ろっく・ざ・らいふ   作:モモサト

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ある意味、伝説の始まり3(モト視点)

 「その音が響いている時だけは、ヒーローだから…掻き鳴らせぇええー」

 

 ひとりと一緒に作詞、作曲した自分たちの唯一のオリジナル曲「ギターヒーロー」の最期の一小節を魂を込めて、自分の全てを絞り出すように声を張り上げて歌い上げる。

 

 その自分の叫びを増幅するように、ひとりのギターソロへと続き、ひとりの歌うようなビブラートの掛かった美しく歪んだエレキギターの轟音が、体育館中に響いていくのにゾクゾクとした興奮を覚える。

 

 今までにないくらいにひとりのギターの音色が研ぎ澄まされているのに、流石は相棒だと笑いだしたくなりながら目を瞑って、その歌うようなギターソロに耳を澄まし、身を委ねる。

 

 キュイ、キュイ、キュイ、キュイ、キュィィィィーン

 

 そして、静かにひとりのギターの音が体育館に大きく響いて余韻を残しながら静かに消えていった。

 

 その瞬間に、ああ、終わってしまったという名残惜しさと寂しさのようなものがこみ上げてくるのを感じながら、ゆっくりと目を開く。

 

 するとシンと静まり返った体育館と、見上げるように自分たちを見上げる観衆のクラスメイトや同級生、同じ学校の生徒たちや、その保護者たちの姿が目に入ってきた。

 

 一瞬の無音がやけに長く感じて、流石にオリジナル曲は攻め過ぎただろうかという、後悔にも似た不安を覚えたが……

 

 「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁー」」」」」」」」」

 

 自分たちの歌で感じた感動を表現するように大きな、大きな歓声が上がり、体育館をビリビリと震わせた。

 

 その歓声に自分たちはやれたのだ、認めてもらえたのだという実感が湧き上がってきて、体の奥底から喜びに湧き上がってくるのを感じた。

 

 「Smells Like Teen Spirit」を音合わせで歌った時から、今日の自分は絶好調だという感触のようなものはあった。

 

 そして、1曲目の途中からポツポツと自分の音楽に聞き入っている様子の人や歓声が目についてきて、自分たちの音楽は人に通じるのだという確信と歓喜に体が震えるくらいに興奮して。

 

 2曲目くらいから聴衆の目に見えて反応もよくなり、確かな手応えのようなものを掴んで、3曲目の後に自分たちは完全にこの場を支配し、掌握したことを確信して、やってやったという強い興奮を覚えた。

 

 そして、4曲目、今までの誰かの歌やメロディーを借りるのではなく、青臭く拙い自分たちのオリジナル曲をぶつけて、自分たちがやってきた3年間という時間は無駄ではなかったんだ、と思うと同時に不思議な感慨が湧き上がってきた。

 

 今、こうして皆、敵だとすら思っていた学校中の人達に歓声を上げて迎え入れてもらえると、自分にとっての敵とは何だったのだろうと分からなくなってしまった。

 

 ……音楽って凄いんだな

 

 自分を認めさせるために、一番手っ取り早いのは、自分の拳を相手に叩き込んでやることだった。

 

 そうすれば自分を馬鹿にして見下してきた奴らを、自分と同じ高さまで引きずり降ろして、力で自分を認めさせてやることが簡単にできた。それが、一対一の喧嘩だけならば今まで誰にも負けたことがなかった自分の一番の存在証明だった。

 

 けど、それでできるのは自分を見下ろすことは許さないという意地と誇りを相手に示すことだけで、相手と分かり合う事なんてできなくて、相手との溝を更に深くして断絶させるだけだった。

 

 けれど、歌で力を示したならば、示せるならば、敵だと思っていた相手とも分かり合うことができるのかもしれない。

 

 この自分が、歌うことで、ひとりと作った歌と歌詞を皆と共有することで生まれた。

 

 目の前の熱気と笑顔を前にして、この一瞬だけは、一匹狼とぼっちという学校のはみ出しものである自分たちも、ここにいる皆と何かを分かち合って、分かり合えたような、そんな気がした。

 

 その感動を、どんな言葉で言い表せばいいのだろう。

 

 ただただ胸が一杯になってしまって、自分でもよく分からなかった。

 

 その歓声の声が、拍手の音が、体の底からふつふつと喜びと興奮を掻き立てて、たまらず叫び出したくなりながら、その喜びと興奮を分かち合おうと後ろにいる相棒へと振り向いて目を向ける。

 

 すると、ひとりは自分と同じように何処か呆然とした様子で体育館のステージ前に集まって拍手をしてくれる人たちを見ていた。

 

 そして、自分が振り返った事に気付いて、ようやく自分の方へと視線を向けてくるのに、ああ、今、自分たちは同じ気持ちを共有できているのだなと分かって、無粋な言葉など挟まずにただ親指を立てて笑ってみせた。

 

 その瞬間、ひとりは我に返ったようにニヤッと笑い。

 

 次の瞬間、顔を真っ青にしてステージの隅に倒れ込むように駆け寄ると、「おろろろっろろろ」と胃の中のものを全て吐き出した。

 

 その瞬間、さっきまで会場中の拍手や歓声の声が一切止まっていて、ひとりがえずく声だけが響いていた。

 

 どうやら極度の緊張状態だったライブが終わって、緊張感が途切れた瞬間に、体の中に溜まっていたいろいろなダメージが一気に表面に出てきてしまったらしい。

 

 ……そのお陰で、先ほどまであった会場の一体感のようなものは、一瞬で霧散していた。

 

 というか、ひとりのゲ○に釣られて俺ももらいゲ○をしそうで、吐き気のようなものを覚えてきた。

 

 「……うぷっ、あー、どうも、ありがとうございましたネックでしたー。慣れないことをしたせいで色々、限界なんでこれで終わりまーす」

 

 そうシーンと静まり返った申し訳程度に言葉を掛けると、ハジメは慌ててひとりの傍まで駆け寄り、これ以上人目にひとりの嘔吐シーンを見せないための壁になるように寄り添うと背中をさすってやるのだった。

 

 「ご、ごべんなさ」

 

 「何言ってんだ、ライブ終わるまで我慢できて偉いぞ、お陰で大成功だったじゃんか、よく頑張ったなー、偉いぞヒト」

 

 生徒会長が慌てて自分たちの代わりにステージに出て、ほかの生徒会の委員が雑巾と水のバケツなどを持ってくれるのに感謝しながら、はちゃめちゃなまま初ライブは終わりを迎えるのだった。

 

 ……文化祭の後、それなりに反響があったのか、学校中の人が一目置いてくれているような手応えはあり、実際に遠巻きに声を掛けてくれる人が増えたのだけれど、ひとりにとっては新たな黒歴史の誕生のせいもあってプラマイゼロであり……高校は絶対にハジメと一緒に、これまでの自分の事を誰も知らない学校にいくのだと固く誓う契機になったようだった。

 

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