最近、再びぬらりひょんの孫と緋弾のアリアにハマりだしましたので書きました。
親和性も高いのでは?と思いましたので書きました。
緋弾のアリアは21巻以降、ぬらりひょんの孫は最終巻後です。
妖怪
───かつて人は妖怪を畏れた
その妖怪の先頭に立ち、百鬼夜行を率いる男
人々はその者を妖怪の総大将───あるいはこう呼んだ
魑魅魍魎の主、ぬらりひょんと───
関東平野 浮世絵町
そこには数百年前から存在する『妖怪屋敷』とも呼ばれる大きな屋敷。
数多くの魑魅魍魎達が住まう屋敷。そこに一人の少年が帰宅する。
名を
「ただいまー」
中学校からの帰りで屋敷の中に入っていくと彼の目には魑魅魍魎達が視界の中に入ってくる。白い着物を着た髪の長い少女。白目の大男。編笠を被った黒い法衣を着た髪の長い男。マフラーをつけた金髪の美男子。
納豆の藁苞の頭の小人。烏の小人。小鬼など…。
人に似た妖怪や完全なる異形の姿をした妖怪まで。
そしてリクオは自分の祖父に挨拶しにいく。
祖父の居間へと向かい、襖を障子を開ける。
「じいちゃん、ただいまー」
開けるとそこには後頭部が後ろに長い老人がいた。
だが、そこにいたのはリクオの祖父だけではなかった。
「帰ったか、リクオ」
「ほう。此奴がお主の跡取か」
祖父の目の前には二人の少女が座っている。その片方の少女だった。
梵字が描かれた藍色の服を着た小柄な少女。濃いの髪、そして頭部には獣の耳が存在していた。
リクオの目にはわかる。この少女は妖怪だ。
「じいちゃん、その人達は?」
「丁度いい。リクオ、お前も座って話を聞くといい」
横目でリクオを見て茶を啜る。その言葉に無言で頷いて祖父の居間に啜る。
「初めましてじゃの。儂は玉藻。白面金毛の天狐じゃ」
天狐……妖狐の中でも最上位の妖狐。かつて戦った妖狐よりもさらに上の存在だ。
「奴良 リクオです」
ペコリと頭を下げる。そしてたまもと名乗った妖狐の後ろにいる少女と目が合った。
「そしてこの小娘は猴」
「猴……?」
"猴"という単語にリクオは首を傾げる。
「なんじゃ、勉強不足じゃのう……リクオ。そうじゃのう、孫悟空と言えばわかるか?」
「孫悟空……!」
その名は聞いたことがある。いや、有名な名だ。中国の猿の妖怪。またの名を斉天大聖。
「さて、どこまで話をしたんじゃったか……」
またお茶を啜りながら話す祖父。
「緋緋神まで話したんじゃ。それでじゃ、猴の話に戻ろう」
玉藻は猴の方に視線を向ける。猴と呼ばれた長い黒髪の少女はリクオにペコリと頭を下げた。リクオもペコリと返した。
「猴から緋緋神の力が消え、そして猴の人格が残った。ただ、問題がある」
目を閉じる玉藻にリクオはゴクリと息を飲む。
「唐の妖怪共は元々、孫の支配下であった。その孫が消えれば……」
「唐の妖怪共が暴れるじゃろうな……」
祖父が真剣な顔でそう呟いた。
「それだけじゃない。孫は猴の体を使って唐を支配していた。体の猴が生きているとなると孫に恨みを持つ妖怪共に狙われる可能性がある」
「さすがに儂でも唐の妖怪共から猴を守るのは限界がある。そこでじゃ、お主んとこで猴を暫く匿ってほしいんじゃ」
ピクリとリクオの祖父が眉を動かした。茶を啜っていた茶碗をテーブルに置く。
「それを素直に聞く儂じゃと思うか?」
「言うようになったのう。まだ弱かったお主に助言したのは誰じゃったかのう?」
バチバチ、と祖父と玉藻の間に火花が散る。
「じ、じいちゃん。意地張らなくていいから!」
そう言ってリクオが二人の間に割って入る。
「フン、まぁいい。今の奴良組はお前に任せておる」
リクオの祖父は後退る。その言葉に息を飲む。そして、リクオは玉藻の方に向き合った。
「あの、暫くというのは、いつまでなんです?」
「わからんがとりあえずひと月が目安かの。そうすれば唐の妖怪達も落ち着くじゃろ」
(なんかテキトーのような……)
ちょっと怪しく感じるリクオ。チラリと猴の方を見る。
「あ、あの迷惑なら引き受けなくていいんです!」
申し訳なさそうに頭を下げる。
「……わかりました。とりあえず一ヶ月なら引き受けます」
