オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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030/推察

 

「…………私達、みたい、なのを。 見たこと、が、無い?」

「――――そうか。 其処が区分点か」

 

疑問と気付き。

発せられた声は全く同じタイミング。

 

「……? おかしいこと、なのですか?」

「…………言われて、みれば、かな?」

「いやリーフ、その認識はおかしい」

 

実際問題俺達のような年齢で追い出された文字通りの『初代』達。

それらはどうしても経験の寡多により淘汰され、先導者に導かれるかどうか次第になる。

周囲と連携が取れない、というのはそれ程重く。

『先輩』との連携なしに生き残れている俺達こそが異常極まる。

 

その認識が甘いというか……うん、まあ。

俺が彼方此方で拾い上げてるせいかもしれんけど。

 

「話を戻して。 恐らく結界の効果の基点は『年齢』……正確には『成人しているかどうか』だな」

 

成人は自由に外に出られる、代わりに所有権を持つ物品が高速で風化する。

未成人は外に出ることが出来ない、代わりに物品に対して影響されない。

 

この前提で考えた場合、どうなるか。

成人という基準が異なる、ということは先ず無い。

この世界として定められたルールが『15歳』。

具体的な日にちとして管理されているわけではないので前後はあるが。

それにしたってズレは前後十日間程、閉じ込めておくという意味では見逃して良い範囲の誤差だろう。

 

何よりこの前提の場合で、閉じ込める相手が親子の場合。

子が外に出ることが出来ない以上、常に餓死と親への不信を抱え続け。

親が持つのは心理的な負担、外に出て食料を手に入れ子に渡さねばならないが。

()()()()()()()()()()()()()()()()、という甘い囁きが心に残り続けること。

 

心理的に責め苦を与え続ける……クソみたいな神の仕掛けだと唾棄してしまいそうだ。

 

「…………それ、って」

「俺の事前想定が間違ってた、ってことだな……。

 灯花に対しての御母上様の言葉を真に受けるなら、だが」

 

俺だけが閉じ込められている、ではなく。

仲間達を含めて全員が脱出できなくなっているだろう、という推測。

ただ、正直個人指定で出入りを禁じるよりもある程度の集団を指定する方が楽なのは間違いない。

それを前提とする場合、問題となるのは……やはり時間と食糧問題か。

 

「当初の予定よりも余裕はできたが、完全とまでは行かないだろうしな……」

「よてい、ですか?」

「言っただろ、灯花を誘いに来るのが目的だったって」

 

万が一の事態を考え、普段から余裕を持った準備を整えていたからまだ問題はない。

とは言え、身体が動かなくなるような食料の消費も難しい。

実際問題二人増えた、と考えて再分配を済ますとなれば……。

紫雨にも確認がいるが、凡そ二週が限度。

実際には更に移動やら準備がいるし、戦闘後も見込むとなれば準備に費やせる時間は最大十日。

 

「……まあ、無理は利くようになっただけマシだな」

 

頭の中の算盤を弾いて出た数字。

足りない、と心の何処かが呟く言葉を意図して無視する。

 

そして。

先程の御母上様との会話を踏まえて、やらなければならないことが一つ二つ増えている。

 

「まだ、諦めないんですね。」

「当たり前だろ。 諦めて何が変わるんだ」

 

その中で相変わらず一番動いて貰う必要のある人物……灯花は、積極的というより受動的。

 

……彼女の場合は、将来性が何も見えていないのも理由の一つなんだろうな。

受けた恩の分は、位には考えているのだろうけれど。

生まれた時から同年代と関われない、という意味合いではリーフと同じ。

違ったのは、話せる同じような立場の相手がいたかどうかの差。

 

「これで情報の鍵は一つ……もう少し詰められるか」

 

今こうして情報を必死で集めているのは、最期の最期の詰めの為。

俺自身も色々と知識はあるものの、『これ』という世界側からの(システムてきな)保証はなく。

それを得る為には『神々に親しい存在』という特殊な在り方(ラベル)が必要になる。

 

つまり、最後の答えは恐らく。

リーフか灯花に頼る他無くなる。

それも深度が足りないだろうから、何かしらの妖を見つけ。

狩ることで瘴気の蓄積までを熟す必要性さえある。

 

だからこその周囲の探索、だからこその物品の把握。

恐らくは情報の断片に当たるものを探していては足りなくなる。

ただ、それだけを追い掛けていても準備に時間が足りなくなる。

 

……何とか短縮できる所は進めないと。

 

「もうすこし……?」

「そうだ。 結界に付与した能力じゃなく、権能として定められた”在り方”の特定」

 

主神、戦神、冥界神、運命神、女神、貧乏神、福の神に海神。

その神話に応じて配置される神々。

この世界でも、元ネタと同じように設定だけはされている。

だからこそ同様に、その役割を導き出せれば対応手段だって考え付く筈。

 

――――そして、最初に浮かぶものと言えば。

俺にだけ見えた、行動方針や言動を操っていたと思われる見えない糸。

 

(……命じる権限を持つ、つまりはそれなり以上に力が強い存在。

 そして俺に干渉していた相手と同じなら……()()()()()()()()()()()を持つ神)

 

先ず絶対に無い、と言い切れるのは海神と冥界神。

腐敗という能力だけを考えれば後者もあり得るが、周囲の感覚などからして除外する。

 

次に外すとすれば戦神や主神……か。

此方は単純に介入する理由が思い当たらない、という可能性の低さから外したというだけ。

 

なら……。

人に関わり、その不幸を楽しむと考えるのなら。

その二つ、或いは何方かの権能を持ち得る可能性のある相手。

その答え合わせとして――――。

 

「運命神、運に干渉する神、或いは裁定神」

「え?」

「人に強く干渉する権限を持つ神。

 恐らく、俺達の敵……この神社を封鎖してるのはそんな相手だ」

 

権能を推測し。

幾許かの選択肢へと絞り込み。

最後は仲間に任せるしか無い。

 

考え込むのは此処まで。

残るは、それらに通用するであろう呪法陣の生成法則を突き止めること。

そんな考えに、自然に移り変わっていたから。

 

向けられた、奇妙なモノを見る目線が……少しばかり移り変わったことには気付けても。

その理由にまでは、気付けることはなかった。


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