オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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ちょっとずつ更新~


Chapter4/堕落せし人と、討つべきモノと
001/痛み


 

戦闘が終わったから、とは言っても直ぐに動き出せるものでもない。

 

特に対多数戦、普段から経験している鍛錬という側面を含めた行動とは違い。

文字通り生死の線を行き来し続けるような死闘を、それなりに長い間。

明らかに濃密だったその時間を経て一日。

それで何が起こるかと言えば、まあ誰でも思いつく部分はあると思う。

 

「ぐぬぅぅぅぅ…………!」

「み、右腕がぁ…………!」

 

神社の床下を介して戻った一室。

取り敢えず、という形で借り受けていた部屋。

早朝、例の掃除屋の音が聞こえない朝を迎えた後に出向けば。

ある種想像していた通りの光景が二通り。

 

方や、全身に痛みがあるのか僅かな動きであっても大きな悲鳴を上げる白。

方や、主に右腕と肩を押さえて何処にも触れないようにゴロゴロしている紫雨。

 

簡単に言ってしまえば、ああいった戦闘で限界を越えた事のない二人組。

元々肉体的に才能を持つが故に、痛みを感じる経験自体が薄い優秀な方。

 

「ふだん、よりは辛いけど……それくらい、ですよね?」

「ですねえ……。 まあ、今回で経験すれば良いんじゃないですか?」

 

そして、同じように彼方此方に軽い麻痺のような痛みを覚えているのだろう。

それでも僅かに表情に浮かべるだけで二人の面倒を見る伽月と灯花。

 

この二人は体を動かし続ける、というある種の鍛錬を経ているからなのか。

筋肉痛に慣れきった、努力を積み重ねることに慣れている努力側。

 

そんな二種類を見つつも、首を傾げているリーフがいたりもするのだが。

彼女は彼女で軽い頭痛が残っているだけ、というのでまた例外なんだろう。

 

……いや、本来は流しちゃいけないんだろうけど。

今は流すしか無い。 目の前の光景があまりに見苦しすぎるので。

 

(つーか、当初の予定だった宝石の儀式も済んでねえのに)

 

部屋の隅に追いやられている背負い袋……の一番底。

霊能力者としての使い道を無視するにしろ、観賞用として売れなくもないだろう宝石達。

一番最初、灯花の所に来ようと思った切っ掛けを思い出しつつ苦笑いが浮かぶ。

 

「な、なんでご主人は平気なんじゃぁ!?」

 

そんな笑みを見咎めたのか。

普段と同じような声量で、けれど叫んだ後に見苦しい悲鳴を上げつつの白の言葉。

返す言葉……うん、まあ言うまでもねえことなんだが。

 

「そりゃお前、子供の頃からそういうのに慣れてきたからに決まってんだろ」

 

少なくとも、俺は肉体的に優秀な方じゃない。

どっちかと言えば伽月の側、努力などを経て力に変えるタイプ。

主人公の特性にも色々あったが、この肉体の持つ初期設定は器用貧乏に近かった。

 

「朔君がぁ……?」

「俺だって慣れてない頃だってあったっつーの」

 

まあ、紫雨はそういった場面あんまり見てないとは思うけど。

そう言う意味だと、白が知らないなら他が知らなくてもおかしくはない、のか?

 

表に出す――――と言うか顔に出す事は出来るだけ控えていたが。

そもそも予定を立てていたのは俺だ、痛みがある程度薄くなるのを見越してたのに決まってる。

最悪の最悪はリーフを介した薬を飲んだり、なんてこともまああったりはしたが……。

成長痛とかそういった関節へのダメージに比べれば、筋肉への痛みは然程でも無かったし。

 

「…………つらそう、なこと、あったもん、ね」

 

唯一知っていた(らしい)リーフがしみじみと呟くが。

自分の上着を寝具の代わりにしているような格好では、まあ何とも言えない。

明日にはまず落ち着く程度の頭痛らしいが、その程度で済んで良かったと安堵するぐらいである。

 

「ぅー……」

「別に大声で言うことでもねーだろ……」

 

と言うか、こんな死んだような状況で準備はできているんだろうか。

確かに昨日まで隅に置かれていた着替えとかは消えているけれど。

問い掛けるように、一番元気が残っている様子の伽月へと目線を向ける。

 

「身体が良くなれば大丈夫だと思いますよ?

 ……それに、無理矢理動かす技が無くもないですし」

「待てぃ伽月! あだだだだだ!」

「いや、ずっと此処にいるわけにもいかないじゃないですか……」

 

学べよ、と思わなくもない白。

幾らかの冷めた目線が集中するが、当人は自分のことで手一杯なご様子。

 

まあ普通は筋肉痛だとか受けるはずもない式、妖ではあるのだが。

倒した相手が相手。

神、という上位階層の相手であったからこそ流れ込んだ(リソース)も多かったのだろう。

 

……もしかすると、痛みが消えたらまた大きくなるんじゃねーだろうな。

俺より身長大きくなられると色々と負けた気がしてくるんだが。

 

「灯花、怜花さんの様子は?」

「たぶん……動くだけなら、大丈夫?」

 

まあ、以前に比べて良くなったのは間違いないんだろう。

左右に首を揺らしつつ、良く分からないと身体で示しながらの言葉。

まあ護衛の依頼を受けた時みたいなもんだと思えば良いんだろうが……。

 

「明日には動くことは言ってあるんだよな?」

「それは、はい」

 

何にしろ、彼女達も俺達と一緒に行くことは確実。

怜花さんの落ち着く場所が何処になるのか、という問題だけは残っているが。

取り敢えずは薬屋まで戻って其処から考える……って形になるんだろう。

 

(一回全身見てもらったほうが良いだろうしなー)

 

戦闘を終えた後の影響。

成長を後回しにしていることの楽しみ。

現状、全員が生存できたこと。

 

幾つかの楽しみを前に、相変わらず騒ぎ続ける二人は。

余りに煩すぎると、仲間達の手で口を塞がれることになった。

数十分程の時間を置いた後に。

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