虹色の少女たち   作:桜井ナナヲ

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彼方さん、誕生日おめでとう


* みんな大好き彼方ちゃん (かなはる、かなしず?)

ちょっとだけ早く目が覚めた日。

2段ベッド上段の遥ちゃんを起こさないように、ゆっくりとベッドから降りる。

 

ちょっと早く起きちゃったし、遥ちゃんの好きなバナナケーキ、作ってあげようかなぁなんて思い、欠伸を噛み殺しながらキッチンへと向かう。

 

いつだっただろう。

わたしが初めて遥ちゃんにバナナケーキを作ってあげたの。あの時は美味しい美味しいって目を輝かせながら食べてくれたっけ。嬉しかったなあ。なんて思いを馳せる。

 

「ん、あれ…?」

 

遥ちゃんの笑顔を想像するだけで、ケーキを作る気力が湧いてくる。しかし、気力が湧きすぎたあまりに少し作りすぎてしまったらしい。明らかに量が多すぎるケーキのタネを見ながら、あちゃあ、なんて声を洩らす。

 

「これは同好会のみんなにもプレゼントかなぁ…?」

 

タネを炊飯器にいれ、スイッチを押す。あとは炊飯器がケーキを膨らませてくれるのを待つだけ。ふと時計を見ると、どうやら朝ごはんを作り始める時間になっていた。

 

「炊飯器は使っちゃってるし、今日はトーストかな~」

 

うんうん、と唸っていると、パタパタという足音が聞こえてくる。

 

「遥ちゃん、おはよ~」

 

「お姉ちゃん、おはよ~…」

 

ふわぁ、なんて可愛らしい欠伸をしている遥ちゃん。やっぱりどんな遥ちゃんも可愛い。

 

「あら、かなちゃん、はるちゃん、おはよう」

 

愛しい妹、遥ちゃんを見守っていたらお母さんも起きてきたらしい。

 

「おはよ~。もう朝ごはん出来るから、座って座って~」

 

朝ごはん、作っちゃいますかぁ。なんて気合いを入れる。

 

牛乳とトースト、それと目玉焼き。簡単なものだから、そう時間はかからないけれど。出来上がる頃には、ちょうど2人とも身支度を終えて着席していた。

 

いただきます。

 

ごちそうさま。

 

これで近江家の朝ごはんは終わり、それぞれが家を出る準備をする。

 

制服に着替えて、お気に入りの枕を持って。これで眠くなってもすやぴできるね~、なんて。

 

「バナナケーキ作ったから、2人とも持ってってね~?今日は自信作なのです~」

 

忘れちゃいけないバナナケーキ。もちろん彼方ちゃんは同好会のみんなの分まで忘れないのです。

これで準備は万端。

 

「行ってきま~す」

 

すっかりと気温が下がり、冬が来たということを感じさせる季節となった。

 

ケーキ、喜んでくれるかな…

 

ぶるぶると寒さに震えながら、遥ちゃん、そしてみんなの笑顔を想像する。

 

作りたてとは違うけど、喜んで欲しいな~

 

寒さと格闘すること十数分、虹ヶ咲学園に到着する。

 

「ふふ~ん」

 

鼻歌も歌ってしまう。

QU4RTZのみんなで歌った、初めての曲。

みんなの喜ぶ顔が待ち遠しくて、彼方ちゃんは放課後が待ちきれないのです。

 

 

 

 

===

 

 

待ち遠しかった放課後。

 

いざ同好会へ、なんて勇み足だったわたしのスマホにメッセージが届く。

 

「おや…?」

 

しずくちゃんだった。

『彼方さんに似合いそうな衣装を見つけたので、もし良かったら着ていただけませんか?』

との事だった。

 

返信はもちろんokの返事。可愛い後輩の頼みは断らない、彼方ちゃんは優しい先輩なのだ。

 

演劇部の部室へと向かうと、扉の前にはしずくちゃんが立っていた。

 

「あ、彼方さん、わざわざありがとうございます」

 

「いえいえ、可愛い後輩の頼みを聞くのも先輩の務めですから~」

 

「ふふ、彼方さんってば。それで、衣装っていうのがこちらなんですけど…」

 

しずくちゃんに案内され部室に入ると、所狭しと衣装が並べてあった。

 

「さ、彼方さん、順番にどうぞ!」

 

しずくちゃんは目を爛々と輝かせ、衣装をこちらへ持ってくる。

 

「し、しずくちゃ~ん…目が怖いよ…?」

 

着替えては写真を撮られ、着替えては写真を撮られ。

しずくちゃんに促されるようにどんどんと着替えていく。

 

「彼方さん!その衣装、すっごく似合ってて素敵です!同好会の皆さんにも見せに行きましょう!」

 

