虹色の少女たち   作:桜井ナナヲ

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かすかす誕生日おめでとう!!!


* 満点の笑顔(しずかす)

すっかりとお正月ムードも過ぎ去り、世間ではバレンタインが駆け足で寄ってくる今日は、1月23日。

今日は私、中須かすみの誕生日である。

 

教室へと入れば、クラスメイトに誕生日おめでとう、とお祝いを受ける。ありがとう、なんて感謝の言葉を返しつつ一日が過ぎていき、気づけば放課後。

 

「かすみんは部活に行くのでこれで!」

 

なんて早々に切り上げ、足早に自身が所属する部室へと向かう。

 

──────みんな祝ってくれるかな…?

 

なんて期待を胸に、今日も元気よく扉を開ける。

 

「今日の主役のかすみんが来ましたよー!」

 

すでに部室へは数人がいて、私の声に気づく。

 

「あ、かすみちゃん!誕生日おめでとう!」

 

「かすみちゃん!誕生日おめでとう!今日も可愛いよ~!」

 

「えへへ、歩夢先輩、侑先輩!ありがとうございます!」

 

「かすかす~!誕生日おめでと~!」

 

「むっ、愛先輩!かすかすって呼ばないでください!かすみんです!でもありがとうございます!」

 

「かすみちゃん、誕生日おめでと~。今日はみんなからのプレゼントもあるよ~」

 

「わわっ、彼方先輩!ありがとうございます!」

 

同好会のみんなが祝ってくれるけれど、実際に祝われるとなんだか嬉しいような恥ずかしいような。表情にも自然と笑顔が浮かぶ。

 

「えっと、今来てるのは4人だけですか?」

 

「私もいるよ」

 

「うぇっ!、り、りな子!?」

 

ドアのすぐ前で会話していたからか。気づかないうちに背後に立っていたりな子の声にびっくりしてしまい、変な声が出る。

 

「うん。かすみさん、誕生日おめでとう。璃奈ちゃんボード、ほわほわ」

 

「びっくりしたぁ…、りな子、ありがと~!」

 

「かすみさん!!誕生日おめでとうございます!!」

 

「わっ、せつ菜先輩!ありがとうございます!」

 

りな子の次はせつ菜先輩。相変わらずの大きな声に、少し驚いた。

 

「私たちもいるわよ。かすみちゃん、誕生日おめでとう。お姉さんが『イイこと』してあげようかしらね?」

 

「かすみちゃん、誕生日おめでと~!よしよ~し!」

 

いつもの調子の果林先輩に、頭を撫でてくるエマ先輩。

 

「果林先輩にエマ先輩!ありがとうございます!もっと祝ってくれてもいいんですからね!」

 

続々と集まってくるみんなに祝われ、調子付く私。

 

──────やっぱり、誕生日を祝ってくれるって嬉しいな。

 

そんな事を考えていると、更に3人がやって来る。

 

「子犬ちゃん、HappyBirthday。あんまりはしゃぎすぎて怪我なんてしないでよね。そんな事になったら目も当てられないからね」

 

「かすみ!誕生日おめでとう!ランジュが祝ってあげるわ!何かして欲しい事はあるかしら?なんでも言ってちょうだい!」

 

「ミアさん、今日くらいはあまり言わなくても…。ランジュも、あまりやり過ぎないようにしてください。かすみさん、お誕生日おめでとうございます。今年一年、健康にお過ごしください」

 

「もー!ミア子ってば!しお子の言う通りだよ!しお子は固すぎ!ランジュ先輩はありがとうございます!」

 

ミア子にはディスられた気がしたが、なんだかんだ3人ともお祝いをしてくれたので、これで11人。しず子、まだかな。なんて、大好きな親友の顔を思い浮かべていると、メッセージアプリの着信音が鳴る。

スマホを見る。あれ、私のじゃない。

 

「あ、私だ」

 

どうやら侑先輩だったようだ。先輩は続ける。

 

「しずくちゃん、今日は演劇部の練習で来れないんだって」

 

