ミア、誕生日おめでとう。
色付いた木の葉もほとんど落ち、冬の来訪を感じさせるある日、親友から唐突な相談を受けた。
「ねぇ、栞子。誕生日って何を渡せば良いのかしら…?」
「誕生日…ですか?」
なんでも話を聞くところ、ミアさんへ誕生日プレゼントを送ろうと考えたはいいものの、肝心のプレゼントの内容が全くの白紙だというのだ。
「ミアさんへのプレゼント、まだ用意出来てないんですか?」
「そうなのよぅ…。ミアったらあまり欲しい物を言わないじゃない?いつもミュージックがーとか、曲がーとかばっかりで… だから何を贈ろうか迷ってるの…」
「わたしは何でもいいと思いますが…」
そういえばランジュは、その性格から友人があまり出来なかったと吐露してくれた事があった。さらに、言われてみればミアさんはあまり自分の考えを周りに言うタイプではない。そんな状況なのだから誕生日プレゼントを選ぶという事は、ランジュにとっては初めての事であり、難しいのだろう。
「そういう栞子はどうなのかしら?」
「わたしですか?そうですね。わたしはヘアピンを贈ろうと思ってました。ほら、ミアさんって作曲の時などに前髪をピンで止めてるじゃないですか」
ミアさんは普段ピンを付けていないが、作曲の時やしずくさんの家に泊まりに行った時にヘアピンを使っている姿を見たことを思い出す。
「ん~~…確かにそうね…栞子がヘアピンを贈るのならあたしは別の物がいいのかしら…?それとも最高級のパソコンやヘッドフォンを…」
「ランジュ」
だんだんと独り言の雲行きが怪しくなってきた。そんなランジュに、わたしは告げる。
「たとえば、ランジュが同好会の誰かからプレゼントを貰ったとします。その時、あなたが貰って嬉しい物とはなんですか?」
「そんなの何を貰ったって嬉しいに決まって……あ!」
「そうですよ。それはわたしだって同じですし、きっとミアさんだって同じです。なにも難しく考えすぎる事なんてないんですよ」
そう。誕生日プレゼント選び、というものは難しいと考える人が多いだろう。しかし、気が置けない仲であれば、何かを貰うだけで嬉しいというもののはずだ。実際、わたしが同好会のメンバーからプレゼントを貰ったとしたら、困ることはあれど不快になるということは無いだろう。
「…って、結局なににするか決まらないじゃないの!」
「だから、ランジュは難しく考えすぎなんですよ。ミアさんが普段食べているハンバーガーやコーラだって、自分で買うより誰かから貰った方が得した気分になれるし何より嬉しいはずです。プレゼントって、結局気持ちの問題だと思うんです。」
「そうね…そうよね!分かったわ!栞子!謝謝!」
そう言ってランジュは駆け出していった。きっと今からプレゼントを買いに行くのだろう。
「全く…ランジュは子供の頃から変わりませんね…」
ふと、幼い頃の自分たちを想起する。
翌日、わたしがプレゼントを渡しに行こうと寮を歩いていると、ミアさんの部屋から叫び声と共に何かが崩れる音が聞こえた。なんでも、ランジュは彼女にコーラ1年分をプレゼントらしい。
「こんなに貰ったって部屋に入りきらなかったらなんの意味もないだろう!?栞子!Help meeee!!」
ランジュにミアさんやわたしが振り回される。思わず、わたしたちらしい事に思わず笑みがこぼれる。
「コラ、ランジュ…そんなに沢山プレゼントしても部屋に収まりきらないのは当然でしょう?ほら、同好会の皆さんに手伝ってもらって入り切らない分は部室に持って行きましょう?」
こんな時間がずっと続けばいいのに。