何着目か。薄い紫色のドレスを着たところで、興奮した様子のしずくちゃんが告げる。

 

「えぇ~?彼方ちゃん、これはさすがに恥ずかしいぜ~…」

 

「そんな事言わずに、さぁ!」

 

「あ、ちょっ…」

 

しずくちゃんに手を引っ張られる。

初めのうちは抵抗しようとしたが、楽しそうなしずくちゃんの顔を見るとそんな気も無くなってくる。

彼方ちゃんはできる先輩なのだ。かわいい後輩の楽しそうな顔を見て、それを失わせるような事はしない。

 

演劇部の部室とスクールアイドル同好会の部室はそこまで離れている訳ではない。故に、移動に時間はかからない。

 

「さ、彼方さん。入りましょう」

 

しずくちゃんに促され、部室に入る。

 

パァン!

 

部室に響く乾いた音に驚き、顔を上げる。

 

『彼方さん、誕生日おめでとう!』

 

そこにいたのは、同好会のみんなと、居るはずの無い遥ちゃん。

 

「あ、あれ?みんなどうしたの?それと遥ちゃんも…」

 

「もう!お姉ちゃん忘れちゃったの?今日はお姉ちゃんの誕生日でしょう?」

 

「誕生日…?あっ」

 

思い出す。そうだ、すっかり忘れていた。

 

今日は12月16日。わたし、近江彼方の誕生日だった。

 

「彼方せんぱい!お誕生日おめでとうございます!いつもは主役のかすみんですけど、今日は彼方せんぱいに主役を譲ってあげますよ!」

 

かすみちゃん。

 

「彼方さん、お誕生日おめでとう。いつも優しい彼方さんに、何かお返ししたかった」

 

璃奈ちゃん。

 

「彼方さん、お誕生日おめでとうございます。いつも優しい彼方さんに、私たちはいつも助けられています」

 

栞子ちゃん。

 

「「彼方さん、お誕生日おめでとうございます!これ、私たちで作った彼方さん専用の枕です!」」

 

歩夢ちゃんと侑ちゃん。

 

「カナちゃん!お誕生日おめでとー!愛さんたちからの愛を受け取って!」

 

愛ちゃん。

 

「彼方さん!お誕生日おめでとうございます!今日はたっくさん膝枕してあげますよ!いつでもどうぞ!さぁ!」

 

せつ菜ちゃん。

 

「生日快乐!彼方!誕生日おめでとう!ランジュが祝ってあげるわ!」

 

ランジュちゃん。

 

「彼方、誕生日おめでとう。このネックレス、彼方をイメージした羊が付いてるの。可愛らしいでしょう?ふふ、プレゼントよ」

 

果林ちゃん。

 

「彼方!HappyBirthday!彼方をイメージした曲を作ったんだ!聴いてみてくれよ!」

 

ミアちゃん。

 

「彼方ちゃん、お誕生日おめでとう!彼方ちゃんがぐっすり眠れるように、ブランケットを作ってみたんだ~!今度使ってみてね?」

 

エマちゃん。

 

「彼方さん、遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます!どうでしたか?私の演技!皆さんが集まるまで足止めするのが私の役割だったんです!」

 

しずくちゃん。

 

「お姉ちゃん。いつも優しいお姉ちゃんに助けてもらって、私は凄く感謝してるよ。今日だって、同好会の皆さんにお姉ちゃんの誕生日を祝いたいって言ったら、皆さん快く了承してくれたんだ。ちょっと妬いちゃうけど、みんなに愛されてるんだなぁって思った。お姉ちゃん。改めて、お誕生日おめでとう!」

 

そして、遥ちゃん。

 

あぁ、みんながこんなにも祝ってくれる。

目頭が熱くなって、涙が溢れてくる。みんなの前でこんなに泣くなんて思ってもみなかったなぁ。嬉しさのあまり、遥ちゃんを抱きしめてしまう。

 

「うぅ~…みんな~…彼方ちゃんの為にありがとねぇ~…遥ちゃんも~…」

 

「ふふ、お姉ちゃんったら…」

 

わたしの腕のなかの遥ちゃんが、涙を拭いてくれる。

 

「よしよ~し」

 

エマちゃんに頭を撫でられる。

恥ずかしいけど、誕生日だからいいよね?

あぁ、嬉しすぎて忘れていた。ケーキ、持ってきてたんだった。

 

「そういえば彼方ちゃん、みんなにバナナケーキ作ってきたんだ~。みんなで一緒に食べよう?今日の主役の命令なのです~」

 

少し落ち着いてきたとはいえ、まだ涙は止まらない。

 

でも大丈夫。こんなに嬉しい涙だったら、わたしはいつだって流したい。

 

「えへへ~。みんな、本当にありがとうね~?」

 

 




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