オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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035/朝日

 

各々の分から切り分け、食事を作った。

軽食分類の干し肉ではなく、人数分として用意している別口の食料。

二人分を追加して作る以上、当初の予定より量が減るのはもう諦める。

灯花と御母上様にも差し上げて、翌朝話そうと相談して就寝。

 

「……ん」

 

早朝。

最初に聞こえたのは、奇妙な物音。

周囲から鳥の鳴き声も葉の音もせず。

ただ、何かが蠢くような音が切っ掛けだった。

 

がさ、がさ、がさ、がさ。

動物だろうか――――それとも、妖だろうか。

寝惚けた頭で思考を回す内に、寒気と共に。

すぐに違うことに気付く。

 

()()()()()()()()()

遠くから少しずつ近付き、また少しだけ離れて完全に掻き消えた。

 

其処から思い出すのは、抹消者。

……それも追うのではなく、単純に移動する音。

 

「…………」

 

朝から嫌なモノを感じ取り、冷や汗が背中を冷たく濡らす中。

周囲の、同じ部屋で眠ることになった女性陣を見る。

 

薄くでも目を開けているのは伽月とリーフ。

恐らくは同じく、物音が切っ掛けで目覚めたのだと思しき二人。

ただその表情は、昨日のことを思い出したのもあるのか。

微かに震えているようにさえも見え、声を掛けようかと思った矢先。

 

目線に入る、平然とした様子で穴の内側から此方を覗き込む灯花の姿。

 

「おはよう、ございます?」

「……おはよう」

 

何とも言えない雰囲気。

ただ彼女は気にもせずに上がってくる……いや、こういった空気を知らないのか。

今までに母親以外との接触機会がほぼ皆無だったのだし、学びようもない。

俺はまあ……うん、最低限『溶け込む』くらいは昔の知識で出来るからなぁ……。

 

「さっきの音は?」

 

こほん、と無かったことにするように咳をした伽月。

それに俺を含めた二人で乗っかり、同じように流そうとし。

 

「きのうも言いましたけど……抹消者、だと思います。」

 

特に気にすること無く話が進んだので、内心でちょっとだけ安堵を浮かべた。

 

「毎朝こうなのか?」

「いえ……普段はもう少し静かなんですけど。」

 

なんででしょう、と疑問符を浮かべているのを細目で見てしまう。

つまり俺達がいるから奇妙に動いてる……何かしら判断する基準があるのか?

にしても早朝際と昼……はっきりした時間帯が特定できるならしときたいが。

 

「後でいいか。 灯花、昨日出来なかった話をしておきたいんだが」

「ぁ、はい。」

 

独り言として口に出しつつ、今起きている面子だけでも相談をする。

伽月には火起こしを頼みながら、内側と外側での意見の摺合せ。

 

……しかし、こうしてみると。

頭を使える人間が相当数いる、というのは多分結構な強みな気がする。

そうでなくとも、戦場の勘に近い物を持つ仲間達ばかりだし……というのは置いといて。

 

「先ず内側……つーか呪法陣の方はどうだった?」

「………………色々、やっては、みました」

 

これです、と提示されたのは様々な形で書いたのだろう。

一枚を細くし、丁度二本の指で挟むのに丁度良さそうな長さの束。

呪符のような形となった、絵柄の書かれた紙の数々。

 

「切ったのか?」

「…………使いやすく、したくて」

「おかあさまが、一枚だけ持ってた形を真似ました。」

 

……いや、まぁ。

確かに持っててもおかしくはないんだろうけどさ。

聞かなかった俺等も悪いんだろうけどさ。

 

「それ見れば、色々と特定できるんじゃないのか……?」

 

そんな言葉がついつい漏れてしまう。

 

「いえ……お母様が言うには、身を守る護符程度の効果しかない……とか?」

「あー、そっちの用途」

 

無論、そんなに甘いわけがなく。

一周回って安心感さえ覚えながら頷いた。

 

「なら消耗品というよりは装飾品か。 体弱いのか? 御母上様は」

「いえ……此処一年程になって急に寝込むようになった感じです。」

 

そういえば、とばかりに聞きそびれていたことを確認する。

灯花が言うには、咳が酷くなり寝込み始め。

今までは御母上様が買い出しに行けていたのも無理になり。

森の中の果実や霊能力者の遺品……腐る寸前のもの等に手を出して命を継いできたとか。

 

ふぅむ。

だからか、昨晩の食事の時に掻き込むように食べていたのは。

そんな納得と、一つの想定。

その呪符の効果にもよるが、もしかすると。

 

「……なぁ、灯花。 一つ頼んでもいいか?」

「たのみごと、ですか?」

「ああ。 紫雨が起きた後の話になるが、その呪符を一度見せて欲しい」

 

もしかしたら、程度の可能性ではあるのだが。

その護符の状態を確認できる俺達で一度見ておきたい。

作成方法までは不明としても、効果は確実に理解できる俺達だからこそ。

消耗しきって、効果を為さなくなっている可能性を知っておきたい。

 

元々そんなシステムがあるはずもない。

現実に落とし込まれたことで破損する事象を見たからこそ、何となく思ったこと。

作る際に込める霊力が尽き、周囲からの攻撃に打ち負けた結果が今ではないのか。

もしそうなると、此処にいるだけで消耗するのは物品だけではないということになるが。

 

(……ん?)

 

何かが、琴線に触れた。

物品だけでなく、何かが減っていく。

今、俺はそう考えた。

 

…………推定、此処の主というか邪魔をし続けている神を考えると。

 

「んんん?」

「あの……どうかしました?」

「………………ぁ。 何か、思い、当たった、かも?」

 

周囲の声が聞こえるようで聞こえない。

裁定神……或いは運命神の類と想定したよな。

仮に裁定神だとして、何を以て罪と断じる?

真逆に、運命神だとすれば何を削っていく?

 

そう考えてしまう方向に誘導されている気がしないでもないが。

 

「……根本的な”運”を削ってるのか?」

 

だから、”運悪く”妖がこんな場所に巣食う。

だから、”運悪く”病を患う。

だから、”運悪く”抹消者に真正面から遭遇しそうになる。

 

全ての判定値を狂わせる(らんすうをれつあくにする)神、と考えれば。

 

「そうなると……。」

 

もしかすれば、必要になる知識は最低限で済むやもしれない。

 

「ぁ。」

「…………どう、します、か?」

 

奇妙なものを見る目で見つめる、神に類する二人の少女。

 

考えから起き上がり、そんな二人を見つめ。

どう説明するか、と思考をぐるりとかき回した。

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