ほのお組の忠犬 作:後衛
スター団としての目的を達成してから、一年と半年が過ぎた。
僕はバトルの腕を磨いて、メロコさんと「チーム・シェダル」を立ち上げた。2番手として、メロコさんの露払い。学校から疎外されていた僕に、役割と居場所を与えられたことが何よりも嬉しかった。スター団のみんなも、同じことを考えているようだった。
制服は息苦しい。校則は僕らを守ってくれない。
だから、僕らは僕らの服を着る。僕たちの作ったルールで生きる。
そうやって団結して、僕らはいじめっ子と戦った。
――結果は、不戦勝だった。
戦力差や風体に臆した生徒たちは、逃げるように退学していった。
少数派として消えていった僕らいじめられっ子が戻ってきたことで、いじめっ子の居心地が悪くなったのもあるだろう。僕らにとっては学校内での復讐だったが、彼らにとっては
"そんなに怖いなら、最初からいじめなんてするなよ。"
スター団の誰かが呟いた言葉が、今も心の隅に残っている。
★
「いじめっ子と対決して学校を変える」という目的を達成したスター団は、カシオペアの失踪を受け入れられないでいた。
閉塞感だけがある。
目的を果たした後の集団は、目的を失って宙ぶらりんになってしまっている。
雨上がりの傘にように、無用の組織がただ在るだけ。
スター団のみんなは
各組織の名前は、「カシオペア座」を成す星々から取っている。
由来は、北極星を見つけられるように。
道から追い出された僕らが、また、道に戻ることができるように。そういう祈りを込めて、僕たちはカシオペア座を形作った。
……だけど、もはや北極星は意味をなさない。
ここは極北。僕らの旅は、とうに目的を達して終わっているのだから。
僕はこの状況も心地よかった。
自分たちで築いた拠点で暮らして、近くにはメロコさんもいる。
でも、それではダメだ。学のない僕らは、このままでは生きていけない。誰もが終わりが来ることを知っていながら、この心地良い沼に浸かっている。
「いつまで、待つんですか?」
かつて、メロコさんにそう聞いたことがある。
答えは単純で、含蓄があった。端的な言葉は、かえって多くの意味を含んでいた。
「マジボスが帰って来るまでだよ」
「――待たれていないってのは、怖いだろ」
そう言うメロコさんの目は、遠い過去を見ていた。いじめっ子に、待ち合わせ場所で置き去りにされたことがあるという。
その瞳を見ると、僕は何も言えなくなった。
いつでもマジボスが帰って来られるように、この場所を残すのだという。
待つのをやめることは、たやすい。
朝陽は待たずとも昇る。
誰にも待たれていないことは恐ろしい。
夕陽は待っている間に沈む。
「僕らのことなんて忘れて、どっか遠いところで暮らしてるかもしれませんよ」
「かもな」
「それでも、待つんですか」
「待つさ」
「どうして」
「
その言葉が、すべてだった。
それぞれのリーダーが、それぞれのリーダーを縛っている。今更「やめる」なんて言えないし、自分から居場所を捨てられない。
いじめっ子を追い出そうとも、学校にはやっぱり居場所なんて無くて。
ぼんやりと築いたものを抱えたまま、動けなくなってしまった。
待つことは、主体性を失うことだ。
自分の行動を自分で定められなくなる。
メロコさんは雁字搦めだ。
「なら、僕も待ちます」
「誰も来なくても、何も起こらなくても、メロコさんと待ちます」
「ひとりで待ってると、どうしようもないでしょう。待つためには、他人と戯れてるくらいがちょうどいいですよ、きっと」
「くだらない話をしましょう。趣味だって増やせる。時間はいくらでもあります」
「待つだけなんて、寂しいじゃないですか」
「一緒なら、いつまでも待てるような気がするんです」
告白のようなクサい台詞を吐いた。
顔が火照った。遠くで鳥ポケモンが鳴いた。
返事を待った。
「……」
メロコさんの頬も赤らんでいた。
もう少し、待とうと思った。
【あとがき】
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