私と侑ちゃんの帰り道。虹ヶ咲学園に入学してから、幾度となく通った道。
夕日が照らす道を、2人で歩いていた。
ふと、侑ちゃんが口を開く。
「ねぇ、歩夢」
「どうしたの?侑ちゃん」
「前にさ、歩夢に言われたよね。せつ菜ちゃんの方が大事なのかって」
言われてハッとする。
恥ずかしい。あの時は思いと不安が抑えきれずに叫んでしまったのだった。思い出すだけで顔が赤くなる。
「えっ、あっ、侑ちゃん…その事はもう言わないでぇ…」
大好きな幼なじみ。物心ついた時には、既に一緒にいた。離れるなんて事は考えなかった。故に出た咄嗟の防衛だった。
侑ちゃんは続ける。
「私、ずっと謝りたかったんだ」
意外だった。侑ちゃんは更に続ける。
「追いつきたかったんだ、歩夢に」
「…追いつく?わたしに?」
申し訳なさそうな顔だった侑ちゃんは、少し照れくさそうに笑って言う。
「スクールアイドルを始めてキラキラしている歩夢に。どんどんやりたい事を見つけていく歩夢に、追いつきたかった」
違うよ、それは違うよ侑ちゃん。
私は侑ちゃんがいたからスクールアイドルを続けてこられたんだよ。
「…違うよ、侑ちゃん」
伝えよう。そう思って言葉を繋いでいこうとした時、侑ちゃんは言った。
「…そうだね。多分、根本は違うんだ」
「え…?」
否定を肯定され、思わず言葉に詰まる。
侑ちゃんは続ける。また、照れくさそうな表情で。
「ほんとはね、かっこつけたかったんだ。歩夢に」
かっこつけたかった?なんで?
「好きな人に、下手くそなピアノを弾いてるところ、見せたくなかったんだ」
ずるいよ。侑ちゃん。そんなこと、言われたらさ。
あはは…なんて照れくさそうに言う侑ちゃん。
熱が急激に顔に集まってくるのが分かる。
さっきまで静かに刻んでいたはずの鼓動が、どんどんと加速していく。
「すっ、好きな人ってっ!わっ、私…?」
動揺して、上手く言葉を紡げない、恥ずかしい。
ちらり、侑ちゃんの顔を見る。
さっきまで照れくさそうな表情を浮かべていたはずの侑ちゃんの綺麗な瞳は、ふたつとも、しっかりと私を見据えていた。
「歩夢、大好きだよ」
「わっ、私も!ゆ、侑ちゃんの事!大好きだよ!」
緊張してか、静かな帰り道に大きな声が響く。
あぁ、やっちゃった。つい舞い上がってしまった、恥ずかしい。
そんな私の内心を知ってか、侑ちゃんは笑う。
「あはは、歩夢ってば緊張し過ぎだよ~!さっ、帰ろ?」
「も~!侑ちゃんのばかぁ…」
「あはは、ごめんごめん!」
「む~…手、繋いでくれないと許さないからね…!」
少し拗ねてみる。
するり、侑ちゃんの手が伸び、私の手のひらを包む。そして、指を絡ませあう。
所謂、恋人繋ぎ。
小さかった、私の心の一輪の花。
きっと、今なら咲いている。
わたしとあなたで育てあげた、大輪の花が。
どこまで脳を破壊すれば気が済むんだ、虹ヶ咲学園。