天才少女とお節介な運命竜   作:コンペ

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ララミア・ジークアルト

 

沈黙と共にひしひしと伝わるのは重く苦しい威圧感。魔力に敏感なジークアルトの血が今は嫌になりますが、それでも今は考えてるのを止めてはなりません。

 

今、この場で話しかけてきたという事は、ジークアルトが成績いかんで私を受け入れる可能性を示すと共に――殺害の予告を行う行為でもあります。

私達にしか伝わらないそれは二人にしか理解出来ない雰囲気を醸し出します。

 

「えっと……それはね、私、今から研究室を作ろかな、って思ってるんだけど……その、フローラちゃんにその一員になって貰いたいな、って……」

 

「なるほど……それはとても栄誉あることですね」

 

笑みを交わす二人は、私達が見目麗しい容姿をしていることもあって大層絵になったことでしょう。しかし、交わされるそれらは十分辺りに衝撃を与えることでした。

 

「おい、ジークアルトが研究室……?」

 

「どういうことだ?これまで学院に過剰な干渉はしてこなかった筈だが……」

 

「それよりもなんであの……名前分かんないけどあの子が誘われてるの?」

 

「ジークアルトって言えばこの学院とはかなり微妙な関係だよな……このタイミングで?どう思う?」

 

一瞬で辺りが喧騒に包まれ、まるで先ほどの教授の騒ぎなど無かったことのように……あ、いないです。逃げましたねあの教授……。

 

それよりも、今はここをどう解決するか。それにかかっています。

リアとロイゼンタールさんは、これでも学院の学生。多少の分別はわきまえている為、ここでは沈黙を守るでしょう。この雰囲気をぶち壊せるのはリアだけですが、したならしたでこれから先の人生にかかわります。つまりその辺りの援護は望めないと思っていいでしょう。

 

……ならば今考えるのは、どう話の矛先をずらすか、ですね。

 

「ですが……普通研究室に所属するのは上院に上がってから……未熟な我が身ゆえに、申し訳ありませんが私は准教授のお役にたてないと愚考します」

 

「あ……いいのいいの、その、私が……フローラちゃんと仲良くなりたいってだけだから……」

 

……これは、この従姉妹(・・・)相当私を嫌っているようですね。どれだけ私を監視下に置きたいのかが分かります。

……ジークアルトの監視を受け入れる、というのもアリですが……しかし、つまりそれは私がどこまでジークアルトに許容されるかを試す危険な行為でもあります。

研究室に所属と言うことは、それだけ自学の時間が削られ、つまりそれなりに成績を調整しなければ怪しまれかねませんし、酷くしすぎればその場合私は消されます。そして良くしすぎればディアちゃんからのお仕置きが待っています……なんでしょうこのジレンマ。

 

つまり研究室に所属はなし、といきたいのですが……。

 

「そこまで言っていただけるのは光栄ですが、私は凡才な一学生。もし、私の非才な思想がジークアルト准教授の時間を少しでも無駄に消費してしまう可能性が少しでもあるのであれば……そのようなことは私には耐えられかねぬことです」

 

「うーん……わ、分かったけど――フローラちゃんは、それでいいの(・・・・・・)……?」

 

その言葉を聞き、更に私は思考を深めます。隣のリアが心配そうな顔でこちらを見てきますが、正直構ってる暇がありません。

 

「それでいいのか」。つまり、この要求を断れば少なくとも私に不利な状況に追い込まれると脅しているのでしょうか。

 

 もしここで承諾を選んだ場合、私はララミアとの公的な付き合いを得ることになります。ジークアルトとの関係を得て、それが有利に働く場面……裁判や、社会の信用、なにより後ろ楯? ですが、わざわざ一度追放までした私と、どうして再び繋がりを持とうとするのでしょうか?

 

 以上のことを無視しての一番の問題として、既に私がジークアルトと関わりを持つ、もしくはこれから持つであろう事は辺りに知れ渡るでしょう。そうなるとそれ事態が目的……いえ、そもそも彼女がなぜここに来ているのかがまだ定かではない……仕方ありません。ここはかなり不利な状況になるのは理解し、一旦持ち越すしかないでしょう。

ため息を付きそうになるのをグッと抑え、笑顔を保ちます。

 

「……少し、待っていただけないでしょうか?私にはすぐに決めかねる大きな事柄でして……申し訳ありません」

 

「あ……きょ、強制するつもりはないから……それで、あの……じゃあ、あとで私から話し合いの場をもうけるから……それじゃあ、またね」

 

「はい……私はいつ、どこであっても准教授とのお時間なら喜んで取らせていただきます。では、さようなら……」

 

ざわめきが収まることなく広がり続ける食堂に軽く目を向けることで、微量の皮肉を混ぜますが、それも控えめな笑みで返されます。ああ……精神も肉体も、いくら天才とはいえ未だ成長しきっていない私では何もかもが彼女には上回られます。

 

実際、ジークアルトと言えどほとんどの者には勝てる自信があるのですが……頭脳で負ける可能性がある一人。それが彼女、ララミアです。

 

ええ、良いでしょう。一度目は負けました。それは認めます。そして行われるのは不利な対談です。

次は恐らく一対一。衆目を気にしなければならない今回と違い、私とララミアの関係を全面に押し出せる可能性のある場。

 

……不利です。ほとんどの可能性で私は言い負かされるでしょう。

しかし私は天才。いくらジークアルト家の秀才、ララミアと言えど、私は――絶対に勝ってみせます。

 

そうして、私は食堂からいなくなるまでずっと彼女を見つめていたのでした。

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