そっか。しず子、来ないのか。

落ち込む。

 

──────せっかくのかすみんの誕生日だったのに。

 

しず子が来ないことなんてよくある事だったけれど、今日くらい来てくれたっていいじゃん、なんて考える私は自分勝手なのかもしれない。

あぁ、ダメだ。

頭をぶんぶんと振って、イヤな思考を吹き飛ばす。

 

「さ、今日も元気に練習しますよー!」

 

みんなに悟られないように、元気よく音頭を取る。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「かすみちゃん、ちょっといい?」

 

練習が終わったクタクタの私に声をかけてきたのは、エマ先輩だった。

 

「えっと、どうかしましたか?」

 

「ううん、勘違いならいいんだけどね?かすみちゃん、なんだか元気が無いように感じたから…」

 

言われて少したじろぐ。

エマ先輩、おっとりとした雰囲気ながら意外とみんなの事を見ているんだ、なんて思ったのも束の間、どう誤魔化そうかに思考がシフトする。

 

「っ、そんな事ある訳ないじゃないですか~!かすみんは元気いっぱいですよ!なんてったって今日の主役ですからね!」

 

精一杯笑顔を貼り付けて誤魔化す。

 

「…そっか。それならいいんだ!かすみちゃん、何かあったら私たちに言ってね!お姉さんたちが力になるよ~!」

 

どうやら誤魔化せたみたいだ。いや、多分誤魔化せてなんかない。ここで退いてくれたのは、エマ先輩なりの優しさなんだろう。ごめんなさい、エマ先輩。理由を言うのは少し恥ずかしいんです。なんて、心の中で謝罪をする。

 

「じゃあ、かすみんは行きますね!お疲れ様でした!」

 

エマ先輩から逃げるように、足早に部室を後にする。

ふと、スマホを見る。しかし、しず子からの連絡は無かった。

 

──────かすみんの事、嫌いになっちゃったのかな…

 

まさかしず子がそんな事なるはずは無い、なんて思うけれど、否定は出来ない。

 

──────いやいや、何回もお泊まりした仲じゃん。まさかそんな訳無いよね!うん!そんな事ない!

 

イマジナリーしず子を作った私は、勝手に結論づける。

 

──────しず子に会いに行こう。

 

メッセージアプリを開き、桜坂しずくのトーク画面を開く。

 

『どこにいる?今から行くから』

 

とだけ打つ。すぐに既読がついた。

 

『演劇部の部室に来て』

 

とだけ返信が帰ってくる。

逸る気持ちを抑えられずに、私は演劇部の部室へと向かった。

 

広い校舎を歩き回り、部室へとやっと到達する。

 

コンコン

 

ノックの音が、人の少なくなった廊下へと響き渡る。

 

「失礼しまーす…、しず子~?」

 

ドアを開けた先には、しず子が座って待っていた。

 

「あ、かすみさん」

 

「しず子~!!」

 

「えっ、ちょ、かすみさん!?」

 

しず子の顔を見れて安心した私は、ついつい抱きついてしまう。

 

「かすみさん?どうかした?」

 

しず子が心配そうに聞いてくる。

 

「ううん、なんでもない。でも、もう少しだけこのままいさせてよ…」

 

勝手に不安になって、勝手に安心して、勝手に抱きしめて。つくづく自分勝手だなぁ、心の中で自虐してしまう。

そんな私を知ってか知らずか、しず子は私を優しく撫でながら言葉を紡ぐ。

 

「さっきね、エマさんから連絡が来たの。かすみさんがなんだか元気が無いから、もし会ったらそれとなく聞いてあげてって」

 

エマ先輩の名前が出て、顔をあげる。

 

「エマせんぱいが…?」

 

「うん、凄く心配してたみたいだよ?」

 

「そっか、エマせんぱいが…」

 

やっぱりエマ先輩には敵わないなぁ。

 

「それでかすみさん、何があったの?」

 

「うっ、それは…」

 

「か・す・み・さん?」

 