彼女が困りながら目に涙を浮かべた顔はそれこそ嘘とはリクオには思えなかった。
その様子に玉藻はリクオの祖父に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「リクオ、その娘……猴に浮世絵町の案内でもさせておきなさい。儂は猴のことを話す準備をするために幹部たちを集める」
「う、うん」
リクオが猴の方へと向き合う。両手の拳を地につけペコリ、と頭を下げる。
「初めまして。僕は奴良組三代目・総大将 奴良 リクオです。話は玉藻さんから聞きました」
「は、ははは、初めまして!猴は猴って言います。
おどおどした動きでこちらの様子を伺う猴。弱気な人がよく見せるような仕草であった。
「じいちゃんの知り合いの頼みだからね。それに困っている人や妖怪がいたら見過ごせないよ」
ニコリ、と猴に笑顔を向けてそう言った。
「それじゃあ、ここらへんの浮世絵町の案内をするから一緒に行こうか」
リクオはそう言って立ち上がり、猴に手を差し伸べたり猴は恐る恐るその手を取り立ち上がりリクオの後へとついていく。
そして部屋に残ったのはリクオの祖父と玉藻の二人だけ。
「あの子がお主の孫か」
「おう、自慢の孫じゃ」
ニヤリ、と自信満々の笑みを浮かべて態度を崩す祖父。
「噂によればあの羽衣狐と晴明倒したようじゃの」
「噂?事実に決まっとるじゃろ」
「なるほどのう。あの孫にはそれほどの力が秘めておったとはのう……。しかし、お主は随分と老けたのう」
「ちょいとな……」
そう言って彼は自身の心の蔵があったであろう場所の上に掌をそっと添えた。
「寿命が削れておるな…。本来だったらまだ現役じゃったろうに」
「本来?まだ儂は現役じゃわい」
「莫迦者が」
呆れたように溜息を付く玉藻。
「でじゃ、リクオの方はどうじゃった?」
「うむ。異常はない。お主が心配しておった
「そうか……」
安堵の溜息を漏らす彼。
「さて、これからお主の組がどう成長するか楽しみじゃ。のう、───
リクオの祖父、ぬらりひょん。500年前に妖狐を討ち倒し魑魅魍魎の主へと上り詰めた妖怪の総大将。
その男はニヤリと不敵な笑みを笑っていた。
夕刻
「んで、あっちが───ってもう暗くなっちゃったね。そろそろ帰ろうか」
猴に浮世絵町を案内するリクオ。空がだんだん光を失っていっているのを見て猴へと振り帰る。
「は、はい……」
(変わった
リクオは猴と会話をしてそんな感覚を覚えていた。千年以上生きてる妖怪の割にはあまりにも気弱すぎないか?と感じてしまう。しかもあの有名な妖怪である孫悟空となればだ。
孫悟空といえば有名なものといえば『西遊記』。
三蔵法師が孫悟空、沙悟浄、猪八戒の三人を連れて襲い来る様々な妖怪を退けて天竺へと向かう御話。
そして妖怪においては上位にあたる存在。それが目の前にいる猴なのだ。
「あ、あの、どうかしましたか?」
おどおどした感じでこちらを伺ってくる猴にリクオは何でもない、と言って帰る道を歩く。
「?」
リクオは違和感を感じた。寒気を感じたのだ。
自身が何度か体験したことのある寒気。それは殺気。
リクオ達に向けられているその異様な殺気にリクオは猴の腕を掴んで走り出す。
「猴、走るよ!」
「は、はい!」
猴も殺気に気付いているのか素直に従いリクオに付いていくように走る。
リクオ自身こういう経験はある。妖怪に襲われる時によく感じる寒気だ。
(とりあえず、人気がないところに……)
リクオは狙われているとわかると一般人を巻き込まないようにと人気のない林の方へと入っていく。
リクオの推測ではこの殺気は妖怪のもの。妖怪となれば一般人も関係なく暴れることが多い。となれば巻き込まないように人気がないところに誘いこむしかない。
(一体、どこから───)
「リクオ、上ですっ!」
「!?」
猴の叫び声に視線を上へと向けた。リクオと猴の二人を潰してしまう程の大きさの何かが落ちてきていた。
(まずいっ!)
猴を連れて避けるには方向転換が間に合わない。走っている体制で前方に避けては猴が潰されてしまう。
「!」
リクオは咄嗟に猴を後ろへと吹き飛ばし、自身を前方へと回避する。
───ドンッ!
