オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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069/配分

 

障子戸の、半ば腐った木々のところを叩いて自分の存在を示し。

一拍の合間を開けて部屋の内側へと滑り込んでいく。

 

空いた穴から見えていた光景ではあったが。

床には辺り一面に持ち込まれていた呪法道具やら一般品。

幾らかには小さな紙片(タグ)が結び付いていることからして売却品も混ざっている。

 

其れ等全てを当たり前のように運び、管理している紫雨。

幾ら所持重量加算系能力を保持しているとは言え、どう持っているのか。

それもまぁ……幻想(ファンタジー)系の小説なんかで有りがちな『道具袋(アイテムボックス)』に似た感じらしい。

 

使用者の付近、霊力で作り上げる空間の()()()()()

表面の強化、自身の肉体への影響ではなく。

アキレスの亀のように、内側への距離倍率を無限倍に拡張することでの空間作成。

ある程度は似たようなことが出来ても、それが完全にできるのもまた才覚。

 

少なくとも俺の取得可能能力には記載もなく。

今の俺は、そういった便利能力には恵まれていない肉体らしい。

 

……そして、そんな若干逃げるような思考に陥っているのもまた。

 

「それで、ご主人。 ()()()()()()()()()?」

 

『見えるようにしてるんだねえ。 式使いなんて普通は使い捨てるモノだろうに』

 

室内に入った時から表情が一気に急落下した白。

そうなった理由もまた、背後に付き纏っている思兼。

 

此処が外ならまず間違いなく武器を構えているだろう殺気。

それに対し、唯見るだけで様々な情報を抜いているように見える眼力。

 

ある程度予想はしていたが、仲が悪すぎると言うか。

白が一方的に相性が悪い相手、という感じが極めて強い。

感性型と理性型の違い……とまで言ってしまえば多分問題になるし、怒り狂うとは思うが。

表現するにはそれが不思議とぴったりなような気がしている。

 

「言ってただろ、地下にいた神だよ。

 ……で、ここから抜け出るための致し方ない契約の末に憑いてきてる」

 

「浄化できんのかや」

 

『霊じゃないからねえ、残念だけども』

 

指を向ける先は眼前。

普通なら辞めさせる、或いは失礼だと理解しているからしないところを無視して実行中。

そしてそれを辞めさせようともしない俺の内心をも察してけらけら笑っている。

 

……こういうところ、()()()()()()だから余計にイライラしてくる。

 

そして何より。

ある程度予想はしていた範疇ではあるのだが、紫雨には一切見えていない。

部屋の隅の方で色々と話し合っていたリーフは、『何かがいる』のは捉えているようで首を傾げ。

そして灯花はと言えば、当然のように気付いているのだが恐れて近付こうとしない。

 

色々と、ある程度構築できていた関係性というかバランスと言うか。

そういったものがたった一柱が混じっただけで混乱し、崩壊しつつある。

 

「おまけは無視して良い。 準備はどうなった?」

 

なので、無視することにする。

元々時間を浪費できる程余裕もなし、病人だっているこの現状。

序でに言えば問い掛ければ何らかの答えは出すだろうが、それは今必要としていない。

要するに、大真面目な意味で邪魔にしかなってないのだから。 この背後霊は。

 

『ひどくない?』

 

「全員分の配分は済んだ。 だが、雌猫の比重は上げる形で考えておるが」

 

「だろうな、能力的にもそうなるのは間違いないだろうし」

 

基本的に道具を使用する担当、としての今回の立ち回り。

攻撃する暇は恐らく無いだろうが、道具を使用できない状態に陥る可能性は十二分にある。

それを防ぐためにも全員に最低一つずつの配分、という考え方だったのだし。

ずっと昔から話し合っているからこそ、その基本的な部分は白と俺で常に合致している筈。

 

「そうなると……万が一の際の回復配分をどうするか、で悩んでおってな」

 

「単体重視か列重視か、って意味でいいか?」

 

「そうじゃな。 後は純粋な霊力補充に関しての傾斜に関してもだが」

 

道具としての回復手段。

本来は灯花も踏まえなければ行けない、けれど彼女の才に依って踏み越えた一つ。

 

俺達の部隊として考えた場合、そしてこの世界の基本的な理として考えた場合。

本来あと一人配置できる前衛枠を開けている関係上、どうしても優先順位が落ちる『範囲』単位。

それが単体→列→全体、という丁度真ん中に在る部分。

 

特に、今回の相手が相手である以上生命力は常に維持しなければ不味いという問題もあり。

悩んでいるのは間違いないのだろうが……此処ははっきり割り切って考えたほうが良いと思う。

 

「霊力補充は灯花を最上位に、次は白でいい。 俺は不味くなれば適時声を掛ける」

 

一番悩ましい呪法特化、攻撃役の霊力消耗を考えなくて良いのは非常に助かる。

特にこういったギリギリを詰めていくことを考えた場合だが。

 

「回復は?」

 

「前衛が抜かれたら俺達は死ぬだけだ。

 列回復は前衛重視、灯花は全体回復と単体を回して貰いつつ指示を出す。

 一応俺の陣回復手段があるんだ、気休め程度にはなるだろうしな」

 

回復に作用する霊能力を伸ばしてない、という欠点がなくはないが。

前衛が術技を回す程度には回復する筈なのでその辺用のコスト回復用と割り切る。

……雑魚相手だったらこれだけでぶん回せるんだけどな。

 

「分かった、それで詰めよう」

 

「ああ、それが終わったらとっとと抜き取る儀式始めるぞ」

 

一度頷くのを確認後。

次の手順への声をかければ、少しだけ訝しむ顔色を見せた。

 

「……もうかや?」

 

「その後で守護神を降ろす儀式だってあるんだぞ。

 後ろの背後霊を働かせる必要だってあるんだ、早くやるに越したことはない」

 

『ひどくない?』

 

同じことを繰り返してる機械か、お前は。

多分、呆れたような表情を浮かべているそれに対して。

俺は改めて、無視することで答えとした。

 

……時間がないって言ってんだよ!

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