オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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025/必要

 

そうとなれば足を止めている訳にも行かない。

二の足を踏む白の腕を掴み、無理矢理に下へと沈む。

「お、おい」なんて声も聞こえるが無視。

 

無理に無理を重ねて神を倒すにしろ、超えねばならないハードルは幾つも有る。

 

達成しなければいけない条件。

暴かなければいけない神名。

決めさせなければ行けない決意。

通さなければいけない刃。

 

そのどれを取ったとしても、俺一人では到底無理で。

他の誰にしてみても、恐らく一人では達成不可能。

或いは幾つもの壁を超えた、人を超えて成り果てた存在ならば別かもしれない。

 

ゲームの頃にしてみれば、ずっとずっとやり込んだ先の話。

やり込み過ぎて、他の誰をも犠牲にした上で。

その全てを自分の身に宿した、単独プレイの果ての果てならば。

ただ、今こうして思えば――――それは、既に人ではない。

 

犠牲を知らずに後から知る。

犠牲を知った上で許容する。

……それを受け入れられる程、俺は強くはなかったと。

それだけの話なのだけれど。

 

「先ずは灯花の御母上様の状態を確認するところから始める」

 

目の前の蜘蛛の巣を払い除けつつ、背中に声を投げ掛ける。

半ば無理に白を連れてきたのも、俺の我儘というだけではない。

先程から色々と言動や行動が安定しないように。

今までの経験上、白一人で放っておくと妙なことを考え始めるから。

目の前が行き詰まっているときこそ、無理に引き回したほうが互いのためになったりする。

 

それを身を以て知るのも、俺と……リーフくらいか。

多分自分自身では理解できていない、少しだけ人らしい情緒の欠片とも思う。

 

「……まぁ、それは良い。 それから?」

「その状態次第で分けるが……色々手分けして準備する必要があるだろーな」

 

各々得意分野もやれることも違う。

正直言って幾つかの幸運に見舞われないとどうしようもないというのは秘密の事象。

ただそれでも動かなければ始まりすらもしない。

 

「と言うと?」

「先ず御母上様が話せるようになるかどうか、無理なら俺の負担が増える」

 

話せるようになったとして、知識があるかどうか。

もし無いのなら最悪呪法陣を()()()()()()()()()()()必要性が生まれる。

実際問題能力を生み出す、なんて無茶苦茶が通せるのは全てに才能を持つからこそ通せることだ。

出来ればやりたくない。 それだけに労力を相当費やすことになりかねないし。

 

「で、白に頼みたいことは別にあるんだが」

「何じゃ、先程言っていた立ち向かう手段の構築か?」

 

それが今の時点で取得できたら怖いが、やりかねないんだよなぁ……。

二つ目の壁を越えて、という前提を踏まえて先程は白に説明したが正確に言えば正しくはない。

其処まで行けば幾つかのイベントを経て好感度が一定値に達するから取るに値する、という意味。

好感度が低すぎれば不利事象さえ発生するから、公式が許してるところがある能力だろうし。

 

少しくらいは遊び手に有利な事仕込めよ。

そんな事を幾度思ったことやら。

 

(……まだ教えるのは早かった……いやいや、今教えないでどうするよ。)

 

ちょっとだけ首を振って、更に一歩足を進める。

 

「灯花と協力して、この神殿内に残されてる建物とか配置とかを調べてくれ。

 それに、拾い集めて来てほしいものも有る」

 

恐らくそれを頼むのは紫雨か伽月も加わって、になると思う。

ある程度筋力を持つ人物も加わった上で、幾つか集めて欲しい物品も有る。

無論、この廃神社を管理する人物の許可が得られるのなら……という前提だが。

 

「……配置を? それに物品を、じゃと?」

「そうだ。 細かくは全員の前で説明するつもりだから待っててくれ」

 

絶対に二度手間になるからなぁ。

それに集めて欲しい物品、というのも鑑定の手間が必要になるモノばかり。

一目で見て分からない、龍脈の中で一定期間を過ごすことで変異化した素材ばかりだからだ。

ただ、そればかりにかまけてもいられないというのも面倒臭い。

 

(「神」と言っても……その名前が分からなきゃ対応しようがないからな。)

 

八百万の神々、という設定が不利に働くのはこういう所だ。

 

修道士関係の場合は「自らの奉じる神の力を用いて強引に呼び出す」関係上。

深度やその神との信頼性の高さ、呼び出す相手との格差などで成功率が増減する。

それに対し神職関係は「相手を特定さえすれば確実に呼び出す」ことが出来る。

反面、特定の難易度が高かったり事前の準備が厳しかったりと面倒臭い。

どっちが楽なのか……と言われると俺自身首を傾げる。

 

なので、特定に繋がる情報を集めつつ事前準備の為の準備を行う……というのが暫くの作戦。

まあ何にせよ、切っ掛けになる巫女がやる気になってくれなければどうしようもないが。

 

「…………お?」

 

先程の……女性が寝込んでいる部屋に通じる穴に近付いた時。

とん、と上から降りてきた影。

 

「………………ぁ」

「リーフ。 どうだった?」

 

少しばかり青い顔を浮かべた、良く見知った少女。

先程まで病態を見ていたリーフに、そんな言葉を投げ掛けた。

 

「…………一段落……は、しまし、た。 でも……こんな、場所、だと」

「……永くは持たない、か?」

 

見るからに全身から疲労を吹き出している。

そんな質問に小さく頷きながら、少し休みたいとその顔が訴えていた。

……ただ、それを一旦意識して無視し答える。

 

「……すまん、リーフ。 ちょっとだけ我慢して貰えるか?」

「?」

 

上へ、と行動で彼女へ伝える。

他の仲間達も恐らくは同じ場所にいるはずだ。

 

……時間がないというのなら。

お互いの考えは、一致するはずだからと。

いっそ偽悪的な言葉を考えつつに。


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