時間があれば本文も修正掛けます。
鳥の声すら聞こえず。
周囲を徘徊している怪物の動きも消え去った後。
「……ん、んん?」
顔の辺りにまで伸びている誰かの足を手で払いながら。
目脂で張り付いた睫毛を無理に剥がすように、ゆっくりと起き上がる。
くあ、と大きな口を開けながらの欠伸。
外から差す日差し……昇り始めたばかりの朝日が恐らく外に明るさを齎す中。
昨晩と同じく、倉庫の中での目覚め。
快適とまではいかないが、隙間風が吹き荒ぶ神社の内側とでは然程変化はない。
(……夢……は、まぁそりゃそうだよな)
圧縮された夢、別の可能性。
それらで見るのは、糸が伸び切ったことで
そしてその遺骸の前で怯え竦み。
碌な末路を迎えなかったのだろうことを示唆させる灯花の姿。
……慣れてはいけないモノに慣れつつある。
【禁忌】の名前の理由に相応しいだけの理由を感じながら、見たものを噛み砕く。
恐らくは与えてくる不運が起因なのか。
それとも、特殊行動としての『行動封印』なのか。
(普通の俺だったら使ってる呪法を使ってなかった。
事前に決めていた通りの手順で行動していなかった)
たったそれだけの差。
けれど地力自体に大きな差がある以上は決定的な差。
『劣火の法』や『削減の法』……割合減衰に大きく頼る形を取る以上。
ただ、それを使用しなかった理由がはっきりとしない……という大きな問題。
純粋に周囲の空間から発生する、互いに干渉する類の空間呪詛とも思えない。
もしそれが発生しているなら目で捉えていた筈。
それに……俺以外が呪法を行使していたことから考えてもこれはない。
(……実際、術技封印とか呪法封印の幽世も後半は普通に出てくるからな)
嘗ての知識の幾らかを引っ張り出すように、脳裏で想起する。
状態異常としてのそれら……【沈黙】や【麻痺】ではなく。
空間自体が汚染されていることで、自身の霊力と周囲の瘴気が反発する状態。
濃度が低ければ、消費する生命力や霊力が増大化する程度で済むけれど。
濃度が一定を超えれば、自身も妖もそれらを行使できない絶死の空間へと変わる。
本来のゲームの頃だったら、その状態を確認した上でそれ専用のパーティで対応出来たが。
今この世界ともなれば……恐らくはそれの専門家に任せることになるのだろう。
特に俺達で考えれば、当然にどちらも行使することで格上を喰う事に特化している節がある。
故に、その対策として――――。
(いやいや違う違う。 考えが引っ張られてるじゃねえか)
危うく変な方向へと突っ走りそうになった自分を一発引っ叩き。
痛みで思考がはっきりしているうちに、夢の出来事と今日の予定を噛み合わせる。
(まず大前提はあの地下に一度向かうこと。
それに全員の道具の再分配と、可能だったら行動阻害に対する対策)
そもそも出来るかどうか、という前提を無視して考える。
昨日の内に紫雨に依頼していたことに加え、夢で見たことへの対応を加える。
……実際のところ、そういった状態異常への対応のみに関しては依頼済み。
であるなら、あの時のあの状態はどういう状態が考えられるのか。
恐らく、鍵となるのは……幾度となく払った覚えのある、頭の上の糸。
操作する、操作される。
運命自体に干渉する、というのは……純粋に状態異常に掛かった時を除けば。
その一瞬の混乱……いや、違う。
「……
迂闊にも呟いてしまった言葉。
何かに答えを導き出されたように浮かんだ答え。
改めて言葉にすれば、何処か納得するものが浮かぶのに。
無理矢理に理解させられたようなそれに浮かぶのは冷や汗だけ。
ただ……今は、そんな答えでも先への道標になるのは確か。
後に仲間へと相談することは確実とし、自分の中で一旦の結末まで導き出す。
それを、再びの前提と置いた。
(……コマンド入力の概念。
俺は、幽世の中で散々に見て来たはずだ)
正確には戦闘の記録として、だが。
何をしたのかが刻まれるのならば、その逆。
何をしようとするのかを脳裏、或いは無意識に選別し選択している筈。
其処に介入――――有り得ないとは決して言えない。
何しろ、不運な現象の発生確率という運命への干渉と理解している連鎖。
そんな微小なもの、本来なら触れられないモノへの干渉権限。
つまり……ある意味で。
【禁忌】分類の干渉権限と【神】のそれは同位なのか?
そう考えると……そう考えてしまうと。
大分無理がある答えで、答え在りきの当て嵌めだと分かっているのに。
しっくりと来る部分が強く脳裏を刺激する。
(つまり……通常の術技や呪法の制限に当たるものじゃなく。
――――実際の戦闘では無意識に選択から外す、ってとこか?)
ゲーム画面で言う『選択できるけど使用できない』ではなく。
『そもそも選択できない』の差。
……ただ、この論理で行くなら俺は抵抗できるはずだが使っていなかった。
(要するに、これも理解してないと駄目な類ってことかよ)
思兼神と契約は……していたのかまでは分からないが。
正しい意味での共闘、契約までは至っていなかったと読んでいる。
向こうの立場が上、此方が下。
……絶対に、そんな形で結びはしない。
「……うし」
やるべきことと、教えることは纏まった。
常に自分が扱えるものを脳裏に並べて、反射じゃなく理性的に使うことを前提とする。
恐怖心に立ち向かう……基礎の基礎か。
「起きろー、みんなー」
それが出来れば、苦労はしていないのだが。