエタショタな美少年である。声もバーローだ。

純粋に臣民からの人気がないはずがない。可愛いは正義なのだから。

 

そんなルアフが帝国繁栄のために立ち上がったとなれば、星をあげてのお祭り騒ぎだ。

もっとも、それに応じられなければ神といえどもその立場がほんの僅か、微妙に揺らぎかねない。

まれに現れる反抗的なやつの数や頻度がちょっとだけ多くなるかもしれない。

 

(ルアフめ、何を目論む…?失敗すればルアフの権威は揺らぐが、軍の劣勢に繋がるのは避けたいが…)

 

人工サイコドライバーもまだ育成段階の途中、独自に動かせる強力な機動兵器も研究も形になるのはまだまだ先だ。

目をかけている一族の天才・ユーゼスの研究も彼が辺境銀河方面軍へと逃れたために未だ手にすることは出来ていない。

今の段階ではルアフに立ち向かうことなど夢のまた夢なのだ。

 

「ゲベルの子よ、ゼ・バルマリィの民達よ。こうして姿を見せるのは数年ぶりだね。今日はコンサートを開こうと思ってね、君達は何も考えずに楽しむといい」

 

特に古でもない、むしろ今回の為に新調した白き祭壇――コンサートステージ――に登ったルアフは周囲にひしめく、あるいはスクリーンの向こうに集う民衆に声をかける。

そんな民衆が集まる各地の上空に巨大なスクリーンが映されている。

ズフィルードクリスタルを用いたそれが映し出すのは、銀河各地で今まさに衝突せんとする帝国監察軍とゼントラーディ軍の光景だ。

 

「帝国監察軍中央銀河方面軍の兵達よ、時は来た。銀河創生より定められた黙示録の日を前に、バルマーの名のもとに銀河を統一する必要がある。今こそ汝らに創世神ズフィルードの力を授けよう。長年の宿敵たる文明の破壊者どもを駆逐し、帝国に勝利を捧げよ」

 

ルアフの演説の終わりと共に、各地で戦いの幕が開かれる。

そして――。

 

――QUEST FOR LOVE,QUEST FOR DREAM,QUEST FOR ALL TRUTH!! 瞳に秘めた 夢だけは~♪

 

ガンエデンシステムの一つとして、強念に乗せたルアフの歌にズフィルードクリスタルを使ったリンクが繋がれる。その効果は絶大だった。

歌システムを採用したスパロボをプレイした人にはお分かりだろう。

気力増加にスペック向上、精神回復、さらには神子による加護(精神コマンド付加)までが傘下にされた属国の者も含めた全ての監察軍兵士にもたらされたのだ。

 

「やってやる、やってやるぞ!」

「さあ、楽しませてくれよ!」

「お前たちが戦う意志を見せなければ、俺はこの星を破壊し尽くすだけだ!」

 

といった風に効果覿面だった。

ちなみに人工知能は流石に影響を受けなかった(「獣士が精神コマンドを使った!?」現象は今回は起きなかった)が、ズフィルードクリスタル製の兵器は再生能力や基本スペックが上がったという。

さらに、敵軍のゼントラーディ側にもルアフの歌の影響が出ていた。

 

「デカルチャー・ザーン!?」

「ヤット・バルマー・ガドラザーン!」

「ヤック・カルチャガーマ!」

 

と、カルチャーショックを受けて激しく戦力を低下させてしまった。

元がほぼ互角の両軍でこれだけのバフ、デバフの差が出れば勝敗の結果は火を見るよりも明らかであり、小一時間で各地の勝敗は決した。

そして、小一時間ほどの歌唱を終えたルアフは得意げにシヴァーに言った。

 

「見なよ、シヴァー・ゴッツォ。アイドルのコンサートというのはね、敵味方関係なく心を揺さぶるのさ」

 

「………」

 

どや顔のルアフにシヴァーは内心でいつか正史でやったみたいにボコボコにしてやると誓ったとか誓わなかったとか。

この戦いの勝敗が、ゼントラーディ側に傾きつつあった天秤をバルマー側に傾ける結果となった。

正史においてまったく仕事をしなかった最高戦力が動いた結果とはいえ、戦果はシャレにならないものである。

そしてそれが近い将来に起こる地球とバルマーの戦い、さらには終焉の銀河へと導く死と新生の輪廻にも影響をもたらすのだろう。

この世界の分岐には『真なるエンディングが明かされる』とかいいながら、全然正史でもなかったルートもあるのだ。

 

(だけど、人間どもが何を企もうと結果は同じさ。真実はいつも一つ、なんだからね……)

 




たぶん続きません。
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