尋問が始まる。こうなるとしず子は強情だ。諦めて素直に話す。

 

「…今日、かすみんの誕生日だったじゃん。それなのに、朝からしず子が何も言ってくれなかったじゃん。だから、かすみんの事嫌いになったんじゃないかって…」

 

当の本人に話すのは、少しどころじゃなく尋常では無いほど恥ずかしい。それを隠すかのように、しず子を抱きしめる力が強くなる。

 

「…そっか、かすみさん。ごめんね…」

 

「っ、違うの!かすみんが勝手に勘違いしただけで…!」

 

「ううん、不安にさせちゃったのは本当だから」

 

しず子は謝ってくるけれど、謝られるような事じゃない。必死に否定する。それでも、しず子は自分が悪いなんて言う。

 

「ちがうのっ…、わたし、勝手に勘違いしてっ…、ほんとはしず子に一番に祝ってほしくて…、ってちがう、なに言ってんだろ…わたしっ…」

 

必死に言葉を紡ごうとするけれど、上手く言葉にならなくて。

涙まで溢れてきてしまって。

そんな私を、しず子は優しく抱きとめてくれた。

 

「大丈夫だよ、かすみさん…。落ち着いて…」

 

感情が溢れてしまってボロボロと泣く私を、しず子は優しく、あったかく包んでくれる。それはまるで子供をあやす母親、あるいは愛を確かめあう恋人のようで。

 

「ぐすっ、ごめんね…、しず子。だいぶ落ち着いてきたから…もう大丈夫だから…」

 

あぁ、なんて所を見せてしまったんだろう。急に恥ずかしくなってきた私は、しず子から離れ、顔をあげる。

そこには困ったように、けれどもいたずらっ子のような笑みを浮かべるしず子がいた。

 

「ふふ、かすみさんったら。そんなに私に祝って欲しかったの?」

 

痛いところを突かれてしまう。

 

「うっ…。だって仕方ないじゃん…かすみん、しず子のこと、大好きなんだもん…」

 

「ふふ、ありがとう。わたしもかすみさんのこと、大好きだよ?」

 

「っ~~!はい!もうこの話終わり!ほら、帰るよ!!」

 

恥ずかしさが頂点にまで達してしまい、早々に切り上げようとするが、はいはい、なんてしず子に笑われてしまう。

 

「ねぇ、かすみさん」

 

ふと、声を掛けられる。

 

「私ね、前に同好会を辞めようと思った時にかすみさんが励ましてくれた事、とっても嬉しかったんだ。私には私の事をこんなにも思ってくれる友達がいるんだって」

 

しず子は続ける。

 

「だからね、私はかすみさんの事を嫌いになるなんてことは無いし、ずっと大好きで大切な親友で居たいの。だから、お願い。私の事、好きでいて欲しいの」

 

さっきの立場が逆転したかのように、しず子がわたしに抱きついてくる。

 

「しず子…。うん、うん。大丈夫。かすみんは桜坂しずくの事が大好きだし、桜坂しずくは中須かすみの事が大好き!わたしたちは世界でいちばんの親友!約束!」

 

しず子から離れて、にっこりと笑う。

 

「ふふ、かすみさんにはやっぱり笑顔が似合ってるよ」

 

「えへへ、そうでしょ?なんてったってかすみんは世界でいちばんのアイドルだからね!ほら、帰ろ帰ろ!」

 

すっかりと日が落ち、冷え込んできた外を二人で歩く。

 

わたしたちの間に会話はない。

 

けれどもその間がなんだか気持ちが良くて。

 

どちらからともなく繋がれた私たちの手と手は、消して離れる事のない絆のようで。

 

「ねぇ、かすみさん」

 

「ん、なに?」

 

「すっかり遅くなっちゃったけど、誕生日、おめでとう」

 

「えへへ、ありがとう!しず子!」

 

今日もあなたがいてくれるから、わたしは笑顔になれるんだ。

 

「あ、後でエマ先輩にお礼言っておかなきゃ!」




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