オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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UA20万届いてました。ありがとうございます~


037/設定

 

『灯花/深度1』
『力』『霊』『体』『速』『渉』『呪』
111

 

能力(スキル)

 

未取得/0点
【無】『写し鏡の呪法』1/1自身の内側の情報を水鏡に映し出す簡易呪法。
【無】『知識:神々』1/3神々への知識・索引機能を得る。
【風】『陽月の癒』1/3任意対象の生命力を癒やす。【単体】【回復】
【風】『新月の帳』1/3任意対象の肉体的異常を治癒する。【単体】【深度個数】

 

 

「……これで、良いんですか?」

「ああ、先ず間違いなく潰しは利くと思う」

 

食事の後で、おっかなびっくりしながらの初振り分け。

超能力自体はほぼ確定の割り振りに落ち着く。

基本的に回復担当は中途半端な速度よりも最速か最遅か、そんな形に落ち着くのはいつでも同じ。

 

最速ならば速度に割り振って初手を能力上昇などに費やすタイプ。

最遅ならば体力に割り振って耐える形を取り、初手は持続系の何かに費やすタイプ。

装備に自由度が増すのは何方かと言えば後者。

そして知識が薄く、堅実性を取るならやはり後者。

 

そういった部分もあり、武具を持たせる余地もなかったこともあり。

彼女が選んだのは身軽さよりも『周囲を見る』事を重視する最遅行動タイプ。

 

……同時に、この選択肢を取るということは幾つかの育成方針を捨てることと同義ではあるのだが。

それはまあどっちも同じ、何時かは切り捨てる内容でもあったのだから考えない。

 

(何より、回復型は龍脈誤認……結界型とも共有して能力を割り振れるしな。)

 

彼女にしか出来ないことを優先する。

本来の目的、当初の予定だった『宝珠』の加工に用いる浄化能力。

事此処に至っては、もう少し彼女自身の格を上げてから振って貰うことにする。

 

それ以外にも龍脈を素とする結界を軸とした戦場干渉能力。

或いは神々の力を借りる、リーフにも似た大規模呪法。

何を取り、何を削るかは彼女次第ではあるが……何となく後衛特化型として収まる予感。

……本来の彼女の立ち位置から考えれば、戦闘能力なんて最低限で良いんだがなぁ。

 

「こればっかりは実際にやってみないと分からんが、御母上様にも効果はあると思うぞ」

「そうなんですか!?」

「あ~……そうだね、一応、って言い方にはなっちゃうけど」

 

ついでに俺が勧めた理由も伝え。

それを補強するように紫雨も答える。

 

各々が武器を確かめる中、俺や紫雨は所持する能力の応用で斜め見程度で済んでしまう。

無論普段ならもう少しきちんと確かめている所ではあるが、昨日特に酷使している以上。

念入りに手入れを行った彼女はそれでいい、と判断したらしい。

 

「………………薬が、色々と……作れれば、別、なんですが」

「満足に手を出せる設備も足りてないからな、仕方ないさ」

 

ぽつりと呟くリーフに同意を込めて頷いておく。

実際、任意目標(クエスト)の中には「家族を癒やして欲しい」なんて用件が入ることもある。

この達成手段は二つ、道具か呪法か。

だからどの程度効果があるのか、と言われると疑問だが全く意味がないとは思えない。

 

「病、って言い変えれば生命力の低下と状態異常の合せ技だからな。

 流石に完治は出来ない筈だが」

 

曖昧な言い方になってしまうのはゲーム時代の知識しかないから。

と言うより、それが出来れば今世での薬師や医師の存在価値が消失しかねない。

 

だからか。

『戦闘中に負った状態異常』でなければ一時的な治療にしかならない、という制約がある。

身体自体を癒やさなければまた再発してしまう状態にある、という原理。

まあ逆に言えば、一時的にでも苦しみから逃れられる意味合いはある。

彼女達と共にこの龍脈から抜け出るときには役に立つ筈だ。

 

「……なら、お母様に直ぐ使って差し上げないと。」

「試すのは良いが……すぐに出るぞ?」

 

立ち上がろうとした彼女を押し留める意味も込めて、強く声を掛ける。

実際試したい気持ちも分かるし、少しでも和らげたい気持ちも分かる。

それでも、これから出ることを考えれば霊力の消耗させたままに動かしたくない。

特に、今回今日こそが初めてだからこそ余計に。

 

「? それが?」

 

だが、まあ。

そんな俺等の当然が通じるはずもない。

 

「あー、俺の言葉が足りなかった。

 御母上様に掛けてやるのは帰ってきてからにしてやれ」

 

もう少しはっきり言わなきゃ駄目だな、と。

多少なりとも知識を持ち合わせていた他三人と同じで考えると失敗する、と学習した。

 

「いまは、駄目なんですか?」

「幾つかの理由があって推奨できん」

 

お前等も言えよ、と二人に目をやれば顔を伏せてしまう。

変に口出しをしたくない、という感情からなんだよな?

何かしらの反抗故じゃないんだよな?

そんな渦巻く感情を抱いて細目を向け、溜息を吐いた。

 

「まず、灯花は今回が初めて。

 それも普通の幽世とは違う場所で、真正面から立ち向かうのも初めてだよな?」

「はい。」

「なら、体力と霊力……つまりは万全で動ける状態で動くべきだ、というのが一つ」

 

これがもう少し経験を積んだ後とかならまた別。

感覚的にどの程度消耗しているのか、自分自身で把握できるのなら全然構わない。

その経験を積ませるためというのが一つ。

 

「もう一つは、先ず間違いなく戻ってきた後の方が効果が上になってるから」

 

つまり、最低でも戦闘一回を挟めば深度(レベル)が変動するから。

どう変わるかまでははっきり言えんが、効果時間に影響は出ると思う。

 

「? 二つ目は理由関係なくありませんか?」

「術者側の負担はな。 受ける側が多分苦しむことになるからやめとけ」

 

今使用したとして、戻ってきたら効果が切れている。

安定したと思ったら再度繰り返し、その落差で身体に疲労が蓄積される。

それなら今のままで耐えて貰い、比較的合間を開けずに繰り返せるようにした方がいい。

その為に霊力自動回復能力も必要になるが……ま、それは自分から考えるだろ。

 

「そんなわけで、楽にしたいならお前さんが強くなるのが一番だな」

「……なるほど。 分かりませんけど分かりました。」

 

どっちだよ。

 

口に出すことはなかったが……。

多分、顔に呆れた表情が浮かんでしまったのは。

仕方ないことなのだと、思って貰えると思いたい。


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