体内でどくん、と何かが弾けた気がする。
目の奥、脳の中心。
肉体と言うよりは霊体……霊能力者としてのもう一つの存在。
触れられないものに触れる為に存在する物質。
仮の死から蘇ることが出来る最も有力な説。
ある一定以上の階位を重ねることで、その片鱗に触れることが出来る存在へ。
――――世界から、何かが与えられ。
――――世界へと、何かを刻み付けた気がする。
その一瞬だけは、『世界』と『俺達』が同じような。
比較さえもするものではなく。
当然出来るはずもない存在と、並び立った気がする。
(これ…………が、『血盟』か?)
ちかりちかりと光が明滅する。
落ち着こうと息をしようにも、どうにも息苦しくさえ感じて胸へ手を伸ばし。
けれど
正しく、周りを見れているのか。
正しく、俺は其処に存在するのか。
本来抱く筈もない疑問と、幾度か見てしまった有り得ない光景が重なって見える。
……ああ、もしかすれば。
あの背だけが見えた『俺』は、こんな事を繰り返したから。
肉体では耐えきれない何かを背負い過ぎた故に――――。
「…………っは!?」
唐突に、意識が再動する。
気付けば身体が横倒しになっているし。
全員同じように倒れ伏し、目覚めたのもほぼ同時に思える。
「……今のは、何じゃ?」
「…………夢?」
「ではない…………悟りの前にあるという世界、でしょうか?」
「いやぁ……ボク達がそんなモノ見られるとも思えなくない?
悟りの真反対、どっぷり俗世に浸った先の強欲なら分かるけどさぁ」
「……たぶん。 母様達が見ていた、モノ?」
めいめい、見ていたものを口にする。
幾人か……というか全員だろうか。
見ていた光景が違う気がするのは気のせいなのだろうか。
(……ああ、こんなもん見るんだったら制限も必要だよな)
多分下手に手を伸ばせば二度と目が醒めなくなる。
それをシステム的に再現したのが様々な制限、であるとするのなら。
ふと思うことが一つある。
(ひょっとして、
ゲームの世界に降り立ったのではなく。
元々あった世界から干渉を受け、ゲームを作り上げた。
卵が先か鶏が先か、という逆転問題にしか成らず。
同時に答えを持つ相手もいないだろうから、重い頭を振って考えを追い払う。
「で、だ。 ご主人よ」
「ああ……手に入った能力に関してだよな」
求めていたもの。
対応するために、立ち向かうために得た無作為に選ばれる能力。
無論幾らかの効果は覚えているから、その中でも有用なモノを引いてくれることを祈る訳で。
(【窮地逆転】とかだと助かるんだがな……)
その能力名は常に四文字の漢字で表される。
例えば……相手と此方の階位差、能力値差に応じて補正が掛かるタイムアタック勢のお祈り能力、【窮地逆転】。
例えば……自身が使う道具の効果量・範囲・所持上限を常に倍増化・拡大・増大化する【倍倍倍化】。
有用なものしか発現せず、但し確実にこの舞台に有用と言い切れるかは未知数。
だから、少しだけ緊張しながらその能力へと目を通し。
「………………は?」
少しだけ固まった。
「どうした?」
「いや…………なんつーか……」
其処に記されていたのは、見覚えのない名前。
それ自体は良い、俺だって全部覚えてるわけじゃない。
関連性を付けて引っ張り出せることはあっても、そうじゃないものもある。
だから、忘れただけだろうと思うことだって出来る。
けれど。
| 【血】 | 『洽覧深識』 | 1/1 | 相手ヲ知リ、己ヲ知レ。 |
「説明文が短すぎる……」
というよりも説明にさえなっていない。
少なくとも俺はこんな四文字の漢字の意味は知らんのだが。
知識を武器にしろ……って意味でいいのか?
にしては何も分かってないんだが。
「はくらん……しんしき? でいいのか?」
読み方さえも分かってないから、能力としてさえ成り立ってないのだが。
各々が自分の写し鏡を見て、それに思いを馳せる中。
一つの声が対面上から挙がる。
「……あー。 これで多分『こうらん』だと思うよ~?
確か、『知識が深い人』みたいな意味だったと思う……?」
「……
ぼそり、と呟いたつもりだった。
特に何の理由もなく、もっと分かりやすくしろよと。
対策を練る根幹に据えるに相応しい能力なんだろうな、と。
幾つもの文句を込めた呟きのつもりだった。
「多分ご主人に引っ張られたんじゃろうなー」
「そんな気はする……が、白。 余計なこ、と……」
言葉を言い切る前に。
瞳に映ったのは、
「ご主人?」
心配そうに投げられた言葉に反応する余裕が消えていた。
左上から右下へ。
右上から左下へ。
幾度も移動する瞳に気付き、余計に心配そうな表情へと変わるのを認識しながら。
「……行ける」
「は?」
「発動条件を突き止められれば、対応できる。
理論上用意出来るものを全て準備できれば、多分一矢報いることは出来る」
地下のオモイカネに頼ることもなく。
――――神を、引き摺り落とせる。
「…………ご主人、何が見えた?」
「白の全て」
「は?」
「
状態異常への耐性率。
生命力・霊力の数値化された値。
武具に宿る特殊効果の、本来切り捨てられる小数点以下の割合まで。
――――
「……成る程な、こういう名前になるわけだ」
「それは良いが」
「んあ?」
「いつまで見てるんじゃ戯けぇ!?」
顔を真っ赤にして、殴り掛かられる光景まで後一秒未満。
……余計なものまで見えたんだが、どうなってんだこの血盟能力。