と先程まで二人がいた位置に何かが落ちてきた。
吹き飛ばされた猴も回避したリクオも咄嗟に起き上がり落ちてきたものをみた。
「チッ、しくじったか…」
起き上がるそれはリクオと猴を交互に見た。それはリクオ達よりも二回り大きな巨体の二足歩行で立つ虎。
「妖怪……」
その姿を見てリクオがそう呟いた。
「おいおい、しくじってんじゃねぇか!」
さらに誰がそこに降りてきた。それは巨大な猿。どちらも人語を喋る二足歩行の動物。
「まさかあの人間が避けるとは思わんだろう」
虎がリクオの方に睨みつける。
「だからさっさと殺っちまった方が早いって言っただろ。まぁ、いい。猴の方はもらってくぜ」
猿がニヤリと笑って猴の方を見る。
「「!」」
猿の口から飛び出た単語に二人は目を見開いた。明らかに猴のことを知っている妖怪。この2匹は恐らく中国の妖怪だと推測される。
「その娘になんのようかな?」
「決まってるだろ。猴を殺す」
「いーや、まず先に連れ帰って俺の子供を作らせる」
虎と猿がそれぞれの目的を語った。
「何者なんだ、お前たちは」
「妖怪だよ。人虎と
猿がニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべて猴を見る。その様子に思わず猴はヒッ、と悲鳴をあげた。
人虎、半虎半人の妖怪。そして攫猿、女性を攫っては子供を作らす妖怪。
(人虎はいいとして攫猿は厄介だな……)
リクオはそう判断する。
「もうヤっていいよな!人虎!」
焦らされていた攫猿が我慢の限界だったらしい。涎を垂らしながら猴へと駆けていく。
「猴!!」
リクオが猴へと呼びかけるが猴は動くことがままならない。敵の能力にハマっていた。
妖怪には「畏」という者がある。それは人を驚かすために存在し始めた妖怪にもともと備わっている妖怪の力。人を怖がらせたり脅かしたりすることで力を発揮することが多い。
攫猿は女性だけに発動する「畏」であり、相手に気持ち悪いという恐怖を与えることによって逃げられないように動きを制限させる畏だ。
(まずいっ!)
リクオが一歩踏み出した。だが、既にもう一匹の妖怪「人虎」は既に動いていた。一気に距離を詰められており、いつの間にかリクオの目と鼻の先には獣の爪が迫っていた。
(しまった!)
攫猿に気を取られて人虎の注意を怠っていた。
確実に殺そうとしている爪はそのままリクオの姿を切り裂いた。
「リ、リクオっ!?」
驚きの声をあげる猴。だが、その引き裂かれたリクオの様子が変であった。
刻は日没。ここから夜の領域と入っていた。
奴良 リクオは人と妖怪のクォーターである。妖怪の血を四分の一を引き継いでいる。
奴良 リクオには二つの顔がある。昼は人間であり、夜は妖怪の姿へと変化する、
奴良 リクオはぬらりひょんの妖怪である。いつの間にか人の家に上がり込み、お茶を啜るぬらりくらりと掴みどころのない妖怪の総大将。
引き裂かれたリクオの姿が幻のように虚空へと消えた。
そして虚空へと消えたリクオがいつの間にか猴と攫猿の間に割り入っていた。
「こっちでは初めましてだな。猴」
ぬらりひょん特有の後頭部が後ろへと長引いている姿へと変化したリクオが不敵な笑みを浮かべながら背後にいる猴へと話しかける。
「リ、リクオなのですか……?」
恐怖で震えてはいるが猴は勇気を振り絞って口を開いた。
「ああ」
「誰だ、てめぇっはぁぁぁぁぁ!!」
攫猿は理解が追いついていない。邪魔が入った男に激怒しながら拳を突き出してくる。
「奴良組三代目・総大将 奴良 リクオ」
ニヤリ、と笑ってその拳の前に長ドスの刀を構えた。斬るというよりはその拳の前に置くかのように刀を構えた。
「!?」
攫猿の拳はそのままリクオの刀の刃によって二手に別れていく。攫猿の拳はまるで紙切れのように斬れていく。
「な、なにぃっ!?」
腕を斬られた攫猿はドバッと出血しているところを抑えながら悶え苦しみ始める。
「なんだ、意外にあっさりと斬れるじゃねぇか」
血に付いた刀を払い、笑みを浮かべるリクオ。
「こ、この糞餓鬼がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「待て!」
怒りに燃える攫猿を呼び止めるも怒りに身を任せてリクオへと拳を振るった。
───明鏡止水・"桜"
その拳は届かなかった。リクオの目前で攫猿の身体が発火したのだ。攫猿の身体を覆い尽くすのは桜色の炎。
舞い上がる炎がまるで桜吹雪のように攫猿の身体を燃やし尽くす。
「チッ!」
人虎が後ろへと飛ぶ。その様子に気付いたリクオ。左手に持つお酒が注がれた大きめな盃を覗き見る。
「お、アンタ賢いな」
人虎の動きを見てニヤリと笑う。
「妖怪・ぬらりひょん…アンタのことは噂程度には知っているからな」
「そうかい」
「───!?」
いつの間にか人虎の懐に入り込んでいるリクオ。リクオの横薙ぎの一振りを間一髪で躱す。遥か遠く、林の中へと紛れ込むように入っていく。
「アンタには手を出すなって聞いている!」
闇の中に響く声。リクオは周囲を見渡して妖気を探る。
「また会おう、ぬらりひょん!」
感じない。妖気を感じなくなった。ふぅ、と息を吐き愛刀を肩に乗せ猴の方へと振り向いた。
「さて、これで片付いたな」
猴が顔を俯かせ立っている。どうやら相当怖かったらしい。
「おい───」
安否を確認しようと声をかけようと一歩踏み出した。
(なんだ……?)
猴の様子に違和感を感じる。怖いのなら体が震えているようには見えない。
なぜかはわからないが彼女に違和感を覚え始める。
「───なぁ、ぬらりひょん。アタシと闘わないか?」