「ぷっはぁ!おいしかったぁ!」
血を飲みつくし、父と同じように干からびた死体になった母を抱きしめながら喜びの声を上げます。
―――ずっと、一人ぼっちだった。
そんな私が一人ぼっちではなくなったのです。
母と父とこれから仲良し『家族』としてずっと、生きていけるこの幸せ。
それに母も私のことを家族だと言ってくれました。
―――「愛している」といってくれました!
「私、今、とっても幸せです。生んでくれてありがとう。お母さん、お父さん」
最愛の両親の死体を隣同士に並べて、喜びのあまりに涙を流しながら、感謝の言葉を贈ります。
その後、一着ずつしかない血まみれのTシャツとズボンと下着を洗濯機乾燥機にかけている間、シャワーを浴びて体中の血を洗い流し、少し寒いですが、全裸のまま両親の死体を胸に抱きしめて睡眠をとりました。
夜が明け、目を覚ましたら洗濯乾燥が終わっている服を着て、母の遺品であるサファイアのネックレスを首にかけ、父の遺品の腕時計を左手首に装着しました。
母の持っていた財布の中から現金をいくらか拝借します。
そして、心が痛みますが証拠隠滅のため両親を能力を使って腐らせて溶かした後、台所から持ってきた調理油をまき散らし、火をつけてまだ春先の薄暗い家の外に出ました。
「よく燃えていますねぇ」
遠目に燃え盛る我が家を消火しようと朝早くから、消火活動に励む消防の方々とその周囲に集まり始めた野次馬を眺めつつ、何となく呟きます。
「これからどうしましょうか・・・?」
色々と問題が山積みです。
住む場所はない上に、手持ちのお金はごくわずかしかありません。
警察が来たら?母と父の居場所は「わからない」と言い。
放火の件は「間違ってしてしまった」と言えばどうにかなるでしょう。
なんていっても、今、私8歳くらいですからね。
そもそも、この世界の警察は、役立たずなイメージがあります。
そうなるとやはり、「先立つ物はお金」と言いますし、まずお金が必要ですね。
「・・・そうなると天空闘技場くらいしかないですよねぇ」
今、原作開始5年前くらいですけど、いますかねぇ、あの人・・・。
まぁ、背に腹は代えられないですし、いたとしたら精々気付かれないように努力しましょう。
出来るだけ長生きしたいですからね。
とりあえず、当面の目標としてお金を稼いで、戦い方を覚えたり、念の扱いを向上させたいです。
「よしっ!レッツゴー!」
陽気に声を上げ、私は燃え盛る我が家に背を向けて、天空闘技場を目指して歩き出しました。
―――そういえば遅ればせながら、自己紹介させていただきます。
―――今世での私の名前はアーデルハイト。8歳です。
―――前世では貧乏故に早死にしたので、今世では大金持ちになって最愛の両親とともに長生きしながら、幸せになりたいと思っています。
王道系主人公は旅立ちの時、家に火を放つものです。