オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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036/交渉

 

「………………『神々の知識』の、能力を、取得する?」

「きのう、言っていたことですよね?」

 

結局切り出したのはその話題が始まり。

元々説明していた……というよりは大前提になる、というのは共通認識。

だからこそ繰り返して説明すると言った意味合いが大きい。

 

「ああ。 何となく揃った情報で幾つか答えは絞れると思う……んだが。

 問題が無いわけではないんだよな」

 

他の『物品作成』系列の知識と純粋な『知識全般』能力の最も分かりやすい違い。

それは前者は言ってしまえばレシピの一覧とそれに付随する物品の詳細、という内容と。

後者は深度を高めることで索引引きや検索機能が詳細になっていく、という差だと思う。

 

そんな違いを教わったのはルイスさんと親父さん。

つまりは俺の知る目上の超能力者二人。

何方も同様に前者と後者の能力を取得しているからこそ、自身の体験として理解していること。

 

「もんだい?」

 

きょとん、というよりは理解できていないド素人(とうか)

噛み砕くように説明する中で、俺自身も見逃しがないかを詰めていく。

 

「多分答えは大部分絞り込める所までは来てる。

 ただ、その名前を口にしてしまうと何があるか分からん。」

 

普通の場所なら問題はない。

きちんと管理されている神社……龍脈ならそれも問題はないと思う。

ただ、今のこの場所。

つまり、神に支配されている場所。

下手に『正しい名前』を言ってしまうのは不味い……と感じてしまうのは俺だけだろうか。

 

(……役割名とか通称名なら兎も角、『名前を特定された』と向こうに知られたくない。)

 

つまり……まあ、単純に言ってしまうのなら。

俺は()()()()()()()()でいてほしいのだ。

 

その方が楽になるし、下手に本気にさせれば勝てるかが怪しくなる。

足掻いている、と思わせたままにさせておきたい。

少なくとも、準備が整いきるまでは。

 

「………………考え、過ぎ……とも、言えません、よね?」

「とうかには……何とも言えません。」

 

俺の考え過ぎ、位で済むならその方がいい。

ただ、格が違う存在と相対するのは今回が初めて。

 

臆病、と捉えられるのか。

慎重、と捉えられるのか。

 

人によるだろうな、と。

何となく、そんな事を考えてしまった。

 

「だから、深度を高める前に最低限でどう見えるかを教えて欲しい。

 それも、出来れば灯花に」

「……それは、構いませんが。」

 

神職関係者だから、と言うのは先ず間違いなくある。

ただ、それよりも今はお互いにこの場所から出る……という目的がある。

だからこそ、一定の理があることを彼女なりに納得した後でなら。

今後を考えると非常に大事な、能力点を今費やすという選択肢を選んでくれる。

 

仲間に出来るかどうか、という部分に関してはもう半々くらいかなぁと思いつつ。

それでもこんなところで屍を晒したい訳では無い。

優先順位の変更を余儀なくされつつも、忘れるつもりは毛頭ない。

 

「おかあさまが、言っていましたが。 何か、道具が必要なんですよね?」

「ああ、『写し鏡の呪法』が込められたやつだな」

 

それは後程渡すとして。

その前に、後幾つか決めておきたいことがある。

特に未だ深度(レベル)が1の彼女だからこそ、方向性だけは無限にある状態。

 

――――そして今、神職の彼女が手に入る可能性がある以上。

結ぶ、と決めて実行を控えていた『血盟』も可能なら行ってしまいたい。

干渉を避けるため、此処から抜け出した後にはなるだろうけれど。

 

「朝食の後で渡すつもりだ。 それと、残り二点をどう割り振るかも先に決めておきたい」

「どう……?」

「得意な武器、呪法、技術、その他。

 俺で例えるなら中衛で長柄武器を握りつつ鑑定、指揮と弱体役を担当してる」

 

……こうしてみると、やっぱり俺が戦闘中にやること多くないか?

いや最初に自分で選んだことだし、こういう人物がいれば確実に潰しが利くし。

そして何より、高速戦闘とか真正面からの剣戟とか向いてないから今更なんだが。

 

「本来だったら色々と武器を持ったりしたほうが良いんだろうけど……」

 

そっと彼女に目をやる。

ガリガリの身体、此処から出たことのないという状況。

どれを取っても一番最初の俺……それよりも尚悪い。

 

「確実に潰しが利く……専門能力から修めた方が良いだろうなぁ」

 

神々系列、龍脈……結界系列、回復系列。

誘導というわけではないが、それぞれの利点を挙げて選んで貰う。

今の状態を考えれば回復系が一番妥当とは思うが、考えが違う可能性もあるし。

 

「つぶし、ですか?」

「取りたくても取れない能力ってのがあるんだよ」

 

そう考えてしまえば、俺の写し鏡に映るあの魔の手を思い出してしまう。

やめろ、邪眼系欲しくないって言えば嘘になるがそれに手を出せば多分俺は堕ちるぞ。

 

「まあ細かくは後で教えてやるが……」

 

どうしたものかな、と少しだけ悩む。

彼女を含めて探索と深度上げで一日……じゃないにしろ半日費やすか?

どうせどこかしらで踏み込まねば行けない事を考えれば、早めに決断した方がいいか。

 

「代わりに、今日一日付き合ってくれ」

「……きのうから、付き合っておりますが。」

 

呆れた表情。

……まあ、それも間違ってないんだが。

 

「一応主目的が二つあるんだよ、今日は」

「はぁ。」

 

純粋な深度上げ、探索。

彼女が俺達とやっていけるかの確認。

その最初の一歩の懐柔策、とでも言おうか。

 

「というわけでとっとと起こして朝飯にするか。

 リーフ、朝食の準備任せて良いか?」

「…………ぁ。 はい」

 

裏の理由は口にしない。

薄々気付いている気はするが、()()()()()()()()()()()

其処は最低ラインだと互いに理解しているから、彼女も乗ってきてくれる。

 

きちんと口にするのは、多分。

此処を出る最終行動……決戦前とかかなぁ。


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