翌日。
疲労が完全に取れたわけもなく、けれどあの場で待ち続けるわけにもいかず。
能力の強化を図るにも何とも言えない場所と成り果てた神社から出立し数刻。
「大分雰囲気変わってるよな?」
「そうじゃのう。 鵺もいなくなっとるし」
影が彼方此方に見え、普通の森というにも陰鬱とした面影を残していた行きの森。
それに対し、何と言うか……純粋に陽の側に傾いている印象を与える帰りの森。
何方かと言えば此方のほうが落ち着くのは当然のこと。
ただ、こういった雰囲気を好む妖がいないわけではないので警戒は必須。
(まぁ、大体は零落した神とかそっちのやつばっかだけど)
後半にでもならなきゃ出てこない存在。
だからまず考慮にいれる必要も無いんだが、今いる場所が周回前提の場所というのもある。
と言うよりも、今までに出くわしてる幾つもの例外を前提に入れる場合。
急に現れる、なんて可能性が無いとも到底思えない。
「ボクはもう懲り懲りなんだけどなぁ、あんなの」
「まあ、出会いたいとは思えませんものね……」
結局移動にかかる時間は行きも帰りも同じ。
ついでに言えば、途中にあったあの宿場町の変化も確認したいところではあるが。
下手に女性陣を連れ込むのも怖い……うん、怖い。
「どうしたもんかねえ」
「?」
「あー、いや。 野宿みたいな形を取るかどうするかな、って話だよ」
漏らした言葉に反応し、目線が複数向けられる。
ああ、と頷く返事も複数ある中。
首を傾げて理解していない新規加入者とその母。
……と言うより、彼女のことを考えると野宿させるのもまた不味いってのもある。
「でも、殆ど外で泊まるのと変わらない場所……でした、よね?」
「そう言われるとそうだけどさぁ」
それを自分で言うのか、灯花。
いやまあ、他の誰が言っても角が立ったとは思うが。
「それでも、きちんと屋根があるかどうかって違いはあるだろ」
実際、テント……と言うにはもっとボロいモノが無いわけではない。
幽世近くの拠点が設けられない、或いは採算が立たない場所に出向く際用の道具が用意されない理由もなし。
それを立てさえすれば(時間経過や道具の消耗までも賄えないとしても、だが)。
一番基本となる拠点の行動は取れるようになる設置物が原作には存在していた。
そして、それに該当するものがこの世界にも当然実装されているのは確認済み。
ただそんなモノを持ち込んでこなかった理由があるにはある。
(考えが甘かった、と言ってしまえばそれまでだけど)
例の宿場町から
本来食料などを運び込む為の通路や参拝客の移動経路として用いられていた筈の古道、というモノがあったはずなのだ。
その経路を通れさえすれば、朝早くに出て夕方には神社に辿り着けた筈の道。
……実際には、色々な都合や腐れ神のせいで使えなくなってしまったのだが。
まあ回り道が必要になっていたのも事実ではあるし、良かったこと悪かったことを比べるのはやめておこう。
考えるだけ悲しくなってくる。
「……そこまで、考えてくれるんですか」
「ご主人は自分のこと最優先だとは思うがのー」
「余計なこと言うんじゃねーよ、白」
ある程度は正しくても、ある程度は間違ってる。
だったらまだ良い方に捉えられて貰った方が良い。
暫く……というか本筋の話を片付ける程度までは同道して貰うつもりなんだし。
その中には、彼女の過去に紐づく話に踏み込まざるを得ない部分だって出てくるだろう。
というより、出てくると言い切って良い。
「吾よりも、そんな幼い子に気を配るのかや?」
「そこで反論してくるのどうかと思うんだが。 つーかお前、なんか暴走してねえ?」
「誰がじゃ、誰が!」
お前だよ。
目で見える部隊員の状態変化。
その中に、精神系異常の【興奮】の文字が伺える。
(発生理由…………あーそうか、そうなるか)
つい先程感じ取った陽の気への偏りに対しての
そして妖から式へと移り、更に存在深度を高めた先の変化。
本来は陰の気に馴染む飛縁魔という存在が、変わりつつあるのだろう。
嘗ての世界でいう【妖怪仙人】、或いは後天的に変異した【神】への移り変わり。
長く生き続けることを引き金に。
或いは特定の条件を踏むことで変化する、式としての上位変異。
その切っ掛けとなるのが陰陽の均衡に近付く、というもの。
隠しデータとしてしか存在せず、幾つかの検証を元に判明した変異手段の一つ。
自身に似た神と相対し、死すること無く戦闘を終えること。
自分の『先』を理解し、その先を望むこと。
主との関係性を深め、繋がりからの陽の気を自身のものとして取り込むこと。
(普通にやってたらこの段階で変わるはずもないんだが……まあ、今更だよな)
大分前倒しになってるのは間違いない。
日ノ本を巡る切っ掛けを得る前に兆候を得られたのも、まあ悪くはない。
それはそれとして、面倒くさい。
「灯花、ちょっと白に術法頼んでいいか」
「おにいさまの、言うことならば……」
「待てぃ、人の話を聞け!」
聞いてたらもっと面倒になるだろ。
良いから頼む、と身体で合図し。
本来なら絡んでいく筈の紫雨さえも呆れた表情を浮かべている。
……冷静になったら、多分暴走しそうだよなぁ。
ただ、今よりはマシかと。
深い溜め息を吐きながら、そんな事を思った。
別口で一次小説更新中です、という宣伝だけ。
「片翼の騎士、君と共に」
純ファンタジー寄りの児童小説チックな作品です。暇ならどうぞ。