さて、と小さく溜め息を零す。
(あの宿場町にも立ち寄る……か噂だけでも聞いておかねーと)
森の隙間、僅かに開かれた場所。
恐らくは猟師や村人、或いは俺達と同じような能力者達が作ったのだろう森の中での休息場。
こうした場所は万が一の時に立ち寄れるよう、誰でも気付くような分かりやすい形で置かれる筈。
にも関わらず、見た覚えも通った記憶もないというのは――――。
(焦っていた、って言葉だけで考えるよりは……誘導された、と考えたほうが正しいか)
折った小枝を前に放る。
ぱちぱちと跳ねる小火、焚き火が切れないように継ぎ足しながらも周囲に燃え広がらないように制御する。
俺以外が倒れるように眠り続けている光景を前に、もう一度溜息。
『起こさなくて良いのかい?』
背後から聞こえる声を無視。
けれども視線は、本来であれば共に起きているはずの少女……灯花が意識を飛ばしている所を見てしまう。
起こすべき、というのは分かっているが……眠らせたままにしておきたい、と思う俺もまたいる。
だからこそ、何もせずにそのままに。
右手を左へと払うように流し、同時に
(こんな事ができるようになったのは……契約が理由なのか、何かを見たのが理由なのか。
答えが簡単に出るなら困らねーんだけどな)
『
【
| 『朔/深度13』 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 『力』 | 『霊』 | 『体』 | 『速』 | 『渉』 | 『呪』 |
| 9 | 10 | 12 | 16 | 18 | 1 |
浮かび上がったのは能力値。
本来であれば水を介し、自分という写し身を経て覗き込む自分の深奥の情報。
指先で弄り、自身の肉体が変異していく独特の感覚を味わいながら思考の奥底へと落ちていく。
こんな簡単に見えるようになっている、と気付いたのは戦後……と言うよりはつい先程。
出立前には上限の変異を軽く流し見するだけで、漸く少しだけ時間が出来たからこそ確認し直そうとした矢先。
掌に少しだけ零してしまった飲水を払おうと手首だけを振ったことで浮かび上がった、明らかな変異。
能力の名称上発生し得ない、体感系ゲーム……自分の体を介して遊ぶ種別のそれで見るような能力値の確認手法。
便利になったのは間違いなく。
けれど他所から見れば明らかに異常だと排除されるだろう行為。
(そもそも……何でこんな事になってるのか、何も情報が無いってのもまた変な話なんだよな)
いや、正確に言えば変な夢を見た時があったか。
ただ、それにしても情報が欠片しか存在しないのもまた変わらない。
(彼女と俺も、この身体になって以来出会った記憶は欠片も無いのに――――)
久しぶりに会ったような錯覚があった。
受け継いだ、という感覚があった。
『主人公』としての能力を使用した、というのは間違いない。
それが刻まれた能力一覧へと視線を落とす。
【
| 未取得/0点 | |||
|---|---|---|---|
| 【血】 | 『洽覧深識』 | 1/1 | 相手ヲ知リ、己ヲ知レ。 |
| 【無】 | 『写し鏡の呪法』 | 1/1 | 自身の内側の情報を水鏡に映し出す簡易呪法。 |
| 【無】 | 『狩る者の眼差し』 | 1/1 | 任意対象の生命力・霊力・状態を確認する眼差しを得る。 |
| ┗ | 『彼方ノ幻想視』 | ■/■ | あり得ざる世界を見つめる目。【禁忌】【干渉:五感】 |
| 【無】 | 『習熟:長柄』 | 5/5 | 長柄武器の扱いに習熟する。能力上昇で補正。 |
| 【無】 | 『徒人の慧眼』 | 3/3 | 鑑定に習熟する。能力上昇で補正。 |
| 【花】 | 『瘴気変換:霊力』 | 3/5 | 周囲の瘴気を霊力に変える体質へと変化する。 |
| ┗ | 『瘴気吸収:霊力』 | 3/5 | 瘴気を吸収し、常時霊力を賦活する体質。 |
| 【花】 | 『瘴気変換:生命』 | 3/5 | 周囲の瘴気を生命力に変える体質へと変化する。 |
| 【鳥】 | 『迫撃』 | 2/5 | 対象の内部を貫く一撃。【物】【格・長】【麻痺発生】 |
| 【月】 | 『式王子の呪』 | 1/1 | 式を扱う才能を目覚めさせる。強さは主と同等となる。 |
| ┗ | 『比翼の交わり』 | 1/3 | 死した式に今一度の生を。【蘇生:式】 |
| 【月】 | 『劣火の法』 | 3/5 | 対象の害する才能を劣化させる呪法。【物・魔】 |
| ┣ | 『法則干渉・低』 | 5/5 | 他者に影響を与える呪法の効果量増加。能力上昇で補正。 |
| 【月】 | 『削減の法』 | 3/5 | 対象の肉体を脆弱化させる呪法。【物・魔】 |
| 【月】 | 『封縛の陣:地』 | 3/5 | 対象の行動を阻害する陣を刻む。【物】【半減/魔】 |
| 【月】 | 『治癒の円』 | 3/5 | 呪法陣を利用し、部隊を治癒する。【全体】【呪法陣】 |
| 【固】 | 『 | 1/1 | 終わりの一撃。【継承】【段階増】【段階低】【禁■】 |
刻まれた固有能力。
死なないために、倒れないために得た常時能力の成長に割り振った成長。
刻印として刻み込まれた最後の、本来であれば記載されているはずもない「禁」の文字。
これが、既に手に入れていた目と同じものだとするのなら。
再びに「禁忌」と呼ばれる……良く分からないモノに触れたということ。
「……何が、こう呼ばれるんだ?」
思わず漏れる言葉。
既に気付いている。
だから、全てを昔のままだと思い込んで動くのは自分の死を招くのと同じで。
けれど、知識そのままに利用できる部分が残っているのもまた同じ。
何方に傾き過ぎても駄目、ということしか分からず。
結局、この世界で生きていく他は無いのだと分かっているからこそ。
(どうしたもの……なんだろうなぁ)
仲間との絆を深め切ったその先。
特殊なイベントとして……ヒロインが独自の能力を身につける過程。
結局、溜め息を再びに繰り返す他なく。
奇妙な鳴き声が、森の中で響き渡